本当の姿が誰にも見せられない ◆J5IZ9694XQ
地図上ではD-1、浦の星女学院の校門前にて。
赤髪の少年、響裕太は現状に困惑していた。
この殺し合いの開催を宣言した怪人…アレクシス・ケリヴの存在を彼は知っている。
彼の住む街、ツツジ台は一人の少女によって作られた。
紫髪が特徴的な才色兼備才貌両全の美少女・新条アカネによって。
いや、彼女だけの力ではないのだろう。
彼女に力を沿えた者こそがあの怪人―裕太は宇宙人だと考えているが―アレクシスなのだ。
(この会場も、新条さん達が作ったのかな)
アカネとアレクシスはただ世界を作っただけではない。
人も作った。その世界に住む住人達を。
しかもただ作って終わりではない。意にそぐわない者は消していっていた。
街を踏みつぶす破壊者…怪獣を使って。
人の命を消すことを、とても軽く見ているのだろう。
しかし、だとしても今の状況は不可解だ。
あの宇宙人は何故殺し合いなど開いたのだろう。
この場にいる数十名を殺したいのなら、あの場で全ての首輪を爆発させれば終わる話だ。
それだけではない。この殺し合いには他ならぬ新条アカネ自身の名前が載っていた。
これはどういうことなのか?あの宇宙人はアカネが死ぬ事になっても構わないというのだろうか?
「これも新条さんが望んだ事なのか…?」
新条アカネはツツジ台の神だ。そもそも死ぬこと自体があり得ないのかもしれない。
それはこの殺し合いの場でも変わらないという可能性もある。
もしかしたら、アカネの娯楽目的の為だけに…彼女が一方的に楽しむ為だけにこのゲームは開かれた…そんな最悪の想像が裕太の脳裏を過った。
(…たとえそうだったとしても、新条さんもあの宇宙人から救わなきゃいけない。それが…俺のやるべき事なんだ)
今はこの殺し合いの理由について考えていても仕方ない、と裕太は結論付けた。
新条アカネが怪獣を暴れさせるのは、アレクシス・ケリヴによって利用されているからだと彼は考えている。
この殺し合いにおいても、やはり彼女はアレクシスの掌の中にいるのだろう。
名簿に載っていた裕太の知人の名は新条アカネだけではない。
彼の親友の特撮オタクな少年・内海将の名も、彼が密かに想いを寄せる黒髪の少女・宝多六花の名もあった。
勿論二人の事も心配だ。この殺し合いで命を落とすなんて事があってはならない。
否、二人やアカネだけではない。
この場に呼ばれた人達誰しもが、殺し合いの犠牲者になる事を防ぎたいと裕太は願っていた。
響裕太には記憶がない。宝多六花の家で目覚める以前の記憶が。
だが響裕太には使命がある。ツツジ台に住む生命を守る使命が。
それはこの場においても変わらない。アレクシスが糸引くこのゲームから皆の命を守るのが自分の使命だ。
何故なら彼は、ツツジ台に現れたヒーロー…ハイパーエージェントと一体化して怪獣達と戦ってきた、グリッドマンなのだから。
(けど、今はグリッドマンはいない…)
響裕太がグリッドマンになる為には絢JUNK SHOP内にあった古めかしいパソコン「ジャンク」が必要だ。
裕太はジャンクの画面の中にいるグリッドマンと「アクセス・フラッシュ」する事で一体化し、グリッドマンは実体化される。
だが、今自分のいる浦の星学院の校門前にはジャンクが置いてあろう筈はなかった。
地図には絢JUNK SHOPの名が載っていたが、あの店がそのままこの会場に持ってこられたのだろうか。
それならそこに行けばグリッドマンに会えるかもしれない。だが、地図で言えば現在位置とはほぼ端と端だ。
それに、持ってきたのはアレクシスだ。
もしかしたらその過程でジャンクの中にグリッドマンがいる事に気付かれて、既に何らかの先手を打たれてしまっているかもしれない。
いや、そもそも絢JUNK SHOPと言ってもツツジ台にあったそれがそのまま置いてあるのではなく、単なるコピーに過ぎない可能性だってある。
いずれにせよ今の裕太がグリッドマンになれない事は確かであった。
「いや、弱気になっちゃ駄目だ俺!例えグリッドマンになれなくったって、何か出来ることはあるはずだ!」
そう自分に言い聞かせ、裕太はおもむろにデイパックを開いた。
グリッドマンになれない自分は単なる一高校生に過ぎないだろうが、それでも何もしないではいられない。
