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ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw

多くの観客席に囲まれた広い舞台で、前頭部の禿げた男が聖母マリアへの祈りの歌を熱唱している。
観客は誰もいないのに誰に向けて歌っているのだろうか。
殺し合いを強制されてしまう参加者たちへの祈りの歌だろうか。
そんなことをこの男が考えているかは定かではない。


ゲイツは多人数の殺し合いという非常な状況に巻き込まれて、狂った精神はその状況で昂ぶっていた。
歌で感情を発散し少し落ち着くと、舞台から降りて観客席の一つに座った。
このイカれた状況にもいち早く適応し、すぐに所持品や名簿の確認を済ませ現状の考察に移る。

━━━━

そもそも自分は王芳を始末しに行った際、乱入してきたAS、
アーバレストのラムダ・ドライバによって機体を完全に破壊され死んだはずである。
死を免れ失神していたのを回収されて、このイベントに連れてこられてしまったということかと思い至る。

アレクシスは異能を持っている参加者もいると語っていたが、
せいぜい異能と言って思いつくのはウィスパード程度のものである。
スタンドやペルソナなど聞いたこともないし、
見せしめとなった参加者の何をやっても死なない再生能力など常識では考えられることではない。
とはいってもあの場面で主催者が嘘をつく理由も思いつかない。
しかし情報がまだ少なく、今後どんな異能とやらが存在するのかハッタリなのかを見極めなければいけない。
もしや死の直前、何らかの異能で救出されてここに連れてこられたという可能性も頭の隅に置いた。

さて、ゲイツはこのような大イベントを起こしそうな組織はアマルガム以外に知らない。
アレクシスという奴や他の主催メンバーがアマルガムの関係者である可能性はある。
だが自分に伝えられた情報が何も無い状況では、アマルガムのメンバーとしての義理で動いてやる筋合いもない。
ゲイツは自分の好きなように動かせてもらい、このイベントを最大限楽しむことに決めた。

━━━━

ゲイツはそんなところで歌唱に釣られてか、近くに寄ってきた別の参加者を見つけたのである。
犬のような耳と尾をつけた少女であるが、耳は垂れ、尾は股の間に挟んでいて怯えた雰囲気だ。
主催者や他の参加者に関する情報は持っていて損はない。
接触して自分のペースに引き込み情報を頂こうと考える。
いきなりビビらせてやっても良いのだが、せっかくの初接触の参加者だし覇気がまるで感じられない。
というわけで、カッとして殺さなくていいように、反抗的な奴でなければいいな等と思いながら、
ゲイツは最初は穏健な接触を選択した。

「おーい、そこの子猫ちゃん、いや子犬ちゃん?」

犬耳少女がゲイツの方を向く。どうやら気づいてくれたようだ。

「あ、あなた、ヒトですよね……」

「ああ?」

「こ、怖かったあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ああ?一体なんだってんだ!?」

少女は獣のような猛スピードでゲイツに駆け寄り飛びついてくる。
ゲイツは驚きはするが、穏健に接触するためとりあえず少女を受け止める。

━━━━

「あなたはジャパリパークに来たことがないヒトなんですね」

会場で初めて話す人間に対して、
ゲイツが喋らせるまでもなくイエイヌは喜んで知っている限りの情報を話した。
自分はジャパリパークにあるお家に住んでいるイエイヌのフレンズであること。
ジャパリパークはサンドスターの影響によって、
動物たちがフレンズ化して人のような姿となった動物園であること。
ジャパリパークはヒトが来なくなって久しく、
むかし多くの人たちと遊んだお家でずっとヒトが来るのを待っていたこと。

そこに久しぶりに会えたキュルルというヒトとお家で遊んだこと。
でも自分はキュルルのそばにいるには力不足で、
キュルル自身の家を見つけて欲しいと別れて見送ったこと。
イエイヌも元のお家に帰ってまた新たな人間を待つことにしたのだが、
その後寝ている間に連れてこられたという。

たくさんの人間が集まった状況に困惑と喜びを感じるも、
すぐさま人間の死というものを初めて目撃し転送後は森で怯えていた。
そこにゲイツの熱唱が聞こえたため、
他の誰かに会いたい一心で怯えながらも接近してきたわけである。

