【旅立】アトロポス
| <タイプ> |
<純真者> |
タイプ |
オリンポス |
| 種族 |
神族 |
ジョブ |
アタッカー |
| HP |
600 |
ATK |
90 |
| DEF |
120 |
コスト |
70 |
| アビリティ |
| 召喚 |
なし |
| 覚醒 |
なし |
| 超覚醒 |
赤の断律 |
――それは、糸絶つ赤い鋏。
古びた糸に、優しく刃をあて、運命という命の終わりをそっと囁く。
けれどそれは、日と共に落ちた闇の出口、そう、新たなる、旅立ち――。
「はー、これでよし……っと」
慎重に刃を引くと、あたしは額に浮かんだ汗を手で拭った。
一息ついて見上げると、
広い作業部屋にはまだまだ数えきれないほどの『運命の糸』が漂っている。
「……こう、まとめて一気にちょきちょきーん! って出来ればいいのになぁ」
チャキチャキと、手にした愛用のハサミ
『ディミオスくん3号』を鳴らしながらそうこぼしてみる――
が、一気になんてしちゃいけないことは当然わかってる。
これは大事なお仕事で、ぜったいに失敗しちゃいけないのだ。
もし失敗したら、クロ姉に怒られ、クロ姉を怒らせたことでラケ姉が怒り、
あの思い出すだけで恐ろしいトラウマ体験がまた――だから慎重に慎重を重ねて、
もひとつ慎重でくるんじゃうくらい慎重にやらなきゃいけない。
「よっし! きゅーけー終わり! つーぎーはー……」
あたしは漂うたくさんの糸を見上げ、目を凝らした。
「えーと……あれとー、あれとー、あれもそうじゃん! もー! また増えてるー!!」
探しているのは、ボサボサとほつれて、黒くなってしまった糸。
それらをひとつふたつと数えてみると、
まだまだたくさんあって今もなお増え続けているようだった。
「あーゆーのを放っておくと、『鍵』ってのになっちゃうかもなんだよねぇ」
『鍵』というのがなんなのか、あたしにはよくわからなかったけど、
すごく悪いものなんだってクロ姉は言っていた。
初めはまっ白な心だったのに、
いつのまにか芽生えた良くないものが何かのきっかけで次第にふくれていくと、
その『鍵』ってのになっちゃうらしい。
あのほつれた糸はその“なりかけ”の証なのだ。
だから、そんなふうに決定的に悪くになっちゃう前に、
そいつの『運命の糸』からぴょんぴょん飛び出した黒いほつれ糸だけを斬り落として、
ふつうの糸に戻すのがあたしの役目だ。
切るのはあくまで“ほつれ糸”だけ、これがとにかく神経を使う。
もし間違って『運命の糸』そのものを切っちゃったら、その人は“死刑決定”というわけだ――
ついでに、あたしも……。
よっと――翼をはためかせて、先っぽがほつれて無茶苦茶になってしまった糸に刃をあてがう。
「むぅ……この、あたりかなぁ。慎重に……しんちょーーにぃ……」
――チョッキン!
小気味よい音と共に、糸のほつれた部分がはらりと落ちていく。
「ふぃ~~」
ひとつ切るたびに息を吐く。
「ふふ~ん、なかなか上手くなってきたんじゃないかな~♪ この調子でちょきちょきっとね!」
――ではない。いけないいけない、すぐ調子に乗ってしまうのがあたしの悪い癖だ。
もっとこうラケ姉の怒った時の顔を思い出して……
あの大事にとっておいたお菓子を食べてしまったときの、あの……ひ、ひいいいい!
「やばい……胸がドキドキしてこれ以上はお仕事どころじゃなくなっちゃいそうだ……」
ぶんぶんと首を振り頭の中のトラウマを吹き飛ばすと、新たなほつれ糸に向かった。
「……おりょ?」
ちらりと、1本の糸が目に入った。
その糸は先細りしながらぐにゃぐにゃと歪み、その先の方から、
どす黒くてもはや黒光りしてしまっている程のほつれ糸が、元の糸よりも太くなって伸びていた。
「んんー? なんだろこれ……こんな変なの見たことないや」
何にせよ、これは「ダメな糸」に違いない。
こんな糸になるなんて、いったいどんな子なんだろう……?
