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「欠けている完全な君」/そらまめ




「あら、そんなところまで手伝ってくれなくてもいいのに。せつなちゃんだってやることあるでしょう?」
「大丈夫ですおばさま。私がやりたいだけですから」
「そう…?あまり気を遣わなくてもいいからね?ここはあなたの家なんだから」

こうやって言うと決まってせつなちゃんは、

「…はい。ありがとうございます」

困った顔で笑いながらありがとうと言う。彼女がこの家に来て随分経ったが、最初と変らないリアクションにまだこの家に慣れないのかと不安になる。
ラブが連れてきた女の子。家族がいないと言うが詳しいことはよく分からない。だから本当に家族がいないのか帰れない事情があるのか…
それでも、ラブが一生懸命にせつなのことを話している姿は真剣そのものだったから、自分の子供の言う事を信じることにした。親ばかと言われるかもしれないが、ラブはまっすぐでいい子に育ったと思うから、たとえ親にさえ言えないことがあるのだとしても、それはラブなりに考えた誰かのためだと思う。


せつなは驚く程手のかからない子だった。
素直で、礼儀正しく、我が儘なんて言わず、家の手伝いをよくして、勉強だって出来るみたいで、ラブの夏休みの宿題を見ながらわからないところを教えていた。大抵の事なら一人で何でもやってしまえる。どうすればこんなにいい子に育つのだろう。
子育てをしているからわかるがここまでの子を育てるのは本当に大変な事だ。
ラブだっていい子だがなにか質が違う。ラブは勉強も苦手だし我が儘も言う。好き嫌いだってある。思ったことが顔に出るタイプだから、考えていることが余計分かりやすいのかもしれない。
そんなラブと長年暮らしてきたから、正反対のようなせつなに余計驚きを感じた。せつなは思ったことを表面には出さない子のようで、同じ家に住んでいるのに未だに欠点と呼べるものを見つけられない。
だから、こう思うのは何か変かもしれないけど、いつかせつなの苦手なものを見つけられたらと思っている。そうすれば、彼女らしさが見えてくる気がしたから。

「おかあさーん。今日の夕飯なに?」
「んー…そうねぇ…あ、そういえばお隣の家からたくさん野菜を頂いたんだったわ。それを使った料理にしましょう」
「え゛…ま、まさかニンジンももらった…?」
「ええ。ニンジンだけじゃなくて他にもたくさん。実家が農家らしくて出荷もしてるんですって。すごいわねぇ。うちも家庭菜園くらい始めようかしら?」
「ニンジン…ニンジン…はあ…」
「好き嫌いはだめよラブ」
「ぶー、お母さんだってほうれん草嫌いなくせに…」
「私はちゃんと出されたものは食べてるからいいのよ」
「うー…せつなぁー、せつなもニンジンってまずいと思わない?」
「私はニンジン好きよ。少し甘いところがおいしいと思うけど」
「えー、そこが嫌なんだけどなあ」
「そうかしら?」

「ほーらラブ。夕飯出来るまで宿題してきなさい。おいしい野菜料理作っといてあげるから」
「なんかやる気でない…野菜だけとか…」
「じゃあ、ピーマンの肉詰めも作ってあげる」
「ほんとっ!? ちょっとやる気でたよ! せつな、勉強教えて!! 宿題多分解んないと思うから!」
「そんな嬉しそうに残念な事言わないでラブ。なんだか悲しくなるわ」
「まあまあ、細かいことは置いといて。ほら早くあたしの部屋行こう」
「そんなに腕引っ張らないでラブっ!…あ、おばさま。夕飯楽しみにしてます」
「ええ、おいしく作るからラブのことお願いね」
「はい」

バタバタと騒がしく階段を駆け上がっていくラブと、それに巻き込まれたせつなを見送ったあゆみは腕まくりをして台所へ向かった。


「「いただきます」」
「はい、どうぞ。残さず食べるのよ」

ラブは手を合わせていただきますと言うやいなやすごい速さで料理を口に入れていく。
せつなはその様子に少しあっけにとられながらもゆっくりと箸を動かした。

「おいしい! 特にこのピーマンの肉詰めなんて最高!!」
「ありがとうラブ。そう言ってもらえると作った甲斐があったわ。でもお皿の端に寄せたニンジンもちゃんと食べるのよ?」
「うっ! ばれてた… ねぇねぇせつな、こっそり食べてー」
「……」
「…せつな?」

