すくいきれないもの

58話 すくいきれないもの

C-6エリアのガソリンスタンドを後にしたMUR、ト子、鈴木フグオの三人。
ガソリンスタンドにて首を飛ばされた惨殺死体を目にしてから、フグオの気分は落ち込み気味だった。
何とか元気付けたいと思うMURとト子だったが、何を言っても気休め程度にしかならない事は分かっていた。

歩いた末、D-5エリアのイベントホールに辿り着く。
放送の時刻も近付いていたので三人は放送を聞く為と休憩する為にイベントホールの中へ入る。
しかし、第二小ホールとプレートの掛かった扉を開けてホールに入った時、制服姿の少女が倒れているのを発見した。

「……!」

フグオが反応し、ガクガクと震え出す。

「俺が見てくる」
「いや私が行く。あの制服は私の学校の……私のクラスメイトに違い無い。
MURさんはフグオの傍に居てやってくれ」
「分かったゾ……」

フグオをMURに任せ、ト子が倒れている少女の元へ向かう。
少女はやはり、ト子のクラスメイト、吉良邑子だった。
首が有り得ない方向に捻じ曲がって鼻と口から血が溢れており、どうやら首の骨をへし折られて殺されたようだ。

「吉良……」

ト子は哀れみは感じなかった。
吉良邑子はあの時、太田達と一緒になってテトを辱めていた一人だ。
元々仲も良くなかったし、別に彼女が死んでも思う所は無い。
テトが彼女に弄ばれる事になる原因は自分が作ったのは、十分分かってはいたが。

「うう……」
「大丈夫だゾフグオ君……おっ、ト子ちゃん、どうだった?」
「やっぱり私のクラスメイトだ、吉良邑子って言う……死んでる」
「キャプ……!」
「フグオ君! ……ずっとここに居るのはまずい、別の部屋へ移動しよう」
「ああ」

フグオの怯え方を見て早急に場所を移した方が良いと二人は考え、第二小ホールを後にした。
先刻のガソリンスタンドと違い、幾つも部屋が有るのが幸いである。
別のホールへ移動した三人は、置かれていたパイプ椅子にそれぞれが腰掛け身体を休める。

そして第一放送が始まる。
放送の主は開催式の時の二人組の片割れ、じゅんぺい。
相変わらず、滑舌が悪く咳払いの多いスムーズでない喋り方だった。
禁止エリアから発表され、指定されたのはA-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリア。
約一時間後の午前7時より禁止エリアとなる。

「どこも遠いゾ」
「取り敢えず今すぐに動く必要は無さそうだな」
「……」

続いて、死亡者の発表。
じゅんぺいが淡々と、死亡した参加者の名前を読み上げた。
その数、19人。残りはMUR達を含めて33人らしい。
呼ばれた名前の中には、MURのクラスメイトが三人、ト子のクラスメイトが五人、フグオの友達が二人、含まれていた。

「そん、な……のり子、仁……」
「フグオ君……」
「……」

仲の良かった友達二人が死んだと聞かされショックを隠せないフグオ。
それを見てMURとト子も掛けられそうな言葉が見付からなかった。
MURもト子もクラスメイトが呼ばれたとは言え親しい者は誰も呼ばれていない。
特にト子は愛餓夫、壱里塚徳人、吉良邑子、鈴木正一郎と、
太田一派や以前の殺し合いで因縁の有る者が尽く死んでおり却って都合が良いと思える位である。
だが、フグオは、いつも仲良く遊んでいたとても大切な友達が二人も呼ばれたのだ。
その悲しみは想像に難くない。

「……うっ、う……うああああぁあああ……!」

その場に膝を突き、大粒の涙を流して、フグオは泣いた。
ホールに太った少年の慟哭が響く。
殺し合いの最中に大声は危険なのだが、フグオが泣くのを止める事など二人には出来なかった。

「うっ……うっ……」
「フグオ君……だ、大丈夫か?」
「……っ……ううっ……」

MURに付き添われ、フグオはどうにか立ち上がって椅子に座り直した。
しかし、泣き止むにはまだ時間が掛かりそうだ。

「しばらくはフグオは動かせないだろうな」
「仲良しな友達が死んだなんて聞かされれば無理も無い、
俺だって、呼ばれたのがまだそれ程付き合いの無い奴だったからまだ良かったけど、
野獣や遠野、KMRが死んだって言われてたら、フグオ君と同じように泣いてたと思うゾ……」
「そうだな……」

フグオの様子を見て、MURの話を聞いて、ふとト子は思う。

(私が死んだら、泣いてくれる人は居るだろうか)

自分が死んだ時、悲しんでくれる者は居るのか。
あの日より前のテトならば、恐らくは泣いてくれたかもしれないが、今となってはもう望めまい。

自分は普段から人付き合いも悪く、性格も悪いと自覚はしている。
おまけに太田に薬漬けにされ良いようにされ、クラスからも浮いていただろう。
唯一の友人と言っていいテトも自分の薬欲しさに裏切った。
以前の殺し合いにおいても裏切りと謀略を駆使し、多くのクラスメイトを陥れたり死に至らしめた。
最後には殺され、蘇生して今に至る。

自分は紛う事無き、人間の屑だ。

泣いてくれる人が居るか? そんな事を考えるのもおこがましい。

「……どうかしたか?」

ト子が何か考えているのを見てMURが尋ねる。

「え? ……いや、何でも。私は首輪の解析を始めるよ」

適当に誤魔化して、ト子は時計塔にてケルベロモンの死体から手に入れたケルベロモンの首輪を、
ガソリンスタンドで調達した工具での解析を始める事にした。
ト子の様子を少し気にしつつも、MURはフグオの近くの椅子に座り、ふぅと一息ついた。


【朝/D-5イベントホール第三会議室】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し、回復中)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:フグオ君が心配だゾ……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。

【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田には会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を解析する。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。

【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]深い悲しみ、精神的ショック(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:……のり子、仁……何で……。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。



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最終更新:2014年11月25日 14:15