「……ちょっと、覗いてみよっかな」
あたしは糸を手に取って、作業部屋の端にある水甕の水面を撫でた。
すると波紋が広がり、糸の持ち主が映し出されていく。
それは、ボロボロになりながらも、長い長い戦いの旅を続けている男の人だった。
「名前は……えーと、ヤマ…トタケ……さん?」
この黒いほつれ糸の所為だろうか、ノイズがひどくて良く読み取れない。
映し出されたその人は、もうほとんど動かない手足を引きずって、
必死にもがいているようだった。
苦悶に満ちた表情でそれでも進むのをやめない――
この人には何かどうしても死ねない、強い未練みたいなものがあるのかもしれなかった。
「……これ以上糸が細くなっちゃたら、もっとかわいそうなことになっちゃうかも……
でもこのまま“ダメ”になっちゃうよりはいいよね?」
見なきゃよかったなぁ、と内心思いながら、
よいしょとディミオスくん3号を持ち上げて刃先を当てる。
黒く延びる糸の根元に狙いを定めて握る手に力を込め、
「それじゃー切っちゃうね。せーの、ちょっき――んん??」
ちょきんと音を響かせてほつれ糸は断ち切られる――はずだった。
けど、どうにも手応えがない。
見ると、糸は元あった場所になく、ひょいと刃を避けて空中を漂っていた。
「え? なにコレ!?」
あたしは糸を追いかけて、二度、三度と、切りかかる。
しかしその度に糸はひょい、ひょひょいと揺れながら、刃をかわして逃げていく。
「ぐぬ……なんで!? こんなの初めてなんだけど……
って、わっ!! ヤマトタケさんが……!」
見ると、水面に映る彼が、ものすごい形相で苦しみ始めていた。
このままだと「ダメ」になっちゃう……理由なんて考えるまでもない、この変な糸のせいだ。
早く、このほつれ糸を切り取らないと――!!
「こんのー! もう、本気だからね! 本気のちょっきんやっちゃうからね!
アトロポスちゃんを……なめるなよーーー!!」
あざ笑うようにふわふわと揺れる糸に狙いを定め、
地面を蹴って思いっ切り翼を羽ばたかせて糸へと飛ぶ。
「せーーーーーーのっ!!」
糸に悟られないように限界ぎりぎりまでハサミを閉じたまま空気を裂いて直進し、
すんでのところで素早く開く――。
「ちょーーーーーっきん!!!」
ジャッキーーーーン!!!
確かな手ごたえと共に、切り取られた糸がひらひらと落ちていく。
「ふっふ~んだ、あたしが本気になればこれくらいよゆーよゆー!
さーて、ヤマトタケさんは、と……」
一時はどうなることかと思ったけど、これで彼も「ダメ」になることなくちゃんと――
「……あれ?」
水面に映るヤマトタケさんは相変わらず苦しみ続けていた――
というか、なんか真っ黒なロボになっていた。
何これ……そんなはずは!?――振り返って漂う彼の糸を確認すると、ほつれ糸は、
切り取られるどころか更にほつれが増して黒々と輝き、
『運命の糸』そのものまで浸食するように真っ黒に染め変えていた。
「……あれ? 切れて……ない?」
目をこすり、何度も見直してみるが、やはりそれはヤマトタケさんの糸のようだった。
「……おっかしーなー。さっき確かに切った感触あったんだけ……ど……?」
ヤマトタケさんの黒い糸がひょろりと横に動く。見ると、その後ろに弱々しく漂う糸が……。
「う……」
その糸は、明らかに普通の糸よりバッサリと短く――。
「……うっぎゃーーー!!! 違う人の切っちゃったーーーーーー!!!!」
全身から血の気が引いた。
これはどう見てもあたしのミスだ。あれほど慎重にやれと言われていたのに……。
目の前が真っ暗になり、微笑みながら静かに怒るクロ姉の顔と共に、
暗闇にぼぅっと光るラケ姉の怒りの眼が頭をよぎる。
「どどどどどどうしよ……!
これはさすがに……さすがに怒られ……いや、死んじゃうかも!?」
どうして狙いを外したのだろうか……良く見ると、その糸もまた黒く染まっていた。
だから見間違えたのかもしれない――が、今はそんなことを考えている場合ではない。
「と、とにかく確認しなきゃ……!」
とばっちりで切ってしまった糸を手に取り、急いで状態を確認する。
「……えーと、この糸の持ち主は魔法使いの――お人形……さん?」
その糸もやはりノイズを発していて、断片的にしか情報が読み取れなかった。
しかしそれは、普通の人とは異なり、なんというか、魂の無いお人形に、
違う人の魂を入れてしまったような、そんな不思議な感じがした。
「なんだろ……不思議な糸……えと、名前はマルグリ――いやいや!
そんなことより、早くなんとかしなきゃだ!」
部屋中を飛び回り、この糸と相性の良さそうな糸を探す。
そしてやっとみつけた1本の白い糸を、切ってしまった糸にくくりつけてギュッと縛った。
「……これでよしっと!
似たような魔法使いさんの糸を持ってきたから、もうだいじょーぶ……たぶん! きっと!」
思ったより自然な結び目にできたことに満足すると、
その糸をちょんと押して見つけにくい部屋の隅へと追いやる。
そして大きく伸びをして、息を吐いた。
「はー、なんとかなった!
よーし、反省はするけど落ち込まないのが、アトロポスちゃんの良いところ!
さ・て・と、大分お仕事がんばったしぃ――」
こうして、あたしはちょっと旅に出ることにした。
| 身長 |
ふふ、1.54meterよ |
| 体重 |
たしか、43kgだったかしら |
| 秘められた性格 |
涙もろい |
| 性質 |
力が強い |
| 苦手 |
パズル |
| 特技 |
早食い |
| イラストレーター |
匡吉 |
最終更新:2017年05月27日 14:37