『あなたのための一人』/夏希◆JIBDaXNP.g
「私にまかせて!」
「待つんだ、ひめ。一人では危ない!」
せっかくのスペシャルデーのパーティ直前に、ひめはめぐみと喧嘩になってしまった。
めぐみとリボンを大使館から追い出して、屋敷で一人沈み込むひめに、ブルーはサイアークの出現を告げる。
「だいじょうぶ! めぐみがいなくても、サイアークなんて一人で倒せる!」
(こわくない。一人でもやれる――絶対に!)
「プリキュア、くるりんミラーチェンジ! 天空に舞う、蒼き風! キュアプリンセス!」
プリンセスは単身、大使館二階のバルコニーから飛び立った。
「おーっほっほっほっ、至福のひととき。さあ、サイアークよ。もっと、もっと、お菓子を!」
「まちさないっ!」
“プリンセス・急降下・ダイブ!”
キュアプリンセスの、上空高くからの飛び膝蹴りがサイアークに直撃する。
「あらっ? 今日はお嬢ちゃんは、おひとり?」
「そう、一人よ。それがなに!」
「ふふふ、よ・わ・そ」
「もーっ、ばかにしてっ! 私だってプリキュアなんだからね! つよいんだからね!」
「はいはい、弱すぎて張り合いないけど」
さらに言い返そうとしたところで、サイアークの接近に気付く。舌戦は引き分け――とあきらめて、プリンセスは意識をサイアークに集中させた。
“プリンセス・ボール”からの――“プリンセス・弾丸・マシンガン”
初撃で体勢を崩し、渾身の力で連打を決める。一人連携攻撃の確かな手ごたえを感じて、プリンスは歓声を上げた。
しかし――
「やった! って、うっ、うわぁぁ――!」
サイアークはいくらかのダメージは受けつつも、同時にプリンセスの拘束に成功していた。
そのまま振り回して、お菓子の壁にプリンセスを叩き付ける。
「はい! プリキュアのいっちょ上がり」
「くっ……」
「おーっほっほっほっ、弱いのに一人で来ちゃったこと、後悔してるのかしら? さあ、サイアーク、とどめ!」
ケーキ型サイアークのイチゴミサイルが、動けなくなったプリンセスを襲う。
「勝負は決した」そう判断して、ホッシーワが再び高らかに笑おうとした、その時――
晴れた煙の先で、膝を付きながらも、キリッとサイアークを睨み付けるプリンセスがいた。
「ちがう――私はたしかに一人だけど、独りじゃない!」
「あーら、まだ生きてたの? しぶといのは認めるけど、力だけじゃなくて、おつむまで弱いのかしら? どう見ても独りじゃない。大方喧嘩でもしたんでしょ?」
「ぐっ……」
「図星ってとこかしら? 友情なんてそんなもの。あんな子、さいってーよね。おーっほっほっほっ」
「ラブリーを……ばかにしないでっ!」
ユラリ、とプリンセスが立ち上がる。
どう見てもボロボロなのに、戦える状態じゃないのに、異様な気迫に押されてサイアークがたじろぐ。
「私ね、どうしても一人でケーキを作りたかったの。だってめぐみと一緒に作ったら、私のめぐみへの愛情が――感謝の気持ちが、伝えられないじゃない!」
「何を言ってるの? いよいよ頭がおかしくなったのかしら?」
「一人でここに来たのもそう。ラブリーと喧嘩したからじゃない! ラブリーと出会って、手に入れたのは友情だけじゃないって証明したいから!
愛情をもらったの。勇気をもらったの。それも、たくさん、たくさん――それを、確かめるために一人で来たの!
だから私は――私はっ! 一人だけど、独りじゃない!!」
「ふぅん、もういいわ。めんどくさくなったし、次で終わりにしましょう」
「終わらないよっ!」
赤い翼を広げて、戦場に舞い降りるキュアラブリー。
「ラブリーっ?」
「ごめん。わたし、プリンセスの気持ち、ちっともわかってあげられなくて。でも、わたしも同じだよ。一人の時だって、わたしは独りじゃない。
喧嘩してる時だってそうだよ。ずっとプリンセスのことを考えてる。だからそれも、きっとLOVEだと思う!」
「うんっ! 私たちはいつも一緒だよね! 離れていても、心はいつも繋がっていて――」
「そう! そして、一緒に居たらより大きな力が出せる! だって、わたしたち二人は――」
「「ふたりは――プリキュアだから!!」」
「愛の光を聖なる力へ、ラブプリブレス!」
「勇気の光を聖なる力へ、ラブプリブレス!」
ふたりの心が互いに引き合い、一つになって、大いなる輝きを放つ。
「「あなたにハッピー! お届けデリバリー!!」」
巨大なハート型の円環のエネルギー弾を、二人同時に渾身の力で蹴り飛ばす!
“プリキュア・ツイン・ミラクル・パワーシュート!!”
二人の拳が空に高らかに掲げられ、愛と勇気のエネルギーが大爆発を起こす。
「「ハピネス・チャージ!!」」
サイアークは浄化され、鏡に囚われていた新婚カップルも無事に解放された。
そして、二人は手を取り合って勝利を喜び合う。
「やったね! ラブリー」
「『やったね』じゃ、ありませんですわっ!」
「えっ?」
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「なーんだ、夢だったのかー」
「まったく、もう! ひめの寝相の悪さも考えものですわ。一体、どうすれば隣で寝ているわたくしを、グーでパンチできるんですの?」
「ねえリボン。『グーでパンチ』って言い方はおかしいんじゃない?」
「だまらっしゃい! 『弾丸マシンガン』で『急降下ダイブ』な、ひめにだけは言われたくありませんわ!」
「それもそうかーって、私、そんなことまで寝言で言ってたの? 他には何か聞こえた?」
「聞き取れたのは技の名前くらいで、後は何て言ってるかまではわかりませんでしたわ」
「そっかー、よかった。現実の私も、さっきの夢の中くらいにカッコよければいいのに……。ラブリーは夢も現実も同じなのに、ズルイ」
「なんだかわからないですけど、いい夢を見れたんですのね」
「まあねー。でもさ、友達って、私が思っていたほど便利じゃなかったの。喧嘩にはなるし、会いたい時に限って居なかったり、会いたくない奴と出会ったり」
「愚痴を聞かせたいんですの?」
「ううん、その逆。思っていたほど便利じゃないけど、思っていたより、ずっと素敵だったの」
「だったら、ブルー様に感謝ですわね」
「そうだけど、リボンにも『ありがとう』って伝えたくて」
「わたくしは、何もしておりませんわ」
「そんなことないよ。めぐみに話しかける『最初の勇気』を与えてくれたのは、リボンじゃない」
(あれは、勇気とは言いませんわ……)と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、リボンはひめに微笑んだ。
いきさつはどうあれ、今日は一人でいっぱい頑張ったひめを、何とかねぎらってあげたくて……。かける言葉を探している間に――
「もう、寝てますわ……。他人を夜中に起こしておきながら……」
そうこぼしながらも、リボンは嬉しそうな顔でひめに布団をかけた。
おわり
最終更新:2014年03月17日 06:38