優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw
ルーラはこの殺し合いを、とりあえず敗者復活戦のようなものかと理解した。
なにより脱落して死亡したはずの自分がここにいる。
アレクシスというやつが、厳ついけどマスコットと言うことなんだろう。
人数が多いのは、他にも何度か魔法少女を減らすためのサバイバルがあったのではと思うことにした。
隔離された島である以上、人間の姿でいる必要性はない。
彼女はとっとと変身して魔法少女の姿となっている。
現状を把握した後、彼女はなぜ自分が脱落してしまったのか考えた。
スノーホワイトの動きを封じキャンディを奪い切った上に、自分に多く分配したはずだ。
スノーホワイトは奪った時点でキャンディが0であり最低だったはずだ。
しかし、同盟相手のラ・ピュセルからキャンディを分けてもらい延命ができたかもしれない。
それならば間違いなく、私はあいつらに裏切られたのだ。
自分の目の届かないうちにキャンディを4人で分配して、残りを差し出されたのである。
思えばキャンディを奪うのにあれだけ手間がかかっていたのに、奪えた数があれだけなわけがなかった。
無能なので時間がかかったものとばかり思いこんでいたのだ。
「あのバカ共アホ共。 私が居なければ無能なやつらの癖に、変なところで頭を回しやがって……」
孤独な状況においても、思わず悪態をついてしまう。
だが一応のまとまりがあったのに、裏切られた原因は何だろうか。
あんなに先輩魔法少女としてマニュアルを作ったり、
世話を焼いてやったのに何故裏切られてしまったのか。
努力家で有能な彼女だが、自分とは違った思考を持つ人々の心理が理解できない。
こればかりは、対等な立場と考えて相手を知ろうとしない限り理解できないものである。
ルーラの限界がそこにあった。
だから彼女はこの殺し合いの場でもやることは変わらない。
自分に御しやすそうな他の参加者を見つけ、同盟を組んで優勝を目指すことである。
ただし最終的に勝ち残れるのは1人。
よって組んだ後は優勝のチャンスがあると希望をもたせながらも、
最終的には自分が出し抜く方法をしっかり考える必要がある。
ルーラは、この殺し合いを優勝しもう一度魔法少女として再起すると決意を抱いた。
ルーラがいるのは街の中である。
しかし人影はなく、夜闇に包まれたゴーストタウンとなっている。
ところがどこからか電力が来ているのか街灯は灯っている。
このような状況では隠密行動に秀でてない限り、参加者同士はお互い発見しやすい。
それでも魔法少女としての特性により夜目が効きやすいルーラは、
別の参加者を相手より先に発見できた。
発見した相手は高校生くらいの男だ。
ルーラはこの状況においても魔法少女に変身せず普段の姿でいるとは、
なんて警戒心の無い奴なのだろうと思った。
こんな奴が役に立つのか。足手纏いになり自分の敗退を加速させてしまうのではないか。
いっそこの場で殺してしまい支給品を奪った方がいいのではとすら思う。
だが、そのようなやり方はルーラの考える魔法少女のやり方ではなかった。
いずれは汚いことにも手を染めて優勝を目指さなければならないときが来るのだろうが、
まだそのような気分になってはいなかった。
まあ少し世話を焼けば、囮や壁程度でも役立つことがあるだろうと思い直すことにした。
━━━━
さて、この場においてサーヴァントを従えていない一般人の慎二は完全に無力だ。
慎二は聖杯戦争の最中、突然この殺し合いの場に転送されてきてしまった。
名簿を見たところ、忌まわしい衛宮、セイバーに桜も参加していると来た。
自身の従えるサーヴァント、ライダーさえいればなんとかなるかもしれないとの希望は、
支給品の中に偽臣の書がなく、
参加者にセイバーは書かれているのにライダーがいない事で完全に打ち砕かれる。
これだけでも戦って勝つのは不可能に近い。
さらにあの大勢の中に、複数の異能を持つ参加者までいるとなると勝ち残るのは絶望的だ。
慎二の選択した行動は逃避であった。
とにかく死にたくないので町中で隠れやすい場所を見つけて、
他の参加者から発見されることがないよう隠れる。
