あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「毒の爪の使い魔-29」で検索した結果
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毒の爪の使い魔
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毒の爪の使い魔-29
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 日も落ち、ラ・ロシェールに夜の帳が下りる頃、 フーケの襲撃を何とか凌いだジャンガ一行は、『女神の杵』亭へと移動していた。 『女神の杵』亭の外で待っている間、ギーシュとキュルケはタバサとモンモランシーから話を聞いていた。 「つまり、タバサは目が覚めて彼…ジャンガが居ない事に気が付いて、モンモランシーに事情を聞かされた。 それで心配になったから、着替えてシルフィードでここまでやって来たと?」 ギーシュの言葉にタバサは頷く。 「そして、モンモランシーはその付き添いで付いて来たのか」 モンモランシーは小さくため息を吐いた。 「しょうがないじゃない? 止めても聞かないんだから。無理をして倒れられても困るから、付いてくる他無かったのよ」 「しかし、タバサの母上の事は…」 「オールド・オスマンと、ジャンガと仲のいい給仕の子に頼んでき... -
ゲーッ!熊の爪の使い魔
キン肉マンII世からベルモンドを召喚 ゲーッ!熊の爪の使い魔-01 第一話 やってきたクマ ゲーッ!熊の爪の使い魔-02 第二話 オーバーボディの神秘 ゲーッ!熊の爪の使い魔-03 第三話 クマのいる生活 ゲーッ!熊の爪の使い魔-04 第四話 洗濯超人ベルモンド ゲーッ!熊の爪の使い魔-05 第五話 人気者のクマ ゲーッ!熊の爪の使い魔-06 第六話 食堂の変 ゲーッ!熊の爪の使い魔-07 第七話 ヘルズ・ベアー ゲーッ!熊の爪の使い魔-08 第八話 その名はウォーズマン ゲーッ!熊の爪の使い魔-09 第九話 使い魔からの期待 ゲーッ!熊の爪の使い魔-10 第十話 ウォーズマンのいる日常 ゲーッ!熊の爪の使い魔-11 第十一話 使い魔のお披露目 ゲーッ!熊の爪の使い魔-12 第十二話 三重殺 ゲーッ!熊の爪の使い魔-13 第十三話 破壊力の方程式... -
毒の爪の使い魔-17a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 氷の矢<『ウィンディ・アイシクル』>がジャンガに向かって飛ぶ。 ジャンガはそれを避けようともしない。…ただ黙って見つめていた。 氷の矢がジャンガの身体を貫いた――と、思われた瞬間…。 氷の矢はジャンガの身体を”通過した”。 それと同時に風に吹き散らされる煙のようにジャンガの姿が掻き消える。 その光景にタバサの両目が見開かれるのと同時だった。…耳元で囁く様な声がしたのは。 「甘ェんだよ…ガキが」 チャキッ ――喉元に嘗て感じた、冷たい感触がした。 「俺の速さは前の”決闘ごっこ”で知りすぎている筈だろうが?成長して無ェなァ~」 「…ッ」 喉元に背後から毒の爪を突き付けるジャンガをタバサは悔しそうに睨む。 ジャンガはタバサを自分に向き直らせると、その... -
毒の爪の使い魔-03
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 暖かな陽光が照らす朝。 朝食をとる為に食堂へと向かい、朝日が差し込む廊下を歩く影が二つ。ルイズとその使い魔=ジャンガだ。 「はぁ…」 「…何度目だよ、そのため息は?」 ルイズのため息にジャンガは顔をしかめる。 「仕方ないでしょ……他の皆は使い魔とのコミュニケーションもとっくに終えて、共に過ごしているっていうのに、 私は召喚から”4日”も経った今日、初めてアンタを連れているのよ?」 ”4日”の部分を強調し、ルイズは振り返らずに答える。彼女が憂鬱なのもまぁ無理も無い事ではある。 ジャンガは召喚から三日三晩経った昨日の時点で目が覚めてはいた。 だが怪我はまだ完治しておらず、念の為にともう一日休息を入れたのである。 その為、召喚から計4日と言う開きが出てしまったのだ。 ただでさえ皆に馬鹿にされている彼女にして... -
毒の爪の使い魔-41b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 翌朝… ルイズ、タバサ、ジャンガの三人はシルフィードに乗って一路学院へと戻る事にした。 門の前にはルイズの家族と城中の使用人達が総出で見送りに出てきていた。 ルイズはカトレアに抱きついている。 戦争に行けば次に会えるのはいつか解らない。だから、恋しくならないように、 今の内に精一杯この心地良い抱擁を楽しんでおこうと思ったのだ。 カトレアは優しくルイズの頭を撫でた。 「ルイズ…、頑張ってね…小さなルイズ。でも無理は駄目よ? 無事に帰ってきてね」 「はい。解っていますわ、ちいねえさま」 「戻ってきたら一度何処かへ旅行に行きましょう。家族全員で…ね」 その言葉を聞き、ルイズは力強く…しかし、微笑みながら頷いた。 「勿論。絶対に行きましょう! ちいねえさまとお出かけする事、わたしずっと楽しみにしてたんだもの」 姉妹は仲良く笑い合... -
毒の爪の使い魔-01
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――衝撃が右胸を貫いた。 一瞬の間を置き……喉元へ押し寄せた物を一気に吐き出す。 口から滴る”それ”を拭い”血”である事を認識する。…肺が破壊されたのだろう。 痛みと熱が宿る右胸を押さえ、目の前の相手――自分の右胸を撃ち抜いた少年を見た。 怒りとも後悔ともつかない感情を宿した瞳で自分を睨み付けながら、未だ硝煙を立ち上らせている大型のハンドライフルの銃口を向けている。 目だけを動かし、少年の後ろに蹲るもう一人の少年を見た。 顔は苦痛に歪み、腹を押さえているその両腕の間からは血が滴っている。目の前の少年を庇い、彼の一撃をまともに受けた結果だ。 視線を目の前の少年に戻す。向けられた銃口にブレは無く、引き金に掛けられた指には力が篭っている。いつでも彼を撃てるといった感じだ。 そもそも自分はこの状態では長くは持つまい... -
