それじゃとりあえず仲間を探そうか ◆EPyDv9DKJs

 D-4。地図の中心となる、サン・ジョルジョ・マジョーレ島。
 その教会の、暗い地下にある納骨堂から、一階へと歩む一人の男がいる。
 黒を基調とした服に身を包む、異様な雰囲気を出している、長身の男だ。
 復讐から暗殺者への道へと歩んだ、ギャング組織『パッショーネ』の反逆者、リゾット・ネエロ。
 暗殺チームの最後の一人にして、暗殺チームを束ねるリーダーだった存在。

(奴と戦っていたはずだが、今はそれどころではない。)

 サルディニアの海岸にて、ボスに信頼されてると思しき部下と相対していたはずだが、
 今はアレクシスと名乗った異形の存在によって、殺し合いを強要される立場だ。
 リゾットにとって、殺すことは別にどうということはない。政治家にアメリカのギャング、
 全く割に合わない報酬の中、組織にとって厄介な存在を、何人も殺しをやってきた。
 今更殺すのを躊躇う理由はない……が、これはあくまで殺しに抵抗がないだけの話。
 問題は別であり、彼のスタンド『メタリカ』は鉄を操作するスタンド能力である。
 鉄さえあれば釘を作り、他人の鉄分すらカミソリなどに変える、まさに暗殺に適した能力。
 しかし、今彼の命を握っている首輪。これには一切の干渉を行うことはできなかったのだ。
 他人の参加者を首輪をあの時ちらりと見たが、鉄製の部品を使っているように見える。
 にも拘わらず、何も干渉できない。スタンドが首輪の中に入ることさえもできないのだ。
 試しに何体か体外に出してみれば、スタンド特有の物理干渉を受けないこともできなくなっている。
 アレクシスの言葉から、スタンドが制御されているということは、このことなのだろう。

(優勝でもしなければ、首輪は外せないか。)

『死んだ人を生き返らせる事でも、巨万の富を得る事でも、過去に起こった事を変える事でも、どんな願いでも叶えてあげるよ。』

 ボスに首輪をつけられ、更にアレクシスによって首輪をつけられた。
 憤ることもあるが、彼は少なくとも飴と鞭をボスよりかは弁えてることなのは伺える。
 いずれの優勝した際の賞品は、彼にとっては願い続けたものだと言ってもいいことだろう。
 死者の復活、巨万の富、過去の改変。暗殺チームが欲したもので、仲間やいとこを想うリゾットが欲したもの。
 ならば、この戦いは乗るしかないだろう───





(だが断る。)

 しかし、彼はこのバトルロワイアルにも反逆する。
 まず第一に、どこに信用できる要素があると言うのか。
 拉致し、殺し合いを強要し、勝手に生殺与奪の権利を握る存在。
 飴と鞭はボスよりかは弁えてるかもしれないが、所詮それだけに過ぎない。
 ろくな報酬も縄張りも寄越さないボスと互角か、それ以上に信用ならないではないか。
 ギャングでもない一般人であったのならば、この状況ではアレクシスの甘言に縋るしかないだろう、
 だが、スタンドとは己の精神そのものを形としたもの。弱い精神では操るどころか、害にさえなりうる。
 勿論リゾットは、そんな弱い心は持ち合わせてはいない。多くの要人暗殺をこなしてきたのだ。

 何よりも、散っていた仲間は何のために戦った。
 金は勿論だが、ソルベとジェラートを処刑したボスへの仇討ちでもある。
 暗殺チーム。言葉の響きが確かに悪いが、仲は悪いどころか、寧ろいい。
 言うなれば、ボスへの反逆は散っていった仲間の弔い合戦の意味もあるのだ。
 アレクシスの甘言に縋るのは、散っていた仲間の想いすら侮辱するということ。
 たった一人になったとしても、それでも反逆を諦めなかった男だ。
 仲間を想うチームのリーダーとして、甘言にすがることはない。
 命を握る首輪をつけられようとも。