そうしてからその後どうするかを考えよう。
出来れば外の様子を伺えるところがいい。
衛宮のようなお人好しなら今までの事を謝り頼ってしまえば、
一般人の自分を殺し合いに積極的な奴らから守ってくれる可能性も高いだろう。
そのようなお人好しの参加者を見つけて、とにかく長く生き残れる可能性を上げたい。
そうしてビクビク怯えながら隠れる場所を探し町中を歩いていたのだ。
━━━━
ルーラは組んでいる味方のいない最初は、自分で少しリスクを背負わなければならない。
建物の屋根の上に登り、相手の動きを観察する。
相手は街の構造など把握しておらず、闇雲に周りを見ながら道を歩いているだけである。
もちろん屋根の上などに注意を払ってはいないようだ。
ルーラは上から見ているので、道の構造は容易に把握出来る。
そして、相手が袋小路の突き当りに入ってしまった瞬間、ルーラは後ろに飛び降りた。
「ルーラの名の下に命じる。貴様はその場で身動きするな」
慎二は何かが後ろに落ちた音に驚き振り返る。
だがその時にはすべてが終わってしまっていた。
マントの付いたフリフリの服、キラキラした髪飾りの少女。ステッキをこちらに向けている。
そして自分は体の身動きが全く取れない。
まずい。魔眼の類か。
自分なりに警戒はしていたが、まさか上から来るとは思わず反応できなかった。
もうだめだ。このまま殺されるんだ。
慎二は命乞いの準備を始めようとした。ところが。
「少し聞きたいことがあるんだけど、
あんたこの殺し合いには乗るつもり?」
少女は殺し合いに乗っているか聞いてきた。
これはどういうことだ。
もしかしたらこの少女、衛宮と同じようなお人好しで、
殺し合いに乗っていない者を保護して、
乗っている者を排除しようとしてるんじゃないだろうか。
「殺し合いになんて乗ろうなんて考えてません!
だからどうか見逃してください!」
ルーラはなるほど最初の印象と同じだと思う。
この状況においてもとにかく強者に媚びて生き延びたいだけの奴だ。
最後の一人になるまで殺し合わなければならないという趣旨上、
媚びるだけでは結局最後は死ぬことになるのだろうに、何を無駄なことをしようというのだ。
まあいきなり私に主導権を握られた以上、逃げの思考が強くなるのは仕方ない。
もう少し問いただしてみよう。
「なるほど、それはそれはあんたの本心?
もう少し詳しく説明しなさいな」
「ぼ、僕なんかがこの殺し合いで優勝できるわけない。
それなら生き残るためには、
貴方のような強くて殺し合いに乗ろうとしてない人に保護してもらう。
そして多人数で力を合わせ殺し合いからの脱出を目指していく。
そっちの方がまだ望みがありそうだと思ったんだ!」
「はあ? 私が殺し合いに乗ってない?」
ルーラは誤解されていると理解した。
殺し合いに乗った人物は、いきなり殺しにかかる奴ばかりだと思ってるのだろうか。
まあこの状況でそこまで考えられないのは仕方ない。
それより注目すべきは相手の発言である。
脱出を目指すのは仕方なく選ぶ方法だとでも言う感じだ。
つまり、もしかするとこいつは優勝を目指したいけど諦めているのではないだろうか。
少し焚き付ければやる気を出してくれるかもしれない。
「貴方、実は優勝して叶えたい願いがあるんじゃあない? それなら……」
「私と優勝を目指して組んでみない?」
まさかの提案に目を見開き驚く慎二。
慎二には確かに願いはある。
聖杯戦争で優勝できたら叶えたかった願い。
自分が魔術師の戦いの中でも勝てることを証明し、爺や桜、さらには衛宮を見返してやる。
そして魔術回路を手に入れ、間桐の魔術師として大成したい。
「私は一人の力だけでこの殺し合いを勝ち残るのは難しいと考えている。
まあ可能性は低いけれど戦いの中で私が敗れて貴方が生き残れば、
貴方は私と戦うことなく、有利な状況で残りの殺し合いを戦うこともできる。
力のないあんたにとって、良い提案だと思うけれど?」
慎二の心が揺れ動く。
組んだとしても、一般人の慎二が優勝できるかどうかは非常に分の悪い賭けであろう。
参加者がかなり減った段階でルーラが相打ちのような形で負けてくれることを祈るか、
