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二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw



地図のF-3、サーカス場。
背の高いサングラスをかけた男がサーカス場の外壁にもたれている。
彼の名は伊集院隼人、またの名はファルコンや海坊主とも。

隼人は考える。特にスイーパーとして依頼を受けたわけではない。
自分が気づかないうちに無理やり連れてこられたのだ。
ならばこんな殺し合いに乗ってやる義理など全く以て無い。
むしろ最初の会場にいた時、周りには小さい子供の気配も感じていた。
参加者の各々がどんな理由で連れてこられたかは分からないが、
そんな子供まで殺し合いに巻き込む主催に怒りすら感じている。

だが主催者から与えられた条件は厳しい。
ただ脱出しようとしても首輪が爆発する。
主催者に反抗しても駄目だ。
どの程度で反抗と見られるかは分からないが、本拠地に乗り込んだりはまず出来ない。
何にするにせよ首輪を外す必要がある。
だが様々な機械に触れて来た器用な隼人でも、この首輪の内部構造が分からない以上、
下手に外そうとすれば爆発するのでまだどうにも出来ないのだ。

そして今の隼人には帰らなければならない場所がある。
パートナーの美樹。二人で営む喫茶店。
もちろん彼女だって子供を含む大勢を殺して戻ってきたら隼人のことを軽侮するだろう。
だが彼女も裏の世界で生きてきたプロだ。
いずれ時間が解決して、受け入れてくれる時も来るはずだ。
長年傭兵やスイーパーをやってきた隼人には後ろ暗い過去もいくつかある。
そのような過去の一部となっていくのかもしれない。

それでも、少なくとも今は主催者の言いなりになり殺し合いに乗ってやるつもりも無い。
同じように考えて殺し合いに乗ろうとしない参加者が他にもいるはずだ。
彼らと協力して技術を結集し、何とか首輪を外す方法を探らなければならない。

とりあえずはそのために生き残ることを考えなければならない。
主催者からの支給品を確認していく隼人。
視力の弱い隼人は時間をかけ目を凝らして名簿の名前を辿っていく。
そして名簿に載っている名前の中に、自分の名前と並んでよく知る二人、
冴羽リョウと槇村香の名前を発見してしまう。

まさかあの二人もこの殺し合いに連れてこられているとは。
主催者の正体は自分たちに因縁のある相手なのだろうか。
いや70人中の3人だ。他の可能性も高そうだ。
安心できることとしては、二人とも殺し合いに乗る選択をするとは思えないことだ。
協力、保護して主催者を打倒する術を一緒に考えたい。

地図を確認すると、なんと新宿駅が島の中に存在している。
あの東京の、何度も訪れた新宿駅がこの場にあるというのか。
孤立した島だから同じ名前の別の駅の可能性もあるが……、
本当に新宿駅だとしたらあれと同じものを作ることを考えると、
主催者はどれだけの力があるのだろうか。
とりあえずは実際に訪れて確認しないことにはどうにもならないか。

そしてそれ以外の個別のもの……を確認していくことにする。
デイパックを漁ってみるとボタンのついたカプセルが2つ出てきた。
とりあえず1つ、ボタンを押して暫く待ってみる。

「うわっと!」

カプセルが音ともに割れ煙が経つ。そして手には何かを握る感触。
煙が晴れてくる。

「何だこりゃ……? 動物の手か?」

動物の手のようなものが棒の先についている。
しっかり先端には爪のようなものがついている。
慎重に触ってみたが、切れ味はしっかりしており下手に触ると指を切りそうだった。

「一応……これは武器なのか?」

個別のものは多くとも3つしか支給されないのだ。
自分にはあまり合わない気がする装備だが、貴重な武器として取っておかねばならない。

もう一つのカプセルもボタンを押してみる。
今度は目の前で出さず、押してから少し離れてみる。
出てきたのはコーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ。
コーヒー豆の袋と水もついてきた。まとめて棚に入っている。
隼人はコーヒーの袋を読んでみる。

