March of Light
「あ、あゆみちゃん」
「みらいちゃんもお花見ルン?」
「ここで会えるなんて、キラやばー!」
すこやか市の学校跡。
「あの…解決した?」
みらいは、天宮えれなに耳打ちした。
ひかるたちは桜の木の下にシートを広げて花見の真っ最中だったのである。
「あ、うん。おかげさまで」
「のぞみ先輩なのです」
学校前の道に、水無月家の大きな車は入れなかった。のぞみたちは途中から徒歩でやってきた。
「やっぱり間に合わなかったわね」
「間に合ったんじゃないですかね。お花見には」
かれんが悔しそうに言うと、りんが混ぜ返した。
その様子を、花寺のどかは、友だちの多い人たちだなぁ、と思いながら見ていた。
「あ、のどかちゃん、紹介するね」
お互いの自己紹介の後、はなが付け加えた。
「さっきの光は、あゆみちゃんの光なんだよ」
「え?」
「あゆみさんがキュアエコーなんです」
薬師寺さあやが、微笑みながら言った。
「あ――」
さっき説明を受けた。世界中のプリキュアがミラクルライトを使って光を生み出した。それをキュアエコーが誘導したのだ、と。
この栗色のツインテールの少女がキュアエコー。
「ありがとうございます!」
「やめて、やめて」
あゆみは笑いながらものどかの体を起こした。沢泉ちゆがやはり会釈をしていて、平光ひなたが手を振っていた。照れくささを感じながらも、あゆみも会釈を返した。
(私は、自分の役割を果たしただけ――)
いや、それは違う。おそらく今回は、プリキュアの力を利用した、と言う方が正しい。
〈あ…。
ミラクルンと…リフレイン〉
「え?」
あゆみはフーちゃんの声に声を上げた。時計台の上に影が二つ。大きな方がリフレイン、小さな方がミラクルン。あゆみはとっさにフーちゃんのエコーキュアデコルを両手でかばった。
「どうしたの、あゆみちゃん」
「リフレインが時計台の上に」
「見えるの?!」
「だって――」
あゆみはのどかと時計台を何度も見た。のどかたちには見えていないのか。
「もう大丈夫」
のどかが言った。
「坂上さんが届けてくれた光でリフレインのお手当ては終わったから。もう、時間を勝手に巻き戻したりはしないと思う」
「…」
そういうことなのだろうか。確かに二人の姿はぼやけ始めている。
〈フーちゃんには見える。でも、本当はあゆみたちには見えないはず〉
リフレインとミラクルンの姿の向こうに学校の古い屋根が透けて見えるようになった。リフレインは静かな表情でこちらを見ていた。ミラクルンが小さな手を振る。
そうか。時間の妖精の本来の姿は、人間には見えないものなのか。
だとすれば今見えているのは、フーちゃんの力を借りているからか、それともミラクルンライトを生み出した妖精と「ミラクルライトのプリキュア」との間になんらかの共通点があるからなのか。
あゆみは小さく手を振った。ミラクルンが笑ったような気がした。やがてどちらの姿も見えなくなった。
〈あゆみ〉
「なに?」
〈フーちゃんは怒ってない〉
「…」
グレルとエンエンが辺りをうかがいながらバッグの縁に登ってきた。
「怒ってもいいんだぞ」
「僕たちのためにフーちゃんが――」
〈怒ってない〉
「うん」
ありがとう。そして、ごめんなさい。
私は忘れない。フーちゃんに悲しくて悔しい思いをさせてしまったこと。
独りぼっちがどれだけ辛いかを知っている自分が、大好きな友だちを独りぼっちにしてしまったことを。
(絶対に忘れないから)
〈怒ってない〉
「うん…」
グレルとエンエンも困ったように顔を見合わせた。
〈それよりフーちゃんもみんなに紹介してほしい。
みんなと友だちになりたい〉
「わかった。
妖精さんたちにも紹介してもらおうね」
さっきからユニが呼んでいる。しびれを切らしたのか、輝木ほまれが迎えに来た。
ほまれに手を引かれ、あゆみは仲間たちのもとへ急いだ。
最終更新:2021年02月19日 22:48