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高坂甚内

<タイプ> <酷薄者> タイプ シノビ
種族 魔種 ジョブ アタッカー
HP 600 ATK 90
DEF 110 コスト 70
アビリティ
召喚 スピードアップ
覚醒 スピードアップ
超覚醒 真揮『虚喰い』
アームズ
二天一流・捻貫の型 【アームズ】自身が前方に高速移動し、進路上にいる敵ユニットすべてにダメージを与える。
このアームズは自身がダッシュアタックを敵にユニットに当てた後、一定時間のみ使用できる。
顔に、とつとつと落ちる粒を感じる。

不思議なものだ。赤くひたと湿っているであろう背の熱さえも、既に感じないというのに――
そんな事を考えながら、若者は手足を大の字に広げて地に横たわったまま、そぼ降る雨に打たれていた。

『鳶』と呼ばれ、自在に宙を駆けた足もまったく動かない。
落ちた鳥は、このまま朽ちていくのみか――。

若者は、目に落ち雨粒が滲ませる曇天を見上げながら、己の半生を振り返った。


彼は、優れた忍びであった。
しかし、その有能さ故、自らの地位を危ぶんだ頭首に疎まれ、罠にかけられ里を追われた。

里の為、命を削って技を磨き、体を鍛えてきた結果が、
“抜け忍”の汚名と共に同胞に命を狙われること――
そんな不条理に戸惑いつつも、若者は生きるために逃げ、追っ手を斬り、居場所を求め彷徨った。

しかし、どこに行こうと、どこに隠れようと追っ手は追いすがり、
彼が身を隠す家、村、国もろともに、血の匂いをまき散らし続けた。

もうどうしようもないと思った若者は、里に戻り――その全てを滅ぼした。

これで自由になったと思った若者は、さる国にて己の腕を頼りに仕官を試みたが、
定めに染みついた血は、若者を捉えて離さなかった。

国の城主は、一度は若者の力量に感嘆したものの、
すぐにその力の凄まじさを脅威と断じ、若者を亡き者にしようと刺客を差し向けたのだ。

やはり、どこまでも自分はこの世との相性が悪いらしい――
そんな若者の心の疲れが災いしたか、多くの敵を屠った刃は寸分の狂いを生み、
若者の背に大きな傷を走らせる結果となった。

それでも刺客を討ち返し何とか隣国へと逃げ延びたが、
もはや体は言うことを聞かず、どうと倒れて今に至る――。


「…つまらんな…俺は何者だったのか…」

そう口に出してみる。結局――何もなかった。

何を為すこともなく、ただ逃げて、殺すだけの、そんな生であった。
その生の意味の無さには自嘲の笑みすら浮かばない。

…もう、いいか――若者は、滲む灰色の空を見続けるのにも飽き、まぶたを落とした。


――ふと、閉じた目の上に黒い影が落ちた。

「こりゃあすげぇ! 
この雨じゃ鳥も飛べんだろうとは思ったが、なんともでっけぇ鳶が落ちてやがる!」

見ると、目をまんまるに開いて顔に笑顔を張り付けた男が、若者を見下ろしていた。

また追っ手か――いや、殺気は感じない。
しかし、業物と見える腰の得物、その身にまとう空気、どこを見ても只者とは言い難い――。

「なぁ、お前『鳶』だろう?」

「………」

「そうだ、そうだろう? やっぱりそうか! 
巷で凄腕との噂の、あの忍殿だ! いやぁ、本物だぁ! 
うちの乱破がな、お前さんらしき者がこの国に入ったと知らせて来てよ、ちぃと様子を見に来たのよ」

