sweetなプリキュア/一六◆6/pMjwqUTk
「いちかちゃ~ん! このプリン、すっごく美味しいよぉ!」
「ほぉら、はるはる! 口の周りにカラメルソースが付いてるじゃん」
満面の笑みでりすプリンを食べるはるかに、ペコリンドーナツをかじるきららが苦笑しながらハンカチを手渡す。
「どれも可愛くて、食べるのが勿体ないわ」
いぬチョコレートの犬と目を合わせて困った顔をしているせつなの隣で、ラブがらいおんアイスを一口食べて、美味し~! と歓声を上げる。
今日はいちかたちに招待されて、プリキュアたちみんながキラパティにやって来た。
この春、ある事件をきっかけにして、いちかたちは、はるかやみらいたちと出会った。その時、まだまだ沢山のプリキュアがいると聞き、それならば是非会ってみたいと、先輩たちみんなに招待状を送ったのだ。そして今日、ここキラパティで実に賑やかなスイーツパーティーが行われているのだった。
追加のうさぎショートケーキを持って現れたいちかは、はるかに「ありがとう!」と答えてから、ぐるりと店内を見回した。
いつもより狭く見えるほど大入り満員の店内では、どのテーブルもチーム入り乱れてワイワイと話に花が咲いている。その話に時々加わりながら、カウンターとスイーツ工房を行ったり来たりして手伝ってくれているのは、咲とゆうこ、それにマナだ。満といおなと六花は、あきらやゆかりと一緒に、スイーツを運んだりお皿を下げたりするのに余念がない。そんな中、アコと亜久里は二人仲良くカウンターを覗き込んで目を輝かせている。
妖精たちとモフルンは、店の奥で大きな車座になってお茶会を開いていて、くるみとシエルは、時々ミルクとキラリンの姿になって、両方の話の輪に加わっている。
それら全てを嬉しそうに眺めていたいちかの視線は、すぐ側から聞こえて来た、モゴモゴとくぐもった声の主のところで止まった。
「かにゃで~、どれもおいひいね! さふが、でんへつの、ぱてぃひゅえだよ~!」
響が満面の笑みで、右手のスプーンでペガサスパフェのアイスをすくいながら、左手に持ったスワンシュークリームを、大きな口を開けて一気に頬張る。それを見て、隣の奏が、めっ! と顔をしかめてみせた。
「響! お行儀が悪い。いちかちゃんたちに笑われるわよ?」
「うふふ。元祖スイーツのプリキュアに褒められるなんて、わたしも鼻が高いですぞ」
いちかがほんのりと頬を上気させて、ニコニコと笑う。それを聞いた響は、ゴクリと口の中のものを飲み込んでから、不思議そうに首を傾げた。
「スイーツのプリキュア? それって、奏のこと?」
「四人全員のことですよぉ。だって響ちゃんたちは、“スイートプリキュア”なんでしょ?」
「ああ、それはね」
奏がようやく合点がいった、という表情で説明しようとする。ところがその言葉を、明るい声が元気一杯に遮った。
「うんうん! 奏ちゃんはスイートなプリキュアで~、このケーキによく似た、甘くて美味し~いカップケーキを作るんだよ。いちかちゃんたちのケーキもすっごく美味しい。これぞ幸せハピネス!」
響たちと同じテーブルでコトリカップケーキに舌鼓を打っていためぐみが、そう言ってグッと親指を立ててみせる。
「ちょっとめぐみ~! 響たちの“スイート”は、“スイーツ”とは関係ないんだよ? スイートっていうのはぁ……」
めぐみの隣で、ひめが少し得意そうに人差し指を立てたものの、その解説は、今度は複数の声に飲み込まれてしまった。
「スイートとスイーツかぁ。うわぁ、どっちも美味しそうだねっ、あゆみちゃん!」
「え、どっちも、って……」
「スイーツは“お菓子”で、スイートは“甘い”。だけどワルブッターが『フフフ……甘いなぁ』って言う時の“甘い”は、多分違うよね」
「やよい~、今ワルブッターは関係ないねん……って、なお! 空のお皿、何枚積み上げとんねーん!」
「う~ん、美味しい! ワルブッターはすこぶるどうでもいいけど、わたしはこ~んなにスイーツが食べられて満足だよぉ」
「皆さん、ひめさんがおっしゃっているのは、そういう意味では……」
みゆき、やよい、あかね、なおの掛け合いに、あゆみは戸惑い、れいかはマイペースにたしなめようとするが、皆の勢いは止まらない。
「も~! みんな、人の話をちゃんと聞いてよぉ。響たちの“スイート”は“組曲”っていう意味! “甘い”って意味の“スイート”とはスペルも違うのっ!」
しびれを切らしたひめが、ガタンと勢いよく立ち上がって叫んだ。
ああ……と間の抜けたような声を上げるみゆきたちと、へぇ……と感心したような声を上げるいちか。これでようやく一件落着かと思いきや、いかにも何か考えているかのように腕を組み、くじらグミをひたすらモグモグと噛みながら、口を開いたのはえりかだった。
「でもさぁ……モグモグ……いちかの言うことも……モグモグ……一理あるっていうかぁ……モグモグモグ……ほら、響と奏って……モグモグ……いかにもスイート、って感じじゃん……モグモグ……いっつも喧嘩してるようで……ゴックン……すっごくラブラブだもんね~」
一瞬、店内がシーンと水を打ったように静かになる。そして次の瞬間、さっきとはまた違った雰囲気の大騒動が始まった。
「ま、あんたたちがどんだけラブラブでも、あたしとマナに敵う人なんていないんだから。ねー、マナ」
「レ、レジーナ……」
「あ、あたしたちだって、みんな仲良しだもん! ね~りんちゃん」
「こぉら、のぞみ! 痛いでしょーがっ!」
カウンターにすっ飛んで行って、ここぞとばかりマナの腕に取りすがるレジーナに、六花はやれやれと溜息をつき、何故か対抗心を燃やしたのぞみが、りんの腕を力いっぱい締め上げて怒られている。
咲が急いでお手伝いを切り上げ、ミルクが慌ててくるみの姿に戻って、それぞれ舞とかれんの隣に座り、二人同時に照れ臭そうに笑った。
「はー! みんな仲良し、お菓子もいっぱい、ワクワクもんだぁ!」
楽しそうにそう叫んで、相変わらず猛然とスイーツを平らげていくことはの隣で、みらいとリコは周りの喧騒などどこ吹く風で、いつもと変わらず和気藹々としている。
そんな仲間たちの姿を黙って見つめていたほのかは、にっこりと微笑んで、チョコレートケーキに夢中になっているなぎさの腕に無言で腕を絡めた――。
「な、何だか皆さんの雰囲気が……というか、圧力が……。ゆりさん、えりかの発言、何かおかしかったんでしょうか」
不安そうな顔でフォークを置いたつぼみに、ゆりはフッと小さく微笑んで、ねこマカロンを上品な仕草で口に入れる。
(確かに……スイートがいっぱいね)
口にも目にもいっぱいに広がった甘さを、もう少し長く味わっていたくて、ゆりはティーカップに伸ばしかけた手を止めて、そっと眼鏡を押し上げた。
~おわり~
最終更新:2018年02月24日 11:34