さもなくば裏をかいて倒さなければならないのだ。
でもよく考えれば、聖杯戦争だって魔術師のマスターの中で一般人の慎二は優勝を目指した。
リスクはより大きいが、こんな殺し合いに巻き込まれた時点で大きなマイナスとなっているのだ。
それならば優勝を目指した方が納得できる結果になるかもしれない。
そして何よりこの提案に乗らなければ、その後どのような目に合わされるか分かったものではない。
慎二は決断した。
「……わかった。この殺し合いの優勝を目指して、同盟を組もう」
「理解してくれて助かる。私の名前はルーラ。よろしくね」
「間桐慎二だ。これからよろしく」
ルーラが魔法を解き、慎二が動けるようになる。
とりあえず今後の方針でも話そうとルーラは考えるが……すぐにはできないようだ。
やはり夜目が効きやすいルーラが、遠くより近づいてくるもう一人の人物を発見したのだ。
距離的に、こちらの声は慎二の命乞いくらいしか聞こえてなかっただろう。
あるいはそれを聞きつけ、他の参加者に会おうと来たのかもしれない。
相手は表情の暗い中学生くらいの少年だ。
学校の制服を着ているので学生ではあるのだろう。
ルーラはまた無警戒な奴がやってきたと思い、少しがっかりする。
まあ、無力で戦い方を分かっていない奴ほど、肉壁として同盟に引き入れやすいという考え方も無くはない。
二人は曲がり角に入り、相手から見えないようにして小声で相談する。
「あいつもあんたと同じように、動きを封じて尋問して、可能なら仲間に引き入れる」
「上手く行けば味方が増えるってことか。とっても頼もしいな。
ルーラが頑張れば僕は役に立たなそうだから、ここらへんで待ってればいいのかい?」
「何言ってんの? あんたも協力するのよバカ。
あの子も今のところ戦う腹積もりを決めてない感じだし、油断させて近づいて取り押さえなさいな。
暴れるかもしれないけど、すぐに私の魔法で完全に動きを封じるから。
大きな怪我の心配はない」
「はあ!? 何もわかってない相手にいきなりそんな危険を冒せって!?」
「こっちが"はあ?"って言いたいぞこのグズ。
せっかく同盟を組んだのに、少しは役立ちたいとかそういう気持ちがないわけ?」
「わかったよ! やるよやるよ!」
いきなり知らない相手にそんなことを仕掛けるのはちょっと弱気になる。
しかしせっかくの同盟相手なのに、ここでいきなり反抗するわけにもいかない。
慎二は覚悟を決めて接触を計りに行った。
━━━━
キリヤはプリキュア達との決戦に向けて、河川敷に向かっていたところだった。
だが、急に耐え難い眠気に襲われ、目が冷めたときには謎の会場。
そして説明を聞くままにしていると、目が覚めたときは町中であった。
キリヤは取り敢えず自分が殺し合いの場に呼ばれたことは理解した。
そして生き残った一人には願いを叶える権利が与えられることも。
何が何でも優勝し、ジャアクキングにプリズムストーンを献上するために願いを使うのが、
この場でのダークファイブとしての自分の使命なのだろう。
しかしキリヤはプリキュアに近づくため学校に潜入している中で知ってしまった。
虹の園の人間たちの暖かさ。学校、雪城ほのかと過ごした時間の楽しさ。
この殺し合いは大勢の参加者がいる。恐らくみんな虹の園の人間たちだ。
それだけの命を奪って優勝するのは、自分が本当に望むことなのか。
プリキュア達との決闘も、他の人間を巻き込まないような場所や時間を指定していたほどである。
キリヤはこの殺し合いの中でどのように行動するか悩んでいる。
人間の声が聞こえた。男のようだ。
方針がまだ固まらないが、取り敢えず接触してみたい。
そして今後の方針を考える参考にしたい。
キリヤは人間の入沢キリヤの姿で、声の方向に向かう。
曲がり角の手前にて二人は接触した。
お互い身構えるも、キリヤは相手が無力そうだと思いすぐに警戒を解く。
慎二も戦意がないことを示すため手を広げて振る。
「ふう。君が戦意の無さそうな相手で良かった。
さっき他の参加者と接触したばっかりなんだ。
なんとか見逃してもらえたけどね」
「はあ」
「僕は間桐慎二。よろしく」
「……入沢キリヤといいます」
「君、まだ現状をよく把握できてないだろう?
