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スプンタ・マンユ

<タイプ> <大神> タイプ ゾロアスト
種族 神族 ジョブ アタッカー
HP 600 ATK 100
DEF 100 コスト 70
アビリティ
召喚 なし
覚醒 クリティカルアタック
超覚醒 【白】ハイクリティカルカット/【黒】クリティカルペインT
チェンジ
炎、瓦礫、煙――悲鳴、嗚咽、恐慌――見渡す限りの破滅が広がっている。

世界が終末のラッパを聴いてからどれほどの時が経っただろうか。

聖人に導かれて、地より「四人の騎士」が現れ、騎士らが現れた穴の底から「奈落の王」が現れた。

継いで、「奈落の王」の身に塞がれていた地獄の門が開き、
地獄の底に繋がれていたはずのサタンが、悪魔の群れを率い現れた。

現れた破壊者たちは黒皮の翼を震わせ、
蝗の群れのごとく黒々と、全てを喰らい尽くさんばかりに世界を蝕み広がっていった。

しかし、悪魔たちの顔に破壊の悦を浮かべる笑みは無い。
その目は爛々と戦の興奮に濡れ、その喉は自らを鼓舞するように雄叫びを上げるのみ――
それもそのはず、この破滅は“贄”なのだから。

彼らは、世界の破滅という撒餌に群がってくるであろう、打ち倒すべき天敵の出現を待っているのだから。

もうすぐだ――いずれこの破滅に染まった大地に、白き翼を持つ者たちが降り立ち、
世界は白と黒が雌雄を決する巨大な破壊に飲み込まれていくのだろう。


――そんな、誰もが天を仰ぎ、嘆きと救いの願いを吐き散らしてやまぬ世界で、
二つの影が下を向き、昏く開いた奈落の底を見続けていた。

「これは、来たねぇ…」

影のひとつが呟いた。

「…来られたのか?」

声を聞いたもうひとつの影が、あわてて身を乗り出し、穴の奥を凝視する。

その端正な横顔に、四つの瞳が重なる。それは二匹の蛇――
するりと伸びたその首の先は、影の両肩へと吸い込まれていた。

“蛇持つ影”は、目を細めたり開いたりしながら、食い入るように穴の奥に目を凝らす。

ふと、穴の底の闇が、ひゅるりと赤く揺れた。

「あぁ、これは……間違いない」

蛇持つ影はじわりとした笑みを浮かべ、両肩の蛇たちも続いて嬉しそうにしゅるしゅる舌を震わせる。

穴の底からせり上がるように、徐々に赤い光点が膨らんでいく。

それは、灼光を発しながら、丸々とした巨体をくねらす“蛇”だった。

蛇は、巨大な胎児のようにだらしない体を、ずるずると引きずるようにして奈落の壁をせり上がってくる。

「ヒヒヒ、趣味じゃないねぇ」

「何を言う、あの極限たる禍々しさこそが“絶対”の象徴なのではないか――
あぁ…お久しゅうございます、絶対なる悪の君よ…」

蛇持つ影は、地上へと迫りくる赤い巨光へとひざまずく。もうひとつの影は、蛇持つ影に問いかけた。

「それで、“あっち”の方は本当に来るのかい?」

「あの方がこのまま地上に上がってくださればね」

「イヒッ…ずいぶんと単純な仕組みだよ」

蛇持つ影は立ち上がり、地上を覆う凄惨な破壊を見渡した。

「だが、今のままでは足らぬな。
あさましい『ヤザダ』の面々がそろりと顔をのぞかせるくらいか、よしんば来たとして、
先走りかましいミトラスぐらいなものだろうよ。
天使と悪魔どもには、もう幾ばくか破壊の芳香を広げ、
あの方を確実に地上に引っ張り上げてもらわねばならん――
しかし、改めて礼を言うぞレムニウス。この“黙示録”の体現、お前なしには成し得なかった」

