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星に願いを/そらまめ




いつか、流れ星を見たい。
夜空を駆ける一線を見つけて、それに向かって願いを込めれば、どんな願いでも叶うと聞いたから。
私の願いは、みんながいつまでも幸せでいられますように。
自分ではどんなに頑張っても叶えてあげられないとわかっているから。自分がいると叶わない願いだと思うから、夢物語のような星に願いを託そう。















「一生のお願いだから! 宿題見せてっ!!」

お昼休み、教室がざわめきで溢れる中、せつなはふとそんな言葉を耳にした。
声の方に視線を向ければ、一人が両手を合わせて友人に頭を下げている。お願いされている方の人が少し怒ったように何かを言いながらその子にノートを渡した。

「ねえラブ」

隣の席で黙々と何かを書いているラブを呼んでみる。視線は机に固定されたままで、「なーにー?」と気のない返事をしてくれた。忙しなく動くシャーペンに、何をしているのかと覗いてみれば、次の時間に提出するはずの宿題を今やっていた。
それは、先ほどのクラスメイトが一生のお願いだと言って見せてもらっていた宿題で、自分は昨日のうちにやっていたものだった。

「その宿題って…」
「んー?」
「命を懸けてまでやるものだと思う?」
「んー……はい?」


ぼんやりとラブを見ながら問いかけてみると、忙しなかった動作をピタッと止めて、机から視線を上げてこちらを向いたラブと目があった。どうしてかわからないが、ラブは何かに驚いたように固まっている。

「どうしたのラブ?」
「いや、どうしたはこっちのセリフだよせつな。なんで宿題に命懸けなきゃいけないのさ…」
「命を懸けたのは私じゃないわ」

と、そこで先ほどの一生のお願いの話をラブにしてみた。

「なんだそういう事か。びっくりしたよ」
「だって一生のお願いなのよ? そんな大事な願い事を宿題に使うなんてよっぽどじゃない。私ならもっと切迫した時に使うと思う」

願いの価値は人それぞれだから、私にとってはただの宿題でも、あの人にとっては人生を懸けたものだったのかもしれない。比べる方が可笑しな話だが、それでも、私ならもっと、それこそ命を懸けるほどの何かをしている時に使うと思う。

「ああいうのは、なんていうか…例えみたいなもので、軽い感じで使ってるかな…あたしなんて結構何度も使ってるよ。お母さんにおこづかい前借りさせてとかどうでもいい感じの事に。んー、改めて聞かれると説明するの難しいな…」
「つまり、ほんとは人生で一番望んでいる事ではないけど、それくらいの低姿勢で頼んでいるから要求をのんでほしいという事?」
「なんかすごいストレートだね!」
「よく言われるわ」
「まあニュアンスはそんな感じ。でも、本当の意味で一生のお願いを使う場面には、遭遇したくはないなー」
「どうして?」


「どうしても、だよ」と言いながらこちらに微笑んでいるラブは、笑っているのに、なぜか泣いているように見えた。

















一生のお願い。か…
夜、一人ベランダから夜空を見上げながら、昼間学校でせつなに言われた話を思い出す。
せつなが突然そんなことを言うから、一瞬怖くなってしまった。最悪を、想像してしまった。
軽い感じで使う人は多いけど、せつなはきっと、この言葉を本当の意味の時にしか使わない。冗談を言う子じゃないから。
せつながこの言葉を口にするのは、自分自身の未来を捨てると決めた時だと思う。自分にはもうできない事だから、誰かに代わりにやってもらいたい。普段めったに他人に頼る事のないせつなのお願い。
今の自分達には、そんな事態になるわけないと言い切れない程度には、色々と無茶をしている。プリキュアは遊びじゃないから、命のやり取りをする場面がいつか来てしまうかもしれない。一生のお願いをせつなが使う時は、日常よりもプリキュアでいる時の方が確率は高い。そして、お願いをされるのはきっと同じプリキュアである自分達。
せつなの願いは、多分自分のための願いではないと思う。いつでも他人優先のせつなは自分を数に入れないから。願いを持つ事にすら怯えていそうで、それでも他人のためになら許されるのかもしれないと考えて願う事に、あたしは素直に喜べない。それがたとえ、あたしの幸せを願うものだったとしても。
嫌なんだ。願いが叶ったら、せつなはそこにはいない気がして。

そんな事を思っていたら、視界がぼやけてきた。両眼から零れ落ちそうになる何かをグッと堪えて顔をさらに高く上げる。夜空に光る星がたくさん見えるけど、潤んでいる視界には点のような星が引き伸ばされて線のように見える。
まるで流れ星みたい。
視界からいつまでも消えない流れ星に、願いを込めた。
どうか、せつなの願いは叶いませんように。
我ながら酷いと思う。けど、自分の幸せは自分でゲットできるから、せつなには、せつなのための願いを想って欲しい。
今は無理かもしれない。でもいつか、そうやってせつなが自分を許せる日が来るまでは、あたしはせつなの願いが叶わないように星に祈る。
最終更新:2014年04月26日 09:17