 とは言え、だ。現状では首輪をどうにかできるとは、とても思えない。
 必要なのは情報だ。トリッシュを巡っての護衛チームとの戦いのように、
 情報をなるべく共有し、次なる一手を用意する。情報があるなしの差は余りに違う。
 深夜帯という、暗殺には持ってこいの時間帯ではあるが、まずは身の回りの状況の整理が必要だ。
 一先ず近くの柱と身を隠しながら、地図を広げて、目指すべき目的地を調べる。

(妙な地図だが、今頼れるのはこれだけか。)

 ここが建物の内容から、イタリアのどこかだと思っていたが
 地図を広げてみれば、イタリアとは似ても似つかない地図が広がっている。
 信用していいものかと最初は疑いにかかるが、目的地へ向かえばわかることだ。
 一先ずこの地図が本物であると仮定して、地図に記された場所に移動先を絞る。
 人が来る場所。情報収集に使えるかもしれない放送局、何かあると思われる研究所、
 殺し合いの都合、怪我人が集まりそうな病院。大まかに纏めればこの三つになるだろう。
 いずれも方向がバラバラではあるが、地図通りならば此処はD-4。どこも可もなく不可もない距離だ。
 ボートの移動中に支給品の念入りな確認もできるので、立ち止まっている理由はこれで終わる。
 地図をしまうと、そのまま玄関である扉に手をかけて、外へ出る。

「あ。」

 開けた先に、扉に手を掛けようとしていた青年と出会うことになるとは全く思わず。





 無言、沈黙、静寂。これらが渦巻く状態だ。
 あの少年相手にも警戒はしなかったが、あれは挙動に矛盾を感じたから故に。
 リゾットからすれば、今相対する相手は、誰が見たって一般人にしか見えない。
 別段、どこにでもいそうな、眼鏡以外に目立つ特徴はないと言ってもいいだろう。
 深夜のコンビニ帰りの学生、と言えばそれで通ってもおかしくないほどに、普通。
 間抜けな声と共に固まって引きつった顔をする表情も、演技でないことは伺える。
 かといって、殺し合いの場で生きるために暴走するような理性のなさも見えない。
 故に戦うべき相手とも、危険な人物と思うことも、欠片もないのだ。

「いつまでそうしているつもりだ?」

 数十秒経過しても、青年は固まった状態だ。
 これでは話が進まなければ、自分の進行方向からも邪魔でしかない。
 敵でもなんでもない存在をいちいち相手にする程、時間に余裕はない。
 いい加減退くなり何かしらの行動をするなりしてほしく、問いをかける。

「こ、殺さないのか?」

 漸く進展し、青年は数歩後退りしながら言葉を返す。
 ある意味、この場では至極まっとうな質問ではある。
 此処は殺し合い。ならばゲームのように出会えば戦うのが必定。
 はっきり言って、青年───内海将は人と出会った時点で死を悟った。
 怪獣と戦うグリッドマンを傍で見続けるという、日常から離れた場所にいるが、
 あくまで見てただけ、聞いただけの存在。別に特殊な能力を持ち合わせてるわけでもない。
 まさに一般人。怪獣を殴り飛ばす力もないし、ましてや一般人との戦いも特別強くもなかった。
 精神的にも普通の人と変わらず、先の少女の死体を思い返し、吐きそうになるほどに。

 殺し合いが始まった時点で、内海は既に敗北を理解して動いていた。
 此処は孤島。つまり船での移動を余儀なくされるというわけだ。
 殺し合いの言葉と、アレクシスが武器を支給したという言及から、
 銃の類もあると気づき、ボートで出れば一瞬にして的の出来上がりだ。
 つまり、彼はエリアから生きて脱出することすら叶わない状態になっていた。
 名簿から自分以外にも、見知った参加者がかいることは既に把握済みだ。
 けれど、この状況でどう動けと言うのか。銃を防ぐような肉体も、避けるスピードもない。
 当然、逆に此処へ来る人も限られる。恰好の的にされるのは、何も出る側だけの問題ではない。
 助けも余り期待できない。即ち、本当に動けばただ死ぬだけでしかない、無力な一般人というわけだ。
 支給品も漁れば、この状況を打開できるようなものではなく、死体を見た吐き気は納まって逆に笑いすら出てくる。
 できることが何もない。ならばもう只管時が流れて、狙う人が少なくなるまで待つしかなかった。
 それまでに此処が禁止エリアにされれば詰みというのも、一応は理解した状態で。
 絶望に打ちひしがれ、教会へ入ろうとしたら、今に至るというわけだ。