僕もなんだ。もしよければ一緒に支給品を出して確認しないか?」
「いいですよ。ここで初めて逢った人が話のできる人でよかったです」
キリヤはデイパックを降ろす。
間桐慎二がキリヤに近づく。
「取り敢えず中身を出してみよう。
……暗くてよく見えないな。もう少し近くに寄ってみるかな」
距離が徐々に縮まる。
腕を伸ばせば触れそうなくらいまで近づいた。
慎二はこれなら何とかなりそうだと覚悟を決め、動く。
「今だ!」
キリヤが視線を下にした隙に、慎二がキリヤを羽交い締めにする。
そして慎二の合図と共にルーラが曲がり角の死角から姿を表し、キリヤに王笏を向けた。
「ルーラの名の下に命じる。貴様はその場で身動きするな」
……しかし、キリヤは何が起きたのかと首を動かしている。
「魔法が発動していない……! なぜ?!」
「何やってるんだ! ルーラ!」
何らかの攻撃をされたが発動しなかったようだと感じたキリヤ。
相手がこちらに敵対していると断定し、戦闘に移ることを決意した。
姿が中学生入澤キリヤのものから、ダークファイブの一員キリヤのものへ直ぐに変化した。
「なっ…!?」
慎二は驚いて拘束を緩めてしまう。
すぐ様、猛烈な力でキリヤは慎二を振り解いた。
「うわあっ!」
慎二はその勢いに尻餅をついて転んでしまう。
「こんな変身後の姿って……」
ルーラは言葉をすべて紡ぐことができない。
即座に戦闘態勢となったキリヤの手から衝撃波が放たれ、ルーラを襲ったからだ。
ルーラは躱そうとしたが、魔法が発動しなかったショックにより反応が遅れた。
それでもただの掌打ならばぎりぎり躱すことが出来ただろう。
衝撃波が付いてくるのは予想外であった。
「ぇぐっ!」
衝撃波により弾き飛ばされるルーラ。
大きな音ともに地面を転がってしまう。
手を付くがまだ立ち上がることができない。
「くそっ! 一体どういうことだよ!」
慎二がキリヤの後ろで悪態をつく。
キリヤは自分の葛藤とは関係なく、いきなり襲ってきたこの二人の人間に怒りを感じた。
女の方はそこまでダメージを受けていないように感じ、
こいつは一般人ではないと直感する。
高校生くらいの男は無視し、この女を先に片付けようと、ルーラの方へ走り寄る。
しかし二発目の衝撃波を発する前に、後ろから何かが投げられて来たのに気づく。
爆弾の類だろうかと思い当たるキリヤ。
仲間を巻き添えにする気かと驚くも、姿勢を低くし被弾面積を小さくし、
サッカーのようにそのまま冷静に蹴り返そうとした。
もし爆発しても、ダークファイブの自分ならば防御ができれば大きなダメージにならないと思った。
だが__
蹴り返すには一手遅く、爆発音とともに予想外の強烈な光がキリヤを襲う。
爆弾は爆発によるダメージを狙ったものでなく、
爆発音と閃光でキリヤの動きを妨害するためのものであった。
月明かりの下で瞳孔は暗所適応しており、閃光で大きなダメージを負ってしまった。
ルーラはそこまでダメージを負っていない。
爆発の前に慎二はキリヤの後ろからルーラに対して、
目と耳を防護するようジェスチャーを送ってから目を背けたのだ。
ルーラは爆発の寸前に目を爆発から背け耳を覆い、
また魔法少女としての身体能力により至近距離でもダメージを免れたのである。
だが、超人的な存在であるキリヤはそれでも気絶には至らなかった。
「ちくしょう! よくもやってくれたな!」
視覚と聴覚が奪われ立ち上がることもできないが、その状態でやぶれかぶれに攻撃しようと、
周囲の様々な方向に衝撃波を放ってきている。
「ルーラ!」
慎二が衝撃波をくらわないであろう、建築物の影になる側からルーラを呼ぶ。
「もっと急げよ! こっちはすぐにでも逃げたいくらいなんだぞ!」
この状況で打算の関係といえども仲間を手に入れた慎二。
おそらくこんな美味い状況はないだろう、
手放すものか、また後で見捨てられてはたまらないと必死である。
「あいつの攻撃に気を配りながらだとこれが精一杯よ!」
先ほどダメージを負ったばかりで、
さらに魔法少女の中では戦闘が得意な方ではないルーラは
、
なかなか慎二の方へ向かう事ができない。
その間に感覚が徐々に復活してしまったようだ。
攻撃が少し止んだと思ったところで、キリヤが立ち上かってしまっていた。
だが、慎二が聴覚にダメージを受けた相手にも伝わるよう大声で叫び割り込んだ。
「ま、待てよ! あんたは殺し合いに積極的なんだろ!」
まさか相手が語りかけてくると思っていなかったキリヤ。
動きを止めて素の反応を返してしまう。
怒りに任せ戦闘を行ったことで、ダークファイブとして願いを叶える方向性に感情が傾いている。
「別に? それがどうかしたんですか?
