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エリス

<タイプ> <狂言者> タイプ オリンポス
種族 神族 ジョブ アタッカー
HP 300 ATK 5
DEF 10 コスト 10
アビリティ
召喚 ハイエヴォルカット
覚醒 なし
超覚醒 なし
飲まず、食わず、寝ずで行う、あいつ――金毛竜との根競べ。

その戦いの果てに、たったひとつ手に入る“黄金の林檎”。
あの禁断の果実を、あれから何度穫りに行ったことだろう。
毎回、これが最後と思いながらも、テティスから催促の手紙が届く度に、つい応えてしまう。
でも、それがいけなかった。私の体は、自分が思う以上にボロボロだったらしい。

何十個目かの林檎を手にしたその帰路で、急に目の前に闇が差し、私はそのまま意識を失った。
しかもその時、手に入れた林檎まで失くしてしまったようだ――あれが、最後の林檎だったのに…。

侍女に発見され、寝所で目覚めた私は、もう起き上がることすらできない程に衰弱していた。

――テティスは、黄金の林檎を待っているかしら…。

失くした林檎は侍女に探しに行かせた。
しかし、こんなことになってもまだ彼女のことを心配している――そんな自分に、我ながら虚しくなる。

テティスに大事な存在だと思われたい――その一心で、私は危険な林檎穫りを続けてきた。
しかし、彼女が一番大切に思っているのは、まだ生まれてすらいない“息子”。
もし、私のことも大切と思ってくれているとしたら、それは、その息子の為に林檎を届けてくれるから。
林檎を送らなくなった私のことなど、すぐに忘れてしまうのだろう――あの、結婚式の時のように。

私はこのまま彼女の心に留まることもなく、ひとり儚くなるのだ――
目を閉じそう思うと、すべてがどうでも良くなった。
そしてただ、孤独な闇の中へと沈んでいこうとした、その時――

「エリス、どうしたの!? …いったい何があったの!?」

幻聴だろうか…我ながら本当に嫌になる。不死身料理の研究に夢中な彼女が、ここにいるわけがない――
しかし、心の端に残っていた僅かな期待が、私に重いまぶたを開けさせた。

おぼろげな視界の中に、テティスの不安げな顔が浮かんだ。

こんな時にまで、こんな幻――私は自嘲の笑みを浮かべる。かすむ彼女が私の手を握る。
まさかとは思いながら、私もゆっくりと握り返してみる。

――あぁ、本物のテティスだ。

その手は、とても温かかった。

テティスは私のことを忘れてなどいなかった――テティスは私のことを分かってくれていた――
もうそれだけで、十分だった。

彼女は悲しそうな目で、一生懸命何かを語り掛けてくれたが、
思考がおぼろげで何を言っているのかはわからなかった。

――最後に…会えて良かったな。

…そんな思いに包まれながら、再び意識が遠のき始めたその時、エリスが私の前に何かを差し出した。
かすむ目を細め、その黒い何かに目を凝らす。

「これは不死身料理の試作――あなたの林檎で作ったアップルパイなの…!」

……パ…イ? この、黒々と鈍く光るフライパンのようなものが…!?

私は、身をそらし、その黒い物体から逃れようとした。しかし、弱った体は思うように動かない。
必死に逃れようと力を籠め、もがき、わずかに退いた私の体を、
テティスはがっしりと掴み、自分の方へと引き寄せる。
そして、おぞましい臭いを漂わせる、そのどす黒い円盤を私の口へとねじ込んだ。

――無・理!!

瞬間、頭からつま先まで衝撃の槍が貫き、続いて凄まじい悪寒が体中を駆け巡った。
心臓は早鐘のように危険を知らせ、視界は嵐のように渦を巻いた。

「どうしたの!? エリス!?」

私はその凄まじい味――いや、もはや“味”という名の暴力に呻くことしかできない。

「どうして!? 不死身料理のはずなのに…! まさか、また失敗……!?
どうしよう…もう林檎は無いのに……どうしよう…エリスが…死んじゃう!!」

…死ん……確かに、このままじゃ――
黒い塊から零れ落ちる真っ黒な絶望が、私をじくじくと押し潰していく。

――バンッ!!!

