『羊羹ごろりん』/Mitchell&Carroll
「この辺りにしない?こまち」
「そうね、景色も良いし。そっち持って、かれん」
素敵なレジャーシートを、まっさおな芝生の上に。
青い空、白い雲。ここは水無月家の所有する島。常夏である。
二人は慎ましやかに座るやいなや、お重のような箱をせっせと開け始める。
「はい、かれんの分。今年は西南西よ」
「これを一本、丸ごといただくのね?西南西というと……あっちね」
「いただきます」
「いただくとするわ」
そして二人ともツルッ!
「あらっ!」
「いけない!」
「「大切な羊羹が!!」」
羊羹はごろごろと転がって、穴に落ちてしまいました。
「どうしましょう……あの二本しか持ってこなかったのに……」
「直方体のくせに、やたら転がる羊羹ね……」
しかしなにやら、穴から歌のようなものが聴こえてきます。
「何かしら、この歌は……私が覗いてみるわ。キャッ!?」
かれんはその穴に落ちてしまいました。そしてついでに、こまちも落ちてしまいました。
「痛たた……かれん、大丈夫?」
「こまち!あれ見て!」
「♪いただきますとーごちそーさまー♪おいしい羊羹をありがとう!
お礼に、おおもりご飯特製・大盛り弁当を食べていってくださいな!」
なんと、そこでは大森ゆう子がお弁当を振舞っていたのです。
二人は笑顔で割り箸を割ります。
「ええ、じゃあ遠慮なくいただくわ。まあ、美味しい!」
「ほんとね!……あら?かれん、あちらに先客がいるみたい」
その視線の先には、先輩プリキュア達が。
「咲に舞、それに満と薫じゃない!」
「あ、お先にどーも、日向咲です!」
咲はとっさに自分の名前で駄洒落を言ってみました。
「どういうわけで、あなたたちもここに?」
こまちが尋ねると、舞は
「西南西の方角に向かって、私たち四人でチョココロネを食べようとしていたんです。
そしたら、手が滑っちゃって、コロネがころころ転がって、
穴に落っこちちゃって、それを追った私たちも落ちて、気付いたら
ここでお弁当をご馳走になっていました」
と答え、最後のさくらんぼをパクッと口に入れました。
「おかしな事もあるものね」
かれんはエビフライにタルタルソースをかけながら言いました。こまちも、
「なんかとっても不思議な感じ。これってもしかして……」
と、こちらは唐揚げに胡椒をかけながら言いました。
そう、これは夢だったのです。彼女たちが見た夢なのでした。
こまちはこの夢を見て、みんなに羊羹をアピールする意欲が湧いてきたそうです。
かれんは、そもそも羊羹があのように転がる筈が無い、と、割と序盤の方で夢だと薄々
気付いていました。そして、なんとなく羊羹が食べたくなってきました。
咲は、このところずっとチョココロネが上手く焼けなかったようですが、
この夢を見た後、上手に焼けるようになったそうです。
舞、それに満と薫も、かれんと同じように、なんとなくチョココロネが食べたくなってきて、
その後、咲が焼いたチョココロネを食べて、とびっきりの笑顔を見せました。
めでたしめでたし
最終更新:2015年02月09日 23:29