『ひろがるスカイ!春のSS祭り2023~開幕~』/夏希◆JIBDaXNP.g
「おいしーなタウンって言うだけあって、何だか美味しそうな匂いが漂ってきました!」
「ここは洋食屋さんのストリートね。他に和食や中華のストリートもあるんだって」
「あーいー」
ソラの腕の中でエルが両手を振り回す。まるで届かないけれど、お店のオブジェか何かを触ろうとしているらしい。
「ふふっ、エルちゃんもお腹が空いてきたのですか?」
「もうちょっとだけ我慢してね。お話会の会場に着いたらすぐに用意するから」
ましろがエルに微笑みかける。だがソラは急に立ち止まると、険しい顔つきになってエルをましろに手渡した。
「待ってください、ましろさん。あっちで騒ぎが起きてます」
「えっ、何も聞こえないけど……」
「私には聞こえるんです。先に行ってます。ましろさんはエルちゃんを見ていてください!」
人間離れしたダッシュで、ソラの姿はあっという間に見えなくなってしまう。ましろはエルを抱えて、慌てて後を追った。
「ふふーん。ここは美味しい食べ物でいっぱいだから、俺様の力も無限に湧いてくるのねん。カモン! アンダーグ・エナジー!」
カバトンから放たれたエネルギーが、洋食屋の招き猫のオブジェに命中する。それはたちまち巨大化して、モヒカン頭の巨大招き猫型ランボーグに姿を変えた。
「ソイツはプリキュアだ。手加減は無用なのねん。やっちまえ、ランボーグ!」
巨大な招き猫……もといランボーグがソラに襲いかかる。その猫パンチを軽々とかわして、ソラはお店の屋根の上に跳躍した。
「こんな他所の街までやって来て……皆さんに迷惑をかけて――許せません! ヒーローの出番です!」
ビシッと指を突きつけて宣言する。ソラは屋根から飛び降りると、人気のない裏通りに降り立った。
「スカイミラージュ! トーンコネクト! ひろがるチェンジ! スカイ! 無限に広がる青い空――キュアスカイ!」
“ヒーローガール・スカイパーンチ!”
裏通りから飛び出したスカイの決め技がランボーグに炸裂する。しかし、その渾身のパンチをランボーグは肉球の掌で受け止めると、スカイを地面に叩き落とした。
「いったぁ……」
「そんなの効かないのねん。今日の俺様は一味違う。さっきまで食って食って食いまくって力を溜めて作った、特製のランボーグなのねん!」
“ヒーローガール・プリズムショット!”
いまだ起き上がれずにいるスカイにトドメを刺そうと、ランボーグが迫る。そこに後から現れたプリズムの決め技が炸裂した。しかし、ランボーグは止まらない。スカイを助け起こして退避しようと跳んだプリズムを、今度は二人まとめて猫パンチで叩き落とす。
「ギャーハハハ! 俺、TUEEE! 今日こそお前たちを倒して、プリンセス・エルを取り戻すのねん!」
倒れて動けない、スカイとプリズムの頭上が真っ暗になる。目前に迫った巨大な猫パンチで、視界が完全に覆われたのだ。二人が観念してぎゅっと目を閉じた、その時だった。
ズン! と大きく地面が揺れたかと思うと、一陣の風が吹き抜ける。直後に差し込む陽の光。そして輝く少女の笑顔――。
見たこともないプリキュアが、たった一人でランボーグの猫パンチを受け止めて、そして跳ね返したのだ。ランボーグは大きくたたらを踏み、地響きを上げて尻餅をつく。
頭には花飾りの付いたリボン。ピンクのドレスに水色と黄色のエプロンを着けた、自分達とは異なるデザインコンセプトの――しかし、それは確かにプリキュアだった。
「な……何なのねん? お前は誰なのねん!?」
「それはこっちのセリフだよ。みんなの美味しいを邪魔したら許さないんだから!」
「何言ってるかわからないのねん。俺様の邪魔をするなら、お前も一緒にお陀仏なのねん!」
起き上がったランボーグが、再び猫パンチを繰り出す。さっきより素早い動きで、しかも今度は鋭い爪が伸びている。
「いけません! どこのどなたか存じませんが、私達に構わず逃げてください」
「大丈夫!」
少女は――キュアプレシャスはブンブンと腕を振り回すと、迫り来る猫パンチを真っ向から迎え撃った。
“5000キロカロリーパーンチ!”
プレシャスのパンチはランボーグの猫パンチを弾き返し、そのままの勢いでランボーグの頭部を殴りつける。仰向けに倒れたランボーグから、カバトンが慌てて飛び降りた。
「おのれ……こうなったら俺様自ら相手してやるのねん!」
「あのー、やめた方がいいと思いますよ?」
いきり立つカバトンに向かって、いつの間にか彼の隣に姿を現した少年が、ボソっとつぶやく。
「今度は誰なのねん――って、お前は!」
「僕のことよりも、あっちを見てください」
少年の指差した先には、一斉にこちらに向かってくる70人を超える少女達の姿があった。
「あれは……まさか……あれが全部……」
「はい。僕が呼んで来ちゃいました」
テヘっと可愛く笑う少年を睨みつけてから、カバトンがくるりと回れ右をする。
「覚えているのねーん!」
カバトンは慌てて逃げ出し、躓いて転んでまた走り出してから、ようやく思い出したように「カバトントン!」と叫んで姿を消した。
「ツバサ君、ありがとう!」
「それと――見知らぬプリキュアの方、助けてくださってありがとうございました!」
スカイとプリズムは口々に感謝を伝えると、駆け寄ってくる大勢のプリキュアにも頭を下げた。
「どうせ迎えに来るつもりだったから。さあ、ご馳走いっぱい用意してるよ、楽しいお食事会――じゃなくて、お話会、始めようか!」
「「「はいっ!!!」」」
最終更新:2023年04月15日 01:09