男はそのまましゃがみこみ、興味深そうに若者の体を見回した。
目に入った雨の所為か、それとも意識が飛びかけているのか、一層滲む視界に男の顔が揺れる。

「しっかしすげぇなぁ… 見てたんだがよ、本当に宙で二回跳ねやがんのな。
本当に“鳶”みてぇだったぜぇ…“越後の龍”も恐れるわけだ。あれ、どうやってんだ?」

男は子供のような笑みを浮かべ、さらに若者に語りかける。
若者は霞む目を凝らし、最後の「含み針」を舌に乗せようとしたが、
もはや力なく、それすらも叶わなかった。

――殺せ。

若者は、唇の動きだけでそう伝えた。

その様子を見た男は、すぅっと目を細めると、腕を組み、う~んと思案顔を浮かべ、

「うん。そうだな、殺そう。
お前みたいな危ねぇ乱破をこの国に置いたとあっちゃ、
隣国どころかうちの野郎どもにまで何言われるかわからねぇ」

そう言うと男は、腰の太刀をすらりと抜いて、両手に構え大きく振りかぶった。

「せいっ!」という気合の声、ドンと振り落ちる刃の音――音に驚いた雨宿りの鳥々が飛び立った。

男の手に握られた太刀の先は――若者の頭の、すぐ横の地を割っていた。

「ほい、死んだ。鳶狩りお終い! そんじゃ、獲物を持って帰っかな」

そう言うと男は、よっこいせと間の抜けた裏声をあげ、若者をがっしりと担ぎあげた、

「とりあえずうちに寄ってけ。気に入ったのならそのまま居座ってもいいぞ」

「………」

「心配すんな、俺はこれでも一国のお屋形様よ。寝る所くれぇは用意してやらぁな。
気に入らなきゃとっとと出ていきゃいい」

男は豪快な笑い声をあげ、ずんずんと歩いていく。
若者はなんとか逃れようとしたが、やはりどうにも体に力が入らなかった。
すると、男はぴたりと足を止め、んん? と、何かを考え出した。

「あぁ…死んだお前にも、名前がないと不便だなぁ…
そうだな、お前さんみてぇな猛獣は、せめて名前ぐれぇは縄でくくっとくかよ――
よし、きめた! お前は今から『虎綱』だ! 出は農民ってことで手を打っとけ!」



そうして、若者は『虎綱』となり命を長らえた。

長らえた命であるならば、このまま更に生き延びるまで――
虎綱はそう腹を決め、男に与えられた屋敷で黙々と回復に努めた。

一方男は、たまに虎綱のもとに狩りの得物を持ってきては、
やれたんと食って治せ、やれ早く跳べるようになって技を見せろと笑うのみで、
それ以上は何も求めることは無かった。

時が経ち、虎綱が以前のように二の足で歩けるようになってもそれは変わらなかった。

世は戦の火で溢れていたが、男はそのために虎綱の技を求めるでなく、
よしんば求めたとしても、酒に酔い、虎綱を呼び出しては「跳んで見せろ」と笑うだけであった。

――うつけか、それとも度を越えた戯れか…
だがこの男もまた、いつかは俺を妬み、恐れ、打ち捨てるのだろう。
その時は――斬れば良い。

しかし男は、その後もやはり何を命じることなく、
何を求めるでもなく、ただ虎綱を側に置き続けた。

虎綱もまた、男のそんな空気にあてられたのか、幾日、幾月と男の側に居続けた。


一体、この男は何者なのであろうか。力ある一国の君主であることはわかっている。
しかし、男はそれまで虎綱が見たどの者とも違う。
粗野で単純かと思えば、大事の際には稀有に切れる采配を見せ、
時として烈火の如き獰猛さをも発揮する。
国主でいてそれに驕らず、家名、家柄にもとらわれず、
有能なものであれば分け隔てなく登用し、その言葉をよく聞いてみせる――。