毒の爪の使い魔-05
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ギーシュが決闘の場として選んだヴェストリの広場は、学院の敷地内にある中庭である。 二つの塔に囲まれており、更に西側に位置している為、日中でもあまり日が差ささず、 普段はあまり人気の無い場所である。…が、今はギーシュの決闘宣言により、大勢の生徒達が溢れかえり、賑わっていた。 「諸君!決闘だ!」 手にしたバラの造花を高らかに掲げ、ギーシュが叫ぶ。それに合わせるように周囲の生徒達から歓声が上がる。 娯楽の少ない学院生活ゆえに、彼等も暇を持て余しているのだ。 それだけに今回の決闘は彼等にとってこれ以上無い暇潰しであった。…たとえ、結果が知れていようともだ。 「あ~…うるせェ」 広場を囲む生徒達の声にジャンガは顔を顰める。 目の前では自分に喧嘩を売った命知らずのガキが周囲の歓声に答えるように手を振っている。 ... -
毒の爪の使い魔-23
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 激闘の一夜が明け、朝日が昇り始めた。暖かな陽光が魔法学院を照らし出す。 夜闇が徐々に掃われていき、それに呼応するかのように、眠らされていた学院中の人が目を覚ましていく。 「あれ…私、どうして?」 「寝てたの…こんな所に?」 「何で…廊下なんかで?」 目を覚ました者達は一様に首を捻った。 何故こうしているのか…一切の記憶が無いのだ。 眠らされた者の中で、夕べの事を覚えている物は誰一人としていない。 ――そう…”眠らされた者”の中では…。 「ふわぁ~」 大きな欠伸が学院長室に響く。 「ああ、よく寝たの~…」 眠りから覚めたオスマン氏は、大きく伸びをし、目を擦る。 その時、ノックの音が聞こえた。 オスマン氏は目を擦る手を止め、窓の外を見る。…まだ朝日は昇り始めたばかりのようだ。 ――こんな朝早くに... -
毒の爪の使い魔-14
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――『土くれのフーケ』による秘宝の盗難事件から数日… 「くわあああぁぁぁぁぁ~~」 本塔の屋根の上に寝転んだジャンガは口を開き、大きな欠伸をした。 眠気に霞む目を擦る。 「どうしたい相棒、そんな大きな欠伸をしやがって…退屈なのか?」 隣に置いてある鞘に納まった剣が僅かに鞘から出て、金具を鳴らして話しかける。 インテリジェンスソード……知性を持たされたその剣の名はデルフリンガー。 昨日、ジャンガが暇潰しに町へ出た際、度々客に喧嘩をふっかける為、 店主によって処分されかけていた所を彼が気まぐれで貰ったのだ(無論、脅す形でタダにして)。 この剣…よく喋る為にうるさい事この上ない。鞘に収めていても勝手に鞘から出て、喋りまくるしまつだ。 だが、ジャンガは特に気にする事は無かった。…この程度のお喋りな相手に... -
毒の爪の使い魔-08
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ”氷嵐”<アイスストーム>の威力は凄まじく、ジャンガを飲み込むだけに止まらず、その周辺の地面を抉り、宙へと巻き上げた。 巻き上げられた土砂は片っ端から冷気によって凍りつき、土煙の中で太陽の光を反射し輝きを放つ。 それは見ている者を釘付けにするほど美しく、攻撃の魔法だと言う事を忘れてしまいそうになる。 そんな幻想的な光景を作り出している”氷嵐”は、飲み込んだジャンガを容赦無く切り刻む。 その様子を”氷嵐”を詠唱したタバサはただ静かに見つめていた。 やがて、”氷嵐”はその勢いを衰えさせ、消滅した。 後には時折キラキラと輝く氷の欠片が混ざり濛々と立ち込める土煙と、沈黙だけが残った。 決着がついても誰一人として動けなかった。”氷嵐”の美しさと威力に目を奪われた事もあるが、 それ以上にその魔法を詠唱したタバサの実力に... -
毒の爪の使い魔-02
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「…う…うう……」 苦しげな声を上げながら、彼は目を覚ました。上体を起こすと身体に痛みが走る。 まだ霞む両目を手の甲で擦り、ボーっとする頭を必死に働かせ周囲を見回す。 そこはありふれた感じの…多少豪華だが、至って普通の部屋だった。 一つある窓からは明るい日差しが差し込んで――日差し!? 彼の意識が急速に覚醒していく。何せ、彼が最後に居た所は月……こんな日差しを経験する事などは不可能だからだ。 そして、彼がもう一つ気になった事がある。それは… 「何で……俺は生きてるんだ…?」 彼は意識を失う直前、敵対する少年との勝負に敗れた。 命乞いの後に奇襲を掛けたが失敗、少年の持つ親の形見のハンドライフルに右胸を打ち抜かれ、クレバスへと落下した。 あの状況で助かる可能性は万に一つも無かったはずだ。 誰が自分を助けた... -
毒の爪の使い魔-16a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 暑くなってきた、夏真っ盛りの時期。 トリステイン魔法学院は二ヵ月半に及ぶ、長い夏期休暇に入っており、 学院内には学院長のオスマン氏や教師、給仕の平民が居るだけで、生徒達は一人としていなかった。 静まり返った魔法学院に強い日差しが照りつける中、ジャンガは本塔の屋根の上に座り込んでいた。 立てた膝の上に肩肘を付き、何をするでもなく、ボーッとしている。 彼はここ最近の出来事を思い返していた…。 アンリエッタ姫からのお呼び出しを受け、『街での貴族の横暴な振る舞いを調べて欲しい』と 密命を言い渡されたのは、フーケを捕まえた日から幾日も経たない日だった。 平民に雑ざっての御忍びの任務であるにも拘らず、高級な物に拘るルイズは、 アンリエッタ姫に貰った活動資金をアッサリと使い果たし、途方に暮れる二人はスカロンと言う男... -