これから貴方達は僕に殺されるんだ。優勝して願いを叶えてもらうためにね」
慎二は、相手が最初人間の姿をしていたことから、
人間らしい性質があるか、あるいは人を騙そうとするだけの考えが出来ると信じ対話を試みた。
また、ルーラは一撃目でしばらく動けないダメージとなっているのに、
躊躇なく追撃を入れようとしたことから相手は殺し合いに積極的と読んだ。
「話が通じると信じて言わせてもらう!
こちらも殺し合いには乗っていて2人でチームを組んでいる!
参加者の中には自分たちと同格か、それ以上に強い相手もいると考えているからだ」
慎二の考えを理解したルーラが続ける。
「それに……このままだと死闘になって勝った方も大きなダメージを受ける!
それは今後の殺し合いを戦うには不都合なはず! わかってくれる!?」
「そうだ! だから殺し合いに乗っている者同士、ここは一度戦うのをやめないか!」
「格上の相手を確実に排除できるまで……ね」
慎二はスタングレネードをすぐに投げられるよう信管に手を掛けているが、
真正面から投げれば恐らく今度は通用しないだろう。
二人は相手が話を聞いて戦闘を回避してくれることに賭けた。
キリヤは考えを巡らす。
相手の先制攻撃は発動しなかったようだが、
先程の自分の攻撃のダメージを受けていながら既に動けているところを見るに、
体術もそれなりに強いはずだ。
さらなる隠し玉の必殺技を持っている可能性もある。
もう一方は一般人のようだが武器を使いこなしてきている。
総合すると、このまま戦うと死闘となるのは確かなのだろう。
協力して格上の相手たちと戦い、その後優勝を懸けて戦うというのも理に適ってはいる。
またキリヤは人間の中に、このように理性的に心を通わせながらも、
なおも他人を蹴落として願いを叶えようとする者がいることに感心した。
自分の今まで見てきた人間の姿は一面でしかなかったのだろう。
それを気づかせてくれた相手をここで倒してしまうのもちょっと惜しい。
「いいでしょう。ここは貴方達の提案に乗って戦いはやめましょう」
ルーラと慎二はまだ警戒は解かないが、ほっと胸を撫で下ろした。
だが慎二は思う。ここまで来たならもう一歩踏み込みたい。本番はこれからだ。
「さっきの通り、君と僕たちの強さは拮抗しているんだ!
ここにいる僕らがさらに組めば、より確実に格上の相手にも勝つことが出来るはずだと思わないか!?
急なことで信頼できないかもしれないが、僕らも人数が減るまで生き残るために必死なんだ!
