「もしものもしもの話」/ねぎぼう
白詰草の花咲く丘から一望する四つ葉町を見るのもこれが最後。
「ありがとう」
そのまま、瞬と隼人のもとへ歩み寄る。
「本当にいいんだね?」
「ええ」
「もう、これで最後なんだぞ」
「だからよ。行きましょう」
3人はかつて占い館のあった森に向かった。
着いたのは夏の日にせつなとラブが拳を交えた場所。
「サウラー、ウエスター、ありがとう」
「後は俺たちにまかせろ」
「君はゆっくり休むといい」
せつなはキュアエンジェルの最後の羽根を二人に託すと、
自身はその場に倒れ落ちそうになる。
ウエスターが支え、そっと半身を起こして座らせた。
「私、やり直せたかしら?」
「ああ、十分やり直したぞ!」
「これからは僕たちがやり直す番だよ」
「もう、時間ね。この世界で……ラブに出会えてよかった……」
「イース!」
(キュアピーチがそばでなくて、本当によかったのか?)
*
~せつなの心の世界~
アカルンが悲しそうな顔をして浮揚している。
せつなの頭にはアカルンを最初に結びつけたシフォンがいた。
アカルンの命の力を借りることによりせつなは生きていたが、
人の寿命が尽きるのを遅らせるのにも限界があった。
「アカルン、これであなたもスウィーツ王国に帰れるわね。
余計に引き留めてしまってごめんなさい」
「キュアパッション……」
ここにきてまで本音を押し殺そうとしているせつな。
「最後に一つだけお願いがあるわ。四つ葉町の人たちの記憶から
私がいたことを消して欲しいの。無限の記憶を司るシフォンなら
出来るわね」
「……キュアピーチからもキー?」
「ラブに……皆に嘘をついてしまったの。もう何もできないのに……
私はラブの心に残る資格はない」
あの場で自らの運命について話すわけにはいかなかったとはいえ、
偽りを言わざるを得なかったことに対しかくも悲しい罰をせつなは
自らに課そうとしていた。
(本当の気持ちは??)
「そんなことないキー」
「ラブ、せちゅなしゅき」
せつなは未練を振り払うように言い切った。
「お願いシフォン! 私はもともといなかったことにして!」
最後の願いは悲しいものであったが、それをききいれなければ
もっとせつなは悲しい思いをするのかも知れない。
「シフォン、お願いキー」
シフォンは躊躇っていたが、何かを思うと瞳に光が灯り、
額のマークが輝いた。
「キュアキュア、プリップー!」
四つ葉町中が光に包まれた。
(ラブ!)
*
そこにいたのはアカルンと……
「本当はキュアパッションはキュアピーチと離れたくないキー」
「こう、なるのね?」
「本来は前世の記憶を残しての転生は出来ないけど。
あなたは今キュアパインの病院にいるキー。
そこに来るキュアピーチになついているのが……」
「ありがとう。精いっぱい、頑張るわ」
そういうと、アカルンとシフォンはスウィーツ王国へと飛び立った。
*
登校前、ネクタイを直してとびきりの笑顔を見せるラブ。
その日学校が終わると、山吹動物病院に向かった。
「わっはー、かわい~い! 幸せゲットだよ~」
恰好を崩すラブ。
そんな様子をみた美希は苦笑しつつ言う。
「ラブ、ずっと前にアカルン探していた時にはずいぶん派手にやりあってたけど、
この子とは完璧に仲がいいわね」
「へへへ~。そういえば結局アカルンはどこに行っちゃったんだろうねえ?」
「まあ、4人目のプリキュアの正体もよくわからなかったけど、いろいろ助けて
くれたわね。」
せつなの望んだ罰は課せられていたようであった。
そこに、祈里がノートを持って現れた。
「ラブちゃん、しつけ方はこのノートに書いているわ」
「サンキュー、ブッキー」
「この子を幸せにするって、私、信じてる!」
「さあ、おいで~」
ラブは黒い仔猫を抱きしめた。
(ラブのぬくもり……これが私の本当の願い)
真新しい識別票には「せつな」の文字があった。
最終更新:2014年02月23日 17:10