いつもなら、「自分の分は食べなきゃだめよ」と諭されるはずなのだが、今日はその声が聞こえなかった。
どうしたのかとせつなの方を見ると、なぜか硬直している。箸でピーマンの肉詰めをはさんで、一口分だけ減ったそれを持ち上げているところでフリーズ。よく見ると体全体がプルプルと震えていた。

「え、ちょっとどうしたのせつな?」
「せつなちゃん? もしかして中まで火が通ってなかった?」
「い、いいえ! ピーマンって初めて食べたから、その、少し驚いてしまっただけです」
「せつなピーマン食べた事なかったの!?」
「ええ。ラビ……じゃなかった前に居た所ではこういうのはあまり出なかったから」

素材の味なんてどうでもよくて、栄養が取れればそれでいい。そんなスタンスのラビリンスでは、食べ物本来の味を気にした事も、それを生かした料理もなかった。だから、今言ったことは嘘じゃない。

「そうなの。ピーマンは栄養一杯だからたくさん食べてね」
「は、はい」
「あたしも食べるー!」

そうやっていいながら勢いよく食べるラブの大食いチャレンジがいつの間にか始まり、それを「ゆっくり食べなさい」と注意するあゆみと、変わらない笑顔のせつなとの夕食は過ぎていった。





「はーっ…」
ため息交じりに空気を吐き出せば、体の振動が持っていた紙コップに伝わり中のジュースと氷がガシャガシャと音をたてた。

図らずも発見してしまった自分の弱点。こういってはなんだが、自分には弱みと呼べるものはないと思っていた。プリキュアになってからはみんなを失う事が怖くなったけど、それとは訳が違うと言うか、イースであってもせつなであっても共通して苦手なものは今まで無かったと思う。弱みは付け入られる隙を生むばかりでハンデにしかならない。だから苦手なものは、見ず、作らず、近寄らず。どこかの三原則のように自分から遠ざけていた。
なのに。なのにだ。
あんな緑の物体がこんなにも憂鬱な気分にさせるなんて…
いや、違う。
こんなにも落ち込むのはあの野菜のせいではなく、苦手なものが自分にあると知ってしまったからだ。

ドーナツを揚げる音やその音を出している人からの鼻歌、歩きながら話す声、色んな雑音を右から左に聞き流す。
ドーナツ片手でここに座っているのは何となく居づらくて、ラブから借りたファッション雑誌をテーブルの上で開きパラパラと流し見していた。
通りを歩きながら視線をあさっての方に向けている人や、カフェテリアから感慨深げにショウウィンドウを見つめる人。洋服を紹介しているのかモデルを紹介しているのかよく分からないなと思いながら、ふと、見覚えのある人物がポーズを決めてこちらに微笑んでいた。いつもとは違う笑顔。なんというか、綺麗な整った顔だった。

「アタシ完璧」が口癖の彼女は自分のよく知る人で、普段からも美しさに気を使っている。でもたこは苦手。
これは他の人には秘密だけど。
それを思うと、アタシ完璧という言葉には少し違和感がある気がした。だって苦手なものがあるのに、美希は変わらずこの言葉を使う。嫌にならないのだろうか。悩まないのだろうか。
気になりだしたら疑問が止まらない。
食べていたドーナツのかけらをプラプラと無意味に動かしていると、見ていた雑誌に影が差した。

「難しい顔してどうしたの?」
「ブッキー…」

見上げると、不思議そうにこちらを見下ろす祈里がいた。
今日は別に待ち合わせをしていたわけではない。一人でなんとなくここに来ていた。だから、予想だにしない彼女の登場に少し面食らって手からするりとドーナツが落ちる。コロコロとテーブルの上に落ちたそれは、結局地面に着地した。