「ルブランという喫茶店で出してるコーヒーね……。
 喫茶店員の俺にこれでコーヒーを作れってことかい」

戦いに役立たない道具であることに少し苛つくが、
まあコーヒーは心を落ち着かせ集中力を高める事もできる飲み物だ。
殺し合いに役立つ物と一応言えなくもない。
技術に少しは自信のある隼人は、いつかこのコーヒーを作ってやると決めた。

まだ支給品がないか置くまで漁ってみる。
なにか小さいものが手に触れた。取り出して見る隼人。

「これは……」



とりあえず謎の武器を持ち警戒しながら、サーカス場の周りを歩く隼人。
他の人物がいるなら接触したいが、今の状態で戦うのはまずい。感覚を研ぎ澄ます。

壁伝いに歩いていると、彼の警戒網に声が入ってきた。
プロのスイーパーや傭兵としての経験がある彼は、
会話している二人の参加者に相手より早く先に気づくことができた。
自分の音を潜め聞き耳を立ててみる隼人。
この二人は少なくとも殺し合いに積極的に乗る気はないらしい。
しかも二人とも子供と言える年齢のようだ。
本心がどうであれとりあえずこちらも殺し合いに乗る気がないと伝えれば、
友好的に接触できる可能性が高いのだ。
情報を得られる相手は非常に重要だ。
海坊主は察知されないよう、相手からも見える距離まで近づいていく。

「そこのお二人さん。
 失礼するが俺も相談に混ぜてもらいないだろうか」

二人の会話が止まり、緊張した空気となる。やがて少女の方が答える。

「失礼ですが、あなたは殺し合いに乗っていますか?
 私たちが子供という事に気付いて話しているのですよね?
 安心させるために姿を見せてください。
 一応こちらには武器もあります。
 姿を見せないようなら攻撃することも考えます」

「殺し合いに乗る気は無いんだ。安心してほしい。
 そもそも殺し合いに乗っているならお前たちを奇襲してるところさ」

サーカス場の幕の裏から隼人が姿を現す。

「うわあぁぁっ!!」

「ひゃぁぁぁっ!!」

伊集院隼人の出で立ちは恐ろしくも、奇妙であった。
身長2mを超える色黒でサングラスをかけた男が、
動物の手のようなものが棒の先についた謎の武器を持ち、
スキンヘッドに花の髪飾りをしているのだ。
出木杉は恐ろしくて手に持った手榴弾をまだ離すことが出来ない。

「あっと! 驚かせて悪い。
 さすがにこれだけ図体がでかいと驚かれても仕方ないよな……」

周りにバレバレの怪しい変装をしたことがあるように、隼人は衣装に関しては天然気味である。
花の髪飾りを付けたのも、怖い見た目をごまかし安心させようという意図でしかないのだ。
でも、そういう問題ではないというように二人は首を横に振る。

「そうか。一応信頼してくれるか。
 俺は視力が弱い代わりに他の感覚は鍛えていてな、
 君たちの会話はよく聞こえていた。
 殺し合いに乗るつもりがないと容易に判断できたさ」

「そ、そうですか……」

「伊集院隼人だ。よろしくな。
 名簿だと下の方に書かれているようだ」

隼人は本名を伝えた。
名前が伝わって困る相手はいないし、
名簿がある以上コードネームや嘘を話しても怪しまれるだけだ。

「スイーパーや傭兵としては、ファルコンや海坊主という通り名でも呼ばれている。
 まあ裏の世界も知らない子供にその名で呼ばれるのも違う気もするし、
 どう呼んでくれても構わねえよ」

傭兵という言葉を聞いて出木杉は少し身構えてしまう。
金銭のため自分に関係ない戦争に参加する戦争屋というイメージが、
現代の常識では強いので仕方ないことだ。
もちろん出木杉はそういう存在だけでなく、しっかりビジネスの礼儀を持っていたり、
戦争地帯を通過するときの護衛などをする良識のある者もいることは知識として知ってはいるが。

「スイーパーとは、始末屋ということですよね?
 法で裁けない悪人を処分したりされるのですよね」

一方テッサはミスリルに雇われに来る傭兵たちのように、
正義のために雇われ戦うということに誇りを持っている人種を想像した。
今までの態度からするに、少なくともならず者のような傭兵でないことは明らかだからだ。

