『アイドルの出番です!!』/ギルガメッシュ
「えぇええええ~~~!!! ましろさんが『あいどる』にぃぃ~~!!!?」
ソラちゃんがいつものような高いテンションでわたしに向かって声を張り上げていた。
「それは本当ですか? ましろさん、そしてあげはさん!!」
ソラちゃんは隣にいたあげはちゃんにもその話題を投げかける。
「う、うん。そういう事になっちゃったみたい……」
「まぁ、アイドルって言ってもわたしの今いる保育園の催しでましろんがその役をやるだけだけどね」
そう、今あげはちゃんの説明になった通りだ。あげはちゃんのいる保育園で子供が楽しめる『催し事』をやることになったらしく、地域の人を呼んで歌やダンスを披露してもらう事になったのだ。
そしてあげはちゃんはわたしにアイドル役をやって欲しいと頼まれていた。わたしはあまり運動が得意じゃないと断ろうとしたんだけど、『ましろんは可愛いから大丈夫』と押し切られてしまった。
「あげはちゃん、わたしそんなにうまくいくとは思えないけど」
「いいっていいって。子供たちは可愛い服を着た女の子がステージに立っているだけで喜んでくれるんだからさ。そこまでダンスや歌は要求しないし」
ハッキリ言って消極的だけど、そういうなら少しは気が楽かも知れない。
そんな時、隣の部屋から今の会話を聞きつけてツバサ君と抱きかかえられたエルちゃんがやって来た。
「ましろさんすごいじゃないですか。アイドル役なんて。ボクもプリンセスも応援しますよ」
「エル、ましろ応援する!!」
ツバサ君はニコッと笑顔を見せてくれて、エルちゃんも嬉しそうに手を振ってくれてる。ここまでみんなに応援されたらやる気が出てくるよ。
「そうです。ましろさんがやるならあたし全力で『あいどる』役を応援しますよ!!」
ソラちゃんも手を握って励ましてくれた。うん、あたし頑張れるかも。そう思った矢先、
「で、『あいどる』って何ですか?」
ソラちゃんのその一言に、みんな一斉にその場でずっこけてしまった。
「えぇ~と、ソラちゃんアイドルって言うのはね。いろんな人の前で綺麗で可愛い服を着て歌ったり踊ったりして、みんなを喜ばせるお仕事なんだよ」
「そうそう、アイドルはみんなを元気に出来るからましろんがその役にぴったりかなぁって」
「なるほどぉ!! それが『アイドル』なんですねぇ。それはすごい仕事じゃないですか!! ましろさんがアイドルならわたし、めちゃめちゃ応援しちゃいますよ!!」
ソラちゃんはさっきよりも目を輝かせて私の手を握ってぶんぶんと腕を振って来る。そこまで喜ばれると逆に照れて恥ずかしいかも。でもやる気は十分に高まったよ。
「うん、あたし絶対に頑張るね!! 子供たちを楽しませるんだ!! やるぞぉ~~!!」
そう言ってわたしは拳を高く振り上げる。
「「「「おおおぉおお!!!」」」」
するとみんなが笑顔で一緒に腕をあげてくれた。
という事があったのはつい先日の事。子供たちへの催し物が三日前に迫った今現在、わたしはケガをしてさらには風邪まで引いてしまっていた。
「ごめんねぇ~、あげはちゃん、ずずぅ」
わたしは先日まであげはちゃんが用意してくれていた簡単なダンスのステップを練習してた。けど練習中に足を大きくくじいちゃって、さらに運が悪いことにその日は寒かったから風邪もこじらせてしまったのだった。
「あはは、災難だったねましろん。まぁ気にしないでよ。あたしも無理言ってたし、むしろこっちが謝らないといけないくらい」
「ましろ、大丈夫ぅ?」
布団にくるまっているわたしにあげはちゃんとエルちゃんが心配してくれている。ごめんね、みんな。
「しかし、あげはさんどうするんですか? このままじゃ子供たちへの催し物が出来なくなりますよ?」
「う~ん、困ったよねぇ。少年が代わりにやってみる?」
「いやぁ、僕には荷が重いですよ。歌もダンスも全く出来ないですし」
あぁ、元々わたしが出る予定だったからみんなを困らせてしまってる。すごく罪悪感を感じてしまうよ。一体どうしたらいいんだろう。