「質問を質問で返すんじゃあない。礼儀に反するのを知らないのか。」

 あいつもそんなことを言っていたか、
 なんて感傷に浸るかのような思いと共にリゾットは言う。

「え、あ、えっと、すんません、どうぞ。」

 どう返せばいいのかわからず、内海の咄嗟に出た行動は、道を譲ること。
 自ら退いて道を開ける。日常ならまだしも、この場ではおかしな光景に見えてくる。

「……特に、意義を見出せないだけだ。」

「え?」

「殺さない理由だ。礼儀には反することはしただろうが、答えないとは一言も言ってない。
 お前は仲間の仇でもなければ、俺が人を殺すことに快楽を覚える性分でもない。意味のない、それだけだ。」

 時間はあまり余裕はないとはいうが、
 話がまともに通じるタイプの相手であるのは伺える。
 ならば、何かしら有益な情報は持っている可能性も高い。
 相手の疑問に答え、ある程度話しやすい雰囲気を作る。

「仲間?」

 仇とか、何やら物騒な言葉が聞こえるも、
 疑問を置き去りにして、リゾットは話を続ける。

「それよりも、だ。お前は少なくとも、話が通じるようだな。
 俺は情報を必要としている。話し合いをするつもりはないか。」

 情報を手に、暗殺の計画を立てていく。やり方はここでも変わらない。
 首輪を何とかする、という一つの工程が必要になってると言うだけで。
 別に内海にとって困るものでもないのだが、

「えっと、断ると?」

 もしも断った場合の、彼の対応の仕方を少し伺ってみる。
 先の言葉と雰囲気で、堅気ではない人間なのは察しているが、
 もしかしたら違うかもしれないと思い、尋ねてみた。

「拷問でも構わないが、時間が惜しい。
 お前を置いて、船に乗って此処を発つだけだ。」

 その可能性は即座に切り捨てられる、非情な答え。
 血の気が引くような音が聞こえた気がするが、あくまで断ればの話。
 元から応じるつもりで大した問題ではなく、最後の部分のほうが気がかりだ。

「いやでも、この島から出るにも、待ち伏せとかされるんじゃ……」

 一般人である自分でも思ったのだ。
 修羅場を潜ったであろうことが察せられる彼なら、
 そのことに気づかないとは、とても思えなかった。

「逆だ。時間が経つほど、装備や準備を充実したやつが待ち伏せする、
 特に、お前のような一般人から武器を奪い取る参加者は必ずいるだろう。
 そうなれば余計に危険は多くなる。それを阻止するのも、充実する前の方が楽だ。
 俺も暇ではない、ボートに乗って話し合うか、此処で時間が経つのを待つか、今決めろ。」

 メタリカは攻撃に関しては無類の性能を誇るが、
 防御はお世辞にも、誉められたものではないだろう。
 海上で攻撃されるリスクを考えると、なるべく早めに出たいところだ。
 話し合いに応じる気がないのならば、さっさとボートへ向かいたい。

 正直、この島から脱出したいというのが内海の本音ではある。
 籠城させない、禁止エリアのシステムのことを考えれば当然だ。
 けれど、脱出したからと言って、その先が安全かと言われると、全く違う。
 今回はたまたま殺される理由がなかっただけだ。次もそうとは限らない。

「……分かった、あんたの情報交換は俺も賛成だ。
 けど、条件の一つとして、俺も暫く同行させてくれ。
 仲間が……友達が巻き込まれてるかもしれないんだ。
 俺が行く場所より、そっちが行く場所の方がいるかもしれないからな。
 大して何もできないし、事実島から出ようと考えなかった俺が言うのもなんだけど……」

