開幕!『フレ!フレ!冬のSS祭り2019』/一六◆6/pMjwqUTk
「おか~をこ~え~ ゆこうよ くち~ぶえ~ ふきつ~つ~……」
まだハイキングに訪れる人もまばらな“のびのびが原”に、伸びやかな歌声が響く。
歌っているのは、はなたち五人。はなの腕の中では、はぐたんがキャッキャとはしゃぎながら、歌に合わせてタンバリンを叩いている。
やがて“のびのびが原ハイキング”のゲートが見えてきたところで、はなが笑顔でえみるの方を振り返った。
「いや~、懐かしいね。えみるとは、ここで初めて会ったんだよね」
「はい。あの時は大変でしたが、忘れられない日になったのです」
弾んだ声を上げるえみるの隣で、ルールーも柔らかく微笑む。
「嬉しいです。私も一度、来てみたかったので」
「そっか。ルールーは、ここに来るのは初めてだよね」
「ところで、他のプリキュアのみんなは、ちゃんとここまで来られるんか?」
ほまれの肩の上から、ネズミ……もとい、ハリーが少し心配そうに問いかけた。
実はこれから、プリキュアみんなが集まる恒例のお話し会が、ここで開かれることになっている。今年ははなたちが主催ということで、総勢五十人を超えるプリキュア全員に向けて、みんなで招待状を送ったのだ。
はなが得意げに、グイっと親指を立てて見せる。
「心配ご無用。案内状に、はなちゃん特製・めっちゃイケてる地図を同封しといたから。ほら!」
そう言って、リュックからサッとカッコよく地図を取り出すはなだったが。
「え……この地図で、ホンマに辿り着けるんか?」
「何だか地図というより、お絵描きという感じなのです」
「めちょっく!」
ハリーだけでなく、えみるにまでそんなことを言われて、はながガクッと肩を落とす。と、その時。
「すみませ~ん! プリキュアのお話し会の会場って、ここですかぁ?」
「ちょっと待つルン! そんなに大声でプリキュアのことを喋っちゃ駄目ルン!」
五人の後ろの灌木がガサガサと揺れたかと思うと、その陰から二人の少女が現れた。
最初に声を上げた子の右手には、今はなが持っているのと同じ地図が握られている。それを見て、はなはパァッと顔を輝かせた。
「ほら! ちゃんとこの地図で辿り着けた人がここにいるじゃん!」
そう言うが早いか、満面の笑みで二人の元へ駆け寄る。
「ようこそ! プリキュアのお話し会へ。わたし、野乃はな。キュアエールです。えーっと、あなたは?」
「あたし、星奈ひかる。つい最近、プリキュアになったばっかりなんです。プリキュアになったと思ったら、フワがこんな招待状を持ってて。あ、そしてこちらは……あれ?」
地図を持っている方の子が、こちらも満面の笑みで自己紹介を終え、もう一人を紹介しようと振り返る。だが、そこには誰も居なかった。もう一人は再び灌木の陰に隠れてしまって、出てこようとしない。
「ごめんなさい。ちょっと待ってて下さいね」
ひかると名乗った子はそう言うと、いきなり灌木の中に大胆に頭を突っ込んだ。
「ララちゃ~ん。隠れてないで、出ておいでよ~」
「だから、地球人に存在がバレたらまずいって言ったルン」
「大丈夫だよ、相手はプリキュアなんだから」
「また……その根拠は何ルン? 絶対に駄目ルン」
「ここまで来て、そんなこと言うのはナシだよぉ」
「あなたが無理矢理連れて来たルン!」
「なになに? なんか揉めてるの?」
ほまれがやって来て、心配そうにひかるの後ろ姿に目をやる。
「会話を解析すると、どうやら地球人に存在がバレたらいけないと言っているようです」
「ってことは……うわぁ、じゃあ宇宙人? 一度会ってみたかったんだ~!」
ルールーの言葉に、さあやが目を輝かせた、その時。
「キュアップ・ラパパ! 二人とも、こっちにおいで」
「うわぁぁぁ!」
不意にあどけない声が響いて、灌木を挟んで対峙していた二人の身体が宙に浮く。箒に乗って魔法の杖を構えているのは、ことはだった。その後ろには、みらいとリコの姿もある。
ララと呼ばれた少女が、はなたち五人と、みらいたち三人の面前に引き出される格好になって、不安そうに身体を縮める。そんな彼女に、箒を下りてニコニコと近付いていったのもまた、ことはだった。
「その格好……。もしかして、惑星サマーンから来たの? 随分遠くから来たんだね!」
「知ってるルン!? 地球では、異星人の存在は知られてないんじゃなかったルン!?」
驚きに目を見開くララに、みらいが、アハハ……と頭を掻く。
「ああ、はーちゃんは特別というか……って、今、異星人って言いました!?」
