【熱】/恵千果◆EeRc0idolE
酷く甘い。いつもに比べてやけに甘ったるく感じていつまでも舌に残るケーキを、ようやくひとつ食べ終えた響はそっと奏を盗み見た。
真冬の調理室。暖房は入っているのに、部屋が広いせいかあまり暖まらないだけでなく、ひんやりした冷気が窓辺から流れ込んでくる。
流し台では奏が、やけに真面目な顔をして一心不乱にボールや泡立て器を洗っている。
言えないよ。いつもなら1ホールなんて当たり前。なのに今は、やっとひとつ食べ終えただけなんて。
ふたりでクリスマスをしようって奏がせっかく誘ってくれて、こうしてお手製のケーキを振る舞ってくれているのに。
言えないよ、いまいちなんて。いつもより甘すぎで食べれないなんて、そんなの奏に言えるわけがないじゃない。
けど、残ったケーキ、どうしよ……。
「響? どうしたの?」
「えっ!? 別にどうもしないよ?」
「だって、ケーキ残してるじゃない。いつもなら、私が洗い物してる間に食べ終わってるのに」
「そ、そうだっけ」
「もう、しらばっくれないでこっちに来なさい!」
怒られるんじゃないかと反射的に身を硬くした響の手首を、奏が力強くつかんだ。そのまま奏はぐいぐいと響を引っ張って、どこかに連れていく。
「ちょっ、奏、どこ行くの」
「いいから黙って歩く!」
長い廊下の先。着いたのは誰もいない保健室だった。
強引にベッドに座らせ、奏は響の制服のリボンをほどき始める。
有無を言わせない奏の態度に驚きながらも、やけに胸がドキドキして響は逆らえずにいた。
何……? 奏はわたしに何をする気なの?
しんと静まりかえる部屋に衣擦れの音が響く。 響のブラウスのボタンを外す奏の白い細い指先が、動くたびに響の肌に触れる。
恥ずかしい……。けど、不思議と嫌じゃない。奏になら、何をされてもいい。半ば諦め、半ば期待とともに響がそう思った時。ふいに奏の指が動きを止めた。
上からふたつめまでのボタンを器用に外し終えた奏は、ブラウスを開いて響の脇に何かを挟み込んだ。
「冷たい! 何するの奏!」
「熱を測ってるのよ」
「……熱ってなんで?」
「だって響、具合悪いんでしょ?」
「……は?」
「だって、響がケーキ残すなんて、具合悪い以外にあり得ないわよ。顔もいやに火照ってるし、熱でもあるんじゃないかと思って」
どうやら、ケーキを大量に残した響を見て、奏なりに響を心配して起こした行動だったらしい。
(何わたしひとりでドキドキしてんのよ全く! 何かバッカみたい……。損した気分!)
響は心の奥で毒づき、そして気づく。
(わたしったら、落胆してる。奏に何かされるんじゃないかって勝手に勘違いして、でも何もなくて、だから……残念なんだ。
わたし……奏が好きなの?)
突然あらわになって意識し始めたばかりの感情を、上手くあしらうことなど出来るはずもなく、響の頬はばら色に染まった。
その熱はおさまることなく身体に溜まっていく。今、響は本当に熱を出していた。
しんと静まりかえった保健室に、体温計の電子音が鳴った。その音を合図に、奏の手が響の脇から体温計を抜き取る。
そんな奏の一挙手一投足に反応して、響の心臓はどぎまぎと乱されていた。
「ああ、少しだけどやっぱり熱があるわ。響、ちょっと休んでなさいね。少し寝たら送っていくから。わたし、片付けの残りやってきちゃうね」
そうして、奏がベッドを離れようとしたその時、響は無意識に奏の制服の端をつかんでいた。
「……やだ」
「え?」
「……奏、行っちゃやだ」
「ちょっ、何小さい子みたいなこと言ってんのよ響ったら……」
「行かないで、奏。――そばに居てよ」
そっぽを向きながら、恥ずかしそうに頼む響の様子を見ると、奏はどこにも行けなくなってしまう。近くの椅子に腰を下ろして、響の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「わかったわよ。どこにも行かない。響のそばにいる」
「良かったあ……」
安心して破顔した響の満面の笑顔があまりに可愛くて、目が離せなくなりそうで……。奏は慌てて目を逸らし、立ち上がると窓辺へ向かった。
カーテンを閉じた後、響をベッドに寝かせ手を握ってやると、響は安心したように目を閉じると、そのままスウスウと寝息を立て始める。
