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嫉妬の種/黒ブキ◆lg0Ts41PPY




「これ、なあに?」

ももかの手にあるのは一枚の便箋。以前ゆりが近所の少年に貰ったラブレターだ。
幼い頃から弟のように接していた彼が、懸命に想いを綴り、勇気を振り絞って渡してくれた手紙。
嬉しくて、くすぐたっくて何度も読み返している宝物。
今日も何となく眺めていた所にももかが遊びに来た。
ついうっかり机に広げたまま対応してしまったのは迂闊だったが、いくら出しっぱなしだったとは言え、明らかに手紙と分かる物を持ち主に無断で読むのはどうなのかと。
しかし、そんな当たり前の主張をゆりは口には出せずにいた。
華やかに微笑むももかの瞳の奥が氷点下の吹雪になっているのが見て取れる。
疚しい事など何も無い、むしろ言い訳する方が可笑しい、そう感じながらもゆりは言葉を探しあぐねていた。


「ハヤト…君。前にゆりが話してくれた近所の子?」
「…そう。何て言うか、弟みたいな子で……」
「………ふぅん……」


ももかが差出人を覚えていた事に一筋の光明を見出だした気がしたが、それは空気に晒されたドライアイスの様に煙と消えた。
相手が年端も行かぬ少年、と言う事は何の関係もないらしい。


「……いくら出しっぱなしでも他人の手紙を無断で読むのは感心しないわ」
「そうね。ごめんなさい」


さすがに理不尽に思い、細やかな反論を試みたゆりだが、ももかは相変わらずうっとりするほど可愛らしい微笑みを崩さない。
それが却って恐ろしい。
だいたい何がそんなに気に障るのか。
ラブレターと言ってもほんの子供の淡い想いだろう。
すぐに同世代の女の子に目が行くに決まっている。
年上の近所のお姉さんへのほのかな憧れなど、いずれ甘酸っぱい思い出として埋もれて行くだけだ。
それならなるべく美しい思い出になって欲しい。
時々取り出して眺めながら、ゆったりと心が暖まるような、そんな綺麗な思い出に。
ももかが妹の成長を少し寂しく思いながらも嬉しそうに見守っているように、自分も弟の背伸びを微笑ましく感じているだけなのに。


「ゆり。ゆりは本当に分かってないんだから……」


ももかの細い指がゆりの眼鏡を外し、頬から唇をそっとなぞる。
丁寧に整えられた爪には透明なマニキュアが塗られていた。
いつもなら綺麗だと感じるそれが、今は猛禽類の爪のような凶器に思え、ゆりは身をすくませる。


「……んっ…うん…っ…」


緩やかな仕草で抱き締められ、その腕の穏やかさとは裏腹な狂暴な口付け。
舌を強く吸われ、唇に歯を立てられ、肺の奥から酸素が吸い出される。
息苦しさに目眩がし、飲み下せない唾液が顎を伝う。
制服のブラウスがボタンも外さず下着ごとたくし上げられ、乱暴に乳房が揉み潰された。


「…っ!……ももか、痛いわ…あっ、あっ…」
「当たり前。痛くしてるの」
「やっ…なんで、あんっ…ぁ…やあぁ…」
「ゆりは危機感無さすぎなのよ、まったく…」


乳房を捏ね回し、ねっとりと舌を絡める。
震える桃色の先端を摘まんで扱きながら時々指の腹で擦ってやると、ゆりは無意識なのか艶かしく腰をくねらせ、体の奥の疼きを訴え始める。
本当に、素直な体だ。
ももかは愛らしい顔に少し弑瘧的な笑みを浮かべながらも、焦らすのは止めた。

「ゆり、下着脱いで」


顎に指を掛け、じっと見つめながら囁く。
ゆりの瞳はとろんと蕩けてはいたが、まだ快感に我を忘るほどではなさそうだ。
それでもゆりは命じられるままに、ゆっくりと既に潤いの滲みた小さな布切れを降ろしていく。
ももかは嘆息する。ゆりのこう言う所が素直なんだか意固地なんだか分からない。
自分からは絶対に求めては来ない癖に、こう言う時ほとんど逆らった事が無い。
今も瞳を潤ませ、羞恥に頬を紅潮させながらも、従順にももかの愛撫を待っている。


「いい子ね、ゆり……」


ご褒美のように軽く紅唇を啄みながら、スカートに手を潜り込ませる。
ぬるりと指を飲み込む場所は貪欲なまでに快楽を求めているのが分かった。
探り当てた小さな突起を苛めてやると、ゆりの整った貌が愉悦に歪む。
細い腰を支えてやりながら、じわじわと追い詰めるように昂らせていく。
そう簡単に満足させるつもりは無かった。

さっきの手紙を思い出すと頭が煮えそうになる。
少し撚れて歪んだ封筒。何度も書き直し、折り返した後のある便箋。
きっと長い間持ち歩き、渡す勇気が持てず悶々としていたのが窺える。
恥じらいながらも意を決し、手紙を差し出す少年。
戸惑いを見せながらも微笑んで受け取る年上の少女。
何とも美しい光景だと思う。

(本当に、ゆりは分かってない……)

