強く、優しく、美しく?
「へぇ~、これがきららちゃんのお母さんの、ステラさんのステージなんだ。すごぉーくキレイ!」
ちょうどルームメイトが留守だからと、きららの寮部屋に招かれたはるか。
かねてから関心のあった、スーパーモデルであるステラの写真集を見せてもらい、目を輝かせながらページをめくる。
「ええ~っ! これって!」
「ん? どうしたの?」
日本人離れした長身と等身の高さ。優雅を絵に描いたような立ち姿。そして透き通るような真っ白な肌。薄手の生地から覗く細い手足。
そこまでは期待した通りのものだったが……。
「これって……胸、胸が、隠れてない。っていうか、下、下もない……」
「あ~そういうことか。はるはるはスーパーモデルのステージを見るのは初めてなんだ。モデルなんだから裸なんて恥ずかしがってちゃ、やってられないよ」
「じゃあ、きららちゃんも、その――こういう衣装を着るの?」
「まさか、あたしはまだ中学生モデルだもん、着るワケないじゃん」
「だよね~。あはは、心配しちゃった」
「必要があれば躊躇わないけどね」
「本気……なの?」
「ん? じゃあ、試してみる?」
きららの下着姿、いや、それ以上の露出を想像して、はるかはゴクリと喉を鳴らし、真っ赤な顔で聞き返す。
きららははるかのそんな様子を面白がるように、後ろ手でドアの鍵を閉めた。
ファサッっと柔らかな音を立てて、きららのセーラーブレザーが足元に落ちる。その上に重なるように、スカートがフワリと舞い降りた。
きららの美しい肢体が、まだ明るい部屋の中で映える。残る布地は、真っ白な薄手のシャツと、その下から浮かび上がる黄色に水色の縁のついた、ブラとショーツのみ。
「このくらいは序の口かな? 世界の一流の舞台なら、もっと過激な衣装もあるよ」
「わっ、わかった、もういいから! きららちゃんの覚悟は十分に伝わったから!」
「まだだよ。言っておくけど、あたしも人前で脱ぐのなんて初めてなんだからね。やっぱり恥ずかしいから、最初ははるはるがいい。ちゃんと――見届けて!」
そう言って、身体の柔らかさを演出するような優雅なしぐさで、きららはシャツを脱ぎ捨てた。そして遂に、可愛らしいブラのホックに指がかかる。
もうはるかは止めようとはしなかった。いや、止められなかった。目はきららの一挙手一投足に釘付けになり、瞬きはおろか、呼吸すら忘れて、食い入るように次の瞬間を待った。
はるかには、決して百合と呼ばれる類の趣味はない。同性の裸体に興奮する性癖はない。しかし真の美とは、年齢や性別すらも凌駕して、見る者を虜にする。ましてや、普段は決して目にすることのできない姿となれば、尚のこと――
音も無くブラが外れ、きららのやや小ぶりではあるが、ツンと上を向いた愛らしい乳房が露となる。緊張のためか、ピンク色の乳首が、その小さな先端を微かに震わせていた。
「これは――さすがに恥ずかしいね。ここまでにしたいけど……まあ、いいか」
まるで金魚のようにパクパクと口を動かして、はるかは何かを伝えようとする。しかし、とても言葉にはならなくて――
その視線が、きららのバストから、残された、最後の一枚へと移った。
きららが屈伸をするようにショーツを膝まで下ろして、そこから片足を持ち上げて脱ぎ去った。その動作は映画のワンシーンのように完璧で、わずかなバランスすら乱さない。
全裸となったきららの裸体は、どのような名画でも再現できると思えないほどに、神々しいまでの美しさを放っていた。
もう、きららにも、はるかをからかうだけの余裕は残されていなかった。きららの中で自尊心と誇りが激しく対立する。
きららは羞恥に顔を赤らめ、全身を小刻みに震わせながらも、辛うじてモデルの矜持を保つことに成功した。両の手は身体を覆わず、起立の姿勢で腰の左右で拳を握り締める。
「すごい……。きららちゃん、きれい……」
「もう――恥ずかしいッ!」
遂にきららが視線に耐えかねて、はるかの制服に抱きつくようにして身体を隠す。
はるかはそれで我に返り、きららの頭を優しく撫でながら、服を着るように促したのだが――
「えっ?」
「あたしだけ見せたんじゃ、アンフェアでしょ?」
「でっ、でも、私はモデル関係ないし……」
「プリンセスは、お付きの者に着替えを手伝ってもらうものなんだから」
きららは抱きついたカッコウのまま、手際よくはるかのブレザーを脱がせていく。
そして、数分の後――
見せるために磨いていないはるかの裸は、美しいとは言えないけれど愛らしく。
伸びきっていない手足はいじらしく。曲線の少ない肢体は、それでも蕾としての生命力を主張している。
緊張は鼓動を高め、興奮は性的衝動へと、未熟な少女達を駆り立てた。
『つり橋効果』そんな単語が脳裏を過ぎるものの、すでに高ぶった気持ちは抑えられなくなっていて――
距離にして、わずか数歩のランウェイを渡りきる。2人っきりの、熱いステージが幕を開いたのだった。
最終更新:2015年05月03日 01:00