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【飛翔】ラケシス

<タイプ> <純真者> タイプ オリンポス
種族 神族 ジョブ アタッカー
HP 550 ATK 120
DEF 120 コスト 40
アビリティ
降臨 降臨『緑の調律』
 ――それは、糸測る緑の糸巻き。

 ふわりと踊るようにたゆたう糸は、遍く命の辿る道を示す。

 糸巻きから流れ出る糸を選り分けて、編み目を綺麗に測りそろえて1つ、
また1つと糸を結い合わせていく――手繰る手をしばし止め、わたしはひとつ息をついた。

「ふぅ……たぶん、うまくできてる……よね……」

 今わたしがやっているのは、生ある者たちの『運命の糸』を組み合わせ、
繋ぎ、結び、“縁”を作るという仕事だ。

 普段であれば、太い糸や細い糸、長い糸や短い糸、それぞれをバランスよく組み合わせ、
美しい縁の組み紐を編み上げて、命を運命の空へと飛翔させていくだけ……
けれど今回は、一度編み終えた組み紐を解き、
そこに強い運命の光を持つひも同士を繋いで再び結い合わせていく――。

 いつもなら、一度編まれた組み紐に手を加えることなんてないし、
そんなことはしてはいけないと姉さまにきつく言われていたけど、今回は事情が違うのだ。

「……世界の行く末がかかってるんだもんね……でも、わたしなんかが――」

 気後れからか、不安で頭がいっぱいになりそうになるが、
頭を振ってそれを吹き飛ばし事の始まりを思い出す。

 あれは、姉さまのお友だちの正義の女神、
アストレイアさまがやって来たときのことだった――。

 アストレイアさまと何やら長いお話を終えた姉さまは、わたしと妹のアーちゃんを呼び出し、
13の『剣』と『鍵』、そしてそれらに関わる世界の危機について教えてくれた。

 難しいことは理解できなかったけれど、
あの聡明でいつも穏やかな姉さまがとってもお顔を曇らせていたのだ。
ただごとであるはずがない。

 それからわたしはこうして姉さまの言い付けどおりに、
世界が辿る運命を良い流れへと導くために運命の糸を組みあげているのだが、
その責任の重さを時々思い出してはつい怖気づいてしまう……。

「ううん……こんな弱気じゃダメ。大事なお仕事だもの……もっと集中しないと……」

 わたしの役目は、『運命の糸』を組み合わせて“巡りあわせ”を創り出すこと――
『剣』となる資質を持った者に良い出会いをもたらし、成長を促すのだ。

 あれからわたしは本来交わらないはずの者たちの運命を、手繰り、束ね、
既にいくつもの“巡りあわせ”を創ってきた。

「そういえば……あの子、元気かなぁ」

 前にわたしが結んだ運命の持ち主の一人、まだ幼いアマゾネスの女の子のことを思い出す。

 わたしにできるのは“縁”を作るところまで――
それからどう転ぶかはあくまでも本人に任せるしかない。

 なので創った“巡りあわせ”が悪いことにならないか、
『遠見の水面』を通してその行く末を見届けるときは常に心配で、ハラハラしてしまう。

 しかし彼女は“縁”を結んだ者たちとの絆を育て、それを自らの糧として立派に成長していった。
明るく誰からも愛される彼女ならば、きっと正しい道を歩んでいってくれるに違いない。

「……あの子のことも気になるけど、今はこっちに集中……です!」

 余計な考えを追い払うようにぴしゃりと頬を両手で叩き、わたしは目の前の組み紐に集中した。

 この組み紐の中心となっている糸は、今回のお仕事の準備をしていたときに、
アーちゃんの作業場で拾った。

 わたしはその短くて、ボロボロな糸を見て驚いた。

 これ程短い『運命の糸』は、普通ならとっくに命の終わりを迎えて塵になっているはず――
しかし、その糸はボロボロになって黒ずみながらも、わずかに命の輝きを放ち続けていた。
寄り添うように重なり落ちていた黒い糸と、互いに命の光を支え合うように――。

 わたしは、そっとその白い糸に触れ驚いた。
その糸からは『剣』の子たちと同じ輝きを感じたからだ。

 いそいで姉さまに伝えると、姉さまは驚いたように目を見開いた後、
いつものように微笑んで「良くやったわラケ」と褒めてくれた。
どうやらその糸は、ずっと誰だかわからなかった『剣』の、最後のひとりの糸だったらしい。
たしか、『白き勝利の乙女』といっただろうか……。

