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異世界BASARA-31 - (2007/11/05 (月) 23:59:33) のソース
トリステインの朝は早い。 日が昇り始めた頃、通りは店の準備などで活気付く。 「んん~!今日も清々しい朝ねぇー!」 今日の話はチクトンネ街にある『魅惑の妖精亭』、大衆酒場兼宿場であるこの店から始まる。 「さ、今日も可愛い妖精さん達と一緒に頑張るわよぉー!」 “彼”の名はスカロン、この『魅惑の妖精亭』の店長である。 「もう、あんまり大きな声出すんじゃないよ!まだ寝ている人だっているんだからね!」 次に2階の窓が開き、黒髪の美しい娘が顔を出した。 彼女はスカロンの娘であるジェシカ。父と共にこの店を切り盛りしている。 ズシン…ズシン… と、店の裏から地響きが聞こえる。 スカロンはそっちに目を向けると、パアッと顔が明るくなった。 「まぁボブちゃん!もうゴミの片付けやっちゃったの?」 「……!…!」ゴオォォ!シュゴー! ボブと呼ばれた者は、返事の代わりに体から奇妙な音を上げる。 紹介しよう、彼が今回の話の主人公… 本多忠勝………改め、本田ボブである。 異世界BASARA番外編「忠勝のアルバイト」 何故彼はこんな所にいるのか、事の発端は2週間前であった。 パーティーで食べた野菜…いや、草のような物を食べた途端、体が言う事を聞かなくなり、空を暴走しながら飛び回っていた。 丁度視界に街が見え始めた時、彼の意識はそこで途絶えた。 そして翌日の朝…気がつくと忠勝はこの店の屋根に頭から突っ込んでいたのである。 「それにしてもあなた、空から降ってくるなんて…ひょっとして天使さんかしら♪」 「こんなごっつい天使がいるわけないでしょ、あの屋根の穴どうするのよ…」 「…!!…!」ブルルル!ヴィン… その後…忠勝は行くあてもないと誤解され、『魅惑の妖精亭』に住まわされる事になる。 忠勝自身も、屋根を破壊したまま帰るのは悪いと思っていたのでこれを承諾した。 ちなみに、一応名前を聞いたが、「プシュー」や「ギギギ」としか言わないので、とりあえず「ボブ」と呼ばれる事になった。 可愛いじゃなぁ~い♪がスカロンの言い分である。 「それじゃあボブちゃん!今日の買出しもはりきって行っちゃうわよ!」 そして現在に至るという事だ。 「も~ボブちゃんが来てから店が繁盛しているような気がするわ~♪」 「……!」キュイーン! スカロンは忠勝の肩の上でクネクネと悶えている。 今日の買出しを終えた忠勝はスカロンを肩に乗せ、店への帰路を急いでいた。 『魅惑の妖精亭』で住み始めて1週間… 今では店の雑用の大半をこなすようになっていたが、忠勝は1つだけ気になる事があった。 この世界での自分の主…タバサの事である。 彼女に何の連絡もしていないのが彼の気がかりであった。 しかしそれをスカロンに伝えようとしても理解してもらえない。 このハルケギニアという世界において忠勝の言葉を理解出来るのは主だけであったとつくづく実感した。 狭い道を移動しながら、忠勝は今日の夜中にこっそりと抜け出して学院に戻ってみるかと考えていた。 ここから学院まで自分ならそんなに時間は掛からないし、主も夜遅くまで本を読ん 「ボブちゃんストオオオォォォォォォォーーープッ!!!!!」 考え事をしていると、いきなり首を後ろに引っ張られた。 「!?!!」ガギギギ!ギュウロロロ!! 驚く程の強い力のせいで忠勝は急停止する。それはもうそのまま折るのではないかという強さであった。 何があったのかとスカロンの方を見ると、彼は噴水広場に目を向けている。 「ボブちゃん、悪いけど先に帰っていて頂戴!開店前にはちゃんと戻るから♪」 そう言うやいなやスカロンは忠勝の肩から飛び降り、凄い速さで噴水広場に走って行った。 「ああ、それは可愛い女の子を見つけたんだよ。たまにスカウトしてんのさ」 「………?」ブルルル スカロンの言う通りに店に戻り、料理の下ごしらえをやっていた忠勝にジェシカは言った。 ちなみに、彼の体は厨房には入らないので外でやっている。 「……!!…」ウイィン! 「あら、もう済んだの?」 剥いたじゃがいもをボウルに入れ、窓からジェシカに渡す。 「みんな~た・だ・い・ま~♪」 丁度その時だった、スカロンの声が奥から聞こえてきたのは。 「いいこと?可愛い妖精さん達~」 「「「「はい!スカロン店長!」」」」 「ちっがーうでしょぉー!!店内では"ミ・マドモワゼル"とお呼びなさいっていつも言ってるでしょ~!?」 「「「「はい!ミ・マドモワゼル!!」」」」 それを聞いたスカロンはトレビア~ン♪と言いながら体をくねらせる。 店内ではそう呼ぶのが決まりなのだが、忠勝にはあまり関係なかった。 「カ・イ・カ・ン♪さて、今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります!」 そこまで言うとスカロンはポンッと手を叩く。 「何とこの魅惑の妖精亭に新しいお仲間が出来ます!それじゃあ入っていらっしゃ~い♪」 スカロンがもう一度手を叩くと、奥から小柄な少女と妙な格好をした青年が現れた。 「ルル、ルイズなのです~!よろしくお願いなのです!!」 「ししししゃしゃしゃなだゆゆゆきむりゃにごごござる!!こ、これからせせ世話になりまするっ!!!」 なんと、現れたのはルイズと真田幸村だった。 ルイズは引き攣った笑顔を浮かべ、幸村は今にも倒れそうな真っ赤な顔をしている。 「ルイズちゃんはね、お父っつぁんの博打の肩に売り飛ばされそうになった所を、お兄さんと町まで逃げてきたのよヨヨヨ…」 スカロンはハンカチで顔を覆いながら言った。それに続いて従業員の女の子からも可哀相と声が上がる。 勿論そんな訳がないのだが… 「だから皆仲良くしてあげてね!はい拍手~♪」 スカロンがそう言うと、女の子達から歓迎の握手が上がった。 「さて、新しく入った2人には紹介しておかなきゃね。この店のマスコットキャラを!」 「ま、ますこっと?」 スカロンの言葉に幸村が顔を赤くしたまま答える。 「そう!この店には入らないけど立派に仕事をこなす働き者!気は優しくて力持ち♪」 そういいながら窓に近づき、取っ手に手を掛ける。 そして、一気に窓を開きながらこう叫んだ。 「紹介します!!ボブちゃんでえぇ~す!!」 そこには、ルイズ等2人にとって凄く見慣れた顔がいた。 「んなあぁ!?あ、あんたタバサの使い魔…!!」 「た、忠勝殿!?」 「…!!……」プオォォォォォン!!!!