毒の爪の使い魔-20
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――タバサとキュルケの対峙から約20分前―― ――トリステイン魔法学院:火の塔の裏―― そこは既に散々足る状況だった。 草原は所々が炎で焼かれ、風のカッターで深く抉られている。 戦場の一部を切り取ってきた…と言われても納得のいく光景だ。 そんな中、対峙する二つの人影。 ジャンガとコルベールは互いに距離を取り、相手を見据え、構えを取ったまま動かない。 お互い、相手の手の内は大半を知るところとなったが、まだ全てではない。 それゆえに下手に動けないでいるのだ。 ――唐突にジャンガが動いた。 無数の分身を生み出し、突撃する。 分身は複雑に動き、相手をかく乱しようとするが、コルベールは動じない。 分身が飛び交い、コルベールとすれ違う。 その背後からジャンガは爪を振り下ろす。 それをコルベールは杖... -
毒の爪の使い魔-07
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「あン?決闘だと?」 突然の事にジャンガは一瞬呆然となり――笑った。 「キッ、キキキキキキキッ!!」 腹を抱え、心底可笑しいと高らかに笑う。 それを杖を突きつけたまま、静かに見据えるタバサ。 ジャンガは一頻り笑うとタバサを睨み付けた。 「お前…何を見ていたんだ?あのガキみたいになりたいのかよ?」 言いながら睨み付ける視線に更に殺気を含ませる。 だが、一般人ならばとっくに気絶しているだろう殺気にも、タバサは眉一つ動かしていない。 ただ静かに見つめている。 ジャンガは舌打ちし、爪を構える。それに同調し、タバサも突きつけていた杖を構えなおす。 「後悔しても遅いぜ…ガキ?」 「……」 ジャンガの脅しを含んだ低い声にも動じず、タバサは静かに杖を構えたまま見つめている。 その態度にジャンガは黙ると、よ... -
毒の爪の使い魔-04
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ルイズがジャンガの手を借りて、自分の失敗魔法による大爆発で破壊された教室の片付けが終わったのは、 昼休みも目前と迫った時刻だった。 ジャンガは最初『めんどくさい』と手伝いを怠けるつもりでいたのだが、 『手伝いをしなければ飯を抜きにする』と言う、ルイズの言葉に渋々片付けを手伝ったのだった。 ともあれ、色々と手間取りながらも、なんとか片付けを終えた二人は昼食を取るため食堂へと向かった。 「ったく…後始末の手伝いさせられたのに、この量だ?…ざけんなよ」 ジャンガは皿からルイズに目を向け、小さな声でぶつぶつと呟く。先程の片付けの事を根に持っているのだ。 自分は別に何の非も無いのに本当ならば彼女だけでやるはずだった片付けを、 飯をダシに無理やり手伝わされたのだ。それなのに感謝の一言も無く、昼食の量も朝食と変わらず。 ... -
毒の爪の使い魔-24
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 清楚な作りのベッドの上で、タバサは目を覚ました。 目を開くと、眼前に白いシーツが飛び込んできた。ゆっくりと身体を起こす。 ベッドに突っ伏した状態で眠っていたようだ。 傍らでは母が安らかな寝息を立てている。 そんな母と、片手に持った本、ベッドに突っ伏した状態で眠っていた事から、タバサは状況を把握した。 どうやら、本を朗読しているうちに眠くなり、いつのまにか寝てしまったようだ。 今現在、タバサが母と共にいるのは実家のオルレアン邸でも、 ガリアの首都リュティスにあるグラン・トロワでもない。 エルフの住まう砂漠<サハラ>との国境近くにあるガリアの古城――アーハンブラ城である。 アーハンブラ城は砂漠の小高い丘の上にエルフが建築した城砦であり、もともとはガリアの物ではなかった。 千年近く昔…ハルケギニアの聖地回復連合軍が多大... -
毒の爪の使い魔-06
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 一方その頃…、本塔最上階の学院長室では教師の一人ミスタ・コルベールが学院長のオールド・オスマンと話をしていた。 彼は春の使い魔召喚の際、ルイズが呼び出した使い魔の亜人の左手に刻まれたルーンが気になり、独自に調べていたのだ。 そして、一冊の書物にそのルーンと告示した物が記されており、こうして報告に訪れたのだった。 オスマン氏はそこに記されたルーンをジッと見ていた。 「これは伝説にのみ存在する使い魔のルーンじゃな」 「はい、まさかとは思いましたが…他に類似する物もありませんので」 「むぅ…、しかも召喚したのが、あのヴァリエールの三女とは…」 オスマン氏は眉間に皺を寄せて唸る。 「これは失われたペンタゴンの一角に関わる事じゃ」 「や、やはり…」 「それにしても…」 オスマン氏がそれまでの真剣な表情を崩し、コ... -
毒の爪の使い魔-27
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 アンリエッタからの依頼を受けた翌朝―― 朝靄の中、ジャンガ、ルイズ、ギーシュ、キュルケの四人は馬に鞍を付けながら出発の準備をしていた。 キュルケはあまり馬に乗る事は無いらしいが、苦手と言うわけでもないらしい。 その事を指摘したルイズへ逆に、魔法の成功ゼロよりはマシ、と言ってからかう位だから、問題は無いだろう。 「ねぇ、ジャンガ?」 キュルケとの口喧嘩が一段落したルイズはジャンガに尋ねる。 馬の鞍に荷物を括り付けているジャンガは顔を上げずに答える。 「何だ?」 「何で馬を使うの? あんただったら普通に走るだけで十分だと思うけど?」 荷物を括り付け終えたジャンガは、ため息を一つ吐く。 「…別に。ただ、夕べの怪我が治りきってねェから本調子じゃねェだけだ…」 「そう…」 それだけ言うと、ルイズは右手に目を落とす。 ... -