「ああ。他にもボディガードみたいなこともやってるし、
 危険な依頼を受ける何でも屋みたいなもんさ。
 そっちの坊やは少し怯えてるみたいだが、
 少なくとも俺は悪事に手を貸さない程度の分別はあるつもりだ」

「わかりました。テレサ・テスタロッサと申します。
 テレサやテッサと呼んでください。
 伊集院さん、よろしくお願いします」

テッサが隼人を信用して名前を告げるのを見ると、
出木杉も続いて信用することにしたようだ。

「出木杉英才といいます。よろしくお願いします、伊集院さん」

三人は会場に来てから今までのこと、知り合いの情報なども含めて情報交換を行う。



テレサ・テスタロッサ、出木杉英才の二人が出会ったのは完全な偶然。
二人とも転移先がサーカスの観客席であったのだ。

出木杉はこんな殺し合いの場にそぐわない小学生であり、とっさに身を隠してしまう。
いくら優等生の天才小学生であろうと、こんな殺し合いの場所では最初は臆病になるのが普通だ。
そこで一応は命のやり取りの場にも場馴れしているテッサが、
出木杉に攻撃の意志がなさそうなことを見ると、戦闘の意志がないことを呼び掛けた。
テッサも怯えたい状況ではあったが流石に年下の子供をこの状況で安心させたい、
心配させるわけには行かないと気を持って頑張った。

二人である程度情報交換しその中で、
取り敢えずお互いの支給品を確認したところこのデカブツの操り人形が出てきた。
小さなボタンのついたカプセルがあり、ボタンを押すと中から突如現れたのだ。
操縦技術の分からない者でも使えるようにとの配慮か、ちゃんと解説のおまけ付きだ。

もちろん二人ともこのような巨大な操り人形など、全く知らない文化の産物だ。
これを使いこなせれば戦うための道具にもなるし、高速な移動手段にもなり得る。
ところがテッサは基本的に頭を動かす方に慣れており、
前線でこのサイズ程度のマシンを動かすことなどなかったし、
出木杉もあらゆることに秀でているといっても平和なところで暮らす小学生であり、
流石に未知の技術の産物にいきなり触れることを躊躇してしまう。
下手に扱って壊してしまっては元も子もないのだ。

テッサは双子の兄レナードのように、
ASのような人型兵器の扱いに秀でている者が使えばすぐに動かせるのかもしれないと思っていた。
でも今は敵対している兄のことを考えても仕方がない。
出木杉も同様に、そういえばあやとりの得意だったのび太ならば、
操作のコツをすぐ掴めるかもしれないのにと思っていた。

そういうことで二人はこれを使えば高速で移動できることを理解しながらも、
未だに操作方法や練習の仕方を議論しているまま先に進むことができなかったのだ。



「お前たち二人ともすごい良く出来た子供だな!
 ずっと戦いの中で生きてきた俺とは全然違うぜ!」

「きっとテッサさんの方が僕よりも頭はいいんじゃないかって思います。
 大変な殺し合いの中でも、こういう人と遇えたという事はとても嬉しいことですよ」

「いえいえ、私は半分くらいはウィスパードという特殊能力の賜物みたいなものですし。
 出木杉君だって小学生でそこまで出来るのはすごいと思いますよ」

テッサと出木杉があまりに理知的なので隼人は驚いている。
花飾りは二人の視線が痛々しいので外して、女の子のテッサに渡してある。

「すみません、お二人と話したお陰で推察がまとまってきました。
 僕はこの状況を説明できる術を持っています。
 信じられない話かもしれませんが、どうか聞いてください」

出木杉の真剣な表情に応えて、テッサと隼人も真剣に出木杉の方を向いた。

「この名簿に書かれているドラえもん。
 先程彼は僕の友人の野比のび太の一緒に暮らしている猫型ロボットだと言いましたが、
 実は22世紀の未来からタイムマシンで現代にやってきたロボットなんです」

