会議室で再会
「うわ…」
坂上あゆみはおもわず口に出してしまった。50人ものプリキュアが続々集まってくる様子は壮観だった。もちろん、みな変身前の普段の姿ではあるが、知ってしまうと、プリキュアとしての姿を重ねてしまうのは当然だった。
春が近づいてやっと暖かくなりかけたある日、四葉邸に集まれ、と星空みゆきから連絡があった。みゆきも何か慌てているようだったが、今日の午後、という急な話にあゆみは驚いた。いつものお花見というわけではなさそうだった。
それは今の雰囲気でもわかる。これだけの人数がいるというのにおしゃべりに花が咲くこともない。あったとしても、隣と小声で、というのがせいぜいだった。グレルもエンエンも、トートバッグから顔を出しはしたが、あたりを見回して察したのか、何も言わなかった。
(授業みたいだな…)
ここは会議室のようだった。あるいは、テーブルを並べ替えて飾ればパーティ会場にできるのかもしれないが、今は、正面に演壇があり、机はそれに向かって整然と並べられていた。
あゆみは、誰かに聞いたりもしなかった。そういう空気でないのも事実だが、昨日あたりから体調がよくない、ということもあった。何をするにも億劫で体が重く感じる。今日だって、単なるお花見だったら断ったかもしれない、という気がする。
「お待たせしました」
四葉ありすが入ってきた。皆の視線がそれに注がれるのは当然だったが、空気が冷たくなったような気がした。セバスチャンが、今入ってきたドアを静かに閉めた。
ありすは演壇に立つと全員の顔を見渡した。視線があゆみに来たときに一瞬、動きが止まったような気がしたが、勘違いかもしれない。
「現状からご報告します。
四葉の科学チームが解析を続けておりますが、まだ仮説を得るにも至っておりません。
情報取集の段階で足踏みしています」
何人かが頷く。あゆみはその様子を見ていた。やはりだ。自分が知らないことがあるようだ。億劫さが消えたわけではないが、友人たち、プリキュアたちが真剣な顔をしているのが、何かが起こっているせいだとしたら、このままではよくないような気がした。
「あの」
手を上げる。やはり何人かが振り向く。咎める視線はなかった。むしろ、何か知っているのか、という期待だった。
「今日の目的は何なんでしょうか」
眉を顰める人がいる。
「わたし、何か知らないことがあるみたいで――」
さすがに声が途切れる。ありすは あゆみを見ていたが、わずかに首を傾げた。
「なんか、ごめんな――」
「昨日、あゆみさん、あるいは、キュアエコーと一緒だった方はいらっしゃいますか?」
声はない。首を横に振った者はいた。昨日、とは。
「あゆみさんかキュアエコーを見た、という方は?」
同じだった。手を上げる人もいない。
「やはりそうでしたわね。さっき、あゆみさんと目が合ったときにそんな感じがしたのです。
では、状況の整理を兼ねて、私からご説明いたします」
それは想像したよりも短く終わった。
昨夜、ほぼすべてのプリキュアが突然、異次元空間に引きずり込まれたのだという。
「おそらくあれは、『ワームホール』あるいはそれに類するものだと思います。
その先では、プリキュア・アラモードの六人、HUGっとプリキュアの五人、名称不詳のプリキュアが四人、戦っていましたが、わたしたちがそれに加わる前にワームホールは閉じ、わたしたちはそれぞれ元の世界に戻されたのです」
「…」
「すでに戦っていたプリキュア、それに後から呼ばれた形のプリキュアがいたのに加え、あゆみさんのように、ワームホールに引きずり込まれなかったプリキュアもいたわけですね。その違いが何によるものなのか、ということも解明しなければなりませんわ」
そういうことか。
複数のプリキュアが一緒に戦う大きな事件はこれまでに何度も起こっているが、今回は性質が異なるらしい。
「…。
え」
あゆみは突然、立ち上がった。
「リコちゃん?!」
が、すぐに座り込んだ。いや、倒れたのだった。
「あゆみちゃん!」
最終更新:2019年08月17日 14:46