 けど、この島からまだ安全に出られる可能性があるなら。
 そう思うと、少しではあるが諦めていたことを目指したくなる。
 名簿には裕太達もいる。裕太のようにグリッドマンに変身もできなければ、
 六花のようなタイピング能力もない。何ができるかは分からないが、安否だけでも確認したい。
 リゾットがそれを承諾してくれるかは、わからずとも。

「わかった。その要求を受けよう。」

 意外にも、すんなりと条件は通った。
 何の口論も反対の意見もなく、あっさりと。

「え、いいのか?」

 足手まといにならないのか?
 一般人を連れ歩くとは、そういうことだ。
 何かの拍子で自分がやらかしてしまうかもしれない。
 ネガティブだが、彼が好きな特撮でもよくある展開の一つだ。
 その場合は挽回の機会があるが、此処では挽回する前に死にかねない。
 だから容易に想像できてしまう。些細な自分のミスで、周りに被害が及ぶのを。

「お前に出来ることは限られるだろう。
 最悪、此方の身の危険が迫れば見捨てることも考える。」

 歯に着せることなく、無慈悲に内海を突き刺すリゾットの言葉。
 言ってることは正しい。必要以上に構えば、自分も危険にさらされるし、
 リゾットとも出会ったばかりの相手。命懸けで助ける義理などどこにもない。
 それについては分かってはいたのだが、面と向かって言われると流石に凹む。

「だが、仲間も他の参加者と接触してる可能性が十分にある。
 接触した際に、お前がいなかった結果疑われることもありえなくはない。
 慈善事業をするつもりはないが、何もしてやらない、というわけでもない。」

 心が動かされたかと言われると、そういうわけではない。
 ただ、どこか内海が自分と似ているように思えたからだ。
 仲間、友達の為に、危険を承知して行動を起こす彼の姿は、
 いとこの時の自分や、暗殺チームを束ねてたあの少し前を思い出す。

「ギャングの俺が言うと変に思われるが、
 仲間は多いに越したことはないだろう。」

 仲間を喪ったリゾットだからこその、重みのある言葉。
 ……ではあるのだが、

「え? ギャング?」

 内海が彼の心情を知らないというのもあるが、
 どちらかと言えば、その単語の方がインパクトは大きかった。





 二人は近くにあったモーターボートへと乗り込み、ゆっくりと速度を上げて海上を走行する。
 向かう方角は、一先ず脱出が優先であるため、距離的に近い鉄塔付近の船着き場へと目指す。
 その間に無駄のないように、遠方を警戒しつつ二人の情報の共有は行われた。
 一般人とギャング、得られる情報に差はあると思ったが、早くも進展する。

(とりあえず、奴はスタンドではないらしいな。)

 大まかとは言え、アレクシスについての情報が得ることができたからだ。
 あれがどれだけ無茶苦茶なことができるかが分かれば、
 ある程度のことに信憑性はあると言えるだろう。
 (無論、願いの成就など信用はしないが。)

(幾らか嘘、と言うよりは真実を言ってないだけか。)

 情報はある程度共有したが、内海が伏せている情報はいくつかある。
 裕太はグリッドマンと心を通わす少年と、ある程度ぼかした回答をしたのだ。
 グリッドマンに変身している、と言うのを余り無暗に言うと裕太に迷惑もかかるが、
 一方でアレクシスや怪獣に対抗している、グリッドマンの情報が必要不可欠だ。
 故に、仕方ないと割り切りつつも、ある程度嘘を織り交ぜた回答をしている。

(信頼には至らないのは当然か。俺も同じことをしている以上はな。)

 一方で、自分がスタンド使いであることについては、彼も一切伏せている。
 ギャングについて話したのは、既に内海とは違ってこの状況に余りに冷静だから、
 そのことで変に警戒心を持たれるよりはましだからと、判断したが故のことだ。
 護衛チームについても、組織にとっては正しいことをしていたのは彼らであるとは言わず、
 自分達と敵対していたと言うことしか述べてないのだから。
 暗殺チームにも言及せず、自分はカチコミ要因と答えている。
 ボスに単身になっても挑んでる以上、嘘は言ってないのだが。