 そのあと姉さまは困ったような、すまなそうな顔をして、
「この糸の方に謝らなければならないわね」と言っていた。
そういえば、大昔にこんなボロボロの糸を見つけて失くしてしまったような……。

 とにかく、わたしはそのボロボロ糸のほつれを直し、側にあった黒い糸と寄りあわせ、
糸に再び輝く力を与えていった。

 白い糸からは、他の『剣』の子たちとは違い、
これ以上ない程に理不尽な世界への“怒り”と“恨み”を感じた。
そんな“彼女”に、わたしの力なんかが本当に届くかはわからない。
それでもわたしは必死に、
彼女にとって良い“巡りあわせ”が生まれるよう『運命の糸』を組み続けた。

「やっと……ここまで来たんだもんね……がんばらなきゃ……です!」

 初めは弱々しかった糸の輝きは、いつの間にか組み紐のなかで、強い光を放っていた。

 組み紐に触れ、『遠見の水面』をのぞくと、“彼女”の今が映し出される。

 彼女の周りには様々な面々が集まっていた――
暇を持て余した美と豊穣の女神さま、偏屈で慇懃な悪魔さん、
それに、わたしたちの同胞である、あの愛の女神アフロディーテさままで――
普通であれば決して交わることはなかったであろう面々に囲まれ、
初めこそは翻弄されっぱなしだったが、その出会いは次第に彼女の頑なな心を溶かしていった。

「ああ……あんなに強情で、見るものすべて拒絶していたあの子が、
今はこんなに笑って……ぐすん……」

 水面に映る彼女の変化と成長を目にし、胸に熱いものが込み上げてくる。

「う……うう……よかった……よかったね……よし……!」

 涙を拭うと、わたしは組み紐がほどけないようそっと作業台に置いて立ち上がった。
もっと、もっと彼女を幸せにしてあげたい――。

 そして、さらに強い輝きを放つ糸を見つけようと糸巻き棚を探す。

「もっとたくさんの良い“巡りあわせ”を……待っててね」

 たくさんの糸の中にいくつか変わった輝きを放つ糸が目に留まり、手に取ってみた。
あたたかな夢のような輝きを放つ赤金の糸――
すこし怖い感じがする、でもとっても純真な光を放つ白い糸――

「ふふ 今度はこんな“巡りあわせ”はどうかな……あ……」

――ドンガラガッシャン!!

「いたたた……」

 何かに引っかかって派手に転んでしまった。
うずくまり、したたかに打ちつけた膝をさすりながら足元を見ると、
薄紅色の糸が足に絡みついていた。

 その薄く淡く輝く糸は、なんだろう……「不幸そう」としか表現できないような、
なんとも言えない色をしていて……いけない、そんなことより組み紐を――。

「ひぁぁぁ!! あ……あわわわわ……」

 わたしは目を見開いた――なんということだろう、派手に転んだとは思ったが、
その拍子に作業台がひっくり返り、編み上げた組み紐がばらばらになってしまっていた。

 わたしは慌てて紐を組みあげる――が、組みあげた紐を見てぎょっとした。

「さっきより……太い………よね……」

 ハッとして、先程糸巻き棚から持ち出した糸を探してみるが見つからない――
それに、足に絡みついていたあの「不幸そうな糸」まで……。

「やっぱりこの中…………かな……?」

 目の前で鈍い輝きを放つ組み紐は、もはやほどきようがない程に複雑に組み合っていた。

 こうなってしまっては、無理にほどこうなどすれば糸を傷つけ、
その持ち主たちの運命にどのような影響を及ぼしてしまうかわからない。

「……ど……どうしよう……あの……えっと……その……」

 わたしは震える手をぎゅっと握り合わせ、

「…………うん、大丈夫。きっと大丈夫………………物語に試練はつきもの……だものね……」

 そう自分に言い聞かせ、組み紐に触れ、彼女たちの幸せを願った。
身長 1.59meterかな
体重 た~しか49kgくらいだよ
秘められた性格 怒るとすごく怖い
性質 直感が鋭い
苦手 計算
特技 ケーキの切り分け
イラストレーター ゆきさめ
最終更新:2017年05月27日 18:47