その寝顔を見ながら、奏は思う。
(さっき見えた響の胸の谷間、ずいぶん発達してきていた。触ったら柔らかいんだろうな。
響、睫毛長ーい……寝顔も綺麗。リップなんてつけないくせに、唇もこんなにぷるんとしてて……何かすんごく……美味しそう)
気づいたら、軽く開かれた響のくちびるに、震えながらキスをしていた。柔らかなくちびるを軽く吸ってみる。響は起きない。
さっき響が食べた生クリームの甘さが、そのふっくらとした唇に残っている。その甘美な味わいが、まるで媚薬のように奏を大胆にさせていく。
響のはだけたブラウスから覗く鎖骨をなぞり、肌に触れる。やはり、響は起きない。
(駄目よ……これ以上したら響が起きちゃう……けど……あとちょっと……もうちょっとだけだから……)
ブラウスのボタンをすべて外して胸を覆うブラジャーがすっかり顔を出しても、そのブラジャーを優しくたくし上げてぷるぷると揺れる乳房を露出させても、響は起きなかった。
(響、やっぱ胸おっきぃ……。あ! 乳首が立ったぁ! なんかむちゃくちゃ色っぽいんですけど……。
あ、汗かいてる……。綺麗にしてあげなきゃ風邪が酷くなっちゃうんじゃないかな……)
そんな考えが頭を支配し、熱に浮かされたようになり、奏は響の乳房を舐め始める。
最初はまわりを。汗を丁寧に舐め取り、やがてすっかり綺麗にしてしまうと、遠慮しながらもチラチラ見つめていた頂きが自分を誘っているようで、奏は我慢できなくなる。
響の乳房の真ん中で、その存在を主張しているかのように桃色に輝く尖りに、奏はとうとう負けた。口づけながらそっと口に含む。これが響の味。飴玉のように口腔内で転がしながら味わう。何をしても、こんなにしても響は起きない……はずがなかった。
そうまでされた響はさすがに目は覚めていたが、熱と眠気で頭は朦朧としていてはっきりしない。
(これって……夢? 奏にしてほしかったことを、奏がわたしにしてくれてる。嬉しい……。こんな夢なら大歓迎なのに。ううん、現実ならどんなに幸せだろう……)
そんな響が発した声は少し掠れ、奏を狂わせるには十分過ぎる甘さを放っていた。
「奏ぇ……気持ち、いいよ……もっと……」
響が目覚め発声した瞬間、驚愕で全身がビクリと震え、罪悪感と焦りとで動きが止まってしまう奏だったが、響に求められたことが嬉しくてたまらない。
「――――いいの? これ以上したら、わたしきっと止められないよ」
「いいよ。……奏になら、いい」
「後で嫌って言うの、無しだからね」
響がうなずいた。それを見届けた奏は、すぐさま響の熱く燃えるようなくちびるに深く口づけた。奪うように。
くちびるの熱さに酔いしれ、舌を絡ませる。響の舌の裏側をなぞり、歯の内側をも舐めていく。
(甘い。甘いよ響。こんな甘さを知ってしまったら、もう止まらない。
響、響、響……ずっとこうしたかった。ずっと触れたかった。ケーキよりも甘い響の身体にずっと触れたかった。
身体を許してくれたってことは、心も許してくれたってことだよね? 私、今、響の心にも口づけているんだ……。)
「響、私……響が好き」
「わたしだって、奏が好きだよ。本当は、ずっと前からこうされたかったんだと思う」
「どうして?」
「だって今、すごく幸せだから」
「響……」
「でも、これってわたしの夢なんでしょ?」
「なな、なんでそうなるのよ……。夢なわけないでしょ、現実です!」
「そうなの? じゃあ……ホンモノの奏なの!?」
「当たり前です!!」
「うひゃあああ……」
「響ったら、急にヘンな声出さないでよもう」
「だってさ、だってさ、恥ずかしいんだもん……」
急に現実感を帯びたふたりの秘め事。恥ずかしがる響を尻目に、奏は行為を再開させた。
もう片方の乳房を綺麗にする作業がまだ残っていたのを思い出したのだ。
「やあっ、そこ、こそばい……」
奏の舌が縦横無尽に動き回り、汗を舐め取り頂きをねぶるたびに、響は可愛い声を上げた。
その声に、奏はいっそう欲望を掻き立てられる。
舌は響を味わい続けながら、妖しく動く手が彼女の太股を撫で、ひらひらしたスカートのフリルを捲り上げた。
奏の指が、湿り気を帯びた響の下着に触れた。
「響……脱がすよ?」
「……ウン」
小さく頷く響の顔は、まるでチークを顔中に散らしたように火照り、熱く潤んだ花芯は今や遅しとばかりに奏を待ちかまえている。
