アットウィキロゴ

バイト始めました。はち




読書はいいものだ。現実という抗えない物語から別の世界へと連れて行ってくれる。
物語はいいものだ。読む本によるが、ハッピーエンドを好む自分は物語の人物に憧れる。救いがあって、人間の本来持つべき良心を感じることができる。
現実は実に現な物語だ。見えたくないものまで見えてしまうのは、今の自分には辛すぎる。
よって、現実とはなんと酷な物語なのだろう。こんな現実なんて消えてしまえ。

「ねえ、本読んでるだけなのになんでそんな殺し屋みたいな目してるの…?」

若干引き気味の友人にそんなことを言われました。

図書館ていいものですね。静かだし。日常から離れられるような気がするから。
と、なんでここまで現実逃避したいのかといえば、座っているだけでもズキズキと主張してくる身体中の痣が、現実を突きつけてくるからさ。
あれから一週間が経ちました。奴らは案の定、武器を手に殴りかかるという正義らしからぬ攻撃で情報を引き出そうとしてきます。最近、とあるネットのサイトでは、そんな攻撃をしていたという目撃情報がまことしやかにされており、一部の方々が狂喜乱舞しています。でも世間ではそこまで話題にはなっていません。なぜかはわかりませんが、そういったコメントをした人のアカウントが、その後二度とログインしないからです。その事実に気づいた時、深く考えてはいけないと心のシャッターが自動で下りました。
それはそうと、殴られるとつい声が出ちゃう系敵になってしまった自分ですが、大切なことは絶対に口には出さないと決めている。命にかかわるから。

「あ、アキさんだ! アキさーん」

なんだかどこかで聞いたこのあるような声がしたけど気のせいかな。だってここ図書館だし。あんな叫ぶような声だすはずないよね。図書館だし。

「あれ? 聞こえないのかな…アーキ―さーん」
「ら、ラブっ!! ここ図書館よ! 静かにっ!」
「あ、ごめんせつな!」
「だから声大きいっ!」

そんなあなたもだんだん声大きくなってますよ。とは言わないよ。常識をありがとうせつなちゃん。ラブちゃんはここが図書館じゃなきゃ褒めてあげたいくらいコミュ力高いね。静けさしかないところでも構わずに自分を主張できるその勇気。ところでアキさんて誰のことだろう。

「こんにちは。アキさんっ」
「こんにちは」

何やら二人が話しかけてきた。周りをきょろきょろしてみたけど自分と友人①しかいない。ということはやっぱり自分?

「えーと、アキってもしかして…」
「はいっ! この前お母さんに名前聞いたので、こうきゅっと凝縮してみたらアキさんになりました!」

どうして名前をきゅっとする必要があるのかな? その理論でいくとラブちゃんはモブちゃんになるんだけどいいのかな。全然モブっぽくないんだけどな。むしろそのコミュ力なら主役になれちゃうよ。

「…まあいいか。それより二人はなんでここに?っていっても図書館だから本を借りるか勉強目的?」
「いえ!ちょっと買い物にきたんですっ」
「ホントになんでここに来たの…?」
「いえ、違うんです。買い物のついでに借りたい本があって寄ったんです」
「ああ、そういうこと」
「あと、随分前なんですけど、シフォンを助けてくれたこともお礼言わなきゃって思ってたんです」
「シフォン…? ああ、あの呪いの人ぎょ…じゃなかった、ぬいぐるみね。そういえばそんなこともあったっけ。言われるまで忘れてたよ」

そういえばそんなイベントもあったな。完全に忘れてたけど。
せつなちゃんに怒られ笑いながら謝るラブちゃん。平和な光景につい頬が緩む。こういう日常を壊しかねないことをしてると思うとなけなしの良心も痛むってもんですよね。
なんてね。日常を壊す前にプリキュア達に身体を壊されてる自分は敵として不釣り合いってとこですかね。体力の限界を感じて引退するアスリートの気持ちが今ならわかる。
あれ、いつのまにスポーツ選手になったのかな自分は。まあ一種の競技みたいなもんだからね。競技というよりは格闘技だけど。

