公園で握手




「そうと決まればお花見だ!!」
 なぎさの一声で全員集合のお花見が決まった。
 参加者は 50人を超える。だが、作業をする人もそれだけいる、ということであり、準備は意外にスムーズに進んだ。
 問題は当日。自己紹介の時間が長い、ということだった。特に、プリキュアになったばかりの星奈ひかるたちは、一度に 50人を覚えなければならず、見るからに混乱していた。例外は羽衣ララで、「記録は AI に任せればいいルン」と涼しい顔である。
「星奈ひかるです」
「坂上あゆみです」
「…」
 ひかるは、あゆみを顔をしばらくのぞき込むように見ていた。
「あの」
「その声!」
「え?」
「ミラクルライトの人だよね!!」
「…え?」
 驚くあゆみをよそに、ひかるは自分の仲間を呼んだ。
「ララ! えれなさん! まどかさん!
 ミラクルライトの人、ここにいたよ!!」
 その三人が驚いた顔で集まって来る。
「あの」
「聞こえてた!」
「聞こえてました!」
「聞こえてたルン!」
「な…に…が…ですか?」
「わたしたちはここにいる!」
 ひかるが叫ぶと、ほかのプリキュアたちも集まってきた。
「わたしたちはあなたの仲間!」
「あなたの友達!」
「すごくうれしかったルン!!」
「え…」
 困惑するあゆみと、目をキラキラさせているひかるたち。ゆかりが後ろに立った。
「つまり、思いがつながったのよね。
 キュアエコーと」
「えっ?!」
「坂上さんがキュアエコーだったんだ!
 きらヤバ~!!」
 ひかるの声はさらに大きくなる。
「そうですけ――」
「ありがとう!!」
 ひかるはあゆみの手を両手で握った。ありがとう、と言いながら、何度も振る。
「あの」
「だって、ゆかりさんが、キュアエコーが助けてくれないとどうにもならないって」
「すごく不安だったルン」
「そんな言い方はしてないわよ」
「ほんとうにありがとう!!」
 みなが笑う。マナがありすの腕をつついた。
「ありす、あゆみちゃん、取られちゃうよ」
「あゆみさんはいつも人気者ですから」
「はやくツバつけておかないと。四葉にスカウトするんでしょ?」
「え…えぇっ?!」
 あゆみの悲鳴が上がる。
「セバスチャンがあゆみさんをとても高く買っているのです。
 おふたりで新しいプリキュアチームを結成する、というのはどうですか?」
 それぞれがキュアエコーとキュアセバスチャンの組み合わせを想像した。何人かが吹き出したが、黄瀬やよいが難しい顔をしている。腕を組んで考え始めた。
「あ、やよいちゃんの創作スイッチが入った」
「あかんて。今日は花見やんか…」
 同じく難しい顔をしていたグレルが、プルンスの体を剣でつつく。
「何するでプルンスか!」
「お前、タコじゃないのか」
「プルンスは宇宙妖精でプルンス!」
 フワはエンエンの額の模様が気に入ったようで、手で撫でたり唇で触れたりしていた。
「フワ…フワ…フワ!」
「くすぐったいよ…」
 そのかわいらしい様子に皆の笑顔がこぼれる。
 ひかるたちに何度も感謝されているあゆみだけが困っていた。
最終更新:2019年08月17日 14:58