この殺し合いを打破する為に状況を少しでも好転させるには、手ぶらでいるよりは物があった方がいいだろう。
そうして出てきたのは数センチ程の大きさのカプセルであった。
「ホイポイ…カプセル…?」
説明書によればこのカプセルは物を粒子状に変換して中に収容できるという。
裕太は半信半疑ながらも、説明書通りにカプセルに備え付けられたボタンを押し、その場に放ってみた。
何故、物を入れるデイパックの中にわざわざ更に物を入れるアイテムを入れていたのか。その疑問はすぐに解けることになる。
「ジャ、ジャンク!?」
カプセルから実体化したのは、まさに探し求めていたジャンクそのものであった。
しかも外付けのバッテリーが備え付けられており、室外でも使えるようになっている。
裕太の行動を待たず自動で電源が入り画面が灯る。
そこに映し出されていたのは、裕太のよく知る人物だった。
「グリッドマン!」
『裕太!』
赤と青のカラーリングのハイパーエージェント、グリッドマン。
ツツジ台に訪れた守護者がそこにいた。
「グリッドマン!どうしてこの中に!?」
『私にも分からない…気が付いた時には既にここにいたんだ…』
グリッドマンは今の状況がなんなのか把握出来ていない様子である。
ひとまず裕太はアレクシス・ケリヴによって殺し合いが開催され、自分達は参加者として呼ばれたのだという現状説明をした。
『そんな事になっていたのか…』
「でも、グリッドマンが来てくれたなら安心だよね」
『いや…楽観は出来ない。私がここにいるという事は、私自身も君達と同様にアレクシス・ケリヴに捕まってしまっていたという事だろう。
現に、その小さなカプセルの中に私はジャンクごと押し込められてしまった。
つまり奴の手の内に堕ちてしまったんだ、不覚だった…』
「あっ…」
『それにどうやら今の私は力に制限がかけられているようだ。
恐らくアクセスフラッシュをしても巨大化する事は出来ないだろう』
裕太は己が見通しの甘さを呪った。
グリッドマンと出会えたことでつい安堵してしまったが、言われてみればその通りだ。
アレクシスはまさしく先手を打っていたという事に他ならない。
その事を先に考えたのは自分ではなかったか。
『だが諦めてはいけない。
ともかく我々はこうして出会う事が出来た。
例え今はアレクシス・ケリヴの手の中にいたとしても、そこから抜け出すのは不可能ではない筈だ。
それに私がいなくとも新世紀中学生達が状況打開の為に外部で動いているかもしれない。
連絡は取れないが、信じてみよう』
「…分かったよ、グリッドマン!一緒にこの殺し合いをなんとかしよう!」
『ああ!
…ん?裕太、誰か近づいているぞ!』
裕太の視界に入ってきたのは尾と角が生えた…女騎士であった。
◆
「最初に会ったのが殺し合いに反対する人で安心したよ。乗ってたらどうしようかと思った」
「私もです。その…グリッドマンには驚かされましたけど」
ラ・ピュセルと名乗ったその少女の外見には少し驚かされたが、幸い危険人物ではないようであった。
互いに殺し合いへの反対の意を伝え、二人は情報交換することにした。
響裕太は内海将と宝多六花が知り合いであり、また新条アカネは主催者アレクシスとの繋がりがある可能性を持つという事。
ラ・ピュセルはスノーホワイトという少女を探しており、またクラムベリーには警戒した方がいいという事。
そしてグリッドマンもまた、裕太達と共にこの殺し合いに反逆する仲間だという事。
それらの情報が彼らの間で行き交う事となった。
「俺もそのスノーホワイトって子を探すのを手伝うよ。だから君も俺の友達を助けるのを手伝って欲しい」
「分かりました。人手は多い方がいいですからね」
『ラ・ピュセル、君も力を合わせてこの殺し合いを打開しよう!』
かくして、ここに響裕太、ラ・ピュセル、グリッドマンらは同盟を結ぶこととなった。
彼らの中に、この殺し合いへの叛意は共通している。
それが果たして主催者アレクシス・ケリヴに対して爪となって届くのか、それはまだ誰にも分からない。
(それにしても…)
凄い恰好をしているな、と裕太は心の中で続けた。
無論、ラ・ピュセルに対してである。
胸元が開かれ強調される大きなその二つの双丘は嫌でも周囲に存在を主張してくるし、露出度の高い下半身も目を惹く。