毒の爪の使い魔-25a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――竜の吐き出す炎はイーヴァルディを容易く飲み込み、吹き飛ばしました―― ――炎が消えた後には、地面にボロボロになり倒れたイーヴァルディの姿が在りました―― ――竜は倒れたイーヴァルディに近づき、哀れみを含んだ目で見下ろしました―― ――「お前では我には勝てぬ。ここから立ち去れ、小さき者よ」―― ――竜はイーヴァルディに背を向け、洞窟の奥へと歩き出しました―― 広間には砕けた床の粉塵が、煙幕のように立ち込め、 それをビダーシャルは、微動だにしないまま見つめている。 やがて、入り込む夜風に粉塵が払われていき、視界が利いてきた。 広間の端まで吹き飛び、床に倒れたジャンガの姿が見えた。 仰向けに大の字に倒れたその姿は、見るも無残にボロボロだった。 あの巨大な石の拳を避ける事も出来ずに、まともに食ら... -
毒の爪の使い魔-43
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ガレンビートルとガレンヴェスパの群れと砲撃の嵐の中、ジャンガとタバサを乗せたシルフィードは飛んだ。 目指すは艦隊の最奥に一隻だけ浮かぶ、他よりも一際大きな敵艦だ。 その行く手を阻むかのように、艦隊から砲撃が加えられ、無数の小型メカが体当たりを仕掛けてきた。 シルフィードは高速で飛行しながら、巧みにそれらの攻撃をかわしていく。 「キキキ、やるじゃねェか! その調子で突っ切りな!」 風で帽子が飛ばないように押さえながら、ジャンガが声を上げる。 かなりの高速飛行の為、カッターも上手く使えない。 振り落とされないようにしがみ付いているのが精一杯なのだ。 普段乗りなれているタバサも、かつて無い高速飛行と激しい回避運動に、しがみ付く事に必死だった。 もっとも”頭”を制圧する為にも精神力は無駄に出来ない。 よしんば反撃できたとしても、結局... -
毒の爪の使い魔-22
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「…なんだ? もう終わってんじゃねェか…」 ゆっくりと歩いて来た為、時間が掛かった。ジャンガは、ざっと周囲を見回す。 草原は、いたる所が炎に焼かれ、風に抉られ、物理的な衝撃に粉砕されている。 こっちの戦闘も相当激しかった事の証明だ。 自分の直ぐ近くの地面に目を向ける。 そこには気障ガキとドリル頭の姿が在った。 気障ガキは意識が無いのか、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。 全身に無数の傷が付いているが、致命傷のようなのは見受けられない。単純に気絶しているだけだろう。 その傍らにドリル頭。荒く息を吐いており、限界に近いのが解る。 だが、その瞳は死んでいない。自分を怒りの篭った目で睨み付けている。 今度は前方に目を向ける。 人形娘に雌牛が(何時の間に来たのか分からないが... -
毒の爪の使い魔-17b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ジャンガは何の感情も表さないまま、タバサを見つめる。 「どうしたってんだ?…別に今更、驚くような事じゃねェだろうが」 そう言って、自嘲気味に笑う。 「他人を蔑み、傷つけ、嘲り笑う俺だゼ?一人や二人殺していたところで、驚くような事じゃねェだろうが」 言われずとも解っている。彼が”善人”ではない…”悪党”であるのは承知の上だ。 だいたい、自分の覚悟を”バカらしい”、”無駄”と言ったのだ。これはどうあっても許せない…。 ――なのに、何故かジャンガが誰かを殺していたと知った時、胸が痛んだ。 注意しなければ気付かないほど、指の先を針で軽く刺した程度の痛みだったが…。 ジャンガは黙ったままのタバサの碧眼を見つめながら言葉を続ける。 「まァ、そういう訳だ…。俺はそのガキの銃で胸を撃たれ、月のクレバス…地面の裂け目に落ちた。... -
毒の爪の使い魔-21
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――トリステイン魔法学院:正門前―― 「のーっほほほほほほほほ!!!」 幻術を用い、花のような姿へ変身したジョーカーは高らかに笑う。 そして、パチンと右手の指を鳴らす。 途端、ジョーカーの身体が青い光のカーテンのような物に覆われたかと思うと、 身体に付いていた傷が、絵の具で塗りつぶされるように次々と消えていった。 その光景にギーシュ達は目を丸くする。『水』の『治癒』とは到底比べ物にならない回復力だ。 驚く彼等の様子にジョーカーは、左手の人差し指を立てながら笑う。 「のほほほほ、これ位できて当たり前ですよ。あとは…」 もう一度右手の指を鳴らす。 今度はタバサの身体が青い光に覆われる。 「どうですか、シャルロットさん?精神力…大分補充できたはずですが?」 確かに…消費したはずの精神力が戻って... -
毒の爪の使い魔-25b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――竜が止めとばかりに炎を噴出した時、驚くべき事が起こりました―― ――イーヴァルディが握った剣が光り輝き、竜の炎を弾き返したのです―― ――イーヴァルディは飛び上がり、竜の喉に剣を突き立てました―― ――どう! と音を立てて地面に倒れました―― ――イーヴァルディは、倒れた竜の奥の部屋へと向かいました―― そこまで読み終えたタバサは、本から顔を上げた。 隣の母は安らかな寝息を立てている。 先程まで響いていた恐ろしい音はいつのまにか止み、静寂が辺りを包んでいた。 ――否、靴音が聞こえた。 タバサはその靴音に、ハッとなり、扉に顔を向けた。 聞き覚えのある…ありすぎる音だ。 何故…、何故この音が聞こえるのだろう? それも”こんな所”で…… ありえない… ... -
