ウルトラハッピー…え?
「じゃ、行くよー」
はなが、あゆみ、ほのか、美翔舞、南野奏の笑顔をファインダーに収めて、MIDEN F Mark-II のシャッターを押す。草原に笑顔の花が咲いた。
「みんな、いい顔!」
「楽しいから。
ね、あゆみさん」
「はい、絶好調です」
舞が笑う。
「次は、私たちとですわ」
調辺アコと円亜久里が隣に並ぶ。
あゆみは引っ張りだこであった。
本人はまだ納得していないが、今回の事件があの規模で済んだのはあゆみとフーちゃんのおかげだ、ということでまとまり、「みんなのプリキュア」という評価がまた強まった。
「私たちも一緒に撮るのです」
「あの、ちょっと待って」
「前のルールーに似ているということは、私との相性もいいはずなのです!」
何度か、ちょっと待って、と言った後、あゆみは頬をマッサージした。撮影のたびに笑顔を作っているので強張り始めている。
「大変だな…」
グレルが珍しく、意地の悪いことを言わずに本心から同情している。エンエンも心配そうだった。
「そこまで頑張って笑わなくてもいいんじゃないかな…」
「ミデンを笑顔でいっぱいにしてあげたいから」
それはそうだけど、とエンエンが口ごもる。
「みんなのリクエストだし。
ここで断ったら女がすたるもん」
グレルとエンエンが顔を見合わせた。
「じゃ、最後に全員で撮るよー!」
三脚を据え終わった はなが叫んだ。みなが集まってくる。
「じゃ、あゆみちゃん、掛け声お願い!」
「え、わたし?
なんて言えばいいの?」
「笑顔にするにはイ段の言葉だよね。『チーズ』とか『1たす1は2』とか」
「イ段…あ、はい」
「決まった?
じゃ、押すよ」
セルフタイマーを仕掛けて はなが走る。滑り込むようにしてみんなの中に納まった。
「せーの。
ウルトラハッピー!!」
カシャ。
なぜか拍手が巻き起こる。みな、改めて笑顔になった。
「あゆみ、あゆみ」
グレルがあゆみの足をつついた。
「なに?」
「大丈夫か?」
「…。
なにが?」
グレルとエンエンはまた顔を見合わせた。
「今日のあゆみちゃん、言うことがいつもと違うよ」
言われていることがわからず、あゆみは首を傾げた。
「絶好調とか。
女がすたる、とか」
「『ウルトラハッピー』はみゆきちゃんの口癖だよね」
「わたし…そんなこと言ってた?」
言ってる言ってる、と夢原のぞみ。
「ひょっとして、ミデンの中で、あたしたちの口癖もうつっちゃった?!」
「ねぇねぇ、『ありえなーい』って言ってみてよ」
「そんな…」
「『ワクワクもんだぁ』も言ってほしい!」
大騒ぎである。
「どうしたの?」
東せつなは小さな顎に手を当てて何か考えているようだった。桃園ラブが覗き込む。
「せつなも、何かあゆみちゃんに言ってほしいの? 『精一杯頑張るわ』とか」
「あゆみちゃんは自分の力でプリキュアになった人で、キュアエコーは私たちの意思の疎通を助ける『思いを届けるプリキュア』で、誰とも協力できて頼りになる『みんなのプリキュア』なのよね」
「うん」
「あゆみちゃんが、私たち全員の力を身につけたんだとしたら…最強よね」
草原に風が渡る。
ゆりの、「そうね」という同意がきっかけとなり、あゆみはもみくちゃにされた。
「私は、ちょっとみなさんの口癖がうつっただけで、そんな…お願い、助けて!」
その間にも「『やるっしゅ』って言って」「『計算通りだし』は?」「それ、口癖じゃないし!」「『嫌いじゃないわ』もいいわよ」とリクエストが飛ぶ。
「グレル! エンエンー!」
さすがのグレルにも、55人のプリキュアの中に割って入る勇気はない。エンエンと一緒に、はらはらしながら見ているしかなかった。
最終更新:2018年12月27日 23:12