妖星乱舞-第二楽章-

91話 妖星乱舞-第二楽章-


本拠地の城の中に、激しい銃声と、刃と刃がぶつかり合う金属音が響き渡る。
鋼鉄の長剣や、突撃銃FN FNCで武装した兵士達が、
侵入者と前線部隊が交戦している現場へ急行する。

「畜生! 駄目だ、歯が立たない!!」
「諦めるな!! 相手はたったの7人だぞ!! 全員で畳み掛けろぉっ!!」
「何なんだよあの青髪は!? 銃相手に剣で全く引けを取ってねぇ!?」

兵士達の怒号と悲鳴、そして銃声、爆発音が混ざり、けたたましく不格好な交響曲を奏でる。


「おらああああどきな雑魚共!! アンタらに用はないんだよ!!」

イサカM37によるスラムファイア――引き金を引いたまま先台を操作する事により、
連射させる技術――を駆使しながら、大勢の兵士を薙ぎ倒し
血の海に沈めていくドーラ・システィール。

「リリアはどこだーーっ!! リリアを出せーーーっ!!!」
「死にたくなければ引っ込んでいろ!! こっちは本気だ!! 手加減はない!!」
「文句ならあの世でリリアに言うんだな!!」

アレックスが短機関銃IMIウージー、レオン・ミスティーズが突撃銃アーマライトAR18、
ピタゴラスが同じく突撃銃AK-47を乱射し、敵兵を蜂の巣にしていく。

「はぁっ!!」

クリス・ミスティーズが敵の銃弾の雨を掻い潜り、
華麗とも言える剣技で瞬く間に7、8人を斬り伏せてしまった。

「くっそぉぉ、撃っても撃ってもキリがない!」
「流石敵の本拠地、兵の数が半端ではないな」

両手に自動拳銃を持ち二丁銃の構えで攻撃する高原正封と、
RPG7に最後のミサイル弾を装填するガーゴイル。
そして、装填するな否や、前方の敵兵が固まっている方向にある巨大な扉に向け発射した。
放たれたミサイル弾は一直線に大扉に向かって行き、着弾し粉砕した。
その時の爆風に周囲にいた兵士十数人が巻き込まれ死傷する。
そして残った生き残りをアレックス、レオン、ピタゴラスの三人が一斉掃射し片付けた。

「はぁ、はぁ、随分出てくるね……ったく」
「所で、リリアは一体どこにいるんだ?」

この広大な城のどこかにこの殺し合いの主催者、リリア・ミスティーズはいるはず。
しかしこうまで広いとどこを捜せばいいのかまるで見当が付かない。
弾薬は大量にあり、その気になれば敵が持っている武器を奪えばいいが、
それでも無限ではない。早々に手掛かりを見付ける必要があった。

「おい、リリアはどこにいるんだ?」

レオンがまだ息のある兵士の胸倉を掴み尋問した。

「こ……この城の……最上階……大抵、そこに……いるはず……です」
「最上階……」

正面入口で見た時、城は少なくとも10階分の高さはあった。
現在自分達がいるのは2階部分、まだ道のりは長い。
その間にも、多くの敵兵士部隊が待ち構えている事だろう。
だが、このまま突き進む以外に道はない。

「……行こう」

ドーラとアレックスを先頭に、殺し合いの生存者達は、
主催者の元を目指し進撃を続ける。



地下牢獄。バンの投獄されている牢内。

「あ……が……」

あれからバンはリリアの命を受けた兵により過酷かつ凄惨な拷問を受け続けていた。
全身を鞭で打たれ、塩を混ぜた水を塗りたくられ、焼けた火鉢を身体に押し当てられ、
尻尾の先を思い切り踏み潰され……。
筆舌し難い数々の責め苦をその身に受けてきたバンは、
もはや虫の息となっていた。

そこに、彼が良く見知った顔の女性が現れる。

「り……リリア……!!」
「ついにタメ口になったわね」

やや不快そうな面持ちでリリアは床に這い蹲った状態のバンにゆっくりと近付く。
よく見るとその手には、見慣れない小銃らしき物が握られていた。

「……殺し合いの生存者達が、この城に乗り込んできたわ。
どうやら自分達で首輪を解除して、現場確認部隊のヘリを乗っ取って来たみたい。
今、上は大混乱よ」
「……!」

この瞬間、バンは自分がした事が決して無駄ではなかったと悟る。
果たしてそれが自分が仕込んだ首輪設計図入りのUSBメモリのお陰かは分からない。
だが、生存者達が自力で首輪を外し、生きるために、主催者に抗うために、
この城まで乗り込んできたという事実はバンを感動させた。

「この殺し合いももうおしまいね。ふぅ、結構色々頑張って用意したのに。
少しは予想していたけど、本当にエクソダス的な展開になるなんて」

リリアが残念そうな表情を浮かべながら吐き捨てるように言った。
そして、持っていた小銃――九九式短小銃リリア改造型の銃口を、
バンの頭に向けた。

「貴方ももう用済み。何か言い残す事はある?」
「……そうですね」

バンは最後の力を振り絞り、リリアの顔を見上げ、
憎しみと怒りを込めた口調で、言い放った。

「――地獄に堕ちろ、悪鬼め」

牢獄内に一発の銃声が響いた。


頭部が破裂し脳漿や血液が周囲に飛び散ったバンの死体に背を向け、
リリアは牢獄から出る。

「……さて、早い所、最上階の私の部屋に戻らなきゃ。
兄様や伯父様、他の方々を迎えなければならないから」

そう言うとリリアは呪文のような物を唱え出した。
詠唱が終わると、金色の光がリリアを包み、そして次の瞬間にはリリアの姿は消えていた。



【バン@ムーンライトラビリンス改造版  死亡確認】



第三楽章へ続く

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最終更新:2010年06月13日 16:49
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