7話 ひどくありふれたホワイトノイズをくれ
ブレザーを着た犬狼獣人の少女、
原小宮巴は、レジャー施設の中を散策していた。
「だーれか居ないかなー」
散策しているとは言っても警戒は怠らず、右手には支給品である警棒を握っている。
以前の殺し合いで支給された散弾銃と比べると随分支給品のランクが下がったと巴は思う。
「以前」と述べたが、巴は殺し合いに巻き込まれるのは二度目である。
一度目の殺し合いで、巴は死んだ筈だった。
運営責任者の男の思い付きによって始まった、その男とのジャンケン対決で敗北し、首輪を爆破されて殺された。
だが、気が付けば自分は生き返っており、今度はじゅんぺいとまひろと言う妙な男二人が進行役を務める別の殺し合いの参加者になっている。
こんな事になるとは誰が予測出来るだろう。
死んだと思ったらまた殺し合いなのだから。
(おねーさんは無事に帰れたのかな)
ジャンケンに勝利し首輪を外されていたかつての同行者の事を思い返す巴。
「おーい」
「!」
不意に声を掛けられ足を止める。
現在位置はゲームセンター。
辺りを見回すと、ゴーグルかサングラスを掛けた、色黒で、上半身が筋肉質なのに下半身が痩せ気味と言う、
アンバランスな体格をした男が居た。
声を掛けたのはどうも彼らしい。
「誰? おじさん」
どう見ても中年に見えるので、巴は「おじさん」呼びをする。
「何ぃー何つった今もう一回言ってみろうぇー?」
すると、その男は滑舌の良くない口調で、少し怒った様子で巴に聞き返す。
「いや、おじさん……」
「おじ↑さん↓だとふざけんじゃねぇよお前! お兄さんだろォ!?」
「……」
怒り出した男にしばし呆然とする巴。どう見ても「お兄さん」と言う年齢には見えない。
だが、騒がれても面倒なので巴は大人しく言い直す事にした。
「お兄さん」
「よぉし……って、またやっちまった……悪ぃなおじ↑さん↓呼ばわりされるとつい我を失っちまうんだよなぁ。
俺は拓也って言うんだ。名簿にはKBTITって載ってるけどな」
「私は原小宮巴……急に声を掛けたけど、おにーさん、私に何か用なの? 殺し合いには乗ってるの?」
「いや乗ってねぇよ。こんなふざけたゲームに乗るつもりなんて全く無ぇ。
俺のクラスメイトだっているしな。ああ、声を掛けたのは、俺のクラスメイトの事知らないかと思って」
「いや、おにーさんが初めて会った人だよ……クラスメイト?? おにーさん、学生なの?」
「おう、中学生だ」
「は?」
信じられないと言った表情を浮かべる巴。
お兄さんと呼べるかも怪しい外見のこの男が「中学生」、自分より年下だと言うのか。
いやそもそも中学生ならば高校生である自分が「お兄さん」呼びするのはどうなのか。
「……おにーさん、私をからかってない?」
「えー? 何言ってんだよ。こんな状況でふざけたりしねーよ当たり前だろおめぇー」
「本当に中学生、なの……じゃあ私より年下って事になるんだけど……ええ……(疑念)」
どうやっても信じきれず、困惑する巴。
「おい、動くな!」
「「!」」
闖入者が現れる。
二人は声の方向へ視線を向ける。
散弾銃を自分達に向ける少年の姿が確認出来た。
「何だよお前……そんな物騒なもん向けんなよ、オイ」
拓也が少年に向かって警告するが少年は聞く耳を持っていない様子である。
「早速獣人を見付けられるなんてついてるな……」
「え? 何? 私に用事?」
少年は巴の方を見て嫌な笑みを浮かべる。
それに気付いた巴が少年に問う。
「あぁそうだ。お前に用があるんだよ。おい、おっさん。この女置いて行くって言うのなら見逃してやるよ」
「あ? 何?」
「だから、おっさん――――」
「おっさんだとふざけんじゃねぇよお前!!」
「!?」
拓也の取った行動に、少年も巴も目を見張る。
少年が向けていた散弾銃の銃身を掴んだかと思うと、少年の腹に渾身の蹴りを入れたのだ。
散弾銃を向けて威嚇していれば動けないと油断していた少年は不意打ちに対処出来ず、
後ろに倒れこみ腹を抑えて咳き込む。
持っていた散弾銃は拓也に奪われた。
「げほっ、ごほっ……この、野郎……」
「野郎じゃないよ女の子だ、よっ!」
「!!」
立ち上がろうとした少年の頭を、巴は警棒で殴り付けた。