虎綱は、次第に男に興味を持ち始めている自分を知り、
気づけば数年を越え、男の側で、その覇業に自ら進んで手を貸していた。

それでも、その間、男は一度たりとも虎綱に強く何かを求めることは無かった。


ある、あの日と同じような雨が降った日、虎綱は男に尋ねた――
何故、自分に何も求めないのか、と。

軒にどかりと座った男は「どうした改まって」と頬を掻き、雨に濡れる庭を眺めながら言った。

「――俺はな、生まれついての謀叛者なのよ」

そして、指先でこつこつと自分のこめかみを突きながら、おどけた様子でにひりと笑みを浮かべた。

「俺はちと“ここ”が出来過ぎでな、そこを親父殿に疎まれた。
それでな、俺は、弟を次期頭首にと考える親父殿らに餓鬼のころから何度も殺されかけたんだ。
初めは逃げ回っていたがよ、いつしかそれにも飽きた。
だから、親父殿に咬みついて、国を盗ってやったのよ」

男は、がははと豪快に笑うと、掌を広げ、鳥のように宙を泳がせた。

「――あの時な、こう、すいーっとよ、鳶みてぇに宙を飛んでは敵を屠るお前を見た時、
『あぁ、こいつはなんだか俺に似てるな』と思っちまった。
すんごく綺麗でよ、でも必死で、周りのみぃんなに殺されかけてる…
そんで拾ってみたくなった――ただそれだけよ。」

虎綱は、吹きかかる雨の間を縫うように、ひらひらと宙を泳ぐ男の手を見つめた。

「だから、お前をどうしたいとか、何して欲しいとかはねぇんだ。
これは俺の勝手さ。謀叛者は、何かに強いられるのを嫌う。
家の為、誰かの為、そんな者は糞喰らえだと思っちまう。
俺らみてぇのはみぃんな好きなことしかしたくなくて、みぃんないつかは一人になんだ――
俺ぁ柄にもなく、そんな奴らの居場所をつくってみてぇと思っちまってるのかもしれねぇなぁ。
でもな、本当の俺はそんないい奴じゃねぇ、腹を空かした虎だ。
餓えて、満足したくて、いつもぬらぬらとした赤い油をてめぇの爪に塗ってんだ――」

宙を泳ぐ男の指が、くきりと曲がり、爪を立てる。

「――その上で、お前が俺の側にいてぇと言ってくれんなら、
それは俺の器量かと、素直に嬉しいぜ」

そう恥ずかしそうに笑うと、男は虎綱に背を向けて立ち上がり、おどけた様にさらに手を泳がせた。

「虎綱ぁ、お前も楽しめぇ。羽が休まったならよ、どこぞへ好きに飛んで行っていいんだぜぇ? 
上がったり、下がったり、止まったり――鳶はなぁ、自由に飛ぶのがいいんだよ。
鷹みてぇに上品なもんじゃねぇ。決まりは無し、生きるためなら死肉でも喰らう。
敵に追われりゃ無様をさらす。追って来るなら逃げるだけ。
それでもダメなら爪を立て、喉笛を掻き切るまで――」

そして男は、泳がせた手を、虎綱の前でピタリと止め、

「そんで興がのったらよ、お前も俺の国を盗ってみるか?」

その目は、心の底のさらに奥を覗き込むように、虎綱の両の瞳をじぃっと捕らえていた。

虎綱もまた、無言でその目を見返した。

時が止まったように、2人は微動だにしない。
ただ、時を感じさせるのは、静かにそぼ降る雨粒のみ――。

ふと、糸が切れた様に、男は再びどかりと座り込んだ。

「いやぁ、虎綱よぉ、このまま行きゃあ、俺は天下を取っちまうかもしれねぇなぁ。
でもよぉ、謀叛者の俺らに天下なんぞは似合わねぇよなぁ… 
正直、欲掻き過ぎたせいで、今や守るものが多すぎて重てぇわ。
叶うことなら全部捨てちまってよ、お前や、勘介、鬼美濃らと、ふらふら旅でもしてぇもんだぜぇ…」