その時、寝所の扉が開け放たれ、侍女が部屋に転がり込んできた。
侍女はテティスの腕から私の体を奪い取り、息せいて何かを私の口に押し当てる。
それは、輝く果実――私が無くしたはずの、黄金の林檎だった。

――そうだ…この神力に満ちあふれたを実を食べれば…ナイス侍女!

私は最後の力を顎へと集め、林檎に思いっきり歯を立てる。

しかし、その口は、虚しく空を食んだ。何事かと目を開くと、侍女の手に――
そこにあったはずの林檎がない。

見上げると、何か良いことを思いついたと言わんばかりのテティスが、
爛々と瞳を輝かせて私を見下ろしていた。そして、その手に握っていたのは――最後の、黄金の林檎。

「エリス! 待ってて! 今すぐ料理を作り直してくるから!」

――もう一度……あれ…を…? 嫌だ…絶対に無理…冗談じゃないわ…
あんなものをもうひと口でも食べたら―――本当に死んじゃう!!!!!!

そう思った瞬間、私の体は勝手に動いていた。
ベッドから飛び起きると、テティスの手から林檎をもぎとり、
それを窓の外に向かって渾身の力で――放り投げた。

黄金の林檎は、流星のような軌跡と共に、遥か彼方へと消えてゆく。

「エリス!? …元気に…なったの…?」

ふと、後ろから聞こえたテティスの声で我に返った。
気付けば両足にはしっかりと力が入り、ふらつく様子もない。

――そんな…あの暗黒そのものを形にしたような、不死身料理が効いた…の…?

殺されかけた料理に助けられるとは、皮肉なものだと思いながら、
私は苦笑を浮かべ、テティスの方に向き直る。すると、彼女は私を強く抱きしめた。

「よかった…! …本当に…本当に!」

――何を言って…そもそもこれはあなたの所為で…。

やはり、もうだめだ。これ以上は…こんなのは違う…。もう、終わりにしよう。
今のが最後の林檎…そして、あなたとの友情ももうお終い。
悲しいけれど、私から告げよう――意を決して開いた私の唇を、テティスはそっと指で押し止めた。

「…いいの、もういいのよエリス」

――?

「私が間違っていたわ。
いくら息子のためとはいえ、エリスを苦しめるようなものに、頼ってはいけなかったのよ。
だからもう――黄金の林檎はいらないわ」

驚いた。それはつまり、もう“不死身の息子”という馬鹿げた夢はあきらめてくれるという意味だろうか。
あれほどまでに執着し続けた夢を…
しかし、自分を信じ、決してあきらめることなどない、あのテティスがそんなわけ――

「息子を不死身にする方法は、他にもあると思うの。
そう、この広い世界を探せばきっと他にもあるはずよ!
そうね…『創世主』の力を宿したあの“紅い石”なんてどうかしら?
うん、きっといけるわ! そうと決まればさっそく出発しなきゃ!」

――ほら、やっぱり……。落胆する私をよそに、テティスは無邪気な笑顔で続ける。

「だから、もちろんエリスも一緒よ――」

そしてこれだ。いつも通り、結局は“息子”。
私が命の危険にさらされたこんな時にまで、まだ私を巻き込もうとする。
やっぱり、これじゃない。こんな風に、ただ頼られたかったんじゃない。
私が欲しかった――ずっと欲しかった“言葉”は、こんなものじゃない……。
「――あなたと私は親友だものね♪」

――今、なんて…それは……そっか…

私は目を閉じ、大きく息を吸った。体中に何かすがすがしい息吹が巡っているのを感じる。
私は、いつものように口の片端を吊り上げて眉を下げ――

「もう、しょうがない“親友”だなぁ」

――そう、言って笑った。
身長 1.46[meter]
体重 かなりやつれたわ…
徹夜の数 もう数えてないわ…
テティス ……ふぅ…
テティスの息子 そう…まだいないのよね…
黄金のリンゴ …うっぷ
イラストレーター クレタ
最終更新:2017年04月25日 01:22