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【背中越しに抱きしめて】/恵千果◆EeRc0idolE




 クローバーボックスが無事に戻り一安心の美希だったが、自分のせいでシフォンを危険に晒したという自責の念は、そう簡単に消えるものではなかった。


 あの時見つかって本当に良かった…もし見つからなかったらって考えるだけで身体が震えるわ。


 公園のブランコにひとり腰掛けながら、美希は悪い想像に怯えていた。深く考える程にその事の恐ろしさが身に染みて、涙まで浮かんでくる。


 何だかアタシ、泣いちゃいそう…


「ううっ…ひっく」


 しゃくりあげようとしたその時、後ろから誰かの温かい腕に抱きすくめられる。


 この匂いは…せつな?


「ひとりぼっちで泣かないの」


 この低くて落ち着いた声、やっぱり…せつなだわ。背中に感じるせつなの温もり――――温かい。


「美希のことだから、どうせまだ自分を責めてるんだと思って探してみたら…案の定なんだもの。わかりやすい性格ね」


 行動パターンを読まれていることが恥ずかしくなり、美希は急にムカッとする。


「何よ。わかりやすい性格で悪かったわね」


「クスクス…その台詞、言うと思った」


「もう!何?からかう為にわざわざ来たの!?」


「まさか。――――心配になったの」


 せつなが…アタシを…?嬉しいような、くすぐったいような、恥ずかしいような。何?こんな気持ち、初めて。


「美希のこと…なんだか放っておけなくて」


 せつななりに心配してくれてるんだわ。やだ、すっごく嬉しい…でもあんまり心配かけちゃいけないわ。





「し、心配ご無用!アタシはいつだって完璧なんだから!!」


 そんな美希を胸に抱くせつなは、抱きすくめた腕に一層力を込める。


「強がらないで。わたしの前では素直になっていいのよ。どんなに弱い美希でも、わたしには全部見せて欲しいの」


 な…やめてよ。まるで愛の告白じゃないの。――――って、ええッ!?まさか…よ、ね?


「せつな…?」


「ダメ振り向いちゃ」


 後ろを振り返ろうとした美希をせつなが制す。


「顔、見ないで。今すっごく恥ずかしいんだから…」
 せつなは美希の背に額をくっつけ、しゃがみ込んだ。


「イヤよ」


 立ち上がった美希は、せつなのそばに行き、同じようにしゃがみ込む。


「せつなだけアタシの恥ずかしいトコ見るなんてずるいじゃない。せつなの恥ずかしいトコ、アタシだって見たいの!」


 真っ赤になった顔を上げ、せつなは潤んだ瞳で美希を見つめる。


「美希…わたし…」


 お互い膝立ちの姿勢となり、抱きしめ合う。


「背中合わせもいいけど、やっぱりこの方がアタシ好きよ。せつなが全部見えるから…恥ずかしがってる顔も、ね」


「もう!知らない!」


「ゴメンゴメン、今度泣く時は、ちゃんとせつなのそばで泣くことにするから」


「…絶対よ」


「ウン」


 さっきまでの恐怖は嘘のように消え去り、美希の中に残ったのはただ、目の前の少女への狂おしいほどの愛おしさだけ。
最終更新:2013年02月16日 21:58