「信じられないかもしれませんが、未来の技術が生かされている証拠は既にあります。
 この操り人形は手のひらに乗る程の小さなカプセルに収められて、
 テレサさんに支給されていたんです。
 伊集院さんももう自分の支給品で体験したかもしれませんが、
 小さなカプセルにこのような物を収める技術は僕のいた時代にはないですし、
 お二方の世界にも恐らく無いのではないでしょうか」

もちろん隼人は自分の支給品で見た経験がある。
テッサと隼人は顔を見合わせるが、
二人ともそんなテクノロジーは思い当たらないという顔である。

「ドラえもんのポケットは四次元空間となっていて、
 どんな大きなものでも幾らでも収められるんです。
 きっと似たような技術が支給品のカプセルでも使われているはずです」

二人は一応納得し、話の続きを促す。

「未来の技術を信じてもらえたところですけど、次は僕らが来た世界を考えました。
 さて、皆さんの世界にはちゃんと日本がある。
 過ごしていた時代も近いみたいです。
 しかし僕と伊集院さんの過ごしていた世界は、
 表の世界と裏の世界と考えれば同じ世界ともなんとか考えられますが、
 テレサさんの過ごしてきた世界だけが大きく異質です」

出木杉も隼人も、人型ロボット兵器が活躍する近代の戦争などというものは、
全く分からない世界の出来事だったからだ。

「テレサさんの世界は僕らの世界から分岐して急に技術の発達速度が上がったような世界、
 パラレルワールドのような別世界なんだと僕は考えてます。
 タイムマシンを使えばあらゆる時間軸から人を集めることができます。
 応用すればきっと別の世界からも人を集めてくることができます」

「……なるほど。
 少なくともテッサは別の世界の出身ってわけか」

「受け入れにくい推論でしょうが、今の状況を説明できていると思います」

「名簿に書かれているガウルン、ゲイツは私たちの宿敵だったはずの人たちです。
 でも相良さんが倒してくれて今は生きていないはず。
 ……なのにどうして名簿に名前があるのか気になっていたんですが」

「そうだな。奴らがタイムマシンで連れてこられて生存してこの場にいる可能性があるというこった。
 奴らの情報も後で教えろよ。警戒するべきだぜ」

「そうですね……。後でお伝えします」

「死んだはずの人もいるという事ですね……。
 それなら他に警戒すべきことは、知り合いと遇っても同じ時期から来たとは限らないという事です。
 タイムマシンならどの時代からも人を連れてこられますから」

「ああ。俺に目の傷を負わせた時のリョウだったりしたら目も当てられねぇぜ」

「もう一つ、彼はどこでもドアという道具を使っていました。
 2つの空間を接続して瞬間移動できるというものです。
 この技術を応用したと考えれば、
 この島のあり得ない建築物の配置も説明できます」

「そうですね……。私が艦長を務めるダナンをそのまま持ってくるなんて考えられません」

テッサは思う。何より地図にはテッサが艦長を務めるトゥアハー・デ・ダナンが記載されている。
本物であるとするなら、アマルガムでも何の前触れもなしにこのようなことができるとは思えない。
もちろん地図が嘘の可能性や、本物でないレプリカの可能性も考えたい。
しかし信じがたい話ではあるがこの少年、
出木杉が語る方法ならば本物を持ってくることも可能かもしれないのだ。

「主催者に関してですが、ドラえもんやのび太君の性格ではこんなことをすると到底思えません。
 ドラえもんと同じ未来の住人のうち、
 悪意のある誰かがこの自体を引き起こしていると考えることが自然でしょう。
 それならば同じ未来の出身であるドラえもんは何らかの手掛かりを持っているかもしれません」

「よし! じゃあとりあえずはそのドラえもんを探せば良さそうだな!」

とりあえず三人の行動指針の一つが決定した。

「そういえばアレクシスの野郎の言っていたスタンドやペルソナや、
 何をしても死なない再生能力とかいう異能は本当にあると思うか?
 俺は人の心を読む超能力者を見たことはあるんだが、
 さすがにそんなレベルとは次元が違うと思うんだが……」

