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閉幕?『オールスタープリキュア!キュアキュアTouh!!冬のSS祭り2021』/一六◆6/pMjwqUTk




「そろそろお話会もおしまいかぁ。楽しかったねっ! のどかっち!」
「そうだね。でも何だか、あっという間だったな……」
 周りの賑やかさに負けじと声を張り上げるひなたに、のどかが少し寂しそうに答える。そうね、と微笑むちゆ。その隣ではアスミが、パフとじゃれ合うラテを眺めて微笑んでいる。
 旅館沢泉の大広間では、大量に用意されたご馳走もあらかた食べつくされ、60人を超える少女たちは、それでも変わらぬテンションで話に花を咲かせていた。

 ちゆの隣に座り込んだペギタンが、自分の身長より長い鉛筆を手に、ノートに何やら書き込んで、ふむふむ、と頷いている。
「テーマは『癒し』と『タッチ』だけど、やっぱり『癒し』の方が、若干お話の数が多いペエ。『タッチ』はハイタッチとかバトンタッチとか、ハッキリしててわかりやすいけど、『タッチ』が出て来るお話でも、最後まで聴くと『癒し』を感じるものも多いペエ」
「ペギタンは、何をしているのですか?」
「今日聞いたお話は、このノートにぜ~んぶ書き留めたペエ。今はそれを読みながら、分析してたペエ」
 不思議そうなアスミの問いかけに、ペギタンが得意気に胸を張る。それを聞いて、ニャトランがフン、と鼻を鳴らした。
「そんなの分析してどうすんだよぉ。分析とかしなくても、みんないい話ばっかりじゃないかよ。俺は少なくとも5回は泣いて、あとはずっと笑ってたニャ~」

「へぇ。ニャトラン、泣いたんだ」
「わっ! そんなとこだけ聞いてんじゃねーよっ!」
 いつもの調子でペギタンにツッコんでいたニャトランが、ひなたに顔を覗き込まれて途端に真っ赤になって慌てる。
「恥ずかしがることないラビ。パートナーや仲間はみ~んな癒しラビ。泣くのも笑うのも、当然ラビ!」
 ラビリンはそう言って辺りを見回した。
 今ここで目にしている光景は、みんな賑やかで、明るく笑顔に溢れていて。でも今日聞いた数々のお話の中には、それぞれが悩んだり、仲間のことを心配したり、そんな仲間の想いに触れて泣いたり笑顔になったりした、というお話がたくさんあった――。

「じゃあ、名残惜しいけど、そろそろお開きにしましょうか」
 ちゆがそう言って、先輩たちに声を掛けようとする。と、その時。大広間の戸襖が、バーン! と勢いよく開いた。

 そこに立っていたのは、茶色のポニーテールをなびかせた、見るからに活発そうな少女。何だか鼻息も荒く、目を輝かせて大広間を見回している。その隣には、青っぽい髪を緩いツインテールにした少女が、少し緊張気味な様子で立っている。
「うわぁぁぁ、凄い人! ねえねえ、さんご。やっぱりここが、プリキュアのお話会の会場なのかなぁ?」
「まなつ、声大きいよ。違ったらどうするの?」
 ポニーテールの子の大声を、ツインテールの子が慌ててたしなめる。だが、そのやり取りは部屋の中で一度に湧き上がった数多くの声に掻き消された。

「ええっ!? 二人ってひょっとして……」
「新しいプリキュアなのです!」
「はい。その確率は100%です」
「キラやば~っ!!」
「か・わ・い・過ぎる~っ!」

 一斉に浮足立つ少女たち。既に半数以上が立ち上がって、入り口に殺到しようとしている。だが――。
「待ちなさい。まずはきちんと戸を閉めてから。旅館の方々に迷惑でしょ?」
 凛と響くゆりの一声で、喧騒は一瞬で静まった。

 表の開き戸と、広間の入り口の戸襖の両方をきちんと閉める。六花が手早く席を作り、咲が人懐っこい笑顔で二人に座るよう促す。ちゆと、彼女の動きにいち早く気付いたゆうこが早速厨房に行って、二人の料理と飲み物を運んで来る。
 皆が注目する中、ほのかに促されたなぎさが、「えーっと」と頭を掻きながら口火を切った。

「じゃあまずは……二人の自己紹介から、かな?」
「はい! わたし、夏海まなつ。キュアサマーです」
「やっぱり、キュアサマーだったんだ!」
 まなつの言葉を聞いて、のどかが思わず立ち上がる。
「ほら、前に助けてくれたでしょ? ヒーリングガーデンで……」
「あ、ひょっとしてあの時の!?」

 まなつもパッと顔を輝かせる。ちゆ、ひなた、アスミも笑顔で頷き、ラテがワン! と嬉しそうに吠えた。ヒーリングガーデンで、のどかたちがお土産に持っていった“すこやかまんじゅう”がメガビョーゲンになってしまった時、現れた謎のプリキュアこそが、キュアサマー。彼女たちはその時、出会っているのだ。
 実はのどかは、彼女の分の招待状も書いていた。だが連絡先がわからなくて困っていたら、アスミと共に遊びに来ていたラテが、それを咥えてどこかに持って行ってしまった。あの時キュアサマーを呼んだラテのことだから、ひょっとして――そんな淡い期待も、少しはあったのだが。
「ふわぁ、本当に来てくれるなんて!」

 全員の拍手を受けてまなつが座ると、もう一人の少女が恥ずかしそうに立ち上がった。
「わたしは、涼村さんごと言います。あの、実は三日前にキュアコーラルになったばかりで……」
「ホンマになりたてホヤホヤやな。そらまだドキドキしてるの、わかるわ」
「そうだね。でも、仲間が居れば大丈夫だよ」
 あかねがおどけた調子でニッと笑い、あきらが優しい笑顔を向ける。それを見て、さんごも少し緊張がほぐれた様子で微笑んだ。

「よぉし、今度は新メンバーのお話を聞いちゃうぞぉ、けって~い!」
 のぞみがいつものように右手を突き上げ、明るく言い放つ。それを聞いて、まなつとさんごが少し困ったように顔を見合わせた。
「でもわたしたち、まだお話できるようなことなんて、何も……」
「じゃあねぇ、二人はどうやって出会ったの?」
 戸惑う二人に、ラブがそう問いかける。
「あ、それわたしも聞きたい!」
「はー! あと、プリキュアになったキッカケも!」
 響とことはも身を乗り出した。

「わたしたちの出会い。そして、プリキュアになったキッカケ……。うん! わたし、話したい!」
 少し考えてから、まなつがパッと顔を上げ、キラキラした目で先輩たちを見回した。その顔を見て、さんごも嬉しそうに頷く。
 新しい語り手を歓迎する拍手の音を聞きながら、この広間を丸一日貸し切りにしてもらっておいて良かった、とちゆは密かに微笑んだ。

 こうしてお開きはしばし先延ばしになった、今年のお話会。まだもう少し、不思議な時間を楽しめそうです。
 思いっ切り楽しんだその後は、またそれぞれの場所で精一杯、それぞれの時間を過ごしましょう。
 また来年、またどこかで、この不思議な時間が訪れるまで。
最終更新:2021年03月19日 21:18