リアルタイムで話をしよう/そらまめ
「隣街に遊びに行こう!」
そう言ったラブの言葉で、週末の予定は決まった。
午前中から街へ行き、今は午後三時。四人は遊び疲れてカフェに入り、とりとめのない話をしていた。ラブと美希と祈里はテレビドラマの話で盛り上がっていたが、せつなだけは周囲を見た後なにか思案して、ぽつりとこんな質問をしてきた。
「ねえ、この店ってなんでこんなに相席が多いの?」
「「「え?」」」
いきなりどうしたのだろう?というか質問の意味がよくわからない。
「どういうことせつな?」
ラブがよく分からないといった表情でせつなに聞き返す。
「だって、同じテーブルにいても一人ひとりケータイを見てばかりだから、知らない人同士なのかと思って」
確かに周囲にはケータイ片手にカチカチと操作している人が多い。ただ、せつな以外の三人は当たり前の光景でしかなかったため、疑問にすら感じなかった。
「違うわよ。多分同じテーブルにいる人たちは大体友達同士だと思うわよ?メールとかネットなんか見てる人が多いんじゃないかしら」
「そうなの?」
美希がなんてことないようにそう言った。
「今はゲームとかアプリ…ケータイを使って遊べるサービスも多いから」
「そうそう。ハマると結構おもしろいんだよっ!」
祈里もラブも面白いからやってみたら?と勧めてきたが、せつなはその提案をなんだか煮え切らないような微妙な顔で聞きながら、再度質問した。
「でもそれって一人でやるものばかりよね?なんで目の前に友達がいるのに話をしないの?」
「えっ、えーと…それは…」
誰かからの困ったような声に、せつなはそんなに答えづらい質問なのかと不思議に思った。
だって思ってしまったから。この光景はまるで
「まるで、ラビリンスみたい…」
待ち合わせのために駅で待っている時もそうだった。多くの人が行きかっているのに、みんな下を向いてケータイを見て、人が大勢いても、対話している姿はそれほど見られなかった。カフェに入ってからは顕著だ。せつなにしてみれば、機械を見つめてばかりのその光景は見慣れていたものでもあり、今となっては異様な光景でもある。
ここがもしラビリンスだったら、その姿に違和感なんてない。むしろ当たり前だった。無駄口なんて存在さえしないし、どんなに人がいてもただひたすらに自分の仕事をするだけで、そこに人と人との繋がりなんてなかった。繋がりを教えてくれたのはラブやクローバータウンストリートの人達だ。
だから、大切なことを教えてくれたこの世界で、ある意味孤独なそういう姿を見てしまうのは、悲しくもあり、戸惑ったりもした。一緒にいても一緒じゃない。こうやって機械を介する繋がりを優先させていたら、人同士の繋がりが薄れ、いつかこの世界もラビリンスのように、コンピューターに全てを任せてしまう日が来るのではないかと不安になった。
そんな想いをかいつまんでぽつぽつと言ったせつなの言葉に、ラブたちは眉を下げる。
そんな大げさに考えなくても…と言いたいところだが、現に全てをコンピューターに支配されてしまった世界があったわけで、この世界もそうなってしまわないとは一概には言えないけど…
「うん…確かに、そうかもしれないね」
祈里が目の前のグラスに視線を下げながら、思い出したように続ける。
「学校でも休み時間になるとケータイを見てたりする人も多いし…」
「ああ、確かに…モデルの仕事でも、待ち時間とかは周りに人がいてもケータイいじってる人結構いるわ、アタシもよくやるし」
「うーん。あたしも人並みには使うけどそこまでちゃんと考えたことはなかったなあ」
祈里に続いて美希とラブも考え出したことにせつなは慌てて
「あっ!ごめんなさい。ちょっと思っただけだから。そんなに気にしないで」
とフォローを入れた。しまった。遊びに来ているのに暗い雰囲気にさせてしまった。
言わなきゃよかったと後悔した時、
「じゃあさ、あたしたちはたくさん話そう」
そうラブが言った。
「たくさん話す?」
「そう。ケータイを使う暇なんて与えないくらいたくさん話して、今よりももっと一緒にいられる時間を大切にして、繋がりがこれから先も続くように!まあでも、そんな心配しなくても大丈夫だよ。だってあたしたちの絆はそんな程度で薄れるものじゃないからね!」
「ラブにしてはいいこと言うじゃない。ただそのドヤ顔はイラっとするからやめて」
「ラブにしてはって何さ美希たん!しかもイラつくって言われたー」
「ラブちゃんすごい!なんだか少し見直したよ!」
「ブッキーもそこはかとなくバカにしてる…」
みんなのあたしへの評価が低いよー!っといじけ始めたラブを、美希と祈里は冗談だよって笑いながらフォローした。
さっきまで笑う雰囲気ではなかったのに、いつの間にかそんな雰囲気もせつなの杞憂も何もかもさらっていってしまったラブの言葉に、やっぱりラブには敵わないとみんなにつられてせつなも笑顔になった。
「そうね。私たちの関係は、機械にどうにかできるほどやわじゃなかったわね。そう思える仲間がい続けてくれるなら、きっと大丈夫よね」
せつなの言葉に他の三人も笑顔で応え、四人はまた、とりとめもないけど楽しくて、大切な話を再開した。
最終更新:2014年01月08日 21:07