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17話 否定のレクイエム 周囲を林に囲まれた、草がぼうぼうとしている荒地に銃声が響く。 「待て! 待てって!」 陸軍の兵卒の制服に身を包んだ灰色の狼獣人青年、北原大和は自分を銃撃するシェパード種犬獣人青年を説得する。 大和も武器は持っていたが、古いサーベルであり銃相手には不利であった。 余程の実力者であれば銃相手に正面から挑んで勝利出来るらしいが大和は刀剣に関してそこまでの腕前は無い。 「当たらない……」 大和に対して手にした自動拳銃を発砲する犬青年は思ったように当たらない事に苛立ちの言葉を吐く。 「やめろって! こんなゲームに乗るなんて馬鹿げてる、落ち着けよ!」 訴える大和。彼はこの殺し合いゲームに反抗し、仲間を募りどうにかしてゲームからの脱出を試みようとしていた。 しかし犬青年は大和の言に耳を貸すつもりは無いようだ。 「うるせぇ! 最後の一人にならなきゃ生きて帰れないんだろ! だったら俺は死ぬのは嫌だ!」 ゲームに巻き込まれ精神的余裕を失っているのか声を荒げ、再び銃を乱射し始めた。 一発が大和の耳元を掠め彼の肝を冷やさせる。 (駄目だ、まともに会話出来る状態じゃない) 大和は説得を諦め全速力で逃走した。 無論犬青年が黙って見送る筈も無く背後から発砲を受けるも、幸いにも当たる事は無かった。 走り続けた大和は、息切れを感じゆっくりと立ち止まる。 息を整えながら辺りを見ると、風景は林に囲まれた荒地から市街地に変わっていた。 犬青年の姿は見えず、振り切る事に成功したと判断した大和は一先ず安堵する。 「振り切った……でもこれだと先が思いやられる」 自分の目的を考えると幸先の悪いスタートだと言わざるをえない。 だがまだへこたれるには早いと自分を奮い立たせ、自分と同じく殺し合いに乗っていない参加者を見付けるべく大和は歩き出す。 ◆◆◆ 「逃げられたか、まぁいいや……」 シェパード犬獣人の青年、沼倉勇喜は逃走した狼兵士の追撃を早々に諦める。別段狼兵士に拘る必要も無い。 ハッテン場通いが趣味のゲイと言う点を除き普通のフリーターである勇喜は、自分が生き延びる為に殺し合いに乗った。 この殺し合いにはハッテン場仲間である黛康裕とスィヴレバルも居たが、例え会ったとしても構わず襲うつもりで居た。 普段しゃぶり合い、突き合い、かけ合った仲間。しかし結局は自分の命には代え難い。 実際に二人と相対してもその決意が揺るがないかどうかは別として。 【明朝/E-5市街地】 【北原大和】 状態:健康 装備:三十二年式軍刀 持物:基本支給品一式 現状:殺し合いはしない。仲間を集めて脱出を目指す。 備考:沼倉勇喜(名前未確認)を危険人物と判断。 【明朝/E-5荒地】 【沼倉勇喜】 状態:健康 装備:スタームルガーP85(7/15) 持物:基本支給品一式、スタームルガーP85の弾倉(3) 現状:殺し合いに乗り優勝を目指す。知り合いに会っても容赦しない。 備考:北原大和の容姿のみ記憶。 ---- 《キャラ紹介》 【北原大和】 読み:きたはら やまと 年齢:20 性別:男 種族:狼獣人 特徴:灰色の毛皮に赤い瞳。引き締まった長身の身体。緑色の戦闘服姿 職業:陸軍兵士 備考:暑苦しいと言う訳では無いが正義感の強い熱血漢。但し一歩引いて思考出来る程度の冷静さも有る。 兵士である為銃火器、刀剣類の扱いとある程度の格闘技に通じ、戦闘能力と身体能力は高い。 地味にエレキギターが演奏出来る、が最近は余りやっていない 【沼倉勇喜】 読み:ぬまくら ゆうき 年齢:19 性別:男 種族:犬獣人 特徴:ジャーマンシェパード種犬獣人。普通の身体だが逸物はそこそこ大きい 職業:フリーター(現在はカフェのバーテンダー) 備考:ハッテン場通いが趣味のゲイ。普段はフリーターとして色々なバイトをしている。 中学の時思い切って先輩の男子生徒に告白するも「俺猫好きなんだ」とフラれしばらく鬱状態になったほろ苦い思い出あり。 基本的に人当たりは良いが、緊急時となると感情的になる傾向である。 ロワ参加者の黛康裕、スィヴレバルはハッテン場仲間 《支給品紹介》 【三十二年式軍刀】 支給者:北原大和 分類:刃物 説明:明治32年に制定された旧日本陸軍の官給下士官刀。本ロワに登場するのは騎兵用の「甲」である。 【スタームルガーP85】 支給者:沼倉勇喜 分類:銃火器 説明:アメリカのスタームルガー社が1987年に発売した自動拳銃。 堅牢かつ安価で、本国では人気があり、幾つかの法執行機関に制式採用もされている。9mmパラべラム弾使用。 ---- |前:[[神聖な場所で何て事を…]]|目次順|次:[[その行為は嘘をつかない]]| |&color(blue){ゲーム開始}|北原大和|次:[[図らずも前門の虎と後門の狼]]| |&color(blue){ゲーム開始}|沼倉勇喜|次:[[行先、定マラズ]]|