「ごめんねせつなちゃん!」
「いいのよ。気にしないでブッキー。落とした私が悪いんだから」

必死に謝る彼女に苦笑いしながら大丈夫と伝える。
買い物の帰りだと言う彼女を向かいの椅子に促して、申し訳なさそうな彼女の前には少し早めのおやつが並ぶ。お皿に乗る三つのドーナツのうちの一つを、さっきのお詫びにとこちらにさしだす。断ろうとしたらそれに先回りするように、

「セットが安いからで三個入りを買ったけど、こんなに食べたら夕飯が食べられなくなっちゃうからよかったら食べてくれない?」

なんてニコリと笑いながら言われてしまった。
雑誌の美希と同じ「笑顔」なのに、目の前の祈里の笑顔は暖かい感じがして心が落ち着く気がした。

「なんの雑誌見てるの? あ、それ 美希ちゃんが載ってるのだね」
「よく知ってるわね」
「この間ね、美希ちゃんがお仕事上手くいかなかったって落ち込んでた時に聞いたの」
「これ、上手くいってない時なの? 全然そうは見えないわね」
「そう? いつもよりキリッとしてない?」

祈里からそう言われて見れば…

「そうね。いつもより凛々しい気はするけど…でも私には完璧に見えるわ」
「美希ちゃんはダメな時ほど自分に厳しいからね」

そう言って柔らかい眼差しを雑誌に向ける。今この場には居ない親友を想っているのだろう。
そんな祈里を見ていたら、さっきの疑問を問いかけてみたくなった。彼女なら、自分の悩みを解決する手助けをしてくれるかもしれない。

「ねえブッキー」
「なに? せつなちゃん」
「美希はよく、アタシ完璧って言うじゃない?」
「うん。いうね」
「けど、この雑誌の時のように本人も駄目だったって思うって事は、失敗したって事でしょ? それだと完璧って変にならない? 完璧っていうのは、失敗しない。間違わないってことじゃないの?」

少しだけ、驚いたような顔と無音が続く。
突然で不躾だったかもと言い切ってから思ったが、言ってしまったものはしょうがない。
固まる彼女は少ししてから動きだし、こちらを見ていた目を一瞬だけ下げて雑誌を見る。それから笑って自分に目線を戻した。

「美希ちゃんは、完璧じゃない…完全じゃないって解かっているから完璧なの」

目の前の祈里の言っている事がわからず今度はこちらが固まった。言葉遊びのように完全と完璧の意味がごちゃごちゃと頭の中を回る。何も言えないでいたら、続けて祈里がゆっくりと口にする。

「人にはそれぞれ欠点ってあるでしょう? それは人によって違うから、個性って言い方にもできると思う。個性ってその人の金型みたいなものだとしたら、そんな個性がなくなってしまったら、その人は何になるんだろうね」
「欠点がないなら困らなくていいじゃない。悩まなくてもよくなるんじゃないの?」
「せつなちゃんは、完全な、完璧な人に会った事ってある?」

完全な人…
一人だけ、頭の中に思い浮かんだ人がいた。
それはかつて自分の全てだった人。今は、最も憎むべき相手。

「その人は…ちゃんと実在した?」
「え…?」
「その人の事全てを知って、それでも欠点のない人だと思った?」

自分はあの人の事を、どれだけ知っていた?

「自分の理想と想像で作り上げていたなら、それはせつなちゃんにしか見えない、まるで幽霊みたいなあやふやな存在だったのかもしれないよ」

幽霊…?
まさか。いた。ちゃんと。だってあんなにも私の心を支配していたじゃないか。

ただ…彼の事を私は何も知らない。

「で、でもっ…!」

当時は、あの人の言う通りにしていれば、間違える事は無かった。全てが正しくて、あの人のいう事が正しくて、間違いなんて、失敗なんて起きなくて…

「せつなちゃんは、失敗する事が悪い事だと思ってるんだね」
「そんなの…」

当たり前じゃないか…
失敗は怖い。色んな物を失ってしまうから。それに自分はイースの時に大きな失敗をしてしまっている。
だからこれ以上踏み外してしまわないようにしなければ。
だってそうしないと…( 見捨てられてしまう )




