11話 道筋を探求する
迷彩柄の軍服姿の美しい竜人の女性が、草原に立っていた。
竜人女性――
雨龍春美の見据える先には明かりが灯る校舎。
この殺し合いの運営本部が置かれている場所である。
今すぐにでも突入して吉橋寛和と岩岡朋佳を討ち取ってしまいたいがそれは出来ない。
校舎のあるエリアはゲーム開始直後に禁止エリアに指定されている。
禁止エリアに侵入すれば首輪が起動し爆発して死んでしまう。
無駄死には避けたい所であった。
(あそこに突入するには、首輪を何とかする他無さそう……)
「雨龍さん? そろそろ行きましょうよ……」
「ん? あ、ああ……ごめんなさい」
思案していた雨龍に声を掛けるのは、同行者であり茶色のツインテールが愛らしい人間の少女、
野沢佳美。
現在いる草原は夜中とは言え見晴らしが良く殺し合いに乗っている者に発見されるのを恐れたが故の発言であった。
「何を見てたんですか?」
「運営本部をね、何とかして突入して制圧出来ないものかって」
「ええ? そ、そりゃ無理ですよ。だって本部のあるエリアはもう禁止エリアになってますし、
禁止エリアに入ったら首輪が爆発してしまうんですよ?
それに首輪をどうにか出来たとしても、本部には運営の兵士が……」
「そうなのよね……それも十分承知はしてるんだけど」
運営本部を襲撃しようと思うならば、解決しなければならない問題は幾つかある。
まず首輪。
運営本部は入ると首輪が作動する禁止エリアになっている。
それに、運営側から首輪は任意で爆破出来るようにもなっている。
首輪をどうにかして外さなければならない。
次に、仲間。
運営本部には運営側の兵士が、正確な数は不明だがこの殺し合いの規模や、
万一の場合も想定していると考えると、相当な数がいるものと思われる。
ならばこちらも相当数の仲間と武装を集める必要があるだろう。
大まかに言うならこの二つ。
この二つは最低限解決しなければならない。
「仲間を集めないとねー……野沢さんにも色々協力して貰うよ」
「で、出来る事を頼んで欲しいなーっ、て」
「無論無理な事はさせないつもりだけど……そこに誰かいるの?」
「えっ?」
突然、雨龍が茂みに向けて声を掛けた。
数秒後、何者かが茂みから現れる。
「な、何もしない……大丈夫?」
怯えながら出てきたのは、トナカイの獣人の少女である。
野沢佳美と同じ学校制服を着ていた。
「あれ? あなた、学校同じ? 私と」
「え、えーと、私、一年B組の、
宮義恵……あなたは?」
「私一年D組の、野沢佳美……」
「あら、野沢さん、知り合いはいないんじゃなかったの?」
「学校も学年も同じですけど、全く会った事も話をした事もありません、名前も知らなかったです」
佳美と義恵は同じ学校で学年も同じだったが、お互い全く面識が無かった。
「宮義恵さん? 私は雨龍春美って言うの。陸軍の兵士をやってるわ。
あなたは殺し合いに乗っているのかしら?」
「い、いえ、乗ってません!」
「本当に?」
「本当です! 本当です!」
必死に訴える義恵。
雨龍の手にある拳銃らしき物が彼女を更に必死にさせていた。
拳銃は、雨龍に支給された物で、マウザーHScと言う、ドイツで1940年に開発された小型の自動拳銃だった。
「分かったわ。私達二人も、殺し合う気は無いから安心して。宮さん。
私達と一緒に行かない? 殺し合いに乗っていない仲間を集めているのよ」
「良いんですか? 一人は心細いので、行けるなら一緒に行きたいですけど……」
「良いわよね? 野沢さん」
「あー、私は全然構いませんよ……」
佳美の承諾も得たので、雨龍は義恵を仲間に迎え入れる事にした。
「ここは見晴らしが良いから、林の方へ行きましょう」
「はい」
「分かりました……」
三人は西の林へと歩き始める。
【深夜/C-5/草原】
【雨龍春美】
[状態]健康
[装備]マウザーHSc.380ACPモデル(7/7)
[持物]基本支給品一式、マウザーHSc.380ACPモデルの弾倉(3)
[思考]1:殺し合いを潰す。
2:首輪をどうにかしたい。仲間も集めたい。
3:野沢さん、宮さんと行動する。
[備考]※特に無し。
【野沢佳美】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1~2)
[思考]1:死にたくない。雨龍さんに守って貰う。
2:雨龍さん、宮さんと行動する。
[備考]※特に無し。
【宮義恵】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1~2)
[思考]1:生き残りたい。
2:雨龍さん、野沢さんと行動する。
[備考]※特に無し。
《参加者紹介》
【名前】雨龍春美(うりゅう はるみ)
【年齢】30歳
【性別】女
【職業】陸軍特殊部隊所属兵士
【性格】冷静であり厚情
【身体的特徴】桃と白の身体に金髪の竜人、細目で緑瞳。巨乳
【服装】迷彩柄の軍服
【趣味】不明
【特技】射撃、剣術、槍術、体術などほぼ戦闘に関する全ての事、卓越した身体能力
【経歴】欧州のとある国の貧困街で生まれ8歳の時に両親が殺害され孤児となる。
その後しばらくストリートチルドレンとして生きるが10歳の時奴隷商に捕まり、
性的な調教を受けた末に日本風国家に輸出されてしまう。
しかし海上で奴隷商の船が日本風国家海軍の巡視艇に拿捕され他の奴隷と共に保護された。
当時10歳だった彼女は軍直轄の孤児院に入れられ、成長した後陸軍に志願し現在に至る。
本当は自分を救ってくれた海軍に行きたかったが船酔いするため諦めた
【備考】本名は「エルマ・ヴァッカレッツァ」。しかし本人は過去を捨てたい思いがあるので、
孤児院で付けられた「雨龍春美」の日本名で通している。
母国語はもうほとんど話せない。日本語の他に英語、中国語を習得している。
既婚者で、人間の夫と娘が二人いる。子煩悩である
【名前】野沢佳美(のざわ よしみ)
【年齢】16歳
【性別】女
【職業】高校生
【性格】人当たりは良いが、やや消極的で面倒事を避けたがる性質
【身体的特徴】茶髪ロングをツインテールに纏めている
【服装】学校制服である茶色のブレザーに緑のスカート
【趣味】パズル、深夜番組鑑賞
【特技】どんなに夜更ししても朝の定刻に起きられる体内時計を持つ
【経歴】特筆事項無し
【備考】これと言って目立った特徴は無い。美少女と言えば美少女
【名前】宮義恵(みや よしえ)
【年齢】16歳
【性別】女
【職業】高校生
【性格】臆病で、テンパりやすい
【身体的特徴】トナカイ系の獣人。そこそこ胸は大きい
【服装】学校制服である茶色のブレザーに緑のスカート
【趣味】創作料理の考案、サイクリング
【特技】剣道有段者
【経歴】中学の頃から剣道をやっておりそこそこ腕が立つ
【備考】野沢佳美と同じ学校で同じ学年だがクラスが違う上出身中学校も違うため面識は全く無い
最終更新:2013年07月19日 14:57