~ミストラルシティ「喫茶かざぐるま」~
ガチャ!
喫茶かざぐるまの扉が開く。
ツバメ「いらっしゃいませ♪」
いつものように客を出迎えるツバメ。カウンターではにろくがコーヒーを入れている。
ツバメ「あら?」
客の恰好を確認するツバメ。
ツバメ「もしかしてEGOの方ですか?」
EGO隊員「そうです。ミストラルシティEGOの者です。マスターに話があってきたんですが…」
ツバメ「…そうですか。マスターはあちらです」
にろくの元へとEGO隊員を案内するツバメ。だがツバメはこの状況になにかしらの違和感を覚える。
ツバメ(にろくはEGOの秘密諜報部に所属していた。そんな彼のもとにEGOの隊員が訪ねてくるということはなにか良くないことな気がするわね)
にろくの元に案内されたEGO隊員。
EGO隊員「あなたがにろくさんですか?」
にろく「あぁ。そうだ」
EGO隊員「あなたにお聞きしたいことがありまして…」
スッ…
EGO隊員は胸元から写真を取り出す。
にろく「これは…?」
その写真にはにろくのよく知る人物が写っていた。
EGO隊員「天十也…彼のことなのですが…」
写真に写っていたのは十也だった。
にろく「あいつがどうかしたのか?」
EGO隊員「あなたは彼と共に戦ってきたとお聞きしまして…彼の素性についてお聞きしたいことがあるのですが…」
にろく「…なんだ?」
EGO隊員「彼がこの街に来る前…そのことを知らないですか?」
にろく(この男…おかしい)
EGO隊員の質問に疑問をもつにろく。
にろく(この街のEGOに所属している隊員がなんで十也のことを嗅ぎまわっているんだ…それにこの男は十也の過去のことを知ろうとしている…何故だ…)
にろく「知らないな。」
EGO隊員「そうですか…ご協力感謝します」
その場を去ろうとする隊員ににろくが問いかける。
にろく「あぁ。そういえば!あなたの隊員証をみせていただけませんか?」
EGO隊員「隊員証…ですか」
にろく(この男はなにか怪しい…俺の直感がそう感じている…)
男の素性を確かめるため、男の隊員証の提示を要求するにろく。
EGO隊員「はい。これが隊員証です」
男は隊員証をにろくにみせる。
にろく「…」
隊員証を確認するにろく。
にろく(この隊員証…偽物ではなさそうだな…)
EGO秘密諜報部に所属していたにろくにはEGOの隊員証の虚偽を見分けるのは容易だ。
にろく「ありがとうございま…ッ!?」
隊員証に記された名前…それを確認したにろくは思わず声を止めてしまう。
にろく(こいつは…!?)
その名前の人物…それは確かにミストラルシティのEGOに所属していた。数年前までは…
にろく(この名前…確か…)
にろくは秘密諜報部に所属していた時、その名前を目にした記憶があった。EGOミストラルシティ支部に所属し、数年前任務で死亡したはずの人物…その名前だ。
にろく(だが…隊員証に偽装の痕跡はない…それに隊員証の写真と目の前の人物の容姿は寸分たがわない)
にろく(これはいったい…)
EGO隊員「どうかしましたか?」
にろくの様子の変化に気づいたのか、EGO隊員はにろくへと質問する。
にろく「いえ…なんでもありません(なにかおかしい…だが今はナルと
メルトも出かけている…ここでことを荒立てるわけにはいかない)」
今かざぐるまにいるのはにろくとツバメの二人と数人の客だけだ。もし相手が暴れでもしたらにろくとツバメの2人だけでは取り押さえるのは厳しいかもしれない。
EGO隊員「では…失礼します」
男が喫茶店の扉へと手をかける。
バキュン!