同盟の提案を聞いてもらえないだろうか?」
ルーラは慎二の胆力に感心する。
臆病なヘタレだけれど、環境さえ整えれば頭は回るようだ。
短い間だが、しっかり指導すればさらに化けるかもしれない。
さっきまで戦っていたのに何を言い出すのかとキリヤは思った。
でも、この今まで会った人間とは違うタイプの二人ともっと色々話してみたい。
そして、この場には優勝して願いを叶えようとする人間はきっと他にもいる。
それぞれの願いは相容れず、殺し合いがどうしても起きるだろう。
やがてはそのうちの誰かが生き残るのだ。
それなら、自分もその中で自分の願いを掛けて戦う権利がある。
他の人間に願いを叶えさせるくらいなら、ジャアクキング様の為に戦って使命を果たしたい。
あやふやながらも、キリヤの優勝に対する決意が定まった。
そういえば雪城ほのかは自分に協力することの大事さを語っていた。
ほのかの望んでいる方向性とは違うのだろうけれどと、苦笑とも嘲笑ともつかない笑みが出る。
「戦ってすぐの相手に協力を頼み込む……
いかにも人間らしい発想ですね。
でも、あなた達の考えるところは理解しました。
僕もあなた達と組んで戦って、優勝を目指すことにしましょう」
こうして、殺し合いに乗った三人の同盟が結成されたのである。
━━━━
三人はとりあえず更に他の参加者に割り込まれる前に話そうと、近くの適当な小寺院に入った。
寺院なら参拝者のために鍵を掛けず開放されてるだろうし、
適当な広さもあり落ち着いて話すのに丁度よいだろうとルーラが提案したのである。
「さっきの事だけど、あんた結構やるじゃない。
実は最初は、役に立たなそうだからとっとと殺してしまおうかとも考えてたのよ」
「ひいっ! そんなことわざわざ言わないでくれよ!」
「いちいちビビるとか、あんたバカ?」
キリヤは外見が一番年上の慎二が自分やルーラに怯えるのを見ていると、
ダークファイブの上下関係と全然違うななどと想像し、静かに笑いを漏らした。
そんな和やかな雰囲気で、三人が情報交換を始める。
━━━━
ルーラが思う。
キリヤと名乗る少年は目の前で変身してこちらを襲ってみせた。
橙のシャツに短パンで、皮膚の色が暗く眉毛のない姿が魔法少女としての姿だとでも言うのか。
今まで出会った魔法少女は例外なく女性型の姿であったし、
ゲームのアバターが反映されるという点から見てもこんな姿はありえないのではと思う。
だが、魔法少女にここまで有効な攻撃をできるのは魔法少女だけのはずだ。
それならこの少年は何者なのかとルーラは思う。
「キリヤ、あんた一体何者?
人間から変身ができるというと魔法少女なのかとも思ったけど、
あんたがそんな存在とは思えないのだけど」
「魔法少女? それって一体何だ?
そもそも僕はこっちのほうが本当の姿で、人間としての姿は人間を騙して近づくための仮の姿だ」
「はあ? じゃあ何なのよ」
「僕は闇の世界ドツクゾーンの住人で、ジャアクキング様に仕えるダークファイブの一員だ」
「はあ?」
「へ?」
ルーラと慎二は、中学生の子供が考えそうな設定だ等と一瞬想像した。
だがキリヤという存在は実際に人外の存在のようであり、変身も見せているのである。
「そもそも人間たちを脅かす異界の存在、ザケンナーやダークファイブと、
プリキュアが戦っているというのはちゃんと理解しているのか?」
「いやいや聞いたこともない単語ばかりなんですけど?
それに僕も魔法少女というものはさっぱりわからないのだけれど」
「……それについても詳しく聞かせなさい」
三人の一般常識があまりにも違いすぎる。
三人は自分たちの持っている世界の常識について議論し、細かいところも突き合わせてゆく。
その結果は……。
「なるほど、私達どうやら似ているけれど少しずつ違った、
別の世界からこの会場に連れてこられていると考えるしかないな」
三人の基礎的な常識の下で、異界の存在というものを受け入れやすかったのは幸いであった。
キリヤはドツクゾーンの他に光の園、虹の園があるようにさらに他の世界もあるものと想像した。
ルーラも、魔法の国は異世界にあるように他の異世界もあるのだと想像した。
慎二は平行世界の概念は解っているし、平行世界を司る魔法があるようなことも聞いたことがある。
三人は様々な異世界から参加者が集められていることを理解した。
「主催者はそこまでして、僕達に殺し合いをさせようというのでしょうか?」
「まあそれはそれで、そこまで強大な力を持つなら、
"何でも"一つ願いを叶えるという主催者の言も信憑性が高くなると思うけれどな」
━━━━
昔は魔法少女の同盟のリーダーであったルーラが話を先導し話題を出す。
「別の参加者に出会った時の方針はどうしようか? ある程度考えてはいるのだけど」
「名簿の衛宮士郎、間桐桜は出来れば最期だけは自分の手で止めを刺し決着をつけたい」
慎二がとりあえず真っ先に自分の意見を出した。
ルーラは個別の参加者ではなく、知り合いでない参加者の場合を考えていたので話の腰を折られた。
「そういう話じゃないんだけれど……まあいいわ、間桐桜は貴方のお身内?」
「まあそんなところさ」
「血縁者とも殺し合わないといけないなんて酷い話ね。
手を掛ける覚悟は出来てるの?」
「こっちにもいろいろ事情があるんでね。心配の必要はない」
桜は間桐家にとってどうしても必要な存在ではある。
それでも慎二がこの殺し合いで優勝して、間桐の魔術師として成功できればその必要はなくなる。
「それなら僕も」
慎二に従いキリヤが意見を出した。
「美墨なぎさ、雪城ほのかの2人は因縁のある相手なんです。
接触出来たら、闘うのは僕一人に譲ってください」
「なんだって!? まさか負けたりしないよな!?