「なんとなくわかってたけど、ギャングまで参加って、んなのありかよ。」

 ギャングなんて縁遠い存在を、
 こんなところで話し合える相手として出会う。
 実に奇妙な状況を前にするも、意外と内海は話せる。
 どうにもならない状況下で死ぬとばかりに思っていたから、
 生きてる今に緊張が解けたのだと、思考の隅で思いつつ頭を悩ませる。
 この先にも、ギャングだのなんだのに出会うかもしれないのだから。

「ギャングだから、盛り上げ役に向いていると判断されたんだろう。
 人数自体は多くはないはずだ……アレクシスの嗜好の問題はあると思うが。」

 裏社会に生きていれば、人を殺すのに抵抗はない。
 ならば殺し合いを円滑に進めるための舞台装置になってもらおう。
 大方そういうことなのだろうと、リゾットは予想する。

「なるほど……あ、そうだ。リゾットさんの知り合いは?」

 名簿を取り出しながら、内海は尋ねる。
 自分にも知り合いが何人かいたことを見るに、
 身内を参加させて、嫌でも動かそうとしていることは分かった。
 ならば、自分における裕太のように、リゾットにも誰か仲間とかがいるかもしれない。
 教会と違いかなり薄暗いが、ボートについてるライトで、かろうじて読むことはできる。

「俺の仲間は全員死んだ。見る意味はない。」

 けれど、彼には仲間は誰もいない。
 反逆し、処刑され、返り討ちに遭って。
 今更、誰が参加してたところで探す相手などいないのだから。
 裏社会に生きている冷徹さと同時に、それに秘められた仲間への想いに、
 別段仲が良かったわけではないが、見知った相手の死……と言うより、
 存在が(厳密には違うが)抹消された問川達を知る内海も、
 分からないわけではなく、申し訳なく思う。

「なんか、すんません……じゃあ、俺達で言うアレクシスみたいな、敵とかは?
 さっき言ってた護衛チームの名前があるかもしれないし、他にもリゾットさんの左右に載ってる、ギアッチョと───」

 言葉を遮るかのように、内海の手から名簿が消失する、
 いきなり鬼気迫る表情で、リゾットが名簿をぶんどったのだ。
 聞き間違えたかと思えた。周囲への警戒を怠ってしまうほどに。
 けれど、これを前にして冷静でいられる程、彼は薄情ではない。
 自分は暗殺チームのリーダーであり、彼は部下なのだから。

「……何故、ギアッチョがいる。」

 メローネと連携して護衛チームを追跡した、暗殺チームの一人。
 かなり神経質な性格をしているが、冷静に物事を分析する能力を持ち、
 仲間としての意識もしっかり持った、意外な一面を持った男、ギアッチョ。
 サンタルチア駅へ向かった後、連絡が途絶えたことから生きてはいないと思ったが、
 名簿には、リゾットのすぐ近くにしっかりとその名前が記載されている。

「ひょっとして、その名前……」

「俺の部下だ。連絡が来ないことから死亡しているはずだ。」

 ギアッチョは、暗殺チームの中でも正面戦闘ならば一二を争うスタンド能力を持つ。
 そのギアッチョも、写真のデータを彼へ送った後、連絡が途絶えてしまっている。
 彼等の世界で連絡を寄こさないということは、つまりそういうことだ。

「運よく生きてた、とかは? 連絡ができないってだけで。」

 楽観視、という形ではあるが内海の言葉も一理はある。
 連絡ができない状況下に陥っているだけかもしれないし、
 リゾットもパッショーネに追われる身。連絡の手段を断たれてる可能性も否定できない。
 パッショーネの力を持ってすれば、連絡の手段を断ち切ることも不可能ではないだろう。
 一人になってからは連絡する相手はいなかったので、真偽のほどは不明である以上、
 あり得ない話でもないだろうが、リゾットは否定する。