初恋は実らない。やがて切なく鮮やかな思い出に変わる。
そんな事、誰が決めたのか。
無垢な少年はやがて誠実で魅力的な青年となるかもしれない。
大切に初めての想いを胸に育て、大人なって再び愛する女性に向き合おうとするかもしれない。
力強い腕と大きな手のひらが自分の細い腕から宝物を奪い去って行く。
馬鹿げた妄想だと笑われてもいい。
でも、怖くて堪らないのだ。

ゆりは自分から離れたりはしない。
でも、ももかがほんの少しでもよそ見をしたら絶対に追い掛けてはくれないだろう。

だから、常に叩き込まなければ。
一番ゆりを求めているのは自分なんだと。
ゆりがいなければおかしくなってしまう。
だから……


「ねえ…ゆりが、あたしをイカせてよ…」


ももかは下着だけを脱ぎ、ベッドに寝そべる。
すらりと伸びた足を開き、その 間にゆりの体を導いた。
さらけ出した秘所をゆりのぐっしょりと濡れた部分に押し付けると、少女達の体がふるっと震えた。


「ほら、動いて。あたしを感じさせてよ…」


下から催促するように、重なった場所を揺らめかせる。


「んん、う…ふぅ、あ…あ、あ、あん……あぅ…ーーっく…」
「ふふふ…ゆりが気持ち良くなってどうするの…?…ほら、頑張って…」


ゆりはガクガクと震える腰を懸命に使う。
一方的に責めていたももかと違い、散々なぶられ加熱した体はあっという間にオーバーヒートしてしまいそうだった。
唇を噛みしめ、ももかの弱い場所を集中的に攻撃する。
しかし刺激はそのまま自分にも返ってくる。
腰の動きが鈍る度に、ももかは容赦無く下から突き上げるように責めて来て。
快感はいつも羞恥と屈辱をぐずぐずに溶かしてしまう。
激しい愛撫は自我までも崩されてしまわれそうな恐怖を覚える。
でも、ゆりは抵抗しない。
いつも、ももかの方が怖がっているのを知っているから。

ももかに言えない秘密を幾つも抱える自分。
ももかは分からなくてもそれを感じていつも不安なのかもしれないと思う。
すべてを話しても安心して貰えるとも思えない。
結局、どうやっても恋人の不安を拭ってやれないのがもどかしい。
だからせめて、腕の中にいる時くらいは丸ごと彼女のモノだと感じて欲しかった。


「んっ…あんっ…ゆりぃ…イイよ…スゴく…ーっ」
「…はっ…ぁあっ、ももか…私、もうっ…」
「…っ、いいよ。イッて…あたしも…すぐ…あっあっあっ…」


ゆりの細腰を掴み、激しく体を跳ねさせる。
涙を飛ばし、啜り泣きながら果てるゆりを見届けてから、ももかも絶頂の海に身を投げた。


崩れ落ちて来たゆりを抱き止め、横たえる。
ブラウスのリボンすらほどいて貰えず、上までたくし上げられ剥き出しにされた乳房。
下着だけ脱がされ、腰の上まで捲られたスカート。
荒い息を整えながら、ぐったりと力の抜けた体は正しく凌辱を受けたようにしか見えなかった。


ももかの胸がちくりと痛む。
ゆりは何も悪く無い。それは分かってる。自分が甘えているだけだから。
それでも、ごめんなさいと言うのは嫌だった。
せめて労るように髪を撫でると、ゆりがその手を握り返して来てくれた。


「…疲れた…?」
「当たり前でしょ…」
「嫌なら嫌って言えばいいのに……」
「……別に…嫌じゃないわ……」


ももかの目が丸く見開かれる。


「…ゆりってちょっとMっ気ある…?」
「……殴られたいの?」
「……結構良かったのかと思って…意外…」
「まあ……たまになら…ね。毎回は困るわよ。体が持たないもの…」


ももかの目が益々大きくなる。
どこまで本気に取っていいものか……


「ああ…でも次はせめてちゃんと脱がせてよ。制服、皺になると中々取れないのよ……」


さも面倒臭そうな物言いに、ももかの限界が訪れた。
堪えきれずに体を折り曲げて笑い転げる。


「ちょっと、こっちは真剣なのよ。アイロン掛け苦手なんだから…」


了解。
やっとの思いでももかは答える。
やっぱりゆりには敵わない。


「こら…何?」
「いや、だから…脱がせてるんだけど…?」
「……また?」
「だーいじょうぶ。今度はちゃあんとご奉仕させて頂きますから!」
「なっ!そう言うことじゃ!」
「ハイハイ、じっとして!」

自分を不安のどん底に突き落とすのも、この上なく幸せにしてくれるのも、同じゆり。
やっかいな女の子に惚れてしまったと思う。
でも仕方ない。
ゆりしかいらないんだから。


きっとまた、同じ事を繰り返しても。
何の駆け引きも通用しない真っ直ぐなゆりには、真っ直ぐな自分をぶつけるしかないから。
嫉妬も、不安も、それ以上に大きな『大好き』も。
いつだって、ゆりは受け止めてくれる。

ちょっと困ったように、呆れたように微笑みながら。
ももかは仕方ない子ね、って。
最終更新:2013年02月12日 14:09