同盟から一人でも欠けたら僕は死活問題なんだぞ!」
「私もそんな感情勝ち抜くためには無駄なものと思うけれどね、
まあ出来る限り考慮してあげる。
ただし、状況が悪そうなら因縁とか無視して助太刀したり見捨てることは承知しておいてね」
「わかりました。協力するということはそれが自然なことなんでしょう。
でも二人との戦いは僕の宿命なんだ。
決戦の約束を守れず皆がここに連れてこられてしまったけれど。
もし戦いになった時、助太刀に入るのは二人が僕に本気でとどめを刺そうとした時だけ。
そういう位で納得していただけませんか?」
「しょうがないわね……。そういうことにしておいてやるわ」
ルーラはキリヤが自分に安々従ってくれる人間だと思っていない。
よってこの場で妥協点も出してくれたキリヤの意見を尊重した。
「ぜ、絶対に助けに入る前に死んだりするなよ!」
慎二は格上である二人の意見を聞かざるを得なかった。
「私も恨みのある相手はいる。スイムスイムという魔法少女。
遭ったら私を裏切って殺した理由くらいは聞いてやろうかしら。
もう一人はカラミティ・メアリ。彼女も魔法少女。
過去に受けた屈辱をこの会場で返してやりたいところね」
二人に影響されてか知らず、ルーラもここに来ている元同盟相手のことも少し気になった。
恨む気持ちだけでなく、自分を脱落させてその後あいつらどうするんだと心配する気持ちも少しあった。
名簿を見たときに見つけたスイムスイムの名。
おそらく彼女も自分が脱落した後に連れてこられたのだろう。
同盟の二人が連れてこられた瞬間は特に死亡時などではなかったようなので、
スイムスイムも脱落してから連れてこられたのか、途中で連れてこられたのかは不明である。
そうなると残された奴ら、天使二人は能力があまり戦闘向きでなく考えが浅いし、
たまは能力は強いが頭が悪く、やはり誰かと組まないと実力を発揮しにくい。
恐らくお人好しの誰かに助けられでもしない限り全滅してしまっているだろう。
ルーラは元同盟相手たちの行く末を想像し哀れんだところで、話の趣旨を元に戻す。
「個別じゃなくて、様々な考えの参加者に出会った時の方針を話したいのだけれど?
それくらい理解できなかったの?」
「うっ、そういうことだったんだな……。
さっき言った衛宮士郎は正義の味方を気取っているようなお人好しだ。
おそらくこの殺し合いの中でも出来るだけ人を助けて、脱出する道を探しているだろうな」
「エリア外への脱出や主催者への反抗は首輪が爆破されると
ルールに書かれているのに、
ルールに逆らうことをしようとするバカな奴ね。
まあどの程度で主催者への反抗と見做されるかわからない以上、
すぐに首輪が爆破されず生き残っている可能性も充分ある」
「それなら僕の知り合いの二人も、人々を助けるために悪と戦っている。
きっと主催者を打ち倒すことを考えるでしょう」
「私もスノーホワイトやラ・ピュセルは、
積極的に殺し合いに乗るタイプではないと思っている」
「なるほど、他にも脱出を目指すような参加者が存在していそうだな」
「殺し合いに勝ち抜くためには、他の参加者の情報はとても大事。
能力がわかれば対策が立てられるからね。
おそらく脱出を目指すような奴らは、
殺し合いに乗りそうな危険人物の情報も積極的に共有するはず。
だから、明らかに危険な雰囲気の奴以外は最初は友好的に接触して情報を得ながら相手の参加姿勢を見極める」
「でもこちらの知り合いでなくとも、伝聞でこちらに危険人物がいると知っている可能性もあるだろ。
油断はしないほうがいいかな」
慎二は自分のリスクをできるだけ減らしたいため、危ない点などに良く気づき反応してくれるようだ。
「とはいってもこっちの全員が危険人物とばれてることは考えにくいし、
主催者が気に入らないとか、理由を付ければ殺し合いに乗っていないと騙せるんじゃないでしょうか」
「でも一度警戒されたら、重要な情報を話してくれるとは考えにくい。
相手がこちらの素性を知っていて警戒してくるようなら、腹芸もそこそこに隙をついて倒す」
ルーラが話を纏める。