「仮に生き伸びてたとして、再起不能の人間を再起可能にして殺し合いに招く。 
 無駄に手間のある行動だ……それならば、最初から健康体の奴を呼べばいいだけの話だ。」

 甘い世界ではない。今までのチームメンバーは誰もが連絡が途絶えた。
 裏社会を生き抜いた彼にとっては、楽観視などできるものではない。

「って言うと、この名簿は偽物とか?」

「奴のできることを考えれば、死者の参加はあり得ない話ではない。
 同時に、真偽の判断はしがたい。当人に出会うまでは保留としよう。」

 実際は死者だった人が他にもいるかもしれないが、
 参加者で死者となってるのが判明してるのは現状ギアッチョのみ。
 ギアッチョ以外では名簿の真偽の判断は、余りつけられない。
 どこかで会えたり連絡ができれば、御の字ではあるのだが。

「なら、そのギアッチョって人が行きそうな場所とかは?
 俺や裕太で言えば、JUNK SHOPって店があるんだけど。」

「ならば、今発ったサン・ジョルジョ・マジョーレ島だけだ。
 俺達はイタリアのギャングだ。縁ある場所はそこだけになる。
 後は、最後の連絡で送ったデータは駅で、そこから連想して出る、新宿駅の二つになる。
 もっとも、こじつけに近い以上当てには出来ない。ユウタとリッカと言ったか、そっちを優先する。」

 一通り方針はまとまった。
 JUNKSHOPなら、目指す船着場から近い場所になる。
 当てにしてないとはいえ、新宿駅も遠のいてる以上、そっちの方が効率もいい。

「俺の方を優先でいいのか? 仲間なんだろ?」

 同じギャングでカチコミ要因であるのなら、
 腕っぷしにも優れてるだろうことは伺える。
 戦力としても申し分ないだろうし、何よりリゾットにとっては仲間だ。
 自分が裕太たちを優先するように、彼も優先してもおかしくはなければ、
 彼のお陰で行動を起こせた現状、それを自分が止める権利もない。

「……確かに仲間だが、死者であるギアッチョと、生者であるウツミの仲間。
 どちらかが誤情報であれば、踊らされて徒労に終わるのは此方の方だ。
 その上ギアッチョは素早い。俺らが追いつけるとは、とても思えんのもある。
 足取りを掴めそうな方を優先し、一人でも多くの参加者から情報を共有する。
 人数が少なくなれば、それだけ情報の経路は絶たれる。戦いは既に始まっている。」

 ギアッチョのスタンドは、応用すれば車だろうとその身一つで追いつけてしまう。
 こればかりは暗殺チームでは、追いつけるのは精々メローネのベイビィ・フェイスぐらいだ。
 どこへ向かうかも分からず、車並みの速度を出すことができる一人の参加者を探すのは、
 情報を集めたところでどうこうできる問題でもないだろう。

「目的地はJUNKSHOP、間違いはないな?」

「ああ。そこに裕太達は向かう可能性は高いはずだ。」

 向かう可能性は高いが、もう一つ確認しておきたいことがある。
 アレクシスが黒幕であるのならば、正直とてもあるとは思えないが、
 JUNKSHOPのパソコンに、グリッドマンがいるのではないか。
 もしいたとすれば、大きな進展になるかもしれない、彼なりの考えあってのことだ。
 いなかったら振り出しに戻るが、確認しておくに越したことはないだろう。
 一般人である以上、できることは限られる。でも、せめて一般人代表として、できるだけ抗おう。
 内海はそう決意し、暗闇の中うっすらと見えてきた鉄塔を眺めた。



【D-4~D-5、海上のモーターボート/深夜】

【内海 将@SSSS.GRIDMAN】
[状態]:吐き気(状況の酷さに一応引っ込んだ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(1~3、確認済み、銃撃などを防ぐ手段にならない)
[思考・行動]
基本方針:一般人代表として、殺し合いに抗う。
1:裕太たちが来る可能性が高い、JUNKSHOPへ向かう。
2:護衛チーム(ジョルノ、ブチャラティ、フーゴ)については警戒。
3:名簿が本当でないことを願いたいが、余り希望は持てない。