「完璧な人って、間違わないとか苦手なモノが無いとか、そういう事を言うんじゃないと思うな」

そんな言葉を言いながら、「そろそろ帰るね」と買い物袋を持って行ってしまった祈里の背中を見送る。時計を見れば、二個のドーナツなんてゆうに食べ終えている時間が経ち、紙コップを持てば先ほどより水気の増した音がして、中のジュースも味が薄くなっていた。



夕日に反射して、河原が光る。土手沿いを普段よりもゆっくりと歩いて歩いて家路に向かう。帰りたくないわけでは決してないのに、足取りが重くて、まっすぐ前を見るのが少しだけ居心地が悪かった。
これを世間では後ろめたいというのだろう。
こんな気持ちになるのは、自分に苦手なものがあるのにそれを黙っているからだ。だからこんなにも心が重い。やはり弱い部分を作るのはマイナスでしかないんだと改めて思った。
そんな時だった。
こちらに走ってくるジャージ姿の人影に気付いたのは。
整ったフォームと一定のリズムで動く肩。まっすぐ前を見て、私の眼を見て走ってくる彼女はやっぱり完璧に見えた。

「せつなっ…こんなところで会うなんて奇遇ね」
「偶然…とも言い切れない気はするわ」
「偶然よ偶然」

私は知っている。彼女が走るランニングコースにこの土手沿いが含まれていない事に。そしてこんな時間に走る事が稀だって事も知っている。

「それで、今日はどうして走ってるの? しばらく仕事は入ってないって言ってたから身体作りの必要はないでしょ?」
「仕事は無くても常にベストの状態でいたいからに決まってるじゃない。それと、今日の体育の時間にあった持久走のタイムがちょっとね…」
「後半が理由よねどう考えても。それにしても…」
「…な、なによ」

持久走のタイムを計るなんて、運動部で大会に向けて練習しているわけではないのだからこれっきりだろうに、それでも美希は走っている。誰に見せるわけでもなく、ただ自分の気持ちのままに。

「美希は、どうしていつもそんなにまっすぐなの? いえ、美希だけじゃなくて、ブッキーもラブも。私だけ…」

自分だけがいつも後ろを向いている。三人と背中合わせでいるようで、異質さを感じてしまう。何が違うのだろう。きっと、何もかもが違う。

「せつなっていっつもそうやって何かに悩んでるわね。悩むのが趣味なの?」
「…そんなわけないじゃない」
「そうよね。で、悩んだ結果何か答えはでた?」
「私には足りないモノばかりって事は改めてわかったわ」

ぽつりと呟いた言葉に美希はどう反応してくれるのかは分からなかったが、ネガティブな事を言うと怒り出す彼女は、今回もお説教してくれるのだろうか。
今までわざと美希から視線を逸らしていたが、ちらりとその表情を伺ってみた。

「何言ってんのよ。そんなの当たり前じゃない」

怒った、ではなく、キョトンとした顔だった。
当たり前のこと過ぎて、朝はおはようって言うのが普通でしょ?と同じくらいのノリでそう言ったかと思ったら、ビシッと人差し指をこちらに向けてきた。思わずびくりと肩が上がる。

「せつなは仙人? それとも神様にでもなったの? アタシ達はね、まだ十数年しか生きてないのよ。出来ない事なんて山のようにあるし、自分に出来る事の方が少ないわ」

依然として向けられる指先。私の胸に突き刺さるようなまっすぐさ。それと同じくらい、美希の言葉が胸に響く。

「だから、他の人と出来る事を足し合って協力すれば普段以上の事ができるし、出来る事を増やすには自分に何が出来ないか知ってからじゃないと努力の方向性もわからないわ」

「今のアタシ達に必要なのは、できない事がある。そんな弱い自分を受け入れる事よ。あの時、自分の弱さを人に話せたからそう思える様になったのよ」

そう言われた。それも満面の笑みで。
その笑顔は見る人を惹きつける輝きと自信に満ちていて、でも優しさで溢れた普段の彼女らしいものだった。


「それをふまえてアタシはアタシの為に完璧になりたい。せつなは、誰の為に完璧になりたいの?」


――風が吹いた。それは、河原の草を揺れさせ、髪をなびかせ、流れに逆らって水を波立たせるように心をざわつかせる。そして髪は時折視線に交じり、そのうち視界を黒く染めた。夕日の陰影でオレンジに交じった黒は、その色を纏っていたあの頃を思い出させる。

