12話 力を持ったは錯覚か、それとも
少年、
下斗米規介は己の支給品に喜ぶ。
シグザウエルP226、本物の拳銃である。
いつもエアガンばかり撃っていていつか本物の銃を撃ってみたいと思っていたがその機会に巡り会えた。
「重いなぁ、金属だ……へへっ、本物だぜ……すげぇ」
本物の銃を手にした事で自分が大きな力を得たかのような高揚感に見舞われる。
規介の頭にはこの殺し合いがどうのこうのと言うよりも、
この銃の威力を早く見てみたい試してみたいと言う気持ちの方が勝っていた。
「誰かいねぇかな……」
そしてその標的はいつもの空き缶や小動物では無く、人間や獣人――参加者に限定される。
殺し合いと言う異常状況下で元々小動物を殺傷したりネット上で荒らし行為を行ってきた事で、
外れかかっていた心の箍も完全に外れてしまったらしい。
現在彼がいる場所の近くには灯台がそびえ立っていた。
夜の闇に覆われた漆黒の海も見え波の音も聞こえる。
「あそこに行ってみるか……」
規介は灯台に行き先を決め歩き出す。
◆◆◆
灯台最上階の電灯室、大きな証明が設置されているが今は機能を失っていた。
「うっ……うっ……」
幼い少女、
茅部千聖は恐怖に震え泣いていた。
小学五年である彼女はいきなり死と隣合わせの殺し合いゲームに放り込まれどうすれば良いか分からなかった。
「おうちに帰りたいよぉ……パパ、ママに会いたい……」
泣き続ける千聖。
その時足音が聞こえた。
「!」
足音は灯台の螺旋階段を登ってくる音に相違無かった。
誰かが最上階にやって来ようとしている。
千聖は隠れようとした。
今の彼女にとって、やってくる者が殺し合いに乗っているか乗っていないかは関係無く、
誰も等しく恐怖の対象にしかなり得なかった。
(隠れなきゃ……!)
だが電灯室に身を隠せそうな場所などどこにも無い。
やむを得ず電灯室外のベランダ部分に身を潜ませた。
◆◆◆
規介は灯台最上階の電灯室に到達する。
船舶のための巨大な電灯は今は機能を失っている。
電源自体は生きているので点灯させる事は出来るがそんな事をする必要は無いだろう。
明かりなら、手元にある懐中電灯で十分だ。
「……」
室内を照らす。
電灯の他には特に何も無い。
外にベランダがありそこに出るための出口が一つある。
P226を右手に、懐中電灯を左手に、ベランダに出る。
円形のベランダを反時計回りに進み誰かいないかどうか見ていく。
誰もいない、いや、進むに従って微かに足音が聞こえる。
規介は急転し、来た道を早足で戻って元の入口の所までやってくる。
「!!」
「いた!」
そして入口から中に入ろうとしていた小学生ぐらいの人間の少女を発見、捕捉した。
やはり怖い人だった、と、千聖は思った。
すぐに逃げなければならない。
急いで階段を下りて灯台から逃げてどこかに隠れないと。
そう思って、駆け足で灯台電灯室の中に入って、階段に飛び込もうとした。
だが、銃声が響く。
「あっ」
背中から胸の少し下辺りにかけて何かが突き抜けたような感触。
その感触は激痛に変貌し千聖はその場に倒れた。
「い、痛い! 痛いっ!」
血が溢れる胸元を押さえてのたうち回る千聖。
「おーすっげー。本物マジすっげー。やっぱエアガンと違うんだなー」
自分を撃った者の声が聞こえたが千聖にとって最早それどころでは無い。
「痛いよぉ……! 助けて、助けてぇ……! パパァ、ママァー……!」
大粒の涙を流し口から血を吐きながら、ここにはいない両親に助けを縋った。
直後、もう一発の銃声。
千聖の頭蓋骨が砕け、血と骨の欠片と、脳漿が飛び散った。
千聖の泣き声ももう聞こえなくなった。
「あっははははは! すっげえマジすっげえ! うっお脳みそ飛び散ってんじゃん」
予想以上の実銃の快感に、興奮抑えられぬ様子の規介。
生まれて初めて殺人を犯したがその興奮によって後ろめたさ、罪悪感も塗り潰されてしまっているようだ。
笑いながら、規介は少女の持物を漁る。
そして、見付けたのは小型短機関銃、イングラムM11。
予備の弾倉も五個セットになっている。
「うっひょおお!」
更に銃を手に入れられて歓喜の声を上げる規介。
彼の脳内は今まさに脳内麻薬が大量分泌されてとても幸せな気分になっていた事だろう。
そして彼の頭に新しい目標が芽生える。
短機関銃の威力を試したい、どんどん人を撃ってみたい、と言う。
【茅部千聖 死亡】
【残り56人】
【深夜/F-4/灯台最上階電灯室】
【下斗米規介】
[状態]高揚感
[装備]シグザウエルP226(13/15)
[持物]基本支給品一式、シグザウエルP226の弾倉(3)、イングラムM11(32/32)、
イングラムM11の弾倉(5)
[思考]1:どんどん人を撃ち殺したい。
[備考]※特に無し。
《参加者紹介》
【名前】下斗米規介(しもとめ きすけ)
【年齢】17歳
【性別】男
【職業】高校生
【性格】根暗、毒舌、ネット上では過激な発言をする
【身体的特徴】そばかす顔。160センチと低身長
【服装】赤いYシャツに明るい灰色のズボン
【趣味】エアガン射撃、ネット掲示板で誹謗中傷をして回る事
【特技】射撃(但し遊戯銃限定)
【経歴】中学の頃に両親が離婚し母親に引き取られる
【備考】エアガンで小動物を撃ち殺したり、ネットで掲示板を荒らし回ったり、
同級生に暴力を振るったりしている問題児。
昔は大人しいだけの性格だったのだが両親の離婚依頼問題行動を起こすようになった
【名前】茅部千聖(かやべ ちさと)
【年齢】10歳
【性別】女
【職業】小学生
【性格】怖がり
【身体的特徴】青髪
【服装】水色のブラウスとカーキのスカート
【趣味】特に無し
【特技】計算
【経歴】ジェットコースターに乗っていたらループ部分の天辺で故障、停止し宙ぶらりんになった事がある。
以来ジェットコースターに乗れない
【備考】両親大好きっ子
最終更新:2013年06月20日 16:49