ゲイツは自分の情報は名前程度しか伝えていないし、伝える必要もなかった。


さて、こいつは自分の名前はイエイヌだと動物の名前を言い、
自分の全く知らないような世界の話をするのである。
アマルガム幹部である自分の情報網を流用して、
可愛い動物の情報も世界中から収集しているはずである。
だが、ジャパリパークやサンドスターなどという存在をゲイツは全く知らなかった。

妄想をこじらせた子供の発言か、
あるいはそういう設定の風俗嬢か何かなのかという可能性も考えた。
しかし耳や尾は感情に合わせよく動き、ただの飾りではないようだ。
またオッドアイもカラコンなどではなく地の物のようであり、人工的ならば手が込み過ぎである。
自分も知らない機密の存在する可能性にゲイツは少し興奮を感じた。

そういえば名簿に関する情報を全く聞いていない。
怯えて所持品の確認もしていなかったのかと思い、
ゲイツは自分の所持品から名簿を取り出し見るように促した。

「あんた、もしかして支給品をまだ確認してないだろ? ここに思い当たる奴がいないか見てみろよ」

「これは、どのようなことが書いてあるんですか?」

「はぁ? まさか字が読めないのかあんたぁ?」

無学さにイラッとするがそこはまだ堪えてやる。

「ああっ、すみません。私はイエイヌのフレンズなので、文字を読むのは苦手なんです」

まあ世界の識字率から考えれば、読めないやつなんていくらでもいる。
それにしてはちゃんとした教育を受けてそうな小奇麗な格好だが。

「ちっ、私の読みでは知り合いの名前が近くに集まっている可能性が高い、
 あんたの名前の周りの名前を言ってやろう」

「伊集院隼人、キュルル……はさっき言ってたな、G・ロードランナー、雨宮蓮、明智五郎」

「キュルルさんが来てるんですね!」

「G・ロードランナーもきっとフレンズの仲間です!
 もし会えたら、フレンズ同士得意なことを活かして協力できるはずです!」

「なるほど、やはり知り合いの名前は纏まって集められているようだ」

「他の人たちはわからないです。お役に立てずすみません……」

イエイヌが謝るが、ゲイツは気にしていない。
だがイエイヌは名簿を見ることで、多くの人たちが巻き込まれていることを実感する。

「こんなところに急に連れてこられて、きっとみんな怖いはずです」

「皆を元のお家へ帰らせてあげなきゃいけないのです」

まあ自分はそうじゃない方の人間なんだがなとゲイツは思う。
名簿に載っている自分の知る参加者たちはどうしているだろうか。
相良宗介、千鳥かなめ、テレサ・テスタロッサは自分に敵対する側の人間だ。
出来るだけ殺しはせず主催者を打倒するとか、正義じみたことをしようとするのだろう。
恨みはあるが、まずは有利に動ける状況を作ることの方が先だ。同じ失敗はしない。

元同僚のガウルンはアマルガムを抜けた後死んだはずだが奴のことだ、
実は生きていたとか言い出すのかもしれない。
もしくは、想像でしかないがやはり何らかの異能により延命されているのかもしれない。
異能について考えたところで、ゲイツはふと先ほど全く役立たなかった支給品のことを思い出した。

「あんたイヌなんだってぇ? それならこれを使ってみろよ? ドロンパっ!」

ゲイツがデイパックから取り出し投げた葉は、イエイヌの額にぺちゃっとくっついた。

「ドロン葉ってのがこのチンケな葉の名前だそうだ、
 身に着けると幻覚を見せることができるようになるらしい」

「が、私が使っても何も起きん。イヌ科しか使えないらしい。
 使えないものを配るなんてバカにしやがってぇ!」

ゲイツは自分で試しても何も起こらなかったことにちょーっとムカついてはいた。
しかし自分では効果が実感出来ない類のものかもしれないと思い、
捨てずに取っておいたのである。

「わ、私に使わせてくれるんですね、ありがとうございます!」

「ゲイツさんの期待に応えて見せます!」

イエイヌは目を閉じ精神を集中させる。

「キュルルさん……キュルルさん……」

ドロンという音とともにイエイヌが煙に包まれた。

「どわっ、何が起きた!?」

「わ、私は大丈夫です!」

すぐに煙が晴れると、全く別の人物がそこにいた。

「私の服が変わっています! すごいです!」

口調はイエイヌそのままであり、
ドロン葉の効果が発揮され幻影がイエイヌを別の姿に見せていることをゲイツは悟る。
ゲイツはこいつは本当に犬なのかと一瞬思うが、
それよりも目の前で起こった不可思議現象にテンションが上がる。