その瞬間!扉へと向かって銃弾が放たれる。
EGO隊員「なに!?」
にろく「なんだ!?」
ツバメ「どうしたの!?」
突然の事態に驚く一同。
にろく(今の銃弾…外からじゃない。中から放たれたものだ)
店の中を見渡すにろく。
にろく「あいつか!」
客の一人が人差し指を構え立ち上がっている。その指先はEGO隊員の方へと向いている。
???「やっぱりここにも現れたか…張ってて正解だったね」
深く帽子をかぶり、黒い服に身を包んだ女性はEGO隊員の方へと歩き出す。
ツバメ「みなさんこっちへ!」
ツバメは他の客を誘導し避難させる。
にろく「おい!お前!」
帽子をかぶった女性へ駆け寄るにろく。
にろく「お前は!?」
近くでその女性の姿を確認すると、それはにろくの知る人物だった。
きゅっぱ「久しぶりだね、にろく」
にろく「きゅっぱ!?なんでおまえがここに!?」
きゅっぱ「話はあとだよ。まずはあいつを捕まえるのが先だ!」
EGO隊員「ちっ!」
EGO隊員は喫茶店を出て逃走しようとする。だが…
EGO隊員「なんだ!?扉があかない!?」
にろく「これは…」
ツバメ「秘密の箱庭『シークレット・ベース』」
にろく「ツバメ!」
ツバメ「この空間を閉鎖したわ。もうあなたは逃げられないわよ」
客の避難を完了したツバメが戻ってきていた。彼女の能力によりにろくたちとEGO隊員は外部から遮断された空間に隔離されたのだ。
EGO隊員「撤退は不可能か…ならば!」
にろくたちの方を向き戦闘態勢をとるEGO隊員。
EGO隊員「お前たちを始末する!」
にろく「やる気か…」
きゅっぱ「いくよにろく!あたしたちでこいつをとっ捕まえる!」
にろく(俺とツバメだけではこいつを捕まえるのは不可能だったかもしれないが…きゅっぱがいるならなんとかなるかもしれないな)
ツバメ「二人とも気を付けてね!」
きゅっぱ「いくよ!『トリガーオン』!」
指を銃の形に構えるきゅっぱ。
きゅっぱ「くらいな!」
バン!
きゅっぱの指からエネルギーの塊の銃弾が発せられる。その銃弾はEGO隊員へと一直線に飛んでいく。
EGO隊員「能力による攻撃か。だが!」
男は小さなボタン型の装置を取り出す。
にろく「なんだ?」
見たことのない装置だ。
EGO隊員「粒子(マテリアル)シールド展開!」
ブォン!
ボタンほどの装置からエネルギーの盾が展開される。
バシュン!
その盾に当たったきゅっぱの銃弾はかき消される。
きゅっぱ「なに!?」
にろく「なんだ、あれは!?」
ツバメ「EGOの新兵器なの?」
EGO隊員「その反応…やはりこちら側の技術レベルは大したことがないみたいだな」
にろく(こちら側…?)
EGO隊員「今度はこちらの番だ!」
ジャキン!
マシンガンのような小銃を取り出すEGO隊員。
にろく「よけろ、みんな!」
きゅっぱ「いわれなくても!」
喫茶店内の物陰に隠れる3人。その直後!
ダダダダ!!
響き渡る銃声。店内のいたるところに穴が開く。
にろく「俺の店が…!」
ツバメ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
きゅっぱ「銃声がやんだな…弾切れか。なら!」
物陰から飛び出すきゅっぱ。
EGO隊員「出てきたな!」
きゅっぱに向けて再び銃を構える男。
きゅっぱ「遅い!」
瞬時に間合いを詰めるきゅっぱ。
EGO隊員「なに!?」
きゅっぱ「くらいな!」
男の急所を蹴り上げるきゅっぱ。
EGO隊員「ぐっ!だがこの程度!」
銃を構える男。
きゅっぱ「この距離じゃあ銃は使えない!」
EGO隊員「ふっ!」
不敵な笑みを浮かべる男。
きゅっぱ(なんだ…もしや!)
嫌な予感がし距離を取るきゅっぱ。
ブン!
その直後、男の構えていた銃身からエネルギーの剣が飛び出る。
EGO隊員「ちっ!粒子(マテリアル)ブレードを避けるとは…感がいい奴め」
にろく「大丈夫かきゅっぱ!」
きゅっぱ「あぁ、問題ないよ。でも…あの武器…」
エネルギーで形成された剣。それにさっき使っていたエネルギーの盾。
きゅっぱ「ネオのところにいたアレジェーネとかいう奴らの武器に似ている…」
にろく「あぁ。おれもちょうどそう思っていたところだ。こいつは何か関係ありそうだな。それになんでこいつが十也のことを調べているのかも聞き出さないとな」
きゅっぱ「そうだね。でもあいつの銃剣と盾がある限りうかつに近づけやしない」
にろく「なら俺が突破口を開く!」
ダッ!
