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『えみるなんでも相談室』/ギルガメッシュ




「これではいけないのです!!」
 そう大きく声をあげたのは、自前のギターを天に掲げて何かポーズを取る『えみる』でした。
「いきなりどうしたのですか、えみる?」
 その突拍子もないリアクションにわたしは思わず、疑問を問いかけました。
 ここは、『愛崎えみる』の家の部屋。
 わたし、『ルールー・アムール』はえみるの家に招待されて、歌を聞いている最中でした。しかし演奏が終わると不意にこの発言をしたのです。
 そしてわたしのその問いにえみるは言葉を紡ぎ始めました。
「ルールー、わたしは思ったのです。わたしたちはこの前プリキュアになりましたよね?」
「はい、わたしが『キュアアムール』、そしてえみるが『キュアマシェリ』になりました」
「そう、そして今は人々の平和を守るためクライアス社と戦っています」
「その通りです、えみる」
 えみるは我々が行っていることを述べていく。
「ですが、プリキュアになってから怪物と戦うというただそれ一点だけになってしまって、町のみんなが普段抱えているような悩み事や心配事の相談に乗れていないのです」
「そう……ですね、確かに」
 確かにえみるのいう事は当たっていますね。プリキュアとして戦う事に比重を置けば、それだけ他の事柄へ割く時間は減少してしまう。
 そう、えみるがいう事に納得していたわたしでしたが、次の瞬間に彼女はまたとんでもないことを言い始めた。
「なので今から『えみるなんでも相談室』を設立するのです!!」
「え……?」
「なので今から『えみるなんでも相談室』を設立するのです!!」
「二回言わなくても聞こえています」
 それはえみるの突然の思い付きであった。
「一応聞きますが、『えみるなんでも相談室』とは一体何なのでしょう?」
「ふふ、良い質問ですね。『えみるなんでも相談室』とはこの愛崎えみるが人々のお悩みをなんでも相談に乗ってあげることなのです」
「そのままですね」
 読んで字のごとくの意味らしいです。えみるはどや顔になり、そう宣言していました。すごくめんどくさいことになりそうです。
「ん? どうしたのですか、そんな沈んだ顔をして?」
「いえ、別に……」
 とは言え、えみるの言っていることは間違っていませんし、むしろ歓迎されることだとは思います。ですが一つある懸念がありました。
「えみる、以前も同じような事を言っていませんでしたか? 多少名前は違いますが」
「ギク!? な、なんのことでしょう!?」
 わたしの指摘に目が泳ぎながら否定するえみる。埒が明かないのでわたしは目から光を放ち、それを壁に当てて以前の記憶を映像として写し出しました。
「これは先週」
『えみるなんでも解決隊を設立するのです!!』
「そしてこれは先々週」
『えみるはぐっとお助け隊を設立するのです!!』
 次々とこの前のえみるの言った事を写し出した。それを見て、えみるはだらだらと汗がこぼれていくことが感知できました。
「このような事を言っていた記憶映像があるのですが、どう弁解するのですか?」
「ち、違うのです!! 先週も先々週も確かにそう言いましたが、プリキュアの活動が忙しくてなかなかできなかったのです。で、時間が空いたタイミングで再度決起したのですが、その度にいい名前が思いついてしまって、あんな感じになってしまったのですよ」
「か、かっこいい名前……ですか?」
 かっこいいかはともかく、えみるがひどく困惑していることは分かります。でもプリキュアになったばかりの時は確かに他に割く時間が少なかったようには感じます。
「とにかく今回は本気の本気なのです!! その証拠に今から、すぐに実行するのです!!」
 そう言うとえみるは携帯電話を取り出しました。