律儀にもこの前の勉強のお礼をしてくれたラブちゃん。点数よかったんだってさ。なんか教えたとこが確認テストに全部でたみたいで。完全にまぐれです。友人①は自分が人に教えることができたのかと驚いていた。失敬な。
ラブちゃんとせつなちゃんは本を借り(借りたのはせつなちゃんだけだけど)家に帰っていった。また勉強教えてくださいと言われて「もちろん」と返さず「時間があったらね」と返事をした自分は人見知りだと思います。




―――一週間前。

とある部屋の一室に、同年代の少女4人が机を囲み座っていた。各々下を向き、ある者は両手で顔を覆い、ある者は両肘を机につけどこかの司令官みたいな態勢で目を閉じ、またある者は両手を太ももに置き正座で、ある者は机下にいるイタチのような生き物の耳を親指と人差し指でふにふにとしていた。
会話の無い重い空気の中、一人の少女が口を開く。

「ねえ、アタシ達って正義の味方よね…?」
「うん…プリキュアだからね…」
「アタシ最近わからなくなる時があるのよね…あれ、自分今なにしてるんだろうって…」
「あ、それわかるよ美希ちゃん。なんでこんなことしてるのかなあって思う時ある」
「なんかさ、違う気がするんだよね。ほら、今までこんな悩むことなかったじゃん? 中学生にして正義について悩む時がくるなんて思いもしなかったよあたし」
「私も、プリキュアになって戦ってるはずなのに、たまにラビリンスを思い出す時があるのよね…既視感みたいな…」
「ダメだと思うのよねさすがに」
「そう、だよね…」
「うん。わかってはいるんだけど…いざ戦うってなると一番効率がいいかなって思っちゃってつい…」
「だからといってやっていいかと言われるといいともダメとも決まってはいないことだけど、人道的にはちょっとよくないわよね」
「でも、それで今の状況がわかるなら、それも仕方ないことかもしれないわみんな。ラビリンスがどういった作戦できているのかわからない以上、こちらもできることはするべきだと思う。それが今後の戦いの鍵になるかもしれないなら、とるべき行動の一つとして考えるべきだと思うの」

いくら話し合っても、今のやり方以外のいい方法が思い浮かばない。
そして行き着く先はやはり…


「いっいたいっ!! ほんともうやめてっ!! 痣だらけなんだよほんとにっ!」
「いや、アタシたちも好きでやってるわけじゃないのよ?」
「ちょっと目的とかあなたのこと教えてくれるだけでいいの」
「ほら、言っちゃえば楽になるよ?」
「いや、どこのヤクザだよっ?! 言ってること完全にアウトだろっ!! ぶぁっっ!」




なんて言葉を最後に浄化された。
今回もなんとか情報は吐かずに終われた。代償は大きなものだったが。鏡を見て驚愕。ついに顔まで殴られた。今までは見えないとこに痣つけられるくらいだったのに。そういえば顔にスティック当たった時「あっ」みたいな声聞こえた気がする。気のせいかもだけど。
顔に湿布はっとこ。ああ、傷だらけだよほんと。
いつまでこんなこと続くんだろ。バイト辞めるまでかな。辞めますって言い辛いんだよなあのおじさんの声。なんか圧を感じるし。となるとプリキュアが諦めるまで?諦めるって言葉あの子らの辞書には載ってなさそうなんですけど。先は長そう…



「あー今回もやっちゃったね…」
「わたし間違えて顔に当てちゃった…」
「どんまいブッキー、でもなんかもう関係ないよね。いたるとこ殴ってるし」
「全然言ってくれないわね。いつまで続ければいいのかしらこれ」
「あっちが折れて色々話してくれるまで?」
「先は長そうだね…」

結局何事もお話(物理)しないと始まらない。という結論で幕を閉じたプリキュアチーム。

結局あっち(プリキュア)が飽きるまで続くんだろうとこっちが諦め始める敵チーム(一人だけど)。
最終更新:2019年05月24日 18:50