「耳や尾が消えて顔まで別人になってるぜ! すっごーい!」

「この服は……キュルルさんの着ていた服です!」

「動物が人になるとか子供向けの童話のようだぜ! 髪は緑で目は青くなってるな!」

「キュルルさんと同じです! つまり私はいま、キュルルさんの姿になっているわけですね!」

キュルルの姿のイエイヌは飛び跳ねて興奮している。
キュルルがどのような人柄かはわからないが、これではイエイヌが化けているとバレバレである。

「こりゃ本当にすごいな、ECSの不可視モードの応用か?」

「思考した任意のものを投影しここまで小型化しているとは、
 一体どれほどの技術提供があったんだか」

ゲイツが持っている知識から分析する。イエイヌには理解の及ばないことである。

「私、なんだか今とってもすごい事が出来てるみたいですね!
 ありがとうございます!」

「でも、せっかく獣なのに、獣だからいいのに人間になっちゃうのかよ……」

ゲイツが急に悲しがる。イエイヌに負けず感情の激しい男である。

「え、えと、すみません」

「むしろもっと動物らしい姿になってくれても! リアルな四足の子犬ちゃん!」

「と、とりあえず元に戻ってみますね」

再びドロンという音と共にイエイヌは煙に包まれ、元のイエイヌの姿に戻った。
四足ってどんな姿かイエイヌは一瞬考えたが、
よく想像できず新たに幻覚は発動しなかった。
どうやら対象をしっかり思い浮かべられないと幻覚は出せないようだ。

「ふぅ……どうやらこの葉っぱは私には使えなくて、お前には使えるものらしい。持っときな」

使った者自身にも効果を実感できることがわかり、
ゲイツは自分では使えない道具であると理解した。

「私がもらって良いんですか! あーりがとうございます!」

イエイヌは再びすごい勢いで飛び跳ねて喜んでいる。
ゲイツはここまでテンションの高い相手に若干引き気味である。

「キュルルさん、きっと無事でいてください!」

「私、この前は役に立てなかったけど、
 今度はこの葉っぱの力も使って護ってみせます!」

キュルルを護ってくれる2人は、恐らくここにはいないのだろう。
ゲイツと会って、道具だけでなく勇気も得たイエイヌは健気な決意を見せた。

__ゲイツはそんな使命感に燃えるイエイヌにちょっかいを出したくなった。

「ところで私のもう一つの支給品を見てくれ、こいつをどう思う?」

____瞬きをするような一瞬の間。
ゲイツのデイパックから短銃が出され、そのままイエイヌの頭部に向けられた。

「うわっ!」

イエイヌは咄嗟に獣のようなスピードで飛び退いた。
しかし、怯えも逃げしていない。

「ちょっとびっくりしましたけど、
 そんなに早くバッグから物を出せるなんて、とってもすごいですね!」

「……あんたさー、銃をいきなり向けられて返す反応がそれかぁ?」

ゲイツはここらで一度ビビらせて、完全に自分の支配下にしてやろうと考えたのだ。
殺し合いを回避し助け合うことなど不可能だという、
下衆た現実を突きつけ反応を楽しもうという考えもあった。
しかし、この反応にペースを乱され何だコイツと困惑した表情を見せる。

「これは銃という道具なんですね!
 使い方はよくわからないけど、この先っぽの穴から何かを発射するんでしょうか?」

イエイヌは猟犬、警察犬や軍犬としての性質の影響もあり、
銃が弾を撃ち出し攻撃する物ということは本能で理解した。
ところが犬としての本能はたったこれだけの出会いでも、
自分が撃たれるはずがないという純粋な信頼をゲイツに向けていたのである。

「ちぇっ、お前は本当に私の知るどんな人間とも違うな……」

「私はイエイヌのフレンズですから!」

━━━━

イエイヌのランダム支給品はゲイツのデイパックに収められた。
「道具を使うのは得意じゃないので、ゲイツさんに持ってもらったほうがいいと思います」
とのことらしい。

ゲイツの視点では、最初の時点では犬っぽい衣装の変人であった。
だが、あまりにも犬っぽい仕草や性格が動物性愛者でもある彼を強く惹きつけた。
ゲイツはイエイヌという存在に興味を持っていた。
またジャパリパークについて少し信じ始めていた。
さすがにこれだけ常識の違いを見せつけられては、
イエイヌが本当に人外の存在だという可能性を捨てることができなくなっていた。