「私がウィスパードということも、もしかしたら異能の一部として制限対象かもしれません。
 私のようなウィスパードは、急に今まで知らなかった知識をいつの間にか得ていることもあるんです。
 例えば……首輪を外す技術の知識が急に湧いてきたりしたら困るでしょうから。
 でもそうだとしたら、主催者は私達でも解明できていない、
 ウィスパードの本質というものまでをも知っていることになります。
 あまり考えたくはないですが……」

「ええ、ウィスパードというのも僕の常識からしたらすごい異能のレベルなんですよ。
 もっとすごい異能、例えばファンタジーアニメのような、
 不思議な能力を持った人たちが存在する世界もあるかもしれないということは、
 一応想定したほうが良いかもしれないと思います」



情報交換も終わったところで、隼人が最初から気になっていた巨大な操り人形の方を見る。

「ところで……その道化師みたいな操り人形、動かしてみるつもりなんだろ?」

「ええ。この操り人形……グリモルディは私の支給品で、
 足の部分を車輪のように回転させることで高速移動できるみたいなんです」

テッサは地図を広げダナンの場所を指差す。

「ここにある潜水艦トゥアハー・デ・ダナン。私のダーナ。
 その実力は一つの軍事基地と戦えるくらいです。
 殺し合いを望む参加者に悪用されないように私が向かわなければならないんです。
 地図では反対側のダナンまで歩いて移動したらかなりの時間を取ってしまいますが、
 これを使いこなすことができれば、上に乗って速くたどり着けます」

「そうだな。兵器を満載した潜水艦を放置は出来ねえ。
 最優先で対処すべきだ」

「視点も高くなるから、ドラえもんも含めて人探しをするにもちょうどいいと思うんです。
 でも僕もテレサさんもこんな操り人形、今まで触ったことも見たことすらもない。
 どうすれば操作できるようになるか相談していたんですが……」

「おいおい頭で考えてるだけじゃ何にもなんないぜお前ら。
 貸してみな、これでも手先は器用な方なんだ」

流石にテッサは慌てて静止する。

「待ってください! 説明も何も読んでないのに大丈夫ですか!?」

「車輪が付いた巨大なからくり人形だろ?
 車や戦車と動かし方はそう変わらんだろ。
 視力が弱くなってると言ったが、それでも車を運転できるくらい俺は技術があるんだぜ?」

「あっ! ちょっと待ってください!」

出木杉も止めようとするが二人の静止を聞くことなく、
隼人はグリモルディを操る糸の繋がる手袋を探し出しそのまま手にはめてしまった。
とりあえず適当に指や腕を動かすと、グリモルディもふらふらと動き手や帽子を動かしている。
しかしその揺れはだんだん大きく……。

「うわあっ! だから言ったじゃないですか!」

「……腕や手首の大きな動きだけじゃなくて、指もちゃんと使って腕先を制御してみてください!」

「テレサさん!?」

隼人が指示を聞き入れたのか、少しバランスを持ち直すグリモルディ。
しかしフラフラ揺れるのは落ち着かず、やがてそのまま前傾姿勢で盛大にずっこけてしまった。

「ああ、やっぱりだめなようですね……」

「流石に触ったばかりなのにバランスを取るのは無理でしたか……」

「……だがこれで、ずっこけたくらいじゃ壊れないことがわかっただろ?
 あとは特訓ありきだぜ。頑張ろうじゃないか」

失敗してしまってもとても前向きな隼人。
二人はその姿勢に勇気付けられていく。

「わかりました。伊集院さんが操作できるようになることに賭けましょう!
 伊集院さんが操縦の手順を掴めるように、私が指示を出してみたいと思います!」

「へっ、腹積もりを決めてくれたか。
 そっちの坊やはどうだ?」

「……テレサさんと相談している中で、僕が何とかやるつもりになりかけてはいたんです。
 でも伊集院さんが実際に様々な機械に触れている経験はとても大きいと思います。
 力も僕よりずっと強いし多少無理な操作もできると思います。
 伊集院さんがやったほうがきっと短い時間で操作できるようになるはずです!」

