【捜していた答え】/恵千果◆EeRc0idolE
時々、夢を見る。黒衣に身を包んだ、銀色の髪の少女の夢を。
夢の中の彼女はいつも、ありとあらゆる場所をあてどなく彷徨っていた。
街中を、草原を、森林を、公園を、波打際を。
何かを捜し求めて、昼も夜も、ただひたすらに彷徨う少女。
ない。ない。どこにもない。ないんだ。見つからない。
最初からわかっていたんだ。見つかりっこない。どこにもあるはずがないのに。
だけど……。
見つからないとわかっているのに、ひたすらに捜し求めて少女は彷徨い続ける。
捜しているうちに、追い求めているものが何なのか、それすらも朧げになってゆく。
それでも、少女は捜し求め、彷徨い続ける。
見つからず、絶望感で泣きじゃくり、目が醒める。
夢が醒めても、見開いた両の眼からは熱い液体が溢れていた。
こぼれ落ちた少女の雫は、こめかみ付近の髪を湿らせている。
かつて銀色だったそれは、今や文字通り濡れ羽色に輝いている。
泣きながら徐々に目醒め、やがて気づく。
見つからなくてあんなに嘆いていたものが、今はここにある。
傍らに眠る、もうひとりの少女。“愛”という名の、その少女の存在そのものが、捜し続けた答えだった。
これからもまた幾度となく、あの頃の夢を見て涙を流すだろう。
けれど怖くはない。
必ず目醒め、安堵できると知っているから。
捜していた答えが、ここにはあるから。
最終更新:2013年02月16日 19:28