「最初の言葉」




えれなが作るご馳走は、あの頃より品数も多く、何だか豪華になっている。
ロケットのドーナツ製造機も、プルンスが十五年ぶりに使ってくれた。
そして――。
「このおにぎりは、ひかるのお手製です」
まどかに言われなくても分かる。
だって、あれから何度も夢に見てるのとそっくりだから。
サマーンに帰ってから、何度も自分で作ったけど、やっぱり同じ味にはならなくて。
「それで、ひかるは?」
「もうすぐ来るはずだよ」
ユニとえれなが話しているのを聞いてたら、急にドキドキして来た。
もしかしたら赤い顔してるんじゃないか、触覚が折れ曲がってるんじゃないか。
気になって、ロケットの大きな窓ガラスに映った自分の姿を確認してたら、ハッチが開く音がした。

「ごめ~ん! 地球への連絡とか色々やってたら、おそくなっちゃっ……」
そう言いながら駈け込んで来たひかる、そこで言葉が途切れた。ゆっくりとロケットの中を見回す。
「キラやば……。みんなが……揃ってる!」
いつになく小さな声でそう言って、キラキラと目を輝かせる。
ああ――十五年経っても、その笑顔は宇宙一まぶしくて、あの頃とちっとも変わらない。
あれ――なんか、ひかるの顔が何だかぼやけて見える。それだけじゃなくて、何だかフニャフニャに歪んで見えて……。
ま、まさかこれ、いつもの夢じゃないよね……?
不安な気持ちが、駆け足で胸の中まで上って来た、と思った時――ひかるとバッチリ、目が合った。

「ララ~!」
「ひかる……」
駆け寄って来たひかるが、わたしを抱き締めてくれる。
あの頃と比べて、随分背が伸びて、髪も短くなって。だけどこうしていると、十五年の年月が一気に巻き戻っていくみたいで……。
ここは星空界だけど、おまけにわたしのロケットの中だけど。
でも今は、ひかるの背中をギュッと抱き締め返して、胸の中に浮かんだ言葉を、素直に口にした。

「ひかる……ただいまルン!」
最終更新:2020年03月13日 00:04