脱がせた下着と響との間にキラキラ光る橋が一瞬かかって……すぐに消え落ちた。
「すご……響……すごいことになってる……」
「ど、どうなってるの!?」
「溢れてるよ……ここも綺麗にしなきゃ」
夢中で舌を這わせる奏は、まるでソフトクリームか蜂蜜でも舐めるかのようだった。
「あうっ……んっ、かなでぇ、はあっ……そんなとこダメぇ……」
「どうして? 響のココ、こんなに美味しいのに……」
「やだッ、だってすごく汗かいてるし汚いっ……奏に嫌われちゃうよ」
真っ赤な顔を困ったように歪めて抗議する響を見て、奏は我慢できずクスッと吹き出した。
「バカね響は……。教えてあげる。響のココ、全然汚くなんかないの。すごーくイイ匂いだし、キラキラ光っててとっても綺麗なんだから。それにね……私が響を嫌いになるわけないじゃない」
「……ほんと?」
「信じないの?」
「ううん、信じる」
「大好きよ響」
「わたしだって奏が大好き」
「じゃあ私のこと信じて、これからすること怒んないで、ちゃんと言うこと聞いてね」
「よくわかんないけど……わかった。ちゃんと奏の言うこと聞く」
「じゃあ脚を開いて……」
「こ、こう?」
「そう、すごく上手よ響」
恥じらう響を巧みに導いて大きく開かせた脚の中心には、愛液で輝く花びらが開いていた。涌き出るように染みでる滴りをそっと人差し指に絡ませ、密やかに爪先立ち存在を主張する花芯をねぶるようにやわやわと揉みほぐし、蜜を塗り込め優しく摘み上げていく。
「ひゃああ……何かヘン、ヘンだよ……」
「ココが女の子の一番気持ちいいトコなの……響をうんと気持ち良くさせてあげるからね」
「ああっ、わたしヘン、何かヘンなの、ヘンになっちゃう」
「ヘンなんかじゃないわよ。気持ち良くてビクビクするんでしょ?ここをずっと触ってるとね、誰でもこうなるの」
「か、奏もなるの?」
「ま、まあね……」
「じゃ、ヘンじゃないんだね……ん……ああ」
「響……声おっきいよ。誰か来ちゃう。口、押さえて」
「わかった……はぅ、むむむ」
「気持ち良い?」
響は口元を手の平で押さえながら、涙目でコクコクと頷いた。
初めての強すぎる快感の逃し方もわからないまま、響は身体を強ばらせ両脚を力一杯伸ばし、腰をビクビクと痙攣させながら絶頂を迎えた。
ヒクヒクと収縮を繰り返す秘処からは、後から後から蜜が零れ落ち、可愛く引き締まった響の小さなお尻を濡らした。
しばらくの間、ただ黙って肩で息をする響を抱き締めていた。
呼吸が荒いのは響だけではなかった。大好きな響を高みに導くことが出来、快感の頂きに身を震わせる響の素肌を抱き締められている。それだけで、奏も深く感じ入ってしまい、秘処は響に負けないくらいに熱く溢れた。
ごめんね、響。本当は、ここまでするつもりじゃなかった。だけど。
無意識下で重い蓋で栓をしていたのかもしれない。響を求めていた心が溢れ出ないように。
蓋をしたことで、隠しきれない想いが発酵して膨らみ切って、蓋を吹き飛ばして暴発してしまった。
「ごめんね響、やっぱり止められなかった」
「謝っちゃダメ。いいって言ったでしょ。……奏がいいの。奏しかイヤなの」
「……響?」
「こんなことするのは奏以外は嫌。奏じゃなきゃ、いや。だから、また奏がして。今日みたいに、わたしをヘンにして。いっぱいいっぱい」
「響……」
「すきだよ。すき。奏がすき。奏が大好き……」
半裸に剥かれた自らを奏に強く押しつけ、顔を赤らめながら響は耳元で優しく囁き、ねだる。
「かなちゃん、キスしてほしい」
「……キスだけ?」
「キスの続きは、帰ってわたしの部屋で、しよ」
「うん」
無理に開いたわけではないけれど、無理をさせたとわかっていた。だからこそ、ねだられ求められたことが嬉しい。
傾いた夕陽に染められた響のおでこに、愛しさを込め、そっとキスを落とした。
「何でおでこなのよ」
恨めしそうに睨む響に、優しく言い聞かせる。
「キスだけじゃ、我慢出来なくなりそうだから」
今は我慢するけれど、誰にも見咎められない場所でなら、遠慮なんてしない。するもんですか。だから、今だけは我慢できる。ふたりっきりになった後で、大好きな女の子の心と身体に、思う存分口づけるために。
了
最終更新:2014年02月22日 18:59