※具体的な参戦時期は後続にお任せしますが、
 アレクシスを知っている都合上、参戦時期は少なくとも8話以降(恰好の都合8話のラストの女装以外)です。

※リゾットと情報交換をしました。
 スタンドについては知らされていません。
 リゾットとギアッチョはギャングのカチコミ要因と聞かされています。
 護衛チームは悪評は特に言われはいません。が、リゾットと敵対してたことは言及されてます。





 ボートで船着き場へ向かう最中、リゾットは一つ疑問が残っていた。
 それは、参加者名簿のリストに目を通した中での、一つの疑念。

(お前は何者だ───ディアボロ。)

 ディアボロ。
 リゾットの次に記された、イタリア語で悪魔を意味する言葉。
 奇妙な名前は、この中には何人もいる。だから参加者なのは間違いない。
 だが、自分の隣にあるというのが気がかりだ。ディアボロの次は上杉風太郎で、東洋人になる。
 続けて五人の名前が中野で、それが終わればスノーホワイトなど、コードネームのような名前がずらりと並ぶ。

(この名簿……)

 近しい人物に纏められているのではないか。
 リゾットはそんな可能性を、一つ考えていた。
 参加者のうち、内海の関係者も彼の前後に集中しており、
 パッショーネの関係者も近くに位置する以上、この法則は間違いない。
 特に、ディアボロと風太郎の次の中野と名のつく参加者は、身内であることは明らかだ。
 ディアボロと風太郎が、縁あるようには思えない。この男は、組織の一人の可能性が出てくる。
 悪魔と名付けられてるのだ、下っ端のような存在ではないのは分かる。

(俺が知らないだけでこいつは親衛隊か、或いは……)

 ボス自身の名前か。
 パッショーネのメンバーで、護衛チームと暗殺チームにだけ集中している。
 ボス自身が招かれたとしても、余りおかしな話ではないだろう。
 ディアボロ=ボスという確信は持てないし、所詮憶測に過ぎない。
 もしかしたらパッショーネの参加者はリゾットまでであり、
 ディアボロは風太郎とも、パッショーネとも無関係の可能性もある。
 名簿の中には二人以上の関係がなさそうな者も見受けられる以上、
 一人でしか参加してない参加者も、決してあり得ないものではない。
 しかし、もしもこのディアボロが暗殺チームが取るべき首だったのならば。
 散っていった仲間の為に取らないわけには行かないだろう。

 双方、共に仲間を大事に想う者同士。
 どちらも目指すは同じなのは確かだが、
 ほんのちょっぴりだけ、違うものがあった。



【リゾット・ネエロ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3(未確認)
[思考・行動]
基本方針:脱出経路を探す。生きていればギアッチョと共に。
1:JUNKSHOPへ向かい、ウツミの知り合いとの合流と情報収集。
2:護衛チームについては保留。今はそれどころではないが、出会ったときどうするかを考えておきたい。
3:ギアッチョの捜索は現状では厳しいので後回し。
4:ディアボロ、或いは参加してるであろうボスに警戒。もしいたのであれば……

※参戦時期は26話~27話、ドッピオと交戦中ですが、
 ドッピオが探し求めてた人物と確信する前です。

※内海と情報交換しました
 裕太がグリッドマンに変身ではなく、グリッドマンと心を通わす人物、と伝えられてます。
 情報の中に嘘はあることには気づいていますが、そこまで気にはしていません。
 内海の参戦時期で情報交換の際のアンチ、アカネの評価は変わります。

※完全な把握はしていませんが,名簿の法則にある程度気づきました。

※メタリカの制約は後続にお任せします

※二人は現在モーターボート@黄金の風 でD-4~D-5の海上を移動中です
 音、或いはモーターボートのライトで遠くから確認できるかもしれません


時系列順で読む


投下順で読む



内海将 :[[]]
リゾット・ネエロ :[[]]

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最終更新:2019年05月10日 18:01