青い翼/makiray
就寝前のゆっくりとしたストレッチ。ペギタンも ちゆのまねをしてポーズをとる。ちゆと一緒にストレッチをするようになってから体調がいい、などと言ってちゆを笑わせた。
「明日も朝のランニングはするペエ?」
「うん。
どうして?」
「だって」
大会はメガビョーゲンの出現で流れてしまった。代わりの競技会が行われるのかどうかはわからない。
ただ、ちゆは誰もいなくなったフィールドで飛んだ。そして密かに記録を塗り替えた。証人は、のどかとラビリン、ひなたとニャトラン、そしてペギタン。
「イップス」も克服できたし、一区切りはついたのではないか、とペギタンは考えた。明日くらいは休んでも、と思ったのだが。
「やっぱり大会で記録に残らないとだめペエ?」
「だって、まだ一回だもの」
ちゆがほほ笑んだ。
「一回?」
「高さも足りないし?」
「ペエ?
県大会記録を飛んだのにペエ?!」
「世界記録より 60cm 以上も低いわ」
「ちゆは世界を狙ってるペエ…」
鳩が、いや、ペンギンが豆鉄砲を食らったような顔にちゆは笑った。
「私ね、もう一つ目標ができたの」
「何ペエ?」
「ペギタンと一緒に空を飛ぶこと」
「でも、人間は――」
「ペギタンと一緒なら飛べそうな気がするのよね」
「できるペエ?」
わからない。
キュアフォンテーヌになっても高くジャンプするのがせいぜい。ペギタンのように自由に飛び回ることはできない。
だが、変身前の自分が頑張ったらどうだろう。自分の足で空に近づけるようになったら、ペギタンと一緒にプリキュアになったときに、空を飛び回れるようにならないだろうか。
「できるかもしれないペエ。
ちゆならきっとできるペエ!!」
ピョンピョンと飛び回るペギタン。
「だから頑張らないとね」
またほほ笑む。ペギタンも、力強くうなづいた。
もう寝ましょうか、とちゆが明かりを消す。
しばらく、二人の呼吸の音だけが聞こえたが。
「ちゆ?」
「なぁに?」
「でも、ほどほどにしないとだめペエ」
「うん、ありがとう」
「明日からは、ぼくもついていくペエ。ちゆが無理をしないように見張るペエ」
「そう…」
ちゆは声をださずに笑った。そうなると、ラビリンやニャトランも参加すると言い出すのではないだろうか。にぎやかなランニングになりそうだ。
「それはわからないペエ」
「え?」
「ひなたが毎日走るとは思えないペエ」
ついに、ふ、と声がもれ、ちゆが笑い出した。
「笑いすぎペエ」
「ペギタンが言ったのよ」
もう夜だ。大きな声は出せない。ちゆは深呼吸をして笑いを抑えた。
「じゃ、明日からよろしくね」
「まかせるペエ」
正直なことを言えば、練習の時は一人になりたい。練習に集中したい。
だが今朝、のどかとひなたが心配してきてくれた時はうれしかったし、ペギタンも同じように心配してくれる。それがひょっとしたら、自分の「翼」になってくれるのではないか、とちゆは思った。
最終更新:2020年06月21日 14:16