出木杉はちゃんと理由も出した上で、隼人が操作することを支持した。

「ありがたい事言ってくれるじゃねえか。
 任せてくれるってことでいいんだな?」

「はい! 僕も伊集院さんがこのグリモルディを操作できるように、
 全力でテレサさんとサポートさせてください!」



テッサは支給品解説を読みながら、
グリモルディの構造を素早く把握しどのような操縦が適切なのか指示を与える。
艦長を務めるダナンの構造を隅から隅まで把握している頭脳は伊達ではない。
出木杉はその補佐だ。
テッサとは反対側から動きを見たり、隼人の手に触れながら指の動きを支持したり。
弱視の隼人が支給品解説を見ながら操作を習熟するのは至難の業であるため、
この二人の補助は必須なことであった。
糸が絡まってしまったときに解すのは三人の共同作業だ(これはかなりの時間を取った)。

三人が最初に試みたのはグリモルディの変形だ。
グリモルディは通常は二足で歩くか、変形しても足首の部分の二輪のみで走る。
この状態ではバランスを取らせるのは大変で、初心者が操縦慣れするのに全く向かない。
しかしさらに変形させることにより背中の後輪が接地し、
三点で設置することによりバランスが非常に取りやすくなるのだ。
最初の状態で起き上がらせてもすぐに転んでしまうだろうが、
変形させて後輪を伸ばしておけば安定した姿勢で起き上がることができる。
そこから手をついて起き上がるのもやはり大変であったが、
一度起き上がれれば後は上半身の様々な部位の動かし方を転ばせる心配なく練習でき、
車輪も低速で動かせば転倒の心配はない。



2時間ほど練習した頃。
隼人は何とか全ての可動部の動かし方を覚えることができた。
そしてその組み合わせによる最重要事項。
グリモルディの車輪を動かし走行すること。
急旋回などに不安はまだあるが、
隼人はグリモルディの真価である高速移動を習得できていた。
ある程度走らせてみて糸が絡むようなことは全くなくなった。
こうして三人は人間が走るより、疲れず高速に移動できる手段を手に入れたのだ。
グリモルディを使いこなせているとはまだまだ言えないが、
そろそろ切り上げてダナンへ向かっていかなければならない。

「もう走るのには十分なくらい動かせるよな!
 そろそろ動き始めたほうがいいんじゃねえのか?」

「ええ。まだ不安な点は多いですが、
 これ以上時間を取るわけにもいきません。
 ダナンに向けて出発しましょう!」

「走ってる間も続けてサポートしますね!」

三人は肩など思い思いの場所に乗り(疲れるようならポジションを変えるつもりだ)、
グリモルディは走行を始めた。



シートベルトすらないこの状況。
障害物に当たり投げ出されたり転んだりしたら大怪我の可能性もある。
テッサと出木杉は弱視の隼人を補い前方を必死で確認し、
左右に避けるように指示している。
ちゃんとした道路の上を走るならば隼人が全てをこなしても何とかなりそうだが、
生憎とそういう道は見つけることができなかったのだ。

「やっぱり僕が動かし方を練習したほうが良かったんですかね……」

「へっ! 自分が決めたことを後悔すんなよ!
 坊やの頭や要領の良さも、いずれもっと活躍できるときが来るさ!」

しかも隼人は走らせながら帽子や腕の操作を練習する気が満々だ。
障害物の視認と操作の指導両方に追われる二人には、気が休まるときは訪れそうもない。
しばらく進み坂道を上った直後、目の前には灌木が出現した。
出木杉が最初に気付き警告する。

「20mくらい先に木があります!右によけてください!」

ところがグリモルディは坂を上り切った後ジャンプし不安定になったため、
なかなか方向を変えることが出来ない。

「右だな! 何とか動かしてるぜ!」

「う、腕を伸ばしたままです! ダメです! 避けきれません~!」

テッサを筆頭に身構える三人。ところがそんな心配は必要なかったようだ。
グリモルディの腕は走りながら木をなぎ倒してしまった。
その丈夫さは高所から落ちても壊れず、壁を体当たりでぶち破ったりも可能なほどなのだ。
有賀村の懸糸傀儡の中では高性能を誇るだけある。
体幹もそれほどぶれず、しっかり掴まっていた三人が振り落とされることはなかった。

