「こんなはずじゃない」/Mitchell&Carroll
サッカーで培った体力は、ここでは通用しないのか。
強烈な性欲の持ち主が、肉体の快感を求めて襲い掛かってくる。
自分を求めてくれるのはうれしいが、何か違う気がする。
貪欲に快楽を貪るそれは、今までの反動なのか。
「見て、なお。わたしを見て。今まで一度も見せたことのない私を見て!」
その後天井に向かって咆哮する。
なおは体力も気力も限界だった。
もうやめよう、直球勝負でそんなことを言う勇気は今のなおにはなかった。
上にまたがっている女は何か呪文のようなものをぶつぶつ唱えている。
しかも体をくねくねと動かし、まるで蛇か何かがとり憑いているかのようだ。
「ねえ、もっと、しよう、なお...」
目が据わっている。攻撃的な目をしている。
なおは恐怖と、親友の期待に応えられない情けなさで、
涙を流しながら首を横に振った。
「なんでぇー!?」
子供のように駄々をこねる。
「もっと、しよっ!ねっ、もっと!もっと!」
またリズミカルに腰を動かしはじめた。
「ごめんなさい!!」
ついになおが謝った。れいかは腰の動きを止めると、
きょとんとした表情で、親友が一体何を謝ったのか、理性をかき集めて考えぬいたあげく、
「ごめん...なさい。」と、とりあえず謝った。同じ言葉で。
「...あたしじゃなくてもよくない?」
「!」
「なんか...してる時のれいかって、れいかじゃないんだよね。
なんか...うまく言えないんだけど、いや、れいかなんだけど、
あたしの知ってるれいかじゃなくて、あたしの知らないれいか、みたいな...
それがなんか、こわ...」
途中でまた涙があふれ出てきてしまった。
自分は何を言っているんだ。れいかはれいかのはずなのに。
なにがあたしの知らないれいか、だ。
なにが、あたしじゃなくてもよくない、だ。自分を頼ってきたというのに。
言うんじゃなかった。少女は激しく後悔した。
甘え過ぎた。
れいかはそう反省した。
親友にこんなに負担を掛けさせていたなんて、今まで知らなかった。
言われるまでわからなかった。
その後、何日か気まずい関係が続いた。
そしてある日、放課後の、夕日で染まる教室で、
れいかはなおの前でおどおどしく言うのだった。
「なお...これが...最後だから...いい?」
なおは、ことわらなかった。
終
最終更新:2014年02月10日 18:22