少年は卒倒し、動かなくなってしまった。
「ナイス拓也さん」
「おう、大丈夫か巴……こいつ、死んだのか?」
「ううん、気を失ってるだけみたい」
「……こいつ、お前の事目当てだったみたいだぞ? てかさ……お前、着ぐるみじゃないの?」
「え? 違うよ。本物だよ」
「まじか……」
拓也の世界では巴のような獣人は架空の存在である。
巴の事を見付けた時も拓也は彼女が着ぐるみか何かを着ているのだと思っていた。
一方の巴は不思議そうに拓也を見る。
彼女の世界は人間と獣人、その他人外が共生しており、獣人を着ぐるみだと勘違いするような人間はまず居ない為だ。
しかし、二人共今はそれどころでは無いと判断し気絶した少年の方に視線を向ける。
「どうしよっかな、私を襲うつもりだったっぽいし。何かしてやりたいな」
「俺も手伝おうか」
「良いの? 二人でお仕置きしようか、じゃあ」
「かしこまり!」
初めて出会ったとは思えない程意気投合している巴と拓也は、少年を引き摺って「お仕置き」に適しそうな場所を探し始めた。
◆◆◆
壱里塚徳人は「獣人」に対し屈折した感情を抱いた少年である。
分かりやすく言えば「獣人相手限定のサディスト」と言ったところだろうか。
獣人が苦しむ姿、悶える姿を見て喜ぶと言う趣味を持っていた。
クラスメイト同士での殺し合いに巻き込まれた時、彼は獣人狩りを始めた。
しかし結局、一人も狩れず彼は落命する事になる。
そして二度目の生を受け、彼は再び殺し合いの舞台に立った。
クラスメイト以外にも、多くの獣人が居る。
彼は自分の心の中に、なぜ自分が生き返ったのかと言う疑念よりも獲物の数が増えた事、再び狩りのチャンスがやってきた事への、
歓喜の感情が沸き起こるのを否定出来なかった。
支給されたウィンチェスターM1912散弾銃を手に、徳人は第二の「獣人狩り」を始めようとした。
そして最初の獲物は、レジャー施設のゲームセンターで発見した、青いブレザー、自分とは違う学校の生徒と思われる、
犬か狼の獣人の少女――――になると、徳人は少女と一緒にいた色黒のサングラス男に不意打ちを食らうまでは思っていた。
現在、彼は気絶させられ、獣人の少女とサングラス男に引き摺られている。
壱里塚徳人少年はこれからどうなってしまうのか。
次回に乞うご期待。
【深夜/B-3レジャー施設・ゲームセンター】
【原小宮巴@オリキャラ/
俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:KBTIT(拓也)と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???、ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:クラスメイトを探す。
2:巴と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
【壱里塚徳人@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]頭に打撲、腹部にダメージ、気絶
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:獣人狩りをする。人間は必要な時以外危害は加えない。
1:(気絶中)
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※原小宮巴とKBTITによって運ばれています。
《支給品紹介》
【警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
警官が所持する金属製の棍棒。
元ロワにおいて狼獣人少女藤森真海が自慰に使用した。
【ウィンチェスターM1912@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
ウィンチェスター社初のハンマー内蔵式散弾銃。
ポンプアクション式散弾銃デザインの基礎を築き“パーフェクト・リピーター”の別名を持つ。
元ロワにおいて原小宮巴に支給された。
最終更新:2014年06月15日 23:36