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『使い魔くん千年王国』 第二章 復活 - (2007/11/06 (火) 00:35:51) のソース
#center{&color(green){[[前のページへ>『使い魔くん千年王国』 第一章 召喚 ]] / [[一覧へ戻る>使い魔くん千年王国]] / [[次のページへ>『使い魔くん千年王国』 第三章 異世界 ]]}} 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 呪文の詠唱とともに、ルイズの唇が少年の唇に重ねられる。 するとどうであろう… 少年の右手の甲には、奇妙な形のルーン(魔法文字)が、まるで家畜の焼印のように刻まれ出したのだ。 (ジュウ――――――――) その痛みで、少年はとうとう目を覚ました! 「あんた、誰? どこの子なの?」 ルイズはしょんぼりした様子を隠せないまま、貧相な少年を見下ろして誰何した。 これから下僕になる平民なのだ。コントラクト・サーヴァント(契約)が済んだからとて、なめられるわけにはいかない。 「…………?」 少年は覚醒した。否、復活と言ってよいだろう。 彼は確かにあの時、心臓を銃弾で撃ち抜かれて死んだのだから。 (ぼくが死後復活するであろうことは、さまざまな予言書にも書かれていたとおりだが……。 ここはどこだ? 東京や奥軽井沢ではなさそうだし……) 「ちょっと、聞いているの!? 私は急いでいるのよ!」 (この怪しいカッコウをしたやつらはなんだ? 見たところ魔法使いそのものだが、 やつらが、というかこの騒がしいピンク髪の女が、ぼくを復活させたとでもいうのか?) 「はやく答えなさいよ! 耳がないの? 口がきけないの? (きぃ―――――っ わなわなわな)」 「うるさいな。人の名前を尋ねる時は、そちらから名乗るのが礼儀だろう」 ヒステリーをおこしていたルイズは唖然とした。 たかが平民の小童ごときが、貴族に開口一番言うセリフではない。 …いや、ひょっとしたら小童なのは見た目だけで、何か強大な力を秘めた存在なのかも知れない。 きっとそうだ、そうに決まっている。 なにしろこの私が全身全霊をこめて召喚した使い魔なのだから。 なんかすごいふんぞり返ってるし。 「わ、私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「ずいぶん長い名前だな。まあいい、ぼくは松下一郎。 …たぶん君たちは知っているだろうが、『東方の神童』だよ。 『悪魔くん』などとも呼ばれていたがね」 「と、東方!? あ、悪魔ですって!?(ふはっ)」 「ミス・ヴァリエール! 下がりなさい!!」 コルベールが進み出て叫ぶ。 ハルケギニアにおいて、『東方の悪魔』というだけで自己紹介は充分だ。危険極まりない。 だがルイズは狂喜した。美しいかはともかく、これほど強力な使い魔はなかなかないだろう。 ちゃんと契約もしてあるから従ってくれるはずだ。 『東方の悪魔使い』ルイズ! なんという力と畏怖に満ちた、ミリキ的な二つ名であろう! 「嘘だろ…あのルイズがそんな凄い奴呼び出せるはずがない」 「まったく、バカバカしいことだニャー」 愚かな群衆のツブヤキも心地よいぐらいだ。うふふふふふふ。 「ぼくは悪魔ではないよ。むしろそれを使役する者だ」 「え?」 「なんだ、ぼくのことを知らずに復活させたのか?それよりここはどこだ? 君たちは何者だ?」 いぶかしげな表情を浮かべながらも、現状を確認しようとする『悪魔くん』。 コルベールが、警戒しながらも彼の質問に答える。 いまのところ暴れる様子はないが、下手に刺激するのはまずい。 「ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国、トリステイン魔法学院。 我々はあなたを召喚したメイジ(魔法使い)ですよ、『悪魔』くん。」 「召喚だって? まさかぼく自身が召喚されるとは思わなかったな。 メイジはともかく、そんな大陸も国名も、知っている限り記憶にないんだが」 「お、おいおい説明するわよ! とにかく契約は済ませたんだから、 どんな強力な悪魔でも悪魔使いでも、あんたは一生この私の下僕なんだからね! さあ、御主人様とお呼びなさい!」 ルイズは激しい疲労と困惑で混乱し、早く使い魔を従えたいと焦っていた……。 だが……彼は小ばかにしきった口調で拒否した。 「御主人様? これまた調子のいい話だなア。 知識だって力だって、ぼくよりも上回ってなきゃア、 主人でも先生でもないよ」 「なんですって!?」 「まあまあ、ミス・ヴァリエール。彼には彼の考えもあることだから」 「きみ、止めるな! こんな家ダニのような小娘……」 「家ダニ!? 家ダニとはなによ!!!」 「家ダニで気に入らなければ、シラミだって油虫だっていいんだぜ」 「ひどすぎる!!!!」 「き、きみ、口がすぎるよ」 「俺ア、こいつの高慢ちきな態度が始めっから気に入らないんだ! 禿頭、そこをのけっ!! ぼくにはこんなものにかかづらわっていられない、 大きな使命があるんだ!」 『悪魔くん』は額に青筋を浮かべ、奇妙な拳法のような構えをとると、 聞きなれない魔法の詠唱と精神集中を始めた! 「ミ、ミス・ヴァリエール! 早く逃げなさい!」 「なんで逃げる必要があるのです!!」 「いくぞーーーッ!!」 『悪魔くん』が暴れだしたのを見て、周りの生徒たちも驚き退いた! コルベールは、激昂したルイズを彼から引き離そうと、ドンと突き倒した! 「あっ」 彼女はどすんと音を立てて倒れ、地面に頭を打ちつけてのびてしまった…。 「きゅう」 「私からよくいいきかせておきます。 今日のところは大目に見て、助けてあげて下さい」 「…ま、いいだろう… いろいろ聞かなくてはならない事もあるだろうし」 こうして、春の召喚の儀式は終了した。 果して、彼は偉大にして強力な悪魔、または悪魔使いなのであろうか。 或は何か間違ったのではなかろうか……? (つづく) #center{&color(green){[[前のページへ>『使い魔くん千年王国』 第一章 召喚 ]] / [[一覧へ戻る>使い魔くん千年王国]] / [[次のページへ>『使い魔くん千年王国』 第三章 異世界 ]]}}