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ひだまり/そらまめ




自分の生まれた日の事について調べてみよう。
中学生でこの課題は少し子供っぽいのではないかと思ったが、近々授業参観があるから仕方がない。用紙数枚にまとめて親の前で発表するらしい。
その課題を出された時、隣の席のラブが心配そうにこちらを見たのに気付いた。私はそれを何でもない風に受け止めて、大丈夫の気持ちを込めてラブに笑って見せた。

生まれた日。
別に日にちを知らないわけではない。こちらの世界の日付に合わせれば難なく分かる。
ただ、こちらの世界のように自分が生まれた日を祝うような行事は無かったから、感覚としては数字の羅列に過ぎないその日を、どうしたら感情を込めて大切と言えるか。そちらに頭を悩ませた。まさかラビリンスに戻ってその日についての事を聞いてみる。なんて出来るわけがない。そんな事をしたら課題も何も授業参観までに無事に戻ってこれそうにない。
それとなくクラスメイトにどんな事を書くのか聞いてみる。
何時頃に生まれたか。その時の親の心境を聞いて文章にするとか、写真を貼ってみるとか色々だった。
いよいよ困った。
これはもう出来事をでっちあげるしかない。ただ、先ほどの通り、祝う気持ちがわからないのでどういう感情を込めて文章を作成すればいいのか。

もっと、自分で体験したような話題ならよかったのに…
そこでふと思い出したのは、自分が死んだ日の事だった。もうこれでいいんじゃないかな…あの時の事はよく覚えてるし感情も込めてかけそう。

「その日私はラブと喧嘩をして、その後死んで生き返りました。」

…なんだかこれじゃラブが私を殺したみたいになってる…
これはさすがにまずい。
ん…?ちょっと待てよ…死んで生き返ったという事は…私はあの日生まれたという事にならないだろうか。そうだとしたら、私を生んだのはあの時あの場にいたラブ達…
ラブにその時の心境を聞けば文章が書けるかもしれない!
糸口を見つけて嬉しくなった私はすぐさまラブの部屋に行く。ただ、その時の自分はこの超理論が超理論過ぎた事に気付いていなかった。











「え…せつなが死んだ時どう思ったか…?」
「そう。その時の心境が判れば課題出来るかもって思って…って、えっ!? なんで急に泣き出すのラブ?!」
「だっで…あのときの、ぜんぜん動かないせつなを思い出したら…」
「えっと…ごめんなさい」
「やっと分かり合えたと思って、せつなも手を伸ばしてくれて…それなのに…突然倒れて、それで…それで……ブツブツ…」
「ごめんなさいラブ!! 聞いた私が悪かったわ。もう思い出さなくていいから戻ってきて!」

トラウマのスイッチでも入れてしまったようで、ハイライトがなくなった目をしながらぶつぶつ言いだしたラブ。よく考えたら知り合いが目の前で突然死んだのだから、中学生にはショック過ぎる出来事だったはず。もっと考えて聞けばよかったと後悔した。
座って正面から抱き締めるようにして背中をさする。そうやって泣きやむまであやし続けていたら、そのうち肩に置かれた頭から規則正しい寝息がしてきて、気付いたらラブは眠っていた。泣き疲れて眠るなんてシフォンじゃあるまいしと思ったが、こうした事態を引き起こしたのは私が原因なのだから色々言える立場じゃないと反省した。
少し体をずらして、ラブの顔を横目で確認できるようにする。
涙の伝った跡が残っている事に胸がきゅっと苦しくなった。
そんなに、ショックだったのだろうか。
私の事でここまで感情を揺らす人がいるなんて考えもしなかったから、ラブの大げさ過ぎる表現に私はいつもたじろいでいた。ただ、そういう人が近くにいてくれると、何となく心地がよくて、いつも無意識に私の心まで救ってくれるラブに感謝の気持ちが消える事はない。

「ありがとう」

いつだってあなたは私の世界の真ん中にいて、ラブが悲しんでいると私も悲しくなってしまうから、

「もう迂闊に泣かせられないわね」

苦笑いしながら小さな声でそう呟いて、一定のリズムで呼吸する音に目を閉じた。
最終更新:2014年05月04日 13:10