そう言って男はむぅ、としばらく何かを考え込むような仕草をすると、
突然ぽんと手を打ち、目を輝かせて虎綱を見た。

「そうだ! 宝探しの旅なんてなぁどうよ!」

そうして、そうだそうだと、手を叩いてはしゃぎだす。

「なんつったっけあなぁ…あ、そうだ、あれ! お前『村雨丸』って知ってるか? 
殺気を持って刀を振らば、水気を持って血気を切るってな! 
かの鎌倉公方所縁の宝刀よ。公方殿は、この宝刀をもって将軍家に謀叛をかけた。
そいつが件の戦で行方知れずだそうだ。天上に喧嘩を売った謀叛の刀だ。
どうだ、俺らにぴたりの逸品、見てみてぇじゃねぇかよ、見てぇよなぁ、見に行こうぜ虎綱ぁ!!」

男はそう言って、子供のようにキキキと笑った。


* * * *


雨の中、ぼうっと浮かぶ窓の明かり――。

窓辺に、薄紫の長い髪をさらりと垂らした男が立っている。
男は掌を広げ、窓に映ったそれを眺めながら、手を鳥のようにゆっくりと泳がせている。


「――なんですそれ? 甚内さん、どうかしました?」

机に座り、広げた図面をじっと眺めていた黒髪の美少年が、その姿をちらりと見やり声をかける。

「どうもしないよ、ただ雨だな――とね」

「そうですか」

尋ねたものの、少年は男――高坂甚内の反応にさして興味を示すことなく、
はたと何かを思いついたような顔をすると、普段の結いを解いてばさりと垂れた長い黒髪を、
優雅な仕草で片側にまとめ避け、さらさらと図面に紋様のようなものを書き込んでいく。

「…それで、どうかな?」

「えぇ、だいぶ“仕組み”が分かってきましたよ」

「ほう、さすがだね。これもデウスの導きというやつなのかな?」

「はい。彼らの技で、私は“デウスそのもの”をも解き明かしましたからね」

少年はそう言って狐のように目を細めて笑うと、
筆を置き、舞台役者のように歩きながら大げさな身振りで語り出す。

「甚内さん、やはり世界の仕組みは醜いですよ。
まるで意味の無い、怠惰と堕落に染まりきった戒律のようだ。
私は戒律を求めますが、戒律を求められるのは好きではない。
私が至高の意志で戒律をつくり、私の自由な意思でそれを遵守する、私の世界はそうありたいのです――
あぁ、私と意見の相違があったのなら、遠慮なく言ってくださいね。
その時は、一切の躊躇なしに死合いましょう」

少年が艶めかしく濡れた唇をなめる。
甚内は、少年の唇のように赤い葡萄酒の継がれたグラスを手に取ると、
中に注がれた揺れる赤色越しに部屋を眺めた。

「そうだね。だが、しばらくはそれも無さそうだ。
俺もね、この世界の仕組みはどうにも気にくわない」

「それは重畳…
では、奴らが“剣”だ“鍵”だのと大騒ぎをしている間に、私の計画を聞いて下さいな。
“この地”は我らにとても都合がいいのですよ――」

言いかけて、少年は甚内を見やり首を捻った。

「――やっぱり、変ですよ? 甚内さん」

「そうかい?」

「えぇ、なんだか今日はいつにも増して…楽しそうだ」

少年の言葉に、甚内は小さくクスリと笑った。

「…あぁ、楽しいね。
四朗、こんな雨の日に、お前とこうして世界の反逆を練るのは楽しいんだ。俺は――」

甚内は椅子に腰を下ろし、強くなった雨脚に白く煙る窓の外を眺める。

「――生まれついての謀叛者なんでね」

彼の成さんとする未来に抗議するかのように強く窓を叩く雨。

甚内はそれを嗤い、さも愉快そうに手にしたグラスを傾けた。
身長 1.77[meter]
体重 64[kg]
出身 常陸国
初めの名 加藤段蔵
二つ目の名 春日虎綱
特かつて仕えた国 甲斐国
イラストレーター v8
最終更新:2017年03月10日 01:36