おハロー、まこぴーー/cherry




「雨か……」

軒下で雨宿りしながら私は呟いた。

雨を見るとなんだか涙が出そうになる。

雨の日は綺麗な青空を見る事が出来ない。

そう、トランプ王国のように……

アン王女と楽しく歌ったあの景色はもう無い。

あるのは薄暗い廃墟と生彩をなくした赤い空だけ。

「私、本当に一人ぼっちだ……」

そう言って寒さに耐えるためにコートをぎゅっと握る。

「一人じゃないよ、私がいるよ。」

ため息ついている私の横にマナがひょこっと現れる。

「マナ……」

「えへへ、私も傘忘れちゃって、そしたらまこぴーの姿が見えたからさ」

「そっそう……」

いけない、こんな所見られちゃだめだ。私は一人で戦うんだ。

「あーあ、新しい服着てきたのに台無しだよー」

「はあ……」

そうだ、心を乱されては行けない、どんなことがあっても。

「まこぴー、ため息ついてたら幸せが逃げちゃうよ、ほらこうして空に向けて手を伸ばしてごらん」

そう言ってマナは私の手を取り、それを空へと掲げ上げた。

「ほーらこうして見るとさ、くもり空の向こうに青空が待っている気がしない?」

そう言って彼女はいつもの可愛らしい笑顔を向けてくる。

いや可愛いだけじゃないんだ、とても優しくて、温かくて芯の強い、そんな笑顔を……

この笑顔を見ていたらだめだと分かっていても甘えたくなってしまう。

そう思って反対方向に目をそらすと……

「幸せの王子が愛を振り撒いているんだから素直に受け取った方がいいわよ」

気が付くと六花もすましがおで、でもとても優しい笑顔で立っていた。

「あなたまでどうして……」

「私も傘忘れちゃってね」

「そうじゃなくてどうして私にそんなに優しく……」

「それは真琴さんが私……いえ、私達のお友達だからですよ。」

気が付いたらマナの後ろにありすもいた。

「ありす……」

「お友達でしたら困っているとき悲しい時に力になりたい、そう思うのは当然の事ではありません?」

そういってマナの後ろからひょこっとマナの背中に飛びつくように顔を出す。

「みんな……」

そうだ、私は何を一人で強がっていたのだろう。

私にはこんなにもたくさんの仲間がいる。お金では買えない最高の宝物だ。

「あ、見て見て、空が晴れてきたよー」

「マナの振りまいた愛が天の神様にも届いたのかしら」

六花がおどけた口調で笑う。

「まるで今の私達の心を示しているようですね」

ありすもそういって楽しそうに笑う。

「あ、ほらほら虹が上がったよー、さあみんなであの虹に向かってダッシュだよ」

そう言ってマナは私の手をとって走り出す。

「ちょっと、マナ…」

私は困惑した声を上げるがマナはお構いなしだ。

「さあさあ、マナちゃんにお任せですわ」

そういってありすも後ろから私の背中を押す。

「全く……剣崎さん、こうなったら二人とも聞かないからあきらめたほうがいいわよ」

そういいながらも六花も楽しそうに走り出す。

「も、もう……」

そういいながらもまんざらでもない自分がいた。

そう王国にもこの青空を取り戻すためにキミと一緒に戦おう。

そう心に決めた雨上がりの午後だった。
最終更新:2014年01月26日 17:30