ラムダ・ドライバなど今までの常識では考えられなかった技術が出てきた事もあるのだから、
サンドスターなるブラックテクノロジーが無いとも言い切れない。
イエイヌは上辺の情報しか知らないようだが、専門家ならばもっと詳しくしっかりした説明も可能かもしれない。


二人はとりあえずの指針として、トゥアハー・デ・ダナンが停泊している西を目指している。
ミスリルの旗艦をどうやって会場に運航させて来たのか見当もつかない。
しかし主催者がわざわざ用意したのだから、利用価値はありそうだ。

艦そのものを動かすのは難しいだろうし、
根本から殺し合いのバランスを崩壊させかねないミサイル類も、
使えないよう手が加えられている可能性は高い。
それでもASや戦闘ヘリの一つでも入手できれば戦力を大きく増やせる。
最悪白兵用の武器程度でもあれば良いのだが。
先程の短銃は取り回しが良いが、実は殺傷能力のほぼない道具である。
まともな短銃は欲しい。

また、ダナンの北にあるランドマークの研究所。
文字の読めないイエイヌに地図を見せると真っ先に反応したのがここで、
イラストがジャパリパークの研究所によく似ているらしい。
建物そのものを持ってくるとは考え辛いが、
ダナンを動かせるほどの主催ならば無いとは言い切れない。
行けば科学系の物品が入手できるだろうし、
サンドスターやジャパリパークに関して何らかの手がかりもあるかもしれない。


イエイヌは自分のことを信頼しきっており、自分の言動に予想外の反応を返してくれる面白い存在だ。
ドロン葉により幻覚を操れることといい、手駒としても申し分ない。
殺し合いを理解していないという不安はあるが、まあそれは騙しながら徐々に慣れさせればいいだろう。

まあ飽きてきたらもっと過激なことを楽しんだり、邪魔になるようなら切り捨ててしまったって良い。
安全がある程度確保できたら拷問強姦だって楽しんでみたい。

キュルルとか言う奴もイエイヌの言伝てで手駒にできるかもしれないし、
目の前でどちらかを傷つけ殺し反応を見るのも良さそうだ。
どんな目に合わせてやろうか楽しみで仕方がない。

ジャパリパークには彼女と同じようなアニマルガールがたくさん住んでいるらしい。
このバトルロワイヤルから生還したら乗り込んでやるのもいいか、などとゲイツは思う。

「キュルルちゃんと遭ったら仲良くできるか心配だなぁ」

「ゲイツさんは私よりずっと賢くて面白い人です!きっと仲良くできます!」

「そーんなこと言ってくれるイエイヌちゃんはいい子だねぇ」

「えへへ」

ゲイツはイエイヌの犬耳を撫で回した。その表情はイエイヌには見えていない。


【B-7/天下一武道会場 深夜】
【ゲイツ@フルメタル・パニック】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、グローブ銃@ドラえもん、ランダム支給品×1~4
[思考・行動]
基本方針:好き勝手動きこの状況を楽しむ
1:トゥアハー・デ・ダナン、研究所を目指す
2:アニマルガールやジャパリパークに興味。とりあえずイエイヌを観察する
3:異能を持つ参加者と接触し、どのような異能が存在するか知る
4:ミスリルの連中とはまだあまり会いたくない

※参戦時期は本編で死亡後。
※名簿は近い人の名前が近くに並ぶと気付いています。
※キュルルの正確な姿を知りました。

━━━━

イエイヌはゲイツが腐った思考を巡らせていることなど思いもせず、
尻尾を千切れんばかりの勢いで振っている。
人間同士が殺し合いをするなんてことすら、ちゃんと理解できてないのだから仕方ない。
怯えていた感情も去り、アレクシスのような奴の手から人間を護る使命感に火が灯り始めている。

それは風前の灯であるかもしれない。しかし少なくとも今、彼女は幸せであった。


【B-7/天下一武道会場 深夜】
【イエイヌ@けものフレンズ2】
[状態]:健康
[装備]:ドロン葉@ドラえもん
[道具]: 基本支給品一式
[思考・行動]
基本方針:皆で協力してそれぞれのお家に帰る、人間を護る
1:ゲイツと一緒に行動する
2:キュルルや他のフレンズを探す

※参戦時期は本編終了後。
※ドロン葉の効果の制限は次の人に任せます


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最終更新:2019年05月10日 22:52