どよめく仲間たちの中からはなが進み出て、ララにニコリと笑いかける。
「大丈夫。プリキュアにはね、いろ~んな仲間がいるんだ。みらいちゃんとリコちゃんは魔法使いだし」
「ルールーは、アンドロイドなのです」
「他にも、妖精だったり、別の世界から来たりした仲間はたくさん居るの」
「オヨ~……なんか凄いルン……」
宇宙人だと知っても、驚いたのは最初だけ。すぐに受け入れた様子の少女たちに、ララの方がたじたじとなる。
「魔法……キラヤバ~っ! ねっ? プリキュアが相手なら、大丈夫だって言ったでしょ?」
ひかるの方は慌てるどころか目をキラキラさせて、そんなララの方ににじり寄る。
「確かに……何故か全員の言葉が分かるルン」
不思議そうにそう呟いてから、ララは居住まいを正した。
「よろしくルン。名前は、ララ。星奈ひかるの後に、プリキュアに……キュアミルキーになったルン」
「ララちゃんと、ひかるちゃんだね。よろしく!」
はながそう言うと、皆も笑顔で新しい仲間を迎えた。
「ところで、お話し会って、一体何をするんですか?」
一段落ついたところで、ひかるがはなに問いかける。
「一年に一度、プリキュアのみんなが集まって、テーマを決めて近況を報告し合う会なんだ。今年のテーマは、『応援』と『ハグ』だよっ」
「何それ、面白そう! キラヤバ~っ!」
「応援と、ハグ……」
ひかるがまたまた目をキラキラさせる傍らで、ララの方は、そう言ってじっと考え込む。
「えーっと……ララちゃん、言葉の意味は分かるよね?」
「ああ、『応援』は……頑張れ、って励ますことルン。地球に流れ着いてすぐ、わたしも星奈ひかるに応援してもらったルン」
「へぇ。どんな応援をしてもらったの?」
ようやく柔らかい表情になって、嬉しそうに語るララに、ほまれが優しく問いかける。それを聞いて、ララの頬がうっすらと赤く染まった。
「ロケットが壊れて修理してた時、地球の食べ物を……おにぎりを、持って来てくれたルン」
「へぇ、そうなんだ! ひかるちゃん、凄いね」
「エヘヘ……それほどでも」
素直に感心するはなに、ひかるが実に嬉しそうな照れ笑いを見せる。
「でも、『ハグ』っていうのは、どういう意味ルン?」
「えっと、それは……」
さあやが少し赤い顔で言いかけた時、ルールーがすっと背筋を伸ばして、えみるの両手を掴んだ。
「仕方ありません。えみる、私たちでお手本を見せましょう!」
「ええぇぇぇっ! こ、ここでですかぁっ?」
「はい」
慌てふためくえみるに、ルールーが事もなげに頷く。そんなえみるを見て、はなが不思議そうに言った。
「別に照れることないじゃん。わたしなんか、パパやママとしょっちゅうハグしてるよ?」
「ひ、人前で、改めて言われると、心の準備が追いつかないのです~!」
えみるの大声が、こだまとなって山に響き渡った、その時。
「キュアキュア・プリップ~!」
「キュピラッパ~!」
あどけない二つの声が、こだまを掻き消す勢いで空に響いた。それと同時に、空にぽっかりと二つの穴があき、そこから眩い光が溢れ出す。
「は~~ぎゅ~~!!」
声に答えるように、はぐたんがその丸っこい両手を天に突き上げて叫ぶ。すると、空にあいた二つの穴から、続々と人が降って来た。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
得意満面のシフォンの後ろから、ラブたち四人を先頭に、なぎさ、ほのか、ひかり、咲と舞と満と薫、のぞみたち六人に、つぼみたち四人、それに響たち四人が、妖精たちと共に次々に現れる。
もう一つの穴からは、アイちゃんを追いかけるように現れたマナたち五人とレジーナを先頭に、みゆきたち五人、めぐみたち四人、はるかたち四人と、いちかたち六人が、こちらも妖精たちを巻き込んでもつれ合うようにして振って来た。
「これは……地球のワープ機能ルン? 豪快過ぎルン……」
「キラヤバ~っ! プリキュアって、こ~んなに居るの!?」
目を丸くするララと、目を輝かせるひかる。そんな二人などそっちのけで、抱き合って再会を喜ぶ少女たちの歓声が、山全体にこだまする。
「これは……お手本を示すまでもなく、本物の『ハグ』が、計測したところ二十組以上見られていますね」
冷静な……でも少し残念そうなルールーの言葉に、ナハハ~、と頭を掻いてから、はなは笑顔でひかるとララの手を取った。
「さあ、これからいよいよ、お話し会の始まりだよっ!」
最終更新:2019年02月16日 05:17