「まずは身近な人から、はな先輩の相談に乗るのです!!」
 そして電話番号を押してえみるは『はな』に電話をかけました。
『はい、えみるどうしたの?』
「はな先輩、何かお悩みありませんか!! びしばし解決しちゃいますよ!!」
『えぇ、急にどうしたの? うぅん、そうだなぁ、いきなり言われても』
『うぎゃああ!!』
『あぁ、はぐたんが泣き出しちゃった。ごめんね、えみる、電話切るね』
ブツ!!
「あ」
 しかし、えみるの電話は切られてしまいました。ツー、ツーと無情な電話の音が響きます。
「まだまだこれからです!! さあやさんにかけるのです!!」
 そして次は『さあや』の電話番号を押し始めました。そしてそれが繋がります。
『はい、どうしたのえみるちゃん?』
「突然ですいません!! さあやさん、何か悩み事ありませんか!! このえみるが何でも相談に乗るのです!!」
『えぇ!? どうしたの急に!?』
「わたしは今さっき、『えみるなんでも相談室』を設立したのです!! さあやさんのお悩みを聞くのです!!」
『あぁ、えっと、そのごめんね、えみるちゃん。みんなには秘密だけど今、テレビCMの撮影してるの。また次の機会にしてね、じゃあ』
ブツ!!
「あ」
 そしてまた切られてしまいました。
「まだまだまだまだです!! 次はほまれさんに!!」
 えみるは落ち込んではすぐに奮起し、今度は『ほまれ』に電話をかけました。
「はい? どうしたのえみる」
「ほ、ほまれ!! 何かお悩みはありませんか!? この愛崎えみるがバシッと解決するのです!!」
『えぇ!? 急にそんなこと言われてもなぁ!! しかも今、買い物してるんだよ、あ、会計の番が回って来た。ごめん、えみる切るよ』
ブツ!!
「あ」
 またまたえみるは切られてしまいました。
「くぅうぅ、な、なにも出来ないのです……」
 そしてそのまま膝をつき、ひどく落ち込んでしまいました。確かにこれは少々きついかもしれません。
「えみる、三人とも都合があります。事前の連絡もなく突然悩みと言われても困惑してしまうのは仕方がないと思いますよ」
「確かに浅はかだったのです。でもしかし、これではみんなのお悩みが聞けないのです、うぅ」
「ではえみる、町の人に聞いてみてはどうでしょう? 他の人ならちょうど困っている人がいるかもしれません」
「そうですね!! こうなったらとことんやるのです!!」
 そうアドバイスをすると、すぐに支度を始めるえみる。そしてそのまま、急いで外へと向かうのでした。
「全くえみるは相変わらずですね」
 そしてわたしはそうこぼしながら、自分の携帯を取り出したのでした。

「うぅん、ここの枯れ葉の掃除大変だな」
「任せるのです!! のぁああ!!? 集めた枯れ葉足が滑って」

「ウチの猫、あんな高い所に登って!!」
「任せるのです!! ぎょわあああ、ひっかくのはやめるのです!!?」

「あぁ、野球のボールが飛んで行って!!」
「任せるのです!! すぐにキャッチして、のぉおお、顔面に!!?」

 同行した私でしたが、えみるの手助けはまさに散々な物でした。
 まず広場の落ち葉掃除をしている男性のお手伝い。
 枯れ葉に足を取られて、ひっくり返り、そのまま集めた枯れ葉へとダイブし、余計にまき散らしていました。
 二つ目は女性が飼っていた猫の救出。高い木に登ってしまい降りられなくなった様子。
 えみるは木のよじ登り、猫を呼び寄せましたが、必死すぎるその表情に猫が驚いたのか、えみるの顔にダイブをしてみだれひっかきされてしまいました。ちなみにその猫はわたしが抱きかかえて事なきを得ました。
 三つ目は通りすがりの野球少年たちが飛ばしてしまったボールをキャッチしようとした事。
 案の定、キャッチに失敗し、顔面に直撃。その場に倒れたえみるに代わり、そのままボールを投げ返しました。
 しかし流石はえみる、どんなことがあってもへこたれません。
 わたしが彼女と会った時と同じく、何度も何度も街の人たちに声をかけて、困っている人に向かって手を差し伸べていました。