露わになった太股は、あの黒髪が美しい六花のそれを連想させずにはいられなかった。
彼女に比べると細いが、とも思ったが。
アイシャドウがかかった瞼も特徴的だ。どういう意図でかけようと思ったのだろう。
(…そういう事を考えるのはやめよう)
響裕太の想い人は宝多六花である。
故にラ・ピュセルに対して邪な考えなど起きようはずもない。
だがやはり、それを踏まえても気になるものは気になってしまうのだ。
新条アカネが自分のベッドの上に寝転がっていたあの時がそうであったように。
総じて目のやり場に困るな、というのがラ・ピュセルという少女に対する裕太の率直な感情であったといえるだろう。
最も彼女は正確には「少女」ではない、という事を知って入ればその感情はもう少し変わっていたかもしれないが。
(凄い恰好をしてるな…)
しかして、同盟相手の外見に目を惹いたのは裕太だけではない。
ラ・ピュセルもまた響裕太の恰好には視線を向けざるを得なかった。
端的に言えば、裕太は女装していた。
何故?と気になって聞いてみたが、学園祭のイベントの一環として着ていた時にこの殺し合いに呼ばれたからだという。
まあ経緯はさして重要ではない。
注目すべきはやはり、ハマっているな、という事であろう。とラ・ピュセルは考えてしまっていた。
女装とはいっても、セーラー服を着て髪を結ぶという簡素なものではあったのだが、しかしそれがハマってしまっている。
ラ・ピュセルは…否、岸部颯太は本来男性である。
魔法少女に変身する事で彼は女性へと変わる。
生物学的にも完全に女体になるのだ。
それと比べると裕太の女装はやはり訳が違う。
男性ではあるのだ。裕太は。
セーラー服を着ているといっても彼の骨格は完全に男のものであるし、あくまで女装をしているだけだという事は即座に認識できる。
女体化と女装はまるで別物なのだ。とは分からされる。
しかし…それがどうだろう。
男であると分かる事がかえって色気のようなものを産み出してはいないだろうか。
それには響裕太のルックスも関係しているだろう。
彼は所謂可愛い系の顔立ちをしている。それは否定しづらい。
少し中性的であると言ってもいいかもしれない。
あくまで男性的である体格、中性的である顔、そこに女性的な服装と髪型。
男と女との境界線上ギリギリのところからもう半歩ズレた位置にいるような一種の微妙な危うさが、同性から見ても惹き付けられてしまう何かを内包しているのでは…
(って、何考えているんだ僕は!)
自分の中に何か危ない考えが産まれかけたのではないかと颯太は思ったが、間違いだろうとすぐに振り払った。
颯太にはそんな趣味はない。
スノーホワイトこと姫河小雪が好きなのだ。それは間違いない。
とはいえやはり、裕太の恰好にはつい視線が惹かれてしまう。
裕太がラ・ピュセルに対して思ったのと同様にラ・ピュセルもまた響裕太に対して目のやり場に困るな、という感情を持ち合わせていたのだ。
『裕太、このスイッチを押せばまたカプセルに戻せるんじゃないか?』
ただ一人、どちらに対してもまるで気に留めない者もいたが。
【D-1 浦の星女学院/深夜】
【響裕太@SSSS.GRIDMAN】
[状態]:健康
[装備]:セーラー服、プライマルアクセプター@SSSS.GRIDMAN
[道具]:ホイポイカプセル@ドラゴンボール(ジャンク@SSSS.GRIDMAN入り)、基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考・行動]
基本方針:この殺し合いを打破する。
1:内海や六花を探す。
2:アカネの動向が気になる。
※第8話終了直後からの参戦です。
【ラ・ピュセル@魔法少女育成計画】
[状態]:健康
[装備]:魔法の剣@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考・行動]
基本方針:スノーホワイトを探す。
1:森の音楽家クラムベリーを警戒。
※クラムベリーに敗北後からの参戦です。
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最終更新:2019年05月22日 00:59