みんなが困り果ててわたしも意気消沈しているそんな中、さっきから腕を組んで目をつぶっていたソラちゃんが突然声をあげた。
「ここはヒーロー……、いや、アイドルの出番です!!」
そしてソラちゃんはあげはちゃんの方を向いてさらに続ける。
「あげはさん、わたしが代わりにその役を引き受けます!!」
「えぇええ~~!! ソラちゃんがあたしの代わりに~~!?」
ソラちゃんがわたしの代理をすると言って、みんなは騒然とした。うれしい申し出だけど。
「ソラちゃん、ごほごほ。そんな悪いよ。歌もダンスもそんなすぐに覚えるのは大変だし、きっと子供たちも分かってくれるよぉ」
「そうですよソラさん……」
わたしとツバサ君はその提案には乗れないと反論を返す。だってすっごく申し訳ないないんだもの。しかしソラちゃんの強いまなざしは変わらない。また大きく口を開けて声を出す。
「だってましろさんの努力を無駄にはしたくありません!!」
「ソ、ソラちゃん……」
ソラちゃんそう言い終わると、あげはちゃんの方向を向いた。するとあげはちゃんはニコッと口を微笑ませる。
「うん、やろう!! ましろんもツバサ君もさ、ここまで覚悟があって思いやりのあるソラちゃんの意思を尊重しようよ。確かにもう三日しかないけどやれるところまでやろうよ。わたし、全力でサポートするよ」
「はい! お願いします!! あげはさん」
「ソラ、頑張ってぇ!!」
「ふふ、プリンセスもノリノリですしね。ボクも応援します。なにかお手伝いは出来ますか?」
ソラちゃんはあげはちゃんに丁寧にお辞儀をしてエルちゃんも腕をあげて応援している。ツバサ君もだ。確かにここまで言われたら断る方が無粋かも。
なのでわたしもソラちゃんに声を掛けた。
「ソラちゃんありがとうね。わたしの代わりをどうかお願い致します」
「はい、任せてください!!」
ソラちゃんそう言って元気溢れる笑顔を見せてくれた。
そして三日後。
ソラちゃんとあげはちゃんと一緒に保育園へと向かい、アイドル役を演じきったみたいだった。わたしはその日は家で待機してて、ツバサ君もエルちゃんのお世話をしてたみたい。そして二人が帰ってきた後に撮影したビデオを見せてもらった。
『皆さんお待たせしました!! アイドル役のソラ・ハレワタールです!! みなさんのために馳せ参じましたよ!!』
『ソラちゃん、それだとヒーローの登場みたいじゃん!!』
『す、すいません』
『あはははは』
ビデオの中のソラちゃんは、三日間でなんとか覚えた歌とダンスを披露していた。もちろん所々忘れた部分などがあったみたいだけど、アドリブ等でうまく乗り切っていた。そして終始、子供たちの嬉しそうな笑い声と楽しそうな表情を浮かべてソラちゃんを見ていた。
「良かったですね、あげはさん。無事に成功して」
「ソラ、かっこいい!!」
「いやぁ、本当にソラちゃん様様だよ!! みんなすっごくはしゃいでたしね♪」
ビデオを見てみんなが喜んでいる中、当の本人のソラちゃんはどこか気まずそうな顔を浮かべていた。そしてわたしと目が合うと、ソラちゃんは申し訳なさそうに話しかけてきた。
「すいません、ましろさん。完璧には『アイドル』を演じる事が出来なかったです……」
「ううん、とっても良かったよ。子供たちみんなこんなに喜んでるんだし」
「で、ですが。動きも雑だし、覚えきることも出来ませんでした……」
自分の失敗した点をすっごく反省しているみたい。そんな落ち込むソラちゃんにわたしは両手を握った。
「うぅん、ソラちゃんはすっごく頑張ってくれたよ。何も恥じることはないよ。ソラちゃんありがとう」
「ましろさん……。そ、そうですよね。力になれて良かったです」
そしてソラちゃんは屈託のない笑顔を見せてくれた。どうやら元気を取り戻してくれたみたい。わたしはそんなソラちゃんを見てこう思った。
「やっぱりソラちゃんはヒーローガールだね♪」
最終更新:2025年04月19日 10:39