レムニウスと呼ばれた影は、老人の顔に似合わず、乙女のように頬に手を当てて腰をくねらせた。

「やめとくれよ。自慢の白い顔が火照って桃色になっちまう。
あたしゃ大いなる大天使様の命に従っただけさ」

「よく言う。お前が“アレ”に吹き込んだのであろうに、聖レムニウス…いや――混沌の使者よ」

影は、ヒッヒッヒと肩を揺らし、笑った。

「それを解った上でかい? 貪欲なうわばみだねぇ…
あの赤くてでかいのは、お前の主人なのだろう?――アジ・ダハーカ」

「今はザッハークだ。おぉ…はじまるぞ」

蛇持つ影――ザッハークが空を見上げた。

陰鬱に天を覆う雲に切れ間が走り、次々と光の柱が地上に垂れる。

すると、見よ――
光の柱を辿り、白い翼をはためかせた無数の天兵が次々と地上へと舞い降りてくるではないか。

それを目にした悪魔たちは、待ちかねたとばかりに、白翼持つ天敵を迎え撃たんと飛び上がる。

黒い群れと白い群れがぶつかり、捻じれ、入り混じり、
地上の様々な形あるものを巻き込んで、破壊の渦が広がっていく。

「ハハハハ、なんともさもしいな。
どいつもこいつも、正義は悪を、悪は正義を喰らわんと、なんと自動的であることか!
命としては虫や魚と変わらぬな。どうにも意味無くちんけな破壊であるよ――」

ザッハークが高く笑い声を上げたその時――
ドドンと地面が大きく揺れ、『穴』より赤い巨魁が噴火のごとく飛び出した。

そして、宙でいくらかもがいた後に地響きを立てて地に落ちたその姿を、
ザッハークは、愛おしげに目で追う。

「――しかし我が主人は、それが何よりの“好物”だ」

レムニウスがその衝撃によろよろとよろけながら、
目深にかぶったフードを外して白い顔をのぞかせ、蠢く巨大な赤い蛇を見上げる。

「ヒヒッ…なるほどねぇ、アンラ・マンユ――間近で見ると悪くないね」

「そう…そして“奴”もまた、“絶対”であるがゆえに“絶対”に吸い寄せられる」

赤き絶対悪、アンラ・マンユが頭をのけ反らして吠え上げた。

その叫びは、木々を枯らし、地を腐らせ、魂を貶め――そして、天を割った。

天が、ずずぅときしみを上げる。そして、巨大な影がはみ落ちた。

ザッハークが喝采を叫び、レムニウスが目を見張る。

割れた天から落ちたものは、アンラ・マンユと同じ程の巨体を揺らす白銀の精霊――。

「ヒーヒッ! これが『善』! こりゃまた戯けた姿じゃわい」

「あぁ、そうだ…脳にシワの乏しい、
古生代の爬虫類が如き姿のアレが、『悪』に抗する聖なる『善』の鉄槌というのだから、
やはり、『悪』も『善』も根本は変わらぬということよ。
『絶対』に近づく程に、その境界は混じり合ってゆくのだ。
だがね、アンラ…スプンタ…私にとっては、どちらもひどく神々しくて、愛おしい――」

眼下に広がる“悪”を前にし、聖霊は身を震わすと、蛹から蝶が羽化するかのように、
ゆっくりと“絶対的な善”の翼を天空いっぱいに広げた。

「さて、では行くとしよう」

それを見たザッハークが外套をひるがして進み出る。
その背中を、レムニウスはまぶしそうに目を細めて見送る。
しかし、ザッハークは数歩踏み出したのち、ひたと止まって背後へと語りかけた。

「…このまま、私を見逃して良いのか? ともすれば、お前らの敵となるのやも知れぬぞ?」

「ヒヒッ、あんたはあたし好みのいい男だからね。
いい男の門出を、祝って送り出してやるのがいい女の務めというもんじゃよ。
それに、あたしの思惑じゃあ、この先あんたの出番はたぁんとあるからねぇ」

「『鍵』により開かれた『門』の先、か…」

そして、再びザッハークはゆるりと歩き出した。

「聖レムニウスよ、最後にお前の本当の名を聞いておこうか――
“なってしまえば”、私はお前も喰らってしまうかもしれない」

「おや恐ろしいねぇ…覚えておきな。あたしゃヒグーだ――ヒグー・ドレイル。
あんたとは…ヒヒ…手を組んでも、殺し合いとなっても、愛を感じられそうじゃよ」

ザッハークは、フンと鼻を鳴らすと「では、『門』の先にて」と言葉を残し、両肩の蛇を優しく撫でた。

「さぁ、シャル、ザラーム長らく待たせたね。
ふたりとも、どちらの脳が良いかな? どちらも――なんとも美味そうだ」

蛇たちが、嬉しそうにしゅるると舌を動かし呼応する。

「――それでは、絶対の悪と絶対の善を喰らい、『アフラ・マズダー』になるとしよう」

そう言うとザッハークは、二極の“絶対”がもつれ合う戦場へと飛び降りた。


~『レム黙示録』終章・外典~
全長 本来実体は無い
重量 本来実体は無い
性質 只々純粋に善
司るもの 善、創造
同朋 六柱のアムシャ・スプンタ
その善 自動的
イラストレーター 茂木 雄介
最終更新:2017年05月09日 13:55