月下美人/黒ブキ◆lg0Ts41PPY




「ね、今日は泊まってもいいんでしょう?」

ももかは甘えた声で囁く。
下に組み敷いたゆりの体。
その体温を感じさせない透き通るような白さとは裏腹に、火傷しそうに熱く火照っていた。

「ねぇ…いいよね?今夜はおばさんいないんでしょ…?」
「……待ってよ…。まだ頭働かないの…」

息を乱したままのゆりの耳たぶを甘噛みする。
くすぐったそうに身を捩りながらもゆりは嫌がる素振りは見せない。
ゆりは月光の妖精みたい。ももかはうっとりと呟く。

「何言ってるのよ」
「ゆりはズルい」

ベッドのすぐ脇にある机に手を伸ばし、ゆりがいつも掛けている眼鏡を取り上げる。

「似合う…?」
「…ももかは、何でも似合うわよ」
「地味よね。度も入って無いし」
「……………」
「だから、ゆりはズルい」

本当は自分が凄く綺麗だって知ってる癖に。

「こんな眼鏡掛けて、地味な格好して。愛想も悪いし、無口だし、ぶっきらぼうだし、その癖言うことはキツイし…」
「…喧嘩売ってるの?」
「目立ちたくないのに完璧には隠せてない」

売れっ子モデルの自分とほぼ同じ体型。
顔立ちだって自分よりよっぽど整ってる、とももかは思う。
親しみやすい愛らしさは無いが、その名の通り高貴な白い百合のような凛とした清らかさを持っている。
いくら目立たないように集団に埋もれようとしたって、その姿は隠せても匂い立つ静謐な気品は隠せない。
いつもゆりのいる場所だけがほんのりと光っているようにすら感じる。

「ゆりならあたしなんかよりずっと一流のモデルになれるかも」
「馬鹿なこと言わないで」
「おまけに恋人にまで素っ気なくて意地っ張り…」
「……ーーっ……んっ」

ゆりの女の部分にももかのしなやかな指が悪戯を始める。
瞬く間に熱く潤う感覚がももかの指に絡み付く。
どんなに澄ましていても愛撫には素直に応えてくれる体が愛しい。

「……こんなになってても絶対に自分からは欲しいって言わないんだから…」
「…んぁっ!……もうっ、やめるの?続けるの?どっちよ……っ!」

びくびくと体を跳ねさせながら、潤んだ瞳でキッと睨み付ける。
唇から漏れる甘い吐息、仄かに紅潮した頬。
ここでやめられたら辛いだろうに、本当にやめてしまってもおねだりなんかは絶対にしてくれない。

「……本当に、素直じゃないんだから」
「…あっ、あんっ……ももか…はぁ…」

月光で染め上げたような肌を飾る、柔かな双丘の頂の淡い蕾に歯を立てる。
中指に吸い付く粘膜の感触を楽しみながら、その上の一番敏感な部分を親指で可愛がる。
泣きそうな声でももかの頭を掻き抱くゆりに、ももかは心の中で溜め息を付いた。

(ま、仕方ないわね…)

惚れた弱み、と言うのはこう言う事なんだろう。
こんな行為を受け入れてくれるのは相手が自分だから。
それだけでもゆりには精一杯の愛情表現だと気付くのには随分時間が掛かった。

「…ゆり…あたしのこと、好き?」
「……当たり、前じゃない…んんっ…」
「ダメ。ちゃんと言って」
「…あぁあっ……好き、よ。ーーっ…ももかが、好き…」
「よく出来ました」

上出来上出来。今はこれくらいで満足しておくかな。
ももかは中に指を入れたまま、舌を充血した肉芽に移動させる。
ゆりはこうやって逝かされるのが一番好きだ。
勿論、絶対に口には出さないけど。
最近ようやく分かるようになってきた。
自分を呼ぶ声だけに響く、微かに甘えた調べ。
ゆりは、愛してくれてる。
自分から離れない限り、ゆりは絶対に裏切らない。


月光に冴える一輪の白い百合。
手折ったからには、水を絶やす訳にはいかない。
最終更新:2013年02月12日 14:07