【12】 F-1港。 「ウィィィィィィッス! どうもージャムでぇーす! いやぁー何と、私、殺し合いゲームと言うものに、巻き込まれてしまいました!」 「ジャム」と言うHNで全くその才能も無いのにユーチューバーを気取っている小男、浜土竜平は、 今回の殺し合いに巻き込まれても「これで生きて帰れれば大人気だで」としか考えず呑気に支給されたビデオカメラで撮影を行っていた。 今の彼の脳内に有るのは見事に過酷なゲームを生き延びちやほやされる自分の姿のみであろう。 「もし生きて帰れたら、そうやなあ、オフ会……オフ会を開こうかなって。やっぱ……」 都合の良い妄想に基づいたナレーションをしている時、 背後から二人の参加者が近付いている事に彼は気付く。 一人は高校生らしき少年、もう一人は裸族なのか全裸の竜人女性。 「え? あー、ちょ、ちょっと一旦切りまぁす」 折角の撮影なのに邪魔が入ったと不機嫌になった竜平は一度撮影を中断する。そして二人に文句を言おうとした。 だが、その前に少年の拳が竜平の顔面に入り、竜平は吹き飛ばされカメラと目にかけていたオーバーグラスとメガネを地面に落とす。 カメラは破損しグラスとメガネも割れた。 突然の事に全く頭の状況判断が追いつかない竜平に今度は竜人女性が腕を竜平の首に組み付かせた。 首を固められた痛みよりも竜平が気になったのは後頭部のとても柔らかい感触。乳房だ。生の乳房が自分の後頭部に。 ボキッ。 その柔らかさが彼の感じた最後の心地良い感覚であり、竜人女性のその細腕からは想像も付かない怪力によって竜平の頚骨は粉砕され、彼は天へと召した。 「一人目」 「うーんおいしいかなあ」 「食ってみ」 「いただきまーす」 少年、三登丞に促され竜人女性、カウィナは小男の腕の肉を齧る。 「まずい」 「駄目か」 おいしくないようだ。 「こいつが持ってるのはビデオカメラだけか、そいつも壊れちまったし」 「つぎいこうよー」 「ああ」 早々に小男への興味を失った丞とカウィナは歩き去った。 二人は殺し合いに乗っており、かつ協力体制を取っている。その方が効率よくゲームを進められると判断したのだ。 そして最後の二人になれば、二人で殺し合い勝った方が優勝する、そのような契約を結んでいた。 &color(red){【浜土竜平  死亡】} 【明朝/F-1港】 【三登丞】 [状態]健康 [所持品]基本支給品一式、不明支給品 [行動指針]殺し合いに乗る。最後の二人になるまではカウィナと行動。 【カウィナ】 [状態]健康 [所持品]基本支給品一式、不明支給品 [行動指針]殺し合いに乗る。最後の二人になるまではミトくんと行動。 《キャラ紹介》 【浜土竜平】 はまづち・りゅうへい 32歳のユーチューバー気取りの無職。チビ、坊主頭、おちょぼ口、そして才能ゼロだが自信家。 【三登丞】 みと・すすむ 感情表現の希薄な高校生。17歳。青みがかった黒髪。邪魔だと思った物は手段を選ばず排除する冷酷な性格。 【カウィナ】 青と白の身体に銀髪の裸族竜人でブーツと腰ベルトのみの格好。巨乳で大人びた外見だが14歳の子供。 精神年齢が幼く残虐、食べる事が大好き。一応冒険者。 |前:[[置き忘れたアスファルト、染めていく陰鬱のニオイ]]|目次順|次:[[どこまでも果てなく]]| |&color(blue){GAME START}|浜土竜平|&color(red){GAME OVER}| |&color(blue){GAME START}|三登丞|次:[[]]| |&color(blue){GAME START}|カウィナ|次:[[]]|

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