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異世界BASARA-54 - (2008/08/10 (日) 14:10:26) のソース
#navi(異世界BASARA) 「ウジマサ!」 「何だ?この爺は」 現れた老人、氏政を見てギーシュと傭兵のメイジは声を上げる。 氏政は地面に突き刺した槍を引っこ抜くと、尻餅をついているギーシュに向き直った。 「ふん、威勢よく出て行った割には情けない姿じゃのぅ」 その一言にギーシュは顔を真っ赤にした。 「う、うるさい!これから巻き返すんだ!逆転するんだよ!」 ギーシュは薔薇を握り締めて立ち上がろうとした……が。 氏政は槍の柄をギーシュの足に引っ掛けた。 派手に転び、ギーシュは顔を地面に強く打ち付ける。 「何をする!邪魔しないでくれ!」 「今のお主なんぞ蚊ほどの役にも立たんわい、ここはわしに任せておけい」 「ウジマサだってもう年なんだから無理は出来ないだろう!?」 「その坊やの言う通りだ、爺は船の中でブリミル様にでも祈ってな」 と、2人のやり取りを見ていた傭兵のメイジが口を開いた。 「最も、船に逃げても全員捕らえるがなぁ……」 そう言ってそのメイジは馬鹿にするように笑い出す。 周りのレコン・キスタ兵もつられて笑い出した。 「わしをただの爺と侮るでないわあぁぁぁーーー!!」 「この北条氏政、年老いても武士!武士の意地があるっっ!!!!」 氏政は槍を豪快に振り回しながら叫ぶ。 「その意地にかけて、力の無い女子供に手を出すお主等を……」 と、振り回していた槍を止め、その矛先をレコン・キスタ兵に向ける。 「見過ごすわけにはいかんのじゃあぁっ!!!!!」 「……爺と思っていたが、見上げた騎士道精神じゃねぇか。分かった……俺もそれに応えよう」 傭兵のメイジは杖を掲げて兵に合図を送ると、その杖を氏政に向けた。 「遠慮なく叩き潰してやる」 (う、ううむ……ああは言ったがあの人数……ちと厳しいのぅ) 氏政は改めて相手の数を見て、眉間に皺を寄せる。 鍾乳洞の港には敵が約50……だがその内上からも増援が来るであろう。 (やはり“あれ”を使うしかないわい) 氏政は懐に手を入れて“あれ”を掴む。 突然この世界に飛ばされた彼は“あれ”を3個しか持っていない。その為、出来るだけ温存していたのだ。 氏政が取り出した物を見て、ギーシュは首を傾げた。 手にしていたのは、何やら茶色くて三角のオブジェであった。そして氏政はさらに意味不明な事をしだした。 その三角の物体を頭に乗せたのである。 (ウジマサが本格的にボケ始めた……) ギーシュは氏政に哀れみの目を向け、自分の最期を覚悟した。 「誰でもよい!わしの頭に火を放て!!」 氏政の言葉に、一同はさらに唖然とした。たまらずウェールズが口を開く。 「もういい!もういいから大人しく戻ってくれ!自殺してどうするんだ!」 「だ、誰がそんな事するか馬鹿もん!いいから頭のこれに火を放たんか!」 「じゃあ俺が点けてやるよ」 そう言ったのはレコン・キスタ兵の中にいた傭兵メイジだった。 杖を振って再びフレイム・ボールを唱え、氏政に向けて放ったのである。 「しょえええぇぇ~!!」 まさか敵から火を放たれるとは考えてなかった氏政は、驚いて尻餅をついてしまった。 それが幸いしたのか、放たれたフレイム・ボールは顔にではなく、頭に乗せていた茶色い何かに命中した。 「何をするか貴様!わしは武士でも老体じゃぞ………んん?」 と、氏政は妙な声を上げ、すっと立ち上がった。 「おお?おおおぉぉぉぉ~!!」 すると、氏政の体に異変が起こった。 手が震え、次第にそれが体全体が伝わり始める。顔にもみるみる生気がみなぎっていく感覚を感じた。 「きたきたきたああぁぁぁーーーー!!!」 氏政は突然跳ね起きると、栄光槍を手に走り出した。それを見たレコン・キスタ兵は各々に武器を構え、氏政に向かって駆け出す。 敵は皆、氏政を見て勝てる相手だと思っていた。 年老いた老兵……誰もがそう考えていたのだろう。兵の殆どが何の警戒も抱かず、その老兵に斬りかかった。 しかし次の瞬間、最初に突撃したレコン・キスタ兵が氏政の槍で薙ぎ払われ、吹き飛ばされた。 ギーシュが、傭兵のメイジが、周りの兵達が予想外の光景に目を疑う。 たった1人の、それも年老いた氏政に敵が次々と倒されていく…… 一体この老人の何処からそんな力が出てくるのか、その力の正体は、氏政が頭に乗せた茶色の物体だった。 この頭に乗せた物体こそ、北条家に伝わる『北条家最高灸』…… あらゆる身体疲労に効果があり、若かりし頃の活気を蘇らせる万能のお灸である。 「ほりゃああぁ~!!」 氏政がブンッ!と槍を振るった。予想以上に速い振りに敵は追いつけず、再び5人の敵兵が吹き飛ばされた。 「ひょ~ひょっひょっひょ、余裕!余裕じゃあ~!」 氏政が自身ありげに言うと、傭兵メイジが歯軋りをしながら睨みつけてきた。 だが、氏政はそれでも余裕の態度を崩さない。 「どうした若いの?今なら謝れば許してやらん事もないぞ?」 「っっ!ふざけるな死に損ないが!!」 メイジは怒りを露にし、杖を氏政に向けて言葉を吐き散らした。 「随分と激昂しているな、セレスタン」 その時、階上から誰かの名を呼ぶ声がした。 その声に傭兵のメイジ……セレスタンは顔色を変えて振り向いた。 「マツナガ様……!」 「ほう?苦戦しているようだな。所詮は有象無象の兵……こんなものか」 声の主は一歩ずつ薄暗い階段を降りていく。次第にその姿もはっきりとしてきた。 そしてその姿を見て、次に驚いたのは北条氏政だった。 「き、貴様はまさか……!松永久秀!!!」 「ほう?これは驚いた。卿も来ていたか」 松永は氏政の姿を見つけると、口の端を吊り上げて言った。 「貴様……独眼竜に斬られたと聞いておったのに……何故ここにおる!?」 「ふむ、どうやら地獄の閻魔にも愛想を尽かされたようでね」 松永はくぐもった笑い声を上げるが、氏政は緊張した顔つきで松永を見ている。 何故なら氏政は彼の性格を知っているからだ。 自分の欲望を満たす為ならば何でもする男……好きなように破壊し、奪う。 氏政のいた戦国の世で、独眼竜の持つ竜の爪を一度は奪った男…… それが松永久秀である。 「さて、今は卿の“過去”を貰う気はない」 と、松永は笑うのを止めて顔を上げる。 「私が欲しいのは……」 松永はその欲望の矛先を、若きアルビオンの王子に向けた。 「ウェールズ・テューダー、卿の“愛の証”を頂こう」 #navi(異世界BASARA) ----