――自分の力を証明したかった。
幹部になっても、どんなに追いかけてもこちらを見てくれなかったあの人に、自分を認識してほしくて、望むことはなんだってやった。それで認めてくれるなら。
当時はそれが理由だった。
なら今は…?
みんなに迷惑を掛けない人になりたい。足手まといにならないように、いつだって誰かを見据えた考え方を、行動をとってきた。
失敗したら見てくれなくなる
あれ…
なんだこれ…これじゃまるで、前と何も変わらない…
こんなんじゃ、こんな自分じゃ…みんなが…私から……

…離れて…

「別にアタシ達は聖人君主みたいな完璧なせつななんて望んでないわよ」

その言葉にハッとして下を向いていた顔を上げると美希と目があった。
その眼が、表情が、本当だと言っている。
そうだ。みんなは私の事を見限って離れるようなことはしないし、いつだって私を見てくれている。そんなのわかっていたはず。


…私は、誰を見ていた…?



「幽霊みたいなあやふやな存在だったのかもしれないよ」

あの時の祈里の言葉が頭の中で反響した。



相手は何を思っているのか。それを想像し、先読みし、考える事は自由でも、決めつけてはいけないのかもしれない。でなければ、その考えはいつかきっと自分自身を傷つけてしまう。かも。
怒られる。そう決めつけて言わずにその嘘に苦しむより、言ってしまって存分に怒られた方が長期的に見れば自分の為かもしれないと思った。

ので…


「あの、おばさま…実は私、その、ピーマンが苦手みたいで…」
「……」
「ご、ごめんなさい! 好き嫌いは駄目だってわかっていますがあの苦みがどうしてもっ…!」
「まぁっ…!」

ニンジンを残すラブの事をあんなにも怒っていたから、第一声は怒鳴り声かと身構えていた。そして、嫌われてしまうのではないか、幻滅されてしまうのではとも思って体が知らずに強張っていた。
でも、最初の一言に、怒りの感情は含まれていなかった。
むしろ少し嬉しそうな声音。
ごめんなさいと頭を下げた状態から恐る恐るあゆみの顔を窺ってみると、何か嬉しい事でも発見したような表情で、その反応に自分の頭の上に?マークが浮かんだ。

「そう…そうなの…! せつなちゃんは…せっちゃんはピーマンが苦手なのねっ」

そう言いながら、あゆみに抱き締められた。
怒られるのは覚悟の上、あっさり了承される未来も少し思い描いたが、まさか喜ばれるとは思わなかったので、状況が読み取れずにぽかんと呆気にとられる。

「あーっ! おかあさんがせつなにハグしてるっ!! ズルい!! あたしもせつなにぎゅーってしたい。えいっ!」
「ら、ラブっ…! おばさまも、く、くるしいわっ…」
「あははっ、せつなってば顔真っ赤だー」


結局、ピーマン嫌いはラブのニンジン嫌いと一緒に今後克服していくということになった。なぜピーマンが嫌いといった時に喜んだかとあゆみに尋ねると、

「それはないしょよ」

と微笑みながら言われたが、馬鹿にされたようなマイナスなものではなく、優しい感じだったので秘密の理由はあまり気にならなかった。


ただ…

「今日の夕飯はチンジャオロースよ。ふたりとも残さず食べてね」
「えー…なんでチンジャオロースにニンジン入ってるの…」
「ピーマンが…」
「の こ さ ず 食べるのよ?」
「「はーい…」」

これからピーマン料理が増えそうで少し心配になった。
最終更新:2014年02月11日 00:01