「へっ! どうだ俺の運転はよ!」

「ひ、非常事態じゃなければ絶対あなたには任せたりしませんっ!」

「まあまあ、これからもっと上手になってやるからよ。
 そっちも暗くて大変だろうが、急いでいかなきゃならないんだろ?
 水先案内しっかり頼んだぜ!」

掛け声とともに月夜の中、三人は珍道中を爆走していく。

「はあ……着いたら艦を知り尽くしたテレサさんの案内で、
 まずは休憩室に向かいたいですね」

【F-3/サーカス場 黎明】
【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ガウルン、ゲイツを警戒
3:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
4:相良さん、かなめさんは会いたいが、そう死なない人たちだと信頼してるので後でも良い

※参戦時期はIV開始以降のどこかです。詳しくは次以降にお任せします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【出木杉英才@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、Mk2手榴弾×3@シティーハンター、ランダム支給品×0~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもん含む友人たちと合流し情報を得たい
3:自分なりにこの殺し合いについて考察を深める

※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【伊集院隼人@シティーハンター】
[状態]:健康
[装備]:グリモルディ@からくりサーカス、ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ
[道具]:基本支給品一式、ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation
[思考・行動]
基本方針:死ぬつもりはない。殺し合いには乗りたくないが、脱出の見込みが無いなら……
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
3:冴羽リョウ、槇村香と一度会い協力したい

※参戦時期は完全に失明するより前(シティーハンター91の8話、リョウとの決闘より前)、
 超能力少女に会った後(シティーハンター2の42話より後)。詳しくは次以降におまかせします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

※三人がどのような経路でダナンに向かうかは次以降におまかせします。


【Mk2手榴弾@シティーハンター】
いわゆるパイナップルと呼ばれる形の手榴弾。
ただ手投げするだけでなく、トラップの道具としても用いられた。

【ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation】
コーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ、コーヒー豆の袋と水がセット。
まとめて棚に入っており、もう一度ボタンを押せばホイポイカプセルに戻すこともできる。
作り手によるがだいたい10杯分ほど作れる。
アニメでは認知世界内でコーヒーを飲むシーンは無かったが、
現実世界でもらったドリンク(タケミナトビオキール)を認知世界で服用して回復するシーンがあるので、
認知世界内でコーヒーを飲んでもゲームと同じようにSP回復効果があると考えられる。
この会場内でもその効果は発揮される。
SP(スピリットポイント)回復効果は魔力やスタンドパワーの回復とも互換性がある。

【ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ】
ニホンツキノワグマがフレンズ化した際に、元の動物の特徴の一部が武器として現れたもの。
棒の先に丸くデフォルメされたツキノワグマの手がくっついている。
ハンマーのように殴るだけでなく、カミソリの如き切れ味の爪により切り裂く効果も期待できる。
原作(1期)ではへいげんちほーの戦いごっこの際に持ち主とともに活躍、
最終決戦の時には自分の武器を壊されてしまったヒグマに託された。

【リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル】
花の効力で一度だけ装備者を守ってくれる。
量販品であるので色々な場所で入手できた。
1話ではニケがククリにプレゼントしそれは3話で失われるが、再び購入して装備したりしている。

【グリモルディ@からくりサーカス】
2話から登場した懸糸傀儡。
足の部分が横向きに変形し、足首の突起が車輪となり高速機動できる。
横に長い帽子を動かしたり首を伸ばしたり出来るなど意外と器用。
勝を誘拐しようとする誘拐組の尾崎が最初の所有者。
4話で勝に雇い直された阿紫花英良が尾崎から奪い、
からくり屋敷に突入するのに大活躍した。
13話や23話に登場するのは阿紫花が気に入ったため作られた改良型で装備が増えている。
本ロワでは誰でも使えるようにと、支給品説明が操作法と機能が簡単に書かれたマニュアルにもなっている。
もちろん読んだからといって糸の操作は難しく、
才能や経験にもよるがどれだけの練習で使えるかは不明。




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最終更新:2019年05月25日 00:40