「それはいいとして、殺し合いに乗った危険な奴を見つけたときはどうするんだよ?」
慎二がまた別のスタイルの参加者と出会った時の話を挙げる。
一番無力な慎二が心配するのも無理はない。
「できる限り無視するのが良い。
放っておけば他の参加者を消してくれるありがたい存在だからね。
ただあまりにも強そうな場合は、更に他の参加者の支給品を奪って手がつけられなくなる恐れもある。
そういう奴は早めに消しておくべき」
「わかりました。
強そうなやつと戦う時は三人で協力し、全力を尽くしましょう」
「さっきのカラミティ・メアリは、平気な顔してその時の気分で人間を殺せるクズ。
おそらく積極的に殺し合いに乗るはず。
彼女はあらゆる武器を強化できる魔法を持っている強敵だし、
出会ったら確実に排除したい」
━━━━
情報交換はある程度終わり、それぞれ休憩を始めた。
さて、ルーラは自分の魔法がキリヤに効かなかったことを考察した。
キリヤが魔法の通用しない存在であるのか。
あるいは自分の魔法の使用に制限が掛けられているか。
最初に見せしめとして殺された魔法少女には、
不死の魔法に制限が掛かっていたということを考えると、
こちらの可能性が高そうだ。
魔法少女以外の存在もいるこの殺し合いでは、自分の魔法は強すぎるので制限の対象という事か。
今後のために、どのような制限がかけられているか調べる必要がある。
だが、この二人に弱点を漏らすわけにはいかない。
最終的に同盟を組んだ相手をも出し抜き勝利しなければならないのだ。
出来る限り謎を持たせておきながら、制限を検証する方法を考えなければならない。
特にキリヤは今まで自分が組んできた相手と違い、同格レベルではないかとも思っている。
それでも魔法の制限さえしっかり把握して策を寝れば、勝てる相手ではあるはずだ。
キリヤは人間でない存在で、人間の思考に興味を持っている。
そこをよく掘り下げれば隙が見えるはず。
二人を育てる、でも最後には殺さなければならないと矛盾した思いを抱えるルーラ。
それぞれの叶えたい願いは違うが、目指す方向は一つだ。
【G-1/町 深夜】
【ルーラ@魔法少女育成計画】
[状態]:健康、全身に軽い打撲
[装備]:王笏@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考・行動]
基本方針:優勝して魔法少女として再起する
1:慎二、キリヤと共に行動。リーダー的立場になりたい
2:対主催は情報を得てから倒す。マーダーは放置、強マーダーは倒す
3:魔法に付けられた制限を把握したい
4:スイムスイムと遭ったら裏切った理由を聞きたい
※参戦時期は本編で死亡後。
※魔法の詳しい制限に関しては次以降に任せます。
※魔法少女の回復力の制限も次以降に任せます。
【間桐慎二@Fate/stay night [Heaven's Feel]】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、スタングレネード×4@魔法少女育成計画、ランダム支給品×0~2
[思考・行動]
基本方針:生き延びたい。出来ることなら優勝して周りの人間を見返してやる
1:ルーラ、キリヤと共に行動。見捨てられないよう頑張る
2:衛宮、桜を見返してやる。できれば自分の手で倒したい
※参戦時期は次以降にお任せします。
【キリヤ@ふたりはプリキュア】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考・行動]
基本方針:優勝して願いを使い、ジャアクキングにプリズムストーンを捧げる
1:ルーラ、慎二とともに行動。協力し合ってみる
2:殺し合いに乗っている人間の思考に興味
3:プリキュアと会えたら、決戦の約束を果たす
※参戦時期は21話、プリキュアとの決戦前。
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| ルーラ |
:[[]] |
| 間桐慎二 |
:[[]] |
| キリヤ |
:[[]] |
最終更新:2019年05月15日 05:21