毒の爪の使い魔-53-b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 数分後…、漸くシルフィードは解放されたが、散々に叩きつけられた為に全身傷だらけで酷い有様だった。 エルザは再び指を鳴らす。 木の根が次々と地面から飛び出し、シルフィードの身体を幾重にも縛り付けていく。 それを見ながら、エルザは得意げに鼻を鳴らした。 「こんなところだね」 そして、再びタバサに視線を戻す。 「さてと…、今度こそおねえちゃんの血を飲ませて……って行きたかったんだけどな~。 ちょっとつまらない事思い出しちゃったよ…」 何の事か解らないタバサは怪訝な表情をする。 エルザは後方を振り返る。 「ま、直ぐに済むし、楽しみは最後にとっておいた方が良いよね?」 そんな事を言いながら、エルザは歩みを進める。 そのまま歩み寄ったのは…カトレアだった。 エルザは興味深げにカトレアを見つめる。 「ちょっと! ちいねえさまに何か... -
毒の爪の使い魔-28
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 夕日が辺りを紅く染める。 ジャンガは切り立った崖の上の手すりに凭れ掛かり、ボーっとしていた。 消えたルーンやら、決闘の敗北やら、著しい身体能力低下やら、悩む事が多すぎて考えが纏まらない。 ゆえに今はボーっとしていようとそう考え、先程からずーーーっと人気の無いここにいた。 どれだけそうしていたか――突然、後ろから声が掛けられた。 「ジャンガ、こんな所に居たの…」 後ろを振り向くまでも無い。今の声が誰のかなど、考えるのは愚問だ。 ジャンガは特に感情を込めずに返事を返す。 「…ンだ?」 「何だも何も無いわよ。探したじゃない?」 「フン…、今はほっときやがれ…」 ジャンガの言葉にルイズは表情を曇らせる。 「もしかして…泣いてたの?」 「……」 返す言葉が無い。事実、あの敗北の後、大泣きしたのだから。 その様子に... -
毒の爪の使い魔-31a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ルイズは、ぼんやりと夢を見ていた。 故郷であるラ・ヴァリエールの領地に在る、屋敷の夢だった。 夢の中のルイズは六歳ほどで、屋敷の中庭を逃げ回っている。 姉達と比べられ、魔法の覚えが悪い、と親に叱られ、それで逃げているのだ。 中庭をあっちこっちへ逃げ回り、そして…ルイズは自身が『秘密の場所』と呼んでいる所へ逃げ込んだ。 そこは中庭にある池で、ルイズが唯一安心できる場所だった。 その周囲には季節の花々が咲き乱れ、小鳥が集い合唱する綺麗な石のアーチとベンチがある。 池の中央に点在する小島には綺麗な白い石で作られた東屋が建っていた。 見た目にも非情に整った美しい池である。 その池には一艘の小船が浮かべてあった。 舟遊びを楽しむ為の物であったが、現在ではこの船で舟遊びを楽しむ者はこの屋敷にはいない。 姉達は成長し魔法の勉強で忙しく、... -
毒の爪の使い魔-26
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「着いたな」 月明かりに照らされている魔法学院が見え、ジャンガは大きく伸びをした。 シルフィードはゆっくりと降下を開始する。 「これで漸く休めるゼ…」 「それはいいがよ、相棒……もう気にして無いのか?」 デルフリンガーの言葉にジャンガは、ハァ? と呆気に取られた表情をする。 「何がだ?」 「ルーンだよ、ルーン」 「んなの、もうどうでもいいゼ。別に無くても困るもんじゃねェし。 寧ろ、俺としてはあのクソ生意気なガキの使い魔と言う立場から解放されて清々したゼ」 「…まぁ、相棒ならそう言うだろうとは思ったけどさ」 「分かってんじゃねェか」 ニヤリと笑うジャンガ。 そうこうしているうちに、シルフィードは寮塔の前に着いていた。 「さてと……あのガキは起きてるか? オイッ、クソガキ、起きてるか!?」 そう呟き、窓に向かって... -
毒の爪の使い魔-30a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 朱に染まった空を、背中にタバサ達を乗せたシルフィードが、アルビオンを目指して飛ぶ。 「それにしても、急ね。いきなり『付いて来て』って言われて、付いて行ったらシルフィードで船を飛び出すなんて」 キュルケは不思議そうにタバサを見つめる。そこで、ハッ、となった。 「ちょっと、そういえばあいつは…ジャンガは?」 その言葉にモンモランシーとギーシュも顔を見合わせる。 タバサは静かに口を開く。 「先に行った」 キュルケ達は一様にキョトンとなる。 「先に行ったって……アルビオンに?」 タバサは頷く。 モンモランシーが驚いた表情になる。 「ちょっ、ちょっと!? あいつは空を飛んだりできないでしょう? なのにどうやって!?」 「ルイズに呼ばれた」 「呼ばれた?」 ジャンガのルーンが消えた事を知らないモンモランシーは首を捻る。 対して... -
毒の爪の使い魔-09
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 背中に衝撃が走るのを感じた。 間を置かずに今度は激痛を覚え、力無く膝を付く。切り裂かれた背中が熱を持ったように熱い。 傷から血が流れ、背中を赤く染め上げながら地面に滴り落ちる。 滝のような汗を流し、荒く呼吸を繰り返すタバサ。ぎこちない動きで後ろを振り返る。 そこには自分の血を滴らせている爪を構えたジャンガが笑いながら立っていた。 そのまま前を見る…、そこにもジャンガは居た。 自分が放ったジャベリンが腹部を貫いているが、それを気にしている様子も無い。既に浮かべていた笑みは消えている。 その様子にタバサは今しがた見た光景を思い出した。…ジャベリンに貫かれながらも、平気で襲い掛かってきた分身の姿を。 つまり、今目の前に居るのは、本人ではなく分身。 タバサは再度、後ろに立っているジャンガを見上げた。 「分身の…ふ... -
毒の爪の使い魔-23b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ラグドリアン湖の近くに位置する旧オルレアン邸に、タバサの乗ったシルフィードは降り立った。 タバサはシルフィードの背から降りると、屋敷を見渡す。 見た限り変化は無い。だが、敵意のような物は微妙に感じられる。 当然だ。最早、用済みの自分を生かしておく理由は何処にも無いのだ。 中には自分を捕らえる…もしくは、始末するための刺客がいるのは間違い無い。 シルフィードもまた屋敷を覆う空気が、夕べとは様変わりしているのを感じ取っていた。 きゅい、と心配そうに鳴きながら主人を見る。 そんなシルフィードにタバサは、いつもと変わらぬ調子で言う。 「あなたはここで待っていて」 「きゅい、きゅい、きゅい!」 鳴きながらシルフィードは首を振る。 今度の相手はガリア王国そのものだ。今までの亜人や幻獣、メイジなどとは違いすぎる。 一国と個人ではお話に... -
毒の爪の使い魔-13
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 広場の真ん中で一人寝転び、ジャンガは澄み渡った青空を見上げていた。 「はァ~」 ため息が口から漏れる。無理も無い…”あんな事”があったんだから。 「ったく…いきなりなんだってんだ、あのガキ?」 悪態を吐きながら、ジャンガは今朝の事を思い出す。 それは朝食の時の事だった―― ジャンガはいつものようにルイズを置いて厨房に真っ先に赴き、シエスタ等に出させた料理やワインを食い漁っていた。 そんな時、突然ルイズが厨房へと踏み込んできたのだ。 自分に向けられる奇異の視線などは気にも留めず、ジャンガに早足で近づくとマフラーの端を掴み、力任せに引っ張った。 突然首を締め上げられ、ジャンガは思わず「ぐえっ!?」と情けない声を上げてしまう。 そして、そのままルイズに強引に外へと連れ出されてしまった。 ... -
毒の爪の使い魔-40-b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 納戸へと戻ったジャンガは、食堂から失敬したワインを煽りながらベッドの上に寝転がっていた。 「さてと……どうすっかな?」 天井を見上げながらジャンガは一人呟く。 今、行方を晦ませたルイズの捜索で、慌てふためく使用人達が立てる足音が城中に響き渡っている。 あれから軽く一時間は経過していると思われるが、一向に見つからないようだ。 「城が広くても人数が有るだろ? ガキ一人まだ見つけられないのかよ?」 タバサも部屋に戻っている。さて、如何暇を潰そうか? 「…あいつは放っておいて、俺とタバサ嬢ちゃんだけで戻るか?」 そんな事を考えていると、扉をノックする音が響いた。 「開いてるゼ?」 ジャンガがそう言うと、再び扉がノックされる。 タバサならば鍵が開いていれば勝手に入ってくる。使用人達ならばノックすらしない。 では…誰だ? ジャンガ... -
毒の爪の使い魔-16b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 出発から二日… その後は何事も無く、ゆるゆると使い魔の空の旅と、ジャンガ以外の使い魔の主人の馬車の旅は続いた。 途中、ラグドリアン湖の近くを通りかかった。 水は引いているようではあったが、直ぐに元通りとはいかないようだ。 おそらくは増水にかけたのと同じ時間、二年をかけて戻していくのだろう。 ジャンガはそんなラグドリアン湖を見下ろしながら、フンッと軽く鼻を鳴らし、寝転んだ。 「ついたのね。早く起きるのね、きゅい!」 「ン?」 ジャンガはシルフィードの声に身体を起こすと、シルフィードから身体を乗り出し、見下ろす。 眼下には、立派なつくりの大名邸が見え、その入り口の前で馬車は停まっていた。 馬車からタバサとキュルケが降り、真っ白な髪に真っ白な髭を蓄えた一人の老僕が出迎えている。 ジャンガは三人が屋敷に... -
毒の爪の使い魔-49
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 唸りを上げるドリルを構え、バグポッドDが突進する。 ジャンガとタバサは同時に散開。動きの鈍重な土ゴーレムがその場に残る。 そのゴーレムに向かってドリルが突き出された。 胸へと叩き込まれたドリルは、しかしゴーレムの手に止められる。 「無駄さ。このまま、また投げ飛ばしてやるよ!」 そう言うフーケに対し、ガーレンは余裕の表情だ。 「フン! それはどうかな!?」 ガーレンがボタンを押すと砲身に光が集まる。 フーケは目を見開く。――この距離で”あれ”は不味い! だが、鈍重なゴーレムに咄嗟に素早い行動をさせるのはどうにも不可能だった。 砲身から極太のレーザーが放たれ、ゴーレムを飲み込む。 一瞬で上半身を丸々消滅させられ、呆気なく崩れ落ちる。 フーケ自身はレーザーが放たれる直前、ゴーレムの肩から飛び降りている。 そのフーケ目掛けてガ... -
毒の爪の使い魔-15a
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ジャンガとルイズの二人が、他の生徒に混ざり優雅にダンスを楽しんでいる一方…、 そんな周囲の空気とは全く無縁の存在がホールの一角に居た。…タバサである。 普段、キュルケ以外の者とは人付き合いが皆無な彼女は、これまでもこのようなパーティの席では、 只管に料理と格闘して過ごしてきたのだ。 そして、今回もその例に漏れなかった訳であり、明るい緑色のパーティドレスに身を包んだ彼女は、 今も現在進行形で料理を平らげ続けていた。 「貴方、踊らないの?」 魅力的な肢体を豪華なドレスに包み、発せられる魅了のオーラに釣り合う男子生徒を引き連れ、 キュルケがタバサの元へとやって来た。 タバサは料理から視線を逸らさず、こくりと頷く。 「この祝賀際の主役は、フーケを捕まえたあたし達なのよ。今日は少し位、貴方も楽しんだらいいじ... -
毒の爪の使い魔-37
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 タルブの草原での戦から数日。 突如侵攻を開始したアルビオン軍に対し、数で劣るアンリエッタ率いるトリステイン軍は奇跡的勝利を収めた。 数で勝る敵軍を破った事により、王女アンリエッタは『聖女』と崇められその人気は絶頂となった。 対し…アルビオン軍の戦力の大半を倒し、実質的な勝因となったジャンガやルイズには特に何も無かった。 それは何故か? ルイズに関して言えばアンリエッタの口止めにある。 伝説の『虚無』に関わるかもしれない為、迂闊に恩賞などを与えようものなら事が公になってしまう。 そうなれば、強大なる力である『虚無』を狙い、様々な”敵”がルイズを狙いかねないからだ。 故に礼を述べるだけに止めるしかなかったのだ。 だが、ジャンガの場合は違う。…”メンドくせェ”と断ったからだ。 元々、正義だの悪だの善行だの悪事だのには拘らず、... -
毒の爪の使い魔-55-b
前ページ毒の爪の使い魔 ジャンガはゆっくりと彼女を振り返る。 「ンだ? お前…あのガキを庇うのか?」 「はい」 ジャンガは盛大にため息を吐く。 「たかだかガキの癇癪で、この熱湯に浸けられて殺されかけたくせに…それでも庇うとはよ…」 「確かにベアトリスさんのした事は間違っているかもしれません。 でも、わたしもまた自分の事を理解して欲しいとわがままを言っていただけなんです。 ハルケギニアの人がどんなにエルフを怖がっているかとか…他の人の気持ちをわたしは考えようとしていませんでした。 だから、悪いのでしたら…わたしもです。ベアトリスさんだけを責めるのは止めてください」 そう言って真正面からティファニアはジャンガを見つめた。 ジャンガも静かにティファニアを見据える。 互いに一歩も譲らない状況で暫しの時が流れた…。 ハァ~、とジャンガがため息を漏らす。 「った... -
毒の爪の使い魔-15b
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 プチ・トロワの前庭に出たタバサとジョーカーは、待機していたシルフィードと合流した。 「では早速、ラグドリアン湖へと参りましょうかネ、シャルロットさん」 相槌を打つでもなく、タバサは無言でシルフィードの背に乗る。 その様子に、やれやれ、といった感じで両手を広げ、首(身体?)を左右に振るジョーカー。 そしてジョーカーもシルフィードに乗ろうとした時、 「キキキ…、こんな夜中に逢引か~。イイ御身分だなァ、タバサ嬢ちゃんよ~?」 小馬鹿にするかのような声が響いた。 タバサとジョーカー(と、シルフィード)は、声の聞こえてきた方へ顔を向ける。 暗闇に浮かぶ紫色の影がそこにあった。 「おやおや?ジャンガちゃん、こんな所へ何用ですか?…まさかワタクシにお会いに――」 「あいにくと、そっちのガキが目当てでな」 ... -
鋼の使い魔
サガフロンティアⅡのギュスターヴ13世 本編 第一部『覚醒篇』 鋼の使い魔-01 鋼の使い魔-02 『ギュスターヴと学院』 鋼の使い魔-03 鋼の使い魔-04 『ギュスターヴの決闘』 鋼の使い魔-05 鋼の使い魔-06 鋼の使い魔-07 『剣と盗賊』 鋼の使い魔-08 鋼の使い魔-09 鋼の使い魔-10 『盗賊捕縛、そして』 鋼の使い魔-11 『教える者、教えられる者』 鋼の使い魔-12 『シエスタは何処へ?』 鋼の使い魔-13 『モット邸潜入』 鋼の使い魔-14 『舞台、その裏は…』 鋼の使い魔-15 『アンリエッタ来訪』 鋼の使い魔-16 『ラ・ロシェールへ向けて…』 鋼の使い魔-17 『秘かな疑惑を胸に』 鋼の使い魔-18 『襲来!土くれのフーケ』 鋼の使い魔-19 『ウェールズ邂逅』 鋼の使い魔-20 『前夜祭は静かに流れ』... -
毒の爪の使い魔-41
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 所変わって、城の中庭。 大きな池に浮かぶ小船の中で毛布に包まり、ルイズは泣いていた。 城の中から自分を探す声が聞こえる。 だが、この小船は小島の陰に隠れ、死角となっている為に、城からは目立たない。 お陰で、此処は幼い頃に使っていた時と同じように安全だった。 とにかく、今は一人でいたい…。それは彼女の心からの願いだった。 ルイズは毛布に包まり、泣きながら考える。 母と姉に好きな人が居ると言われた。 しかし、自分にはそんな人はいない。…いない筈だ。 なのに……何故だか、あの使い魔の顔が頭に浮かんでくる。 違う…、違う…、絶対に違う…。 ルイズは必死になって否定する。だって、ありえないから。 あいつは使い魔なのだ、自分が従えているだけの使い魔。 好き、とか…そんな感情を抱くはずがない。 あいつだって自分の事は何とも思ってい... -
毒の爪の使い魔-52
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――アルビオン・軍港ロサイス―― 戦争が終わってから約一ヶ月。活気が戻りつつあるアルビオンには、連日多くの人が訪れていた。 それはロサイスの周囲を見ても解る。 物売りに来た商人、一山当てようと目論む山師、政府の役人、果ては戦争で会えなかった親戚に会いに来た人、etc、etc…。 訪れる理由は様々なれど、ハルケギニア中の人間がやって来ている事に変わりは無く、溢れ返った人で港は大変な混雑を呈していた。 そんな中、一際目立つ桃色髪の少女が鉄塔のような船着場から下りてきた。ルイズである。 「こりゃ、大変だわ」 ロサイスとその周辺をざっと見回し、ため息混じりに呟く。 嘗ての軍港とは思えない露店の並びようは、まるで降臨祭の続きをやっているかのように感じる。 「何でしょうか、あの名前?」 隣にいつものメイド服姿に大きな鞄を手に持ち、... -
毒の爪の使い魔-12
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「ウザッてェんだよォォォーーー!!!」 叫びながらジャンガは爪を振るう。 目の前の巨躯が切り裂かれ、噴水のような鮮血を振りまく。 どう!と音を立てて切り裂かれた巨躯が倒れるが、同じような巨躯が周囲からまだ迫っている。 舌打し、爪を構えなおす。 ここはハルケギニアにある国の一つ、ガリア王国のとある森の中。 ジャンガは度々学院の外へ出て行く事があったが、今回はちょっとした遠出となっていた。 当人曰く、『例の件についての王宮のお偉いさんのしつこいほどの話に対するイライラの発散の為』との事。 「まァ…ちょいと遠くに来すぎたって感じはするがな?」 巨躯をまた一体切り倒し、ジャンガは呟く。 見渡せば大分数は減った。後2~3体と言ったところか? 地面には血の海が広がり、夥しい数の巨躯の死体が倒れている。... -
