蒼「行ってらっしゃい、マスター」
会社に行くマスターを玄関で見送る僕。いつもの風景。
蒼「さて・・・と。」
お茶を入れて一時のリラックスをしていた時に、それが目に入った。
蒼「あれ?」
そこには、1枚の封筒が置いてあった。
蒼「あれは確か・・・」
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マ「・・・はい。では会議はその日の午後2時ですね・・・はい。では失礼します。」
携帯電話で話してたのは会社の人だろうか。
マ「さて・・・会議の資料はこれ・・・と。忘れないようにしないとな。」
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蒼「確かあの時の・・・大変だ!」
会議の資料を忘れるという、マンガにありがちな事をマスターは平然とやってくれた・・・
蒼「早く届けないと・・・」
しかし、ドールである僕が外を平然と歩いたりしたら大騒ぎになってしまう。
下手したら、マスターに迷惑をかけるかも知れない・・・
蒼「どうしよう・・・そうだ!」
僕はある人の事を思い出して、準備を始めた。
…
外は快晴、平和な昼下がりだ。
ただ・・・
ダンボール箱が動いている事を除けば・・・
蒼「(マスターがやってた
ゲームで、ダンボール箱に隠れて隠密行動するゲームがあったんだ。それを真似すれば・・・)」
…蒼星石よ、スネークの世界と2007年の日本は違うのだぞ…
もちろん通行人は不審に思う。
人が居る所では立ち止まっているが、それが道路のど真ん中とかだと、どう考えても怪しい。
公園に差し掛かった時、それは現れた。
蒼「(野良犬・・・)」
野良犬は蒼星石の入ったダンボール箱の臭いを嗅いだ。そして・・・小をひっかけた。
蒼「(うわっ!!)」
危うく声が出そうだったが、何とかとどまった。
蒼「(くさいよ―このダンボールはもう使えないや)」
蒼星石は、辺りに人が居ない事を確認して、ダンボールから脱出した。
蒼「さて・・・人目の付かない場所を行くしかないか。」
蒼星石は、マスターの会社への近道を順々に辿った。
マスターの会議まで、もう時間が無い。
しかし、その近道に立ちはばかるものがあった。
蒼「この空き地の隙間を通れば近道なんだけど・・・」
そこには、草が生い茂っていた。
蒼「・・・仕方ない、レンピカ!」
後日、その空き地の一部が派手に伐採されている様子が、子供達によって発見されたという・・・
そうして、マスターの会社に辿りついた。時間は午後1時20分。
しかし、まさか正面玄関から入る訳にはいかない。
蒼「そういえば・・・マスターは敵の注意を逸らして潜入するって方法取ってたっけ・・・」
蒼星石は、辺りを見回した。
すると、荷台ギリギリの木材を積んでいるトラックが目に付いた。
蒼「・・・ちょっと手荒いけど・・・レンピカ!」
マ「ただいま、蒼星石。」
蒼「おかえりなさい、マスター。」
いつもの夕方の風景だった。
マ「いや―今日会社の前で、過積載のトラックが荷台崩壊起こして、騒然となってたよ。」
蒼「怖いですね―」
もちろん犯人が僕だなんて言えない。レンピカに荷を切ってもらったなんて・・・
マ「会社のみんながその騒ぎで飛び出したんよ・・・警備員の人もな。」
僕はその隙に、マスターの鞄に資料を入れたのだ。
マ「まぁとにかく、一時騒然となったけど、何とか収まっt・・・っと」
マスターは携帯の着信に応えた。
マ「・・・はい、大丈夫です・・・えぇ、明日の会議に支障は・・・」
蒼「あ・・・明日・・・!?」
僕はそのマスターの言葉に驚いた。
マ「・・・はい・・・では。・・・いやなぁ、明日の会議用の資料が何故か鞄に入っててな。」
蒼「明日の・・・」
マ「いやはや、オレもそこまでボケるようになったかと、ちと悲しくなったぜ。」
そう言って、大きく笑い出した。
蒼「は・・・ははは・・・」
もちろん僕としては笑えない。
大掛かりな騒ぎ起こして届けたモノが、実は明日のモノだったなんて・・・
最終更新:2007年07月09日 12:02