駆けだすにろく。
EGO隊員「武器も持たずに捨て身の特攻か?それとも何かしらの能力を使うつもりか?なんにしても粒子シールドがある限り!」
エネルギーの盾を展開する男。
にろく「『プラグオン』!」
地面に手をかざすにろく。その手からプラグが出現する。そのプラグから液体が放出される。放出された液体は地面を伝い、男の足元へと流れる。
EGO隊員「なんだ!?」
ツルン!
勢いよく足を滑らせる男。
ガン!
そのまま頭を地面へと強く打ち付ける。
ツバメ「あれは店内掃除用のワックス!」
きゅっぱ「いつの間にあいつ!」
にろくは男の銃撃から隠れているすきに自身の店の掃除用のワックスを彼の能力『プラグオン』で取っていたのだ。
にろく「高級ワックスだ。この代金はお前からきっちり徴収させてもらうぞ。きゅっぱ!」
きゅっぱ「はいよ!」
EGO隊員「く、くそ!」
態勢を立て直し、再び粒子シールドを展開しようとする男。だが…
きゅっぱ「遅いっての!」
ガン!
倒れた男の隙をきゅっぱは逃がさない。きゅっぱの蹴りにより吹き飛ばされるボタン型の装置。
きゅっぱ「終わりだね」
指を銃の形に構えるきゅっぱ。
EGO隊員「ちっ!」
男はポケットから何かのスイッチを取り出す。
EGO隊員「お前たちも道連れだ!」
にろく「まさか!自爆する気か!」
ツバメ「うそ!?」
EGO隊員「ははは!死ねぇ!」
きゅっぱ「そんなことさせるかよ!」
突如男の胸元に引き金が現れる。
EGO隊員「なんだ?」
自分の胸元に現れた引き金をみて困惑する男。
きゅっぱ「その迷い…お前の心の引き金を引く『トリガーオン』!」
カチッ!
きゅっぱが男の胸元の引き金を引く。次の瞬間…
EGO隊員「くっ!」
男は自爆スイッチを投げ捨て喫茶店の扉へと走り出す。
ガチャガチャ!
扉を開けて外へと出ようとする男。
ツバメ「何をやってるのあいつ…。私の能力でここから出られないのは知っているはずなのに…」
EGO隊員「扉があかない!逃げられない!はっ!」
ふと我に返る男。
EGO隊員「なんで俺は…」
きゅっぱ「逃げようとしたのか…かい?」
EGO隊員「お前の能力か!」
きゅっぱ「そうさ。あたしの能力『トリガーオン』であんたの行動を制御させてもらった。あんたの心の引き金を引いたのさ。ここから逃げたいっていうね」
EGO隊員「俺が逃げたい…だと?そんなはずは!俺は任務を全うする!」
にろく「だがお前は逃げ出そうとした。それが答えだろう。どんなに任務に忠実に生きようとしても人である以上どこかにほころびが生まれる。生きたいと思うのは当たり前の感情だ」
EGOの秘密諜報部に所属していたにろくときゅっぱにはそのことが痛いほどわかっている。彼らの経験が男の自爆を防いだのだ。
EGO隊員「くそっ…!」
にろく「このままお前を拘束させてもらう」
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ナル「ただいま~」
メルト「もどりましたー!」
買い出しから戻ったナルとメルト。2人は店内の状況を見て驚く。
ナル「なんだいこれ!?」
喫茶店の中は戦いの後でボロボロになっていた。
メルト「いったいなにがあったんですか!?」
ガチャ!
奥の部屋の扉が開く。
にろく「戻っていたのかナル、メルト」
ツバメ「おかえりなさい」
ナル「にろく!これはいったい…」
にろく「それが…」
ガチャ!
再び奥の部屋の扉が開く。そこから姿を現したのは…
きゅっぱ「あたしが説明するよ」
ナル「あなたは確か…きゅっぱ」
メルト「だれです?」
きゅっぱ「にろくたちに説明した話も含めてあんたたちにも知っておいてもらった方がよさそうだからね」
突如現れた謎のEGO隊員。きゅっぱの協力により男を捕えることに成功したにろくたち。だがそれは始まりに過ぎない。
新たな事件が始まりを告げる。
to be continued
最終更新:2017年07月13日 23:44