 そして、いつの間にか日が暮れてきたのでした。
「うぅ、失敗ばかりなのです。プリキュアにはなれましたが、あれから成長していないのです。全然変われてないのです!!」
「そんなことないですよ。確かにえみるの行動は空回りばかりですけど」
「ちょ、ルールー、慰めてるのか貶してるのかどっちなのですか!?」
 わたしが事実を述べると頬を膨らませてえみるは怒っていました。でもわたしの話には続きがあります。
「でもえみる、あなたはやはり人を笑顔にする力を持っています。あの人たちもえみるのそんなひたむきな姿や少し天然な姿を見て笑ってました。そこはずっと変わらずに……」
「ル、ルールー……」
「ですから、自信を持ってください、えみる」
「あ、ありがとうなのです。よし俄然やる気が出てきたのです!! もう暗くなってきましたが、最後のひと踏ん張りをするのです!!」
 わたしの言葉により、すぐに元気になり、やる気に満ち溢れるえみる。やはりえみるはこうでなくてはいけません。
「でしたら良い人たちがいますよ、えみる」
「え、本当ですか? いったい誰が?」
「ではまず先に、えみるの家に戻りましょう。『あるもの』が必要です」
「あるものですか?」
「えぇ。そしてそれを取りに帰ったら、ビューティーハリーショップに向かいましょうか」
「ビューティーハリーショップにも行くのですか? よく分かりませんね……」
 怪訝な表情を浮かべるえみるに対して、わたしは軽く微笑むと、そのまま手の引いて、えみるの家に向かうのでした。

「あ、えみるおかえり!!」
「えみるちゃん!」
「お、えみる」
「ようやく来たなぁ、おそいでほんま」
「えみう~~!!」
「な、なぜみんながここにいるのですか?」
 えみるの家から『あるもの』を取りに行き、ビューティーハリーショップに着いたわたしたち。
 そこにははなとさあやとほまれ、それからハリーとはぐたんが勢ぞろいしています。
 驚愕しているえみるでしたが、みんなは微笑みながら、事の顛末を話し始めました。
「えみるが電話で言ってくれてたことなんだけど、あの後ルールーから電話がかかってきて詳しい説明をしてくれてさ」
「えみるちゃんがみんなのために困っている人を探してるって聞いたの」
「えみるの助けをちょうど今、受けたくてね。だからみんなで待ってたんだよ」
「ル、ルールー?」
 三人の説明を受けて、えみるはわたしの方向を見ました。そしてまた三人の方に視線を戻すえみる。
「三人とも今日は各々自分の用事をしていたらしいのですが、そのことで疲れているらしいのです。だからえみるにたくさん癒してほしいみたいですよ?」
「そうそう、ルールーの言う通り」
「そしてえみるちゃんの癒しと言えば」
「歌だよね!」
 わたしに続くように、はなとさあやとほまれは言葉を紡ぎます。
「てなわけでお願いや、みんなのために一つ歌ってくれへんか!」
「えみゆ、うたって!!」
 そしてハリーとはぐたんもそれに賛同していました。
「はい、えみる。家から持ってきたギターです」
 そしてわたしはえみるの家から持ってきたギターを彼女に渡しました。
「ルールー、このためにこのギターを取りに帰る必要があったんですね」
「はい、そうです。えみる、では曲を聞かせてもらってもいいですか?」
 ギターを手に持ったえみるは、驚きの表情を見せた後、すぐさま顔を赤らめて、うれしそうな顔をしていました。
「し、仕方がないですね!! そこまで求められたら、やるしかありません!! ではギュインとソウルをシャウトさせていきますよ!!!」 
 そしてえみるは、みんなが見守る中で元気よくギターを奏でるのでした。
最終更新:2022年04月16日 12:55