毒の爪の使い魔-10
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 青と赤、二つの月の輝きがトリステイン魔法学院を照らす。 そんな夜空を見上げながらジャンガは広場に寝転んでいた。 特に何もする事が無い夜、静かに月を見上げるのが彼の日課となっている。 ジャンガを知る者が見れば、奇妙な光景に映るだろう。 しかし、こうして月を見上げる事は何も此方に呼ばれてからの事ではない。 ”向こう”に居た時もする事が無い夜は同じように静かに月を見上げていた。 無論、理由は暇潰しである所が大きい。…実際はそれだけではないのだが、それはまた別の話である。 「にしても…たかだか怪我が治ったくらいで騒ぎすぎだゼ」 ――決闘騒ぎから既に一週間が経っていた。 あの後、重傷を負っていたギーシュとタバサは広場へとやって来た複数の教師により、 直ぐに医務室へと運ばれ治療を受けた。 ギーシュは解... -
毒の爪の使い魔-19
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 タバサの実家の旧オルレアン公邸。その屋敷の一室にキュルケはいた。 何をするでもなくソファに座って肩肘をつき、窓の外を眺めている。 ふぅ…、と小さくため息を吐く。 彼女は先程から夕食を終えて直ぐに、任務で出て行った友人の事を気にかけていた。 タバサが任務で出かけると言った時、キュルケもまた付いていくと言った。 彼女の事情を知ったが故の気遣いだったのだが、タバサはその申し出を頑なに拒否。 何でも”任務で会わなければならない者がいる”との事。 流石に自分以外の人間を会わせるのは何かと不味いと考えたのだろう。 その後も粘り強く説得したが、タバサは決して首を縦に振らなかった。 「その気持ちだけで十分……ありがとう」 タバサの言葉にキュルケはこれ以上無駄だと言う事を理解し、この屋敷で待つ事にしたのだった。 ... -
毒の爪の使い魔-51
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 漆黒の闇――眼前に広がるのはそれだけ。 どこまでも続く無限にして永遠、光を出しても残り続ける絶対の存在。 それが今己の目に映る全てだった。 「…またかよ」 ジャンガはメンドくさそうに呟く。 一度同じようなのを経験した身だ…、この先の展開は大体想像できてしまう。 ――足音が聞こえた。 やっぱりな、とジャンガは自嘲気味に笑う。 ここまで同じだと呆れ返って物も言えない。 足音は確実に近づいて来る。…と、耳を澄ませていたジャンガは眉を顰める。 ――聞こえる足音が一つだけなのだ。 前の時はもっと大勢の連中が来たはずなのに、今度は何故一人だけなのだろうか? まさか、とジャンガは思う。 もし…、今度来たのがあいつ――シェリーだとしたら…。 いや、だがしかし……今更どの面を下げて会えばいいのだ? 正直に言えば、一番会いたいはずなの... -
ゲーッ!熊の爪の使い魔-11
前ページ次ページゲーッ!熊の爪の使い魔 ゲーッ!熊の爪の使い魔 第十一話 使い魔のお披露目 さて、とうとう使い魔のお披露目の日がやってきた。 学園の生徒たちも普段と違い、緊張したり湧き立ったりしていた。 そしてそんな中、トリステイン王女アンリエッタが学園に到着した。 そして生徒達からのお披露目がはじまった。 アンリエッタは今日この日に喜びを感じていた。 多くの使い魔を見れるから、というわけではない。 自分にとっての親友、大切な幼馴染に会えるからだ。 幾人かの紹介が続く中、ついに待ち望んだ人物が現れた。 ああ、久しぶりだけどあなたは変わっていない。 あのころのままね、ルイズ。 ……でも、どうして心なしか顔が引きつっているのだろう? そんな疑問をよそに、先に上がってきたルイズは続いて使い魔の紹介を行う。 「えー…、その、私... -
ゲーッ!熊の爪の使い魔-01
前ページ次ページゲーッ!熊の爪の使い魔 第一話 やってきたクマ 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 もう何度繰り返したかわからない使い魔を呼び出すための文句。今度こそは、そう信じて少女は再び呪文を唱えた。しかし起きたのはまたしても爆発。また失敗した、皆がそう思っていた中、初めに異変に気付いたのは「実況」の二つ名をもつ学生だった。 「あーっと、あれはなんだーっ!煙の中から何かの影がーっ!」 その声に少女、ルイズも下げていた顔をあげる。確かに煙に隠れてはっきりとは見えないが何かがいる。 やった、ついに成功したの?そう期待を込めて煙が晴れていく様を見詰める。 そして現れたのは、 「ルイズが呼び出したのは、大きなクマちゃんだー!!」 人の大きさ... -
毒の爪の使い魔-47
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――降臨祭最終日:ガリア王国・プチ・トロワ―― 暖かな陽光に照らされる廊下を、一人のメイドが二つの膳の乗った台車を押しながら歩いていた。 一つ膳の上には、焼きたてのふっくらしたパン、色取り取りの野菜のサラダ、肉汁の垂れるローストチキンなどが乗り、 もう一つの膳の上には、暖かな粥の入った大き目の皿、塩の入った瓶、スプーンなどが乗っている。 メイドは廊下の突き当たり、このプチ・トロワの最奥に位置した豪華な扉の前に立ち、ノックをする。 「誰だい?」 中から少々生意気な感じのする少女の声が聞こえた。 「朝食をお持ちしました、イザベラ様」 メイドはそう答え、扉を開けようと取っ手に手を掛ける。すると…、 「ま、待て!? 入って来るな!!」 その言葉にメイドは怪訝な表情を浮かべる。 朝食を持ってきたのに”開けるな”とはど言